更地の固定資産税は木を植えると安くできる?ほかの節税方法もチェック
更地は住宅のある土地と違い、固定資産税の軽減措置を受けられません。固定資産税を軽減するために、農地へ地目を変更する方法があります。そのために、さらに木を植えればよいという話があるのですが、そんな簡単なことで地目変更ができるのでしょうか。更地に木を植える噂の真相と、固定資産税を安くする方法を見ていきましょう。
もくじ
更地に木を植えただけでは固定資産税は安くならない!
更地の所有者にとって、固定資産税の支払いは大きな悩みの種です。特に利活用を検討中の段階や、当面使用予定のない土地を所有することになった場合はなおさらです。しかし「更地に木を植えておけば、固定資産税が安くなる」という噂を信じて、木を植えようとするのは思いとどまってください。木を植えれば固定資産税が安くなるというのは誤解で、更地に木を植えただけで自動的に減額されることはありません。
更地(宅地)と比較して農地の固定資産税が低いため、そういった誤解が生まれたのでしょう。確かに正式に農地として認定された土地の固定資産税は大幅に軽減されます。しかし、宅地を農地に転用する場合や、逆に農地を宅地に戻す場合は、多くの条件を満たして複雑な手続きを行う必要があります。土地に木を1本植えただけで翌日から固定資産税が安くなる、ということはありません。
更地に木を植えて固定資産税を安くするには
更地に木を植えると固定資産税を軽減できるというのは、誤解を招きやすい表現です。実際には「ただ木を植えればよい」という単純なものではありません。正確には、果樹などを植えることで農地への転用が認められ、その結果として固定資産税が軽減される可能性がある、となります。
つまり、単に果樹を植えることだけでは不十分で、土地の使用目的を示す用途を正式に変更しなくてはなりません。そのためには、農地に認定されるための厳格な条件を満たし、適切な手続きを踏む必要があります。土地の用途変更が正式に認められてはじめて、固定資産税の軽減につながります。
更地が農地なら固定資産税が安くなる
農地として認定された土地は「農業以外の用途では使用できない」ため、住宅として使用する場合や売却をするときは農業委員会の許可が必要です。これは農家を優遇し、日本の食料自給率を高めることを目的とした政策に起因しており、用途を制限する代わりに税率を下げているのです。 そのため、ただの更地と比べて固定資産税が大幅に軽減されることになります。
一方で農地として認められるには、厳格な条件を満たし、適切な手続きを行う必要があります。
農地として認められる条件
更地を農地として使用すること自体は制限されていませんが、単に果樹を植えたり畑として耕したりしただけでは固定資産税が軽減されません。農地法では「耕作の目的に供される土地」を農地として定義しています。これは、明確な耕作の実態があり、土地の大半が実際に農業経営のために使用されていることを意味します。更地に木を1本植えるだけでは、農地としての要件を満たさないのです。
土地には主に住宅を建築する宅地や、農業を営むための農地など、さまざまな「地目」が定められています。地目を農地とするためには、土地の約80%近くを栽培面積として使用していなければ、農地として認められない傾向にあります。つまり、固定資産税の軽減を目的に更地を農地へ変更するには、実際に相当規模の農業経営を行う必要があるのです。
農地の種類
農地として分類される土地は、一般的に「一般農地」と「市街化区域農地」の2種類に大別されます。さらに、市街化区域農地は3つのカテゴリーに細分化されるため、実質的には4種類の農地が存在します。
種別 | 固定資産上の扱い | |
---|---|---|
一般農地 | 農地 | |
市街化区域農地 | 生産緑地 | 農地 |
一般市街化区域農地 | 宅地同等 | |
特定市街化区域農地 | 宅地同等 |
特に注目すべきは、市街化区域農地における「一般市街化区域農地」と「特定市街化区域農地」です。これらのふたつの農地では、通常の農地の課税計算式が適用されず、それぞれに定められた特定の税率が課されます。結果として課税額が一般的な更地とほぼ同等になることがあり、農地転用によるメリットが大幅に減少します。固定資産税のために農地転用するのであれば、デメリットが大きくなるといえるでしょう。
一般市街化区域農地と特定市街化区域農地は主に市街地、つまり都心部や大都市近郊に指定される区域に存在します。したがって、固定資産税の節税を目的として農地転用を検討する場合、実質的な対象地域は市街化区域外に限定されるといえるでしょう。
農地へ地目を変更する
更地を農地に変更する場合、主にふたつの重要な手続きが必要となります。ひとつは農業委員会による農地証明の発行、もうひとつは法務局での地目変更です。そのため、農地の変更を考える場合は、地域の農業委員会へ事前に相談するとよいでしょう。なお法務局での地目変更手続きには、次の書類が必要となります。
- 土地地目変更登記申請書
- 住民票または戸籍謄本などの身分証明書
- 農地であることが明確にわかる現地写真と、位置を示す資料
地目変更の手続きは、農地に変更した日から1カ月以内に行わなければなりません。この期限を過ぎると、10万円以下の罰金が科されることがあるため注意しましょう。
注意!更地の固定資産税は高くない
更地の固定資産税が高いと認識されていますが、実際には農地や住宅用地に適用される特例措置が更地には適用されないため、相対的に高く感じられるのです。土地の固定資産税は、次の計算式で算出します。
固定資産税=固定資産の評価額(課税標準額)×標準税率(1.4%)
一般農地であれば、この計算結果に対してさらに3分の1となる特例措置が適用されるため、税額が大幅に軽減されています。したがって、更地に課せられる固定資産税が「高い」のではなく、農地や住宅用地などほかの用途の土地における固定資産税が特例により「低く抑えられている」と考えるのが適切です。更地はこれらの特例措置を受けないため、本来の計算式にもとづいた税額が課されているに過ぎません。
更地の固定資産税を安くする方法
更地の固定資産税負担を軽減するには、主にふたつの方法が考えられます。ひとつは地目を変更すること、もうひとつは建物を建築することにより、特例措置による税額の減額を受けることです。しかし、農地に転用したあとに再び宅地に戻す場合や、建物を建てたあとに取り壊す場合など、手続きや費用面で大きな負担が生じるおそれがあります。そのため、農地への転用は十分な計画性を持って進めることが重要です。
農地にする
地目を農地にすることで、固定資産税を大幅に軽減できるメリットがあります。一方で、果樹の植栽や農具の初期投資が必要となり、また継続的な農作業の実施も求められます。さらに、農地からの用途変更には農地法による制限があることにも注意が必要です。
家を建てる
更地に住宅を建てることで、固定資産税を軽減することが可能です。特例措置により固定資産税が住宅用地が200㎡以下の部分は固定資産税が6分の1、200㎡を超える部分が3分の1に軽減されます。建設した住宅を貸し出し、家賃収入を得てもよいでしょう。
集合住宅を経営する
アパートなどの集合住宅経営は多額の初期投資を要しますが、固定資産税を軽減できるうえに、家賃収入を得られるようになります。空室リスクや維持管理にかかる労力・費用といった課題はありますが、固定資産税の軽減と安定収入というふたつのメリットがあります。
活用する予定のない土地は売却する
活用予定のない土地であれば農地転用などで固定資産税を軽減するより、思い切って売却してしまうことをおすすめします。土地を売却してしまえば管理する手間がかからず、まとまった現金を受け取れるメリットがあるのです。固定資産税もかからなくなります。
土地を売却するときは、複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。複数社の査定価格を比較することで、所有する土地の市場価格を把握できます。まとめて査定を依頼してもらうときは、一括査定サイトの「リビンマッチ」が便利です。土地の情報を一度入力するだけで、複数の不動産会社へ査定を依頼できます。まずは査定を依頼し、土地の価値を調べてみましょう。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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