ウッドショックの見通しと今後の不動産市場について
2021年から起きているウッドショックで、住宅購入を先送りにしている人もいるのではないでしょうか。ウッドショックはいつまで続くのでしょうか。ウッドショックの見通しと、今後の不動産市場について解説します。
もくじ
ウッドショックとは
そもそもウッドショックとは、どのようなものなのかをみていきましょう。
ウッドショックとは
ウッドショックとは、日本国内において住宅を新築する際の木材価格の高騰などを理由に、住宅価格が高くなっている現象のことです。
日本の住宅メーカーでは、住宅を新築する際に利用する木材の7割を輸入材に頼っています。新型コロナウイルスの流行を原因に、さまざまな要因から輸入材の価格が高騰し、住宅を新築する際の価格にも影響が及んでいます。
新型コロナウイルスによる輸入材価格高騰の原因
新型コロナウイルスによる輸入材価格高騰の原因には以下のようなものがあります。
- アメリカや中国での住宅需要増
- コンテナ不足
- 労働者不足による木材の減少
アメリカや中国での住宅需要増
アメリカや中国ではリモートワークの推進により、郊外で新築住宅を購入する動きが加速しています。
これらの国では、莫大な財政出動や住宅ローン政策が取られていることも、新築住宅の購入に拍車をかける要因のひとつです。このため、木材の需給バランスが崩れ、日本の輸入材の価格が高くなっています。
コンテナ不足
2021年3月に起こったスエズ運河でのコンテナ船座礁事故やコロナ禍を原因としたネットショッピング需要増などが要因となり、世界的にコンテナが不足する事態となっています。
コンテナの利用料が高騰し、日本へ木材を輸送する際の費用が高くなっているというわけです。
労働者不足による木材の減少
海外において、コロナ禍で労働者が減ってしまい、木材の伐採がうまく進んでいないといったことも理由として挙げられます。そのほか、カナダで発生した害虫被害や、オーストラリアの大規模な森林火災なども木材の減少に拍車をかけています。
ウッドショックの現状と今後の見通し
ウッドショックの現状と今後の見通しについて解説します。
ウッドショックが住宅におよぼす影響
ウッドショックにより木材の価格が高騰しているため、木材を取り扱うすべての企業と購入者に影響を与えています。その中でも、大きな影響を受けているのが住宅価格です。
木材価格の高騰に加え、木材の供給数が減少しているため、木材の納期が伸びることで工期が伸びていることも、住宅価格に影響を与えています。工期が伸びることで、建築企業の人件費や重機のレンタル料金など、木材以外の価格にも影響が出ているのです。
そのためウッドショックは、住宅価格に大きな影響を与えています。
木材価格は下落し始めている
農林水産省が2023年7月5日に公表した「木材流通統計調査」によると、木材価格は2022年をピークに下落し始めています。
また、林野庁の「木材輸入の状況について」(2023年5月時点)からも製材・構造用集成材の輸入平均単価が下がっていることが確認できます。まだ2020年の水準までは下がっていませんが、一時のピークは脱したといえるでしょう。
ただし現在の円安と、原油高による輸送コストの増加により、輸入平均単価が2020年の水準まで戻るかは不透明です。実際に、2023年に入ってからしばらく横ばいが続いています。
輸入量も減少している
今後の木材価格の推移を予想するうえで、木材の輸入量が減少していることが気になります。
そもそも日本の木材自給率は低く、半分以上を輸入に頼っています。そのため、輸入量が減ると木材の供給が少なくなり、木材価格が上がるのです。林野庁のデータを見ると、2023年の1月から5月までの製材・集成材輸入量は前年同期の60%以下に減少しています。
日本政府の政策や国産材への転換などにより価格は下落しているものの、需要が高まり供給が追いつかなければ、再び価格が上昇する可能性も残っています。
今後の不動産市場はどうなる?
ウッドショックによる木材価格の高騰はひと段落しましたが、その影響も含めて今後の不動産市場がどうなるのか考えてみましょう。
人手不足による住宅価格の上昇
建設業界では、人手不足が深刻な問題となっています。それに加えウッドショックによる工期遅れや、働き方改革により一人当たりの作業時間短縮の影響もあり、工期が長期化しています。
そのため以前より工事日数が増加し、ひとつの建物に対する人件費の割合が上がってしまいました。人件費は今後下がる可能性が低いため、新築住宅価格の上昇はこれからも続く可能性が高いです。
新築価格が高くなると、新築を諦めて中古住宅を購入しようとする人が増えます。そのため、新築価格が上がると中古住宅の価格も上がりやすい傾向があります。
今後も物価が上昇する可能性が高い
物価上昇により食料価格の高騰がニュースに取り上げられていますが、建築資材も例外ではありません。物価の上昇は住宅価格に直結するため、ウッドショックが落ち着いても、住宅価格は上昇する可能性があります。
建築資材については、みずほリサーチ&テクノロジーズも2023年7月に以下のように言及しています。
今後も市街地再開発を中心に一定の建設需要が見込まれることや、物価や労務費の高騰から建設投資額が高止まりする可能性があるといえるだろう。
ローン金利の上昇
不動産を購入する際、多くの人が住宅ローンや不動産投資ローンを利用するため、ローンの金利は不動産市場に大きく影響します。
ローン金利はとくに固定金利が今後も上がっていくと予想されています。なぜなら、固定金利は10年国債利回りなどの長期金利を参考に決められているからです。
長期金利は2022年11月まで日銀によって±0.25%程度を目安に調整されていました。しかし2023年7月に実質的な上限を1.0%まで引き上げたことにより、2023年8月時点で0.6%まで上昇しています。これは2014年以来の高水準です。
そのため、長期金利を参考としている固定金利は今後上昇すると考えられています。
一方、変動金利は短期プライムレートを参考に決められています。短期プライムレートは日銀の政策金利を参考に決められていますが、2023年7月の金融政策決定会合で政策金利の上昇は考えていないことが明らかになりました。
そのため現時点で変動金利が急激に上昇する可能性は低いです。しかし、長年続いていた金利の下落は止まっており、今後の日銀の動向によっては変動金利も上昇する可能性があります。
金利が上昇するとローンを利用したときの利子が増えるため支払い総額が増えます。それにより新居購入を諦める人が増え住宅が売れなくなるため、一般的に不動産価格は下落します。
ビックイベントの影響
東京オリンピックの後に不動産価格が下落すると予想されていましたが、不動産価格に大きな変化はありませんでした。
次に開催される大きなイベントが2025年の大阪万博です。しかし建築資材の高騰や建築作業員の人手不足によって、建築が大幅に遅れています。大阪万博に間に合わせるために資材や人材が投入されれば、不動産の資材や人材が不足するため、価格が上昇する要因になります。
また、会場周辺のインフラ整備や周辺施設の充実により大阪の不動産価格も上昇すると予想されます。
大手住宅メーカーの注文住宅販売や不動産テック企業の仲介業務に4年間携わり、不動産取引にかかわった件数は350件以上にわたります。2021年よりリビンマッチコラムの執筆・編集を担しています。皆さんが安心して不動産取引を行えるよう、わかりやすくリアルな情報を発信します。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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