不動産売却を代理人に委任するメリットや注意点は?
不動産の売却では買手・売手の利害に関わる重要な取り決めが多いため、契約には原則として本人が臨なければいけません。しかし仕事の都合で海外に居たり体が不自由であったりすると、どうしても本人による契約が難しいこともあると思います。
ここでは、不動産を売却するための契約を他の人に代理で行ってもらうこと(代理人)についてご紹介します。代理人を立てる際の注意点や委任状の書き方についても合わせてご説明しますので、参考にしてみてください。
不動産売却における代理人とは
不動産売却における代理人には以下の3種類があります。それぞれで代理人を立てる手続きや代理人となる理由が違いますので、順に見ていきましょう。
- 任意代理人
- 法定代理人
- 復代理人
任意代理人
委任状をもって委任されれば、誰でもなることができるのが任意代理人です。誰でもなることはできますが、不動産は売買金額が大きく、重要な契約もあります。そのため信用のおける人として、本人に近い親族や弁護士などの専門家を代理人に任命する傾向があります。
法定代理人
民法において定められた代理人を法定代理人といいます。例えば不動産の所有者が未成年の時は、親権者や未成年後見人が法定代理人になります。他にも精神上問題があると裁判所などから審判を受けている人などは、成年後見人などが代理権をもちます。法定代理人については、不動産の売却に限らず法律行為全般におけることですので、気になる方は
なお、この法定代理人に関しては本人の意志に関係ない代理のため、委任状は必要ありません。
復代理人
代理人がさらに別の代理人を選任することがあります。こうして選任された代理人を復代理人といい、代理人のもつ権限の範囲内で、権限が与えられます。任意代理人においては、本人の許諾ややむをえない事情がなければ復代理人は選任できません。
これらのうち、この記事で扱うのは任意代理人になります。委任状をもって権限を与えることで、不動産売却におけるさまざまな手続きを代理で行ってもらうことができます。委任による代理は、一定の制限はありますがいろいろな場面で活用できるので、以下で見ていきましょう。
代理人はどんな時に立てる?
不動産売却では原則として本人の立ち会いが求められますが、どうしても立ち会いができないこともあるでしょう。ここで代理人を立てる方はどのような都合でそうなっているのか、ご紹介します。
相続などで取得した遠方の不動産を売却する場合
不動産売却では長期間に渡ってすべきことがいくつかあるので、遠方の不動産に関しては、いろいろと大変なことがあります。特に仕事で海外に居たり、簡単に移動できない持病があったりすれば売却を進める時間をとるのは困難です。そこで不動産の近くにいる親族などを代理人として不動産売却を進めることがあります。
不動産名義人が高齢な場合
不動産売却では本人立ち会いや書類の用意などが求められることがあります。物件と不動産会社の行き来など、移動も度々行います。名義人が高齢な場合には、これらの手続きが体力的に難しいことがあるかもしれません。そのような時には、子供などに手続きを任せることがあります。
専門知識が必要な場合(弁護士などの専門家を代理人に)
代理人に委任する一つの例として、司法書士や弁護士のような専門家を代理人にする場合があります。
不動産を売却というのは、所有者を明らかにしたり登記事項を確認したり、いくつもの複雑な手続きが伴います。このような時は、登記や所有権に関する専門家である、司法書士に手続きを任せることがあります。また、権利など不動産トラブルがあれば弁護士に委任することもあります。場合によって委任する相手が変わるので、まずは不動産会社に相談してみてもいいかもしれません。
不動産売却を代理人に任せるには委任状が必要
正式に代理人を立てるためには、委任状が必要です。この委任状の記載項目や作成の際の注意点について見てきます。
不動産売却で代理人を立てるための委任状とは?
不動産売却では、売却に関わる行為を代理人に頼むことを委任と言います。この時、代理人にどんなことを任せるのか明記したものが委任状です。委任された代理人は本人に代わって契約などの行為を行うことになり、その行為はいずれも本人が行ったものとして扱われることになります。
委任状には具体的にどのような内容が記載されるのか、確認しておきましょう。
委任状に記載する項目
- 不動産所有者の現住所
- 不動産所有者の署名・捺印
- 代理人の現住所
- 代理人の署名・捺印
- 代理人の権限
- 媒介契約や売買契約に関する取り決め
- 売買代金や手付金に関する取り決め など
代理人にどこまで権限をもってもらうのかは、場合によって変わります。一例をご紹介しましたが、実際には委任範囲や金額などを細かく設定していくことになります。
委任状で確認しておくべきことは?
まずは、登記事項証明書や登記済権利証の内容と委任状に記載される情報に相違がないことを確認しておく必要があります。また、委任する内容が明記されているか、他の人がみても誤解を招かないかなどを確認しておくといいでしょう。
委任状については不動産会社に相談
代理人を立てたい時は、不動産会社にお願いすると委任状を作成してくれることがあります。
不動産会社は本人と連絡をとり、本人確認を十分にした上で委任状を作成します。本人は、署名捺印や記載内容の確認など、委任状作成における重要な役割を担います。委任状の記載内容に誤りがあっても契約は委任状に基づいて履行されてしまうので、気をつけましょう。
不動産売却で代理人を立てたい時は、ご自身の不動産を売却する時よりも難しいこともあると思います。代理人を立てて不動産を売りたいという方は、まずは不動産会社の担当者にそのことを相談するところから始めるといいでしょう。
参考1)使者とは?
代理と合わせて確認しておきたいのが「使者」という法律用語です。使者は、代理人同じように所有者以外が不動産売却を手助けしますが、代理人とは全く異なる存在です。
代理人は、あらかじめ決めた範囲で所有者に変わって法律行為を行うことができます。売却価格などの契約における重要な決め事に対する意思表示、交渉、意思決定を行うこともあります。
一方で使者は、根本的に関わることができません。交渉が行われた際にその内容を所有者本人に伝えることが使者の役割であり、意思決定を行うのはあくまで本人となります。
宅地建物取引業者が買主や売主の代理人となって売買活動などを代行することを代理契約といいます。媒介契約とは「契約締結の権限がある」という点で違います。
代理人に委任する際の注意点は?
委任状によって代理人とはいろいろな取り決めを交わします。万一、代理人が委任状の取り決めに反して権限を行使した時などはどのようになるのでしょうか。
委任範囲を超えてしまう「無権代理」
代理人が委任範囲を超えている場合や最初から代理権を持たない場合の行為を無権代理といいます。代理人の行為については本人が行ったものとされますが、無権代理に関してはこの限りではありません。原則として契約は無効となり、損害賠償に関しても責任を負いません。ただし無権代理人の行った行為を本人が了承すれば、行為を有効にできます。
「表見代理」で契約が有効になることも
買い手の立場では、無権代理で契約を無効にされてしまうと損害が生じるかもしれません。そこで、無権代理であることを偽っていたり委任範囲を購入者が知らなかったりする行為を表見代理といい、契約が有効になる場合があります。表見代理が認められてしまうと、売手に責任が生じることになるので、注意しなくてはいけません。
共有名義の不動産で代理人を立てる時の注意点
不動産を共有名義で所有している場合には、代理人に委任することが多いかもしれません。
相続した不動産の売却で立てる代理人
兄弟など複数の人で一つの不動産を相続した場合、売却をするためには名義人全員の同意を集める必要があります。全員が近くに住んでいるとは限らず、連絡を取りながら売却を進めるのは難しいかもしれません。そこで、委任状によって取り決めをした上で代表者(代理人)に任せれば、複雑な手続きも進めやすく可能性があります。
離婚による不動産売却で立てる代理人
離婚という特別な事情がある場合には、相手と顔を合わせたくないということもあるかもしれません。不動産の売却が決まると、共有名義の場合には名義人全員の立ち会いが求められることがあります。そこで司法書士などを代理人として立てて手続きを行えば、トラブルも少なく不動産売却を進めることができます。
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