マンションの修繕積立金が値上げ!払えないときに役立つ3つの対策
修繕積立金が突然値上げされると、家計に大きな影響を及ぼします。特に予算に余裕がない状況でこの負担が増すと、どう対応すべきか悩む方も多いでしょう。もし、修繕積立金の支払いができなくなった場合、どのようなことが起こるのでしょうか。
この記事では、繕積立金が支払えなくなったときに起こること、そして修繕積立金の値上げで困ったときに役立つ3つの対策を詳しく紹介します。家計を守りながらマンションの管理を続けるための具体的な方法を見つけ、不安を軽減していきましょう。
もくじ
令和5年度、計画時より修繕積立金が不足している割合は36.6%
画像引用:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」によると、長期修繕計画よりも修繕積立金が不足している、と回答した割合は全体の36.6%でした。
国土交通省では、マンションの長期修繕計画を5年ごとに見直すことを推奨しています。これに沿って、約60%のマンションが5年ごとを目安に見直しています。
しかし、修繕工事実施の直前や直後に見直しているマンションが約20%、見直していないマンションも約4%あるのが実情です。
画像引用:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」
また、現在では88.4%のマンション管理組合が長期修繕計画を作成していますが、1987年(昭和62年)時点では約70%と、計画を作成していない割合が全体の約3割でした。
さらに、25年以上の長期修繕計画にもとづいて修繕積立金を設定している割合は、2003年時点で約20%(2023年時点は約60%)と低い水準です。
そもそもの長期修繕計画の甘さが、修繕積立金が不足する一因といえるでしょう。
長期修繕計画は、マンションの新築当初に25〜35年程度を見越して作成することが多いですが、実際のマンションの耐用年数は50〜60年とされています。
築年数が経過するにつれて、エレベーターの修繕や外壁の補修など、修繕が必要な箇所が増えるため、当初の計画のままでは修繕積立金が不足する可能性が高いのです。
なぜ?マンションの修繕積立金が値上げになる理由
マンションでは新築時に長期修繕計画を作成し、将来の大規模修繕を見越して修繕積立金が試算されます。それにもかかわらず、修繕積立金が値上げになる理由は次のようなことが考えられます。
- 過去平均より修繕積立金額が低いから
- 修繕積立金の平均額が上がっているから
- 5年ごとに長期修繕計画の見直しを実施しているから
- 耐震診断の結果、耐震性がないと診断されたから
- 徴収方法が段階増額方式だから
国土交通省の調査「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」をもとに、詳しく解説します。
過去平均より修繕積立金額が低いから
画像引用:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」
2015年以降に建てられたマンションの修繕積立金は平均で1万1,405円と設定されていますが、これは過去の平均より低い水準です。
1985〜1994年に建てられたマンションの修繕積立金平均が1万3,163円、1995~2004年の修繕積立金平均が1万4,317円、2005~2014年が1万3,485円と、現在の平均額である1万1,405円を上回っているためです。
つまり、2015年以降に建てられたマンションの修繕積立金は、いずれ値上げしなければ不足するリスクがあります。
修繕積立金はマンションの管理組合や管理会社が決定します。最近では、管理会社が決定するケースが多く、マンション販売の際に毎月の支払額を少なく見せるために低い価格を設定することがあるのです。
その結果、購入時は過去平均より安い修繕積立金で済みます。しかし、大規模修繕が近づいたタイミングで、不足する費用を補うために大幅に値上げしたり、修繕積立一時金として数十万円から数百万円を徴収されたりするケースも起きています。
修繕積立金の平均額が上がっているから
画像引用:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」
同調査によると、マンションの修繕積立金は年々上昇しています。
1999年度の1戸あたりの修繕積立金は7,378円でしたが、2008年度には1万898円、2018年度には1万1,243円となり、2023年度には1万3,054円にまで増加しました。
修繕積立金は、マンションの新築時に将来の大規模修繕の費用を見込んで設定されます。しかし、人件費や資材費が上昇すると、その費用が当初の試算よりも高くなるため、修繕積立金の値上げが必要になるケースが多くなっています。
また、新しいマンションでは現在の物価にもとづいて修繕積立金が試算されるため、以前よりも平均額が高く設定される傾向があります。
5年ごとに長期修繕計画の見直しを実施しているから
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、長期修繕計画を5年程度ごとに見直すことを推奨しています。
マンションに一般的に使用される材料、設備等は、社会的な環境や生活様式の変化、技術の向上等に伴い、時代とともに変化していきます。また、修繕工事の内容や工法、修繕周期等についても、新しい工法や技術開発の進展等に伴い、異なるものとなります。本ガイドラインについては、こうした変化に対応したものとなるよう、引き続き、できるだけ多くの長期修繕計画の事例収集等を積み重ねながら、5年程度ごとに見直しについて検討を行うこととしています。
引用:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
同調査でも、約63%のマンションが長期修繕計画を「5年ごとを目安に定期的に見直している」と回答しました。
画像引用:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」
マンション新築当初は25〜35年間を見据えた長期修繕計画を作成し、修繕積立金を試算します。しかし、実際には50〜60年使用するマンションも多く、30年前後の計画では想定していなかった修繕箇所が発生するなど、定期的な見直しが必要になります。
マンションを使用する年数が長くなるほど、当初の想定にはなかったエレベーターの工事や外壁の工事、配管の改修などさまざまな修繕が必要です。このため、従来の修繕積立金では足りず、値上げを決断しなければならないのです。
耐震診断の結果、耐震性がないと診断されたから
1981年(昭和56年)に「新」耐震基準が導入される以前に建てられた、「旧」耐震基準のマンションは、耐震性能が低い傾向にあります。実際に旧耐震基準のマンションのうち、約30%が耐震診断を行い、そのうちの25%が耐震性なしと診断されています。
画像引用:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」
耐震診断を行い、耐震性なしと診断された場合は耐震化を検討する必要があり、耐震改修と建て替えの2つの方法があります。
耐震改修の方法には、外部補強による方法や柱の補強、開口部の補強などがあります。マンションの構造と費用、居住者への影響などを加味して内容を決定しますが、いずれにしても多くの費用がかかります。
実際に、耐震性なしと診断されたマンションのうち、耐震改修を実施したとの回答は50%未満でした。
画像引用:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」
新築当初の修繕計画には耐震改修が含まれていないため、実際に行う際は、修繕積立金の値上げや修繕積立一時金を求められるケースもあります。
徴収方法が段階増額方式だから
マンションによっては、最初から修繕積立金を段階的に値上げする「段階増額積立方式」を採用している場合もあります。
マンションの修繕積立金を徴収する方法は次の2つです。
- 均等積立方式
- 段階増額積立方式
1994年頃までは均等積立方式が一般的でしたが、1995年以降に建てられたマンションで徐々に段階増額積立方式の割合が高まりました。2015年以降に建てられたマンションでは、約80%以上が段階増額積立方式を採用しています。
画像引用:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」
均等積立方式では、マンション新築の段階で試算した修繕積立金を均等に割ります。
一方、段階増額積立方式では、新築当初は修繕箇所が少ないため修繕積立金も低く、築年数が経過するに従って段階的に高くなっていきます。新築当初は費用が抑えられますが、居住者は資金計画を立てにくく、滞納につながる危険性もあります。
令和5年度、修繕積立金または管理費の滞納(3カ月以上)が発生している割合は約30%
画像引用:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」
同調査によると、2023年度は修繕積立金または管理費の滞納が3ヶ月以上発生しているマンションが約30%ありました。また、完成年次が新しくなるほど滞納の割合が少なく、古いマンションほど滞納している人が多い傾向にあります。
これは、平均寿命が長くなったことが原因のひとつと考えられます。築年数の古いマンションに住んでいる人の高齢化が進み、老後の資産が不足して支払えなかったり、資産の管理能力が衰えてしまったりして滞納が増えているのでしょう。
また、核家族化が進み、別世帯で暮らす子世帯も両親が修繕積立金を滞納していることに気づかないことも一因です。
値上げ後、修繕積立金が払えなくなるとどうなる?
マンションの修繕積立金が値上げされ、払えなくなると次のようなことが起こります。
- 管理会社による督促(とくそく)
- 管理組合の理事会と滞納者による話し合い
- 内容証明郵便による督促と差し押さえの催告
- 簡易裁判所による資産の差し押さえと競売
以下で詳しく解説します。
督促(とくそく)を無視すると話し合いを求められる
マンションの修繕積立金の滞納が起こると、まず管理組合が滞納状況を確認します。これにより、管理会社が文書や電話、直接訪問するなどの方法で修繕積立金を支払うよう督促します。
ここで、督促に従って修繕積立金を支払えば良いですが、督促を無視して滞納を続けた場合は管理組合と滞納者との話し合いへ移ります。話し合いでは、修繕積立金の支払時期や今後の措置について話し合われます。
このままだと差し押さえますよ!と内容証明郵便が届く
話し合いのあとも修繕積立金を支払うことなく滞納が続く場合、管理組合は裁判に向けて法的措置を取ることになります。この手続きが開始されると、自宅に内容証明郵便が届きます。
内容証明郵便の中身は「催告書(さいこくしょ)」と呼ばれるもので、次の内容が書かれています。
- 最終的な支払期日
- 修繕積立金の支払いがない場合、競売が強制執行される
内容証明郵便は、郵便局が発送の日時や内容を記録し、証明するものです。そのため、「受け取っていない」などの言い逃れはできません。
最悪、差し押さえられて住めなくなる
内容証明郵便による催告書を受け取っても、滞納している修繕積立金を支払わない場合は、債権者(管理会社など)が簡易裁判所に強制執行を申し立てます。
簡易裁判所が強制執行の開始を決定すると、滞納者の資産を差し押さえる手続きを行い、マンションは競売にかけられます。
競売が決定すると、簡易裁判所から競売開始の通知が届きます。
競売開始が決定してから、6カ月〜1年後には落札者が決定し、強制執行日までには退去しなければなりません。また、競売の申し立てにかかる費用は債務者が負担する必要があります。
マンションの修繕積立金が払えないときにしたい3つの対策
マンションの修繕積立金は、当初は1万円以下だったものが約4万円まで値上がりした事例もあります。支払う意思があっても、値上がりによってマンションの修繕積立金をどうしても払えない場合の、3つの対策について解説します。
支払期日が迫っているなら一時しのぎで資金援助してもらう
修繕積立金の支払い期日が迫っていて、支払いの延期や分割払いの相談ができない状況であれば、一時しのぎですが両親や子などに資金援助してもらい、ひとまず期日どおりに納めるのが良いでしょう。
今回のみ支払いができず、次回以降は支払いの目処(めど)がたつ場合に有効な方法です。家族に資金を用立ててもらうのは心苦しいですが、そのまま延滞すれば遅延損害金なども発生するおそれがあるため、できる限り期日どおりに支払ったほうが良いでしょう。
払えないとわかった時点で管理会社に相談する
マンションの修繕積立金が払えないとわかった時点で、まずは管理会社に相談しましょう。管理会社にすぐに連絡することで、支払いの意思があることを示せます。
また、相談しておくことで、即法的措置に移行することを避けられる可能性があります。
督促があってから、後出しで相談しても支払いの猶予相談を聞いてもらえなかったり、支払いの意思がないと見なされたりするリスクがあるため、まずは管理会社へ報告することが大切です。
延期や分割払いの交渉をする
マンションの修繕積立金が支払えない場合は、なるべく早く、支払期日の猶予や分割での支払いについて管理会社と交渉しましょう。
早急に相談することで支払う意思があると判断され、要望を聞いてもらえる可能性が高まります。
住宅ローンの返済などと違い、修繕積立金の支払いを猶予してもらうことで信用に傷はつきません。
管理会社が承諾してくれれば延期や分割が可能なため、今回のみ支払いが厳しいなどの場合に有効な方法です。
長期的に見て支払いがしんどいなら売却も視野に
出費が重なり、一時的に値上げした修繕積立金が支払えない場合は、支払いの猶予や分割払いの相談を早急に行うことが大切です。
しかし、今後も修繕積立金の支払いが厳しい状態が続く場合は、早めにマンションの売却や住み替えを検討しましょう。
滞納が続き、資産の差し押さえや競売になってしまうと、相場よりも安く買いたたかれてしまいます。その結果、競売でマンションを売却しても、売却して得た資金は修繕積立金の滞納分の支払いに充てられ、住宅ローンの残債があった場合でも完済できないなどの事態が起こります。
また、滞納期間が長くなるほど、修繕積立金の遅延損害金が増えてしまいます。
売却を視野に入れる場合は、まずはマンションがいくらで売れるのか相場を知るため、なるべく早急に複数社に査定を依頼しましょう。
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