不動産売却の注意点!売却前には必ず確認を。
土地や戸建て、マンションなど、不動産を売却する際には知っておくべき注意点がいくつかあります。
不動産会社に任せてしまっても進められますが、何も知らないまま売却が進んでいくことにはリスクがあります。場合によっては損失が出たりトラブルに巻き込まれたりするおそれがあります。
不動産売却に失敗しないために、知っておくべき注意点を紹介します。売主として知っておくべき基礎知識についても触れるため、これから不動産を売却する予定がある人は参考にしてください。
もくじ
不動産売却の注意点
細かい注意点を挙げるとキリがありませんが、ここで解説する注意点を押さえておけば大きな失敗につながる可能性は低いでしょう。
不動産会社はネームバリューで選ばない
不動産会社には、財閥系と呼ばれる大手から地域密着型の会社、1〜2人で経営している会社などさまざまです。
仮に、すべての不動産会社に一括査定サイトなどを通じて査定依頼した場合、同じような査定価格であれば大手に依頼をすると安心に思えます。しかし、ネームバリューで依頼する不動産会社を決めるのはリスクが高いです。
なぜなら、不動産会社には「売却依頼件数」という営業ノルマがあるためです。そして、会社の規模が大きいほど営業ノルマは厳しい傾向にあります。ノルマに追われていると、提案が売主に寄り添っていないことがあります。そのため、大手だからといって必ず安心できるわけではありません。
不動産売却は原則、どの会社に依頼をしても売却価格や売却期間にそれほど大きな差はありません。なぜなら、売却する不動産の情報は不動産会社が閲覧できるネットワークのレインズに掲載され、1件の売却物件を全国の不動産会社で顧客を探すことになるためです。つまり買主を探すのは売却を依頼した不動産会社だけでなく、全国各地の不動産会社です。
そのため、「弊社であれば高く売れます!」という言葉は営業トークの可能性が高く、注意が必要です。
このように、不動産会社を選ぶ際にはネームバリューではなく担当者の提案に根拠があるか、説明がわかりやすいかなどの「担当者の信頼度」によって決めることをおすすめします。
査定価格=売却価格ではない
不動産売却では、査定価格と売却価格は異なります。
たとえば、時計や貴金属を質屋に持っていった場合、提示された査定価格=売却価格になります。しかし、不動産における査定価格は周辺の成約事例や土地形状、築年数を考慮した「提案価格」であり、必ず売却できる価格ではありません。
査定依頼があった場合、依頼物件の情報をもとにレインズで周辺の成約事例を調査します。
もし依頼物件がマンションだった場合は、同じマンションの同じ階を調べるだけで査定価格を算出できます。マンションは個別要素が少ないため、売却価格に近い査定価格を提示してもらえるでしょう。
しかし、マンションではなく中古戸建てや土地であれば、築年数や土地の価値を調べる必要があります。そこで、国土交通省が公開している地価公示価格、そして一般の人でも閲覧できるSUUMOなどのポータルサイトの情報をベースに査定価格を算出します。
このように、不動産の種別によって多少の違いはあるものの、査定価格はあくまで提案価格だということを知っておきましょう。
査定価格=相場ではない可能性がある
すべての不動産会社が精度の高い査定価格を提示するのではなく、故意に相場より高い査定価格を提示することがあります。
これは、営業ノルマが関係しており、このような会社は売主にあたかも高く売れるような説明と査定価格を提示し、販売依頼を獲得する狙いです。販売依頼を獲得してしまえば、販売活動中に買主が見つからないといった理由で売却価格を下げていきます。
これだけであれば、通常の売却価格で進めることになるため、売主の損失はありません。しかし、こういった会社に依頼することで、営業を独占するためにほかの会社へ情報展開をしない「囲い込み」を行うリスクを抱えてしまいます。
囲い込みについては、下記コラムで詳しく紹介しています。
囲い込みをされると売却の機会が激減し販売期間が長期化してしまうため、売主にとって不利な売却となるでしょう。囲い込みは国土交通省も重く見ており、是正を強化することを発表していますが、なかなか減らないのが実態です。
そのため、誠実に対応してくれる不動産会社を選ぶポイントとして、説明に根拠がありわかりやすいという点を押さえましょう。そもそも査定価格の説明をするのは、宅地建物取引業法で義務として定められています。つまり、説明がない場合や「当社の経験上」など不明瞭な場合は注意が必要です。
このように、不動産会社を選ぶポイントとして「根拠の有無」と「説明のわかりやすさ」という点を覚えておきましょう。
販売完了時期を決める
不動産を売却する際には、いつまでに完了させるかという目標設定が重要です。
期間を設けずにスタートした場合でもスムーズに売却できることもありますが、期間設定することで反響数と価格の整合性を検証できます。つまり、売却先が見つからないときに次の対策を立てやすくなります。また、その期間内で売却を成立させようと、不動産会社も販売活動に力を入れてくれるでしょう。
そのため、不動産会社の活動が適正かどうかを知るためにも、売却スタート時に不動産会社と販売完了時期を決めておくとよいでしょう。万が一、大きな理由もなく計画どおりの売却ができない場合は、不動産会社を変えるなどの対応が必要となるでしょう。
売主としてやるべきことを知っておく
不動産の販売活動は、基本的に不動産会社へ任せきりとなりますが、売主として何もしなくてよいわけではありません。
マンションや中古戸建ての売却であれば部屋の中をキレイに整頓し、購入希望者が気持ちよく内覧できる準備をする必要があります。また、土地の場合は近所に売却することを伝え、土地の前面道路に不動産会社の車が停車する可能性があることを説明しましょう。
売却物件の整理整頓や近隣住民のあいさつ以外にも、登記識別情報通知や購入時の契約書を準備するなど、やるべきことは多いです。
売却をする前に必要な準備は以下のとおりです。
- マンション、中古戸建てであれば部屋の整理整頓
- 土地であれば近隣住民へのあいさつ
- 登記識別情報通知の準備
- 購入時の売買契約書、領収書の準備
- 物件の全部事項証明書の準備
- 町内会など、住民にしかわからない情報をまとめる
- 印紙代
- 実印
- 住民票、印鑑証明書
かかる税金を確認する
不動産を売却した場合、譲渡益に対して譲渡所得税という税金がかかります。譲渡益は不動産の購入価格よりも売却価格が上回ったときに発生します。たとえば、3,000万円で購入した不動産が5,000万円で売却できた場合は、譲渡益である2,000万円に対して税金がかかります。
譲渡所得税は、所有期間によって課税率が変わるという特徴があります。所有期間が5年以内であれば39.63%、5年を越える場合は20.315%が税率となり、譲渡所得が2,000万円の場合の譲渡所得税は以下のとおりです。
所有期間と税率 | 譲渡所得税(円) |
---|---|
5年以内(39.63%) | 約792万 |
5年超え(20.315%) | 約406万 |
このように、不動産を売却する際には販売価格から諸費用を差し引いた金額が手元に残りますが、利益が出た場合には譲渡所得税を納税する義務があることを知っておきましょう。
しかし、譲渡所得税は課税額を抑える特例と税率を抑える特例があり、適切に利用することで課税額を大きく減らすことができます。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」は円滑な不動産売買を促進するための特例です。この特例を利用することで譲渡所得税の課税額から3,000万円控除することができます。
そのため、3,000万円までの譲渡益は課税額をゼロにでき、譲渡所得税は免税にできます。なお、この特例を利用するためには以下のような要件を満たす必要があります。
- 自分が住んでいる家屋を売るか、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 親子や夫婦など特別な関係での取引でないこと
- 家屋を取り壊してから、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと
参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
一定の要件を満たすことで、長期譲渡所得の税額をさらに低い税率で計算できる特例があります。
マイホームを売ったタイミングで所有期間が10年を超えている場合、課税額が6,000万円以下の部分の税率を14.21%まで引き下げることができます。6,000万円を超える部分に関しては、長期譲渡所得の20.315%で計算がされます。
マイホームを売ったときの軽減税率の特例を受けるには以下のような要件を満たす必要があります。
- 売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること
- 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと
- 売った年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていないこと
譲渡所得税の税率は所有期間が5年と10年というタイミングで大きく下がるため、売却する際には必ず所有期間を調べることが重要です。
参考:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
手残り額のイメージと使い道を明確に
売却し諸費用を支払い、納税したあとに残った資金をどのように使うのかは、売却スタート前に決めておきましょう。
そうすることで、買主からの価格交渉に応じるかどうかをスピーディーに判断できます。手残り額や使い道をイメージしないまま進めてしまうと、売却途中で夫婦の意見が食い違い、話が白紙になるといったようなトラブルも起こりえます。
そのため、売却前には必ず家族で話し合い、最低でも残したい金額と使い道を決めましょう。
決定権者を確認しておく
不動産を売却する権利は所有者にありますが、決定権者が他にいる場合があります。
たとえば親と共有持分の土地を売却する場合、権利があるのは保有している持分だけとなります。つまり、不動産を完全に売却するためには親の合意が必要となり、親が誰かに相談して決めるのであれば、その人も説得する必要があるでしょう。
このように、不動産を売却するうえで許可が必要な決定権者については、事前に確認し、問題なく売却を進めてもよい状態でスタートさせましょう。
売却以外の方法がないかの確認
不動産の売却がスタートすると、思いのほか早くに買い手が見つかり、成約してしまうことがあります。
このようなケースは嬉しい誤算というべきですが、あまりにも早く売れてしまうと売主として心の準備がおいつかず、賃貸にだす方法や子どもに譲渡するケースなどを考えてしまうことがあります。
その結果、売却の決断ができずに販売が長期化することもあるでしょう。こうした失敗をしないためにも、売却をする際には「売却する以外の選択肢はない」という状態まで協議し、結論付けしておくことが重要です。
知っておきたい不動産売却の基礎知識
不動産売却をする前に、売主として基礎知識は知っておきましょう。ここで解説する3つのポイントを理解し、失敗のない不動産売却にしましょう。
諸費用がかかる
不動産の売却価格がすべて手元に残るわけではありません。次に挙げる諸費用は必ず発生するため、売却する物件がいくら必要なのかを事前に不動産会社に確認してきましょう。
諸費用項目 | 概要 |
---|---|
印紙代 | 売買契約に貼付する印紙の費用 |
登記費用 | 所有権移転、抵当権抹消の費用 |
仲介手数料 | 不動産会社に支払う手数料 |
解体費 | 建物を解体する場合に必要となる費用 |
土地測量費 | 土地の広さを明確にするために必要な費用 マンションは不要、中古戸建てと土地は必要となることが多い |
残置物処理費 | 家屋内の不用品を処分する費用 |
売却スタートから売買契約締結までは約3~6カ月
事故物件や旗竿地などの特殊な物件でなければ、約3〜6カ月で売買契約締結にいたります。
そのため、販売開始から3カ月を経過しても買主が見つからない場合は、売却方法や価格、不動産会社の対応について再協議しましょう。
不動産は適正価格と正しい販売方法ができれば、買主が見つかるまでそれほど時間はかかりません。つまり、売却できない場合は販売価格や販売方法に原因があるため、早い段階で対策することが重要です。
仲介と買取の違い
不動産を売却する際には、「仲介」と「買取」の2種類があります。それぞれの販売方法について特徴を理解し、適切に選択できるようにしましょう。
仲介
仲介は不動産会社に販売を依頼し、買主を探してもらう販売方法です。
買主は一般人であることが多いですが、不動産買取業者が買主となるケースもあります。そして、契約は売主と買主で締結することになり、引き渡し時には仲介手数料が発生します。
仲介で不動産を売却する際には仲介手数料がかかるうえに販売期間が読めないというデメリットがありますが、販売価格を設定できるため高く売却できる可能性があります。そのため、仲介を選択する売主は多いです。
買取
仲介は買い手が一般人もしくは不動産買取業者となる一方、買取は依頼した不動産会社が買主となります。
そのため、価格が合意した時点で契約に進むため、短期売却を目指せます。また、この場合は不動産会社が仲介をしているわけではないため、仲介手数料がかかりません。
ただし、売却価格は相場に対し約6〜7割になることがデメリットとしてあるため、注意が必要です。
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