マンションの登記簿謄本を取得する方法と書類の読み方をわかりやすく解説!
登記簿謄本(登記事項証明書)を見ると、マンションのさまざまな情報がわかります。マンションの売買をするときは、登記簿謄本を忘れずに確認しましょう。マンションの登記簿謄本について、取得方法からチェックするポイントなどをまとめて解説します。
もくじ
マンションにおける登記簿謄本の重要性
登記簿謄本はマンション売却にともなう所有権移転の登記の際に、所有権や抵当権の現状を示す根拠書類として利用されます。ここでは、マンション売却時に登記簿謄本が果たす役割を詳しく解説します。
マンションを売却するときの必要書類のひとつ
マンションを売却すると、売主から買主へ所有権が移ります。建物の所有権は登記で表すため、マンションの売買をしたときに所有権移転登記の手続きをします。登記簿謄本は、このタイミングで必要です。また、抵当権が設定されている不動産は、売却ができません。登記簿謄本には所有権だけでなく抵当権に関する情報の記載もあり、売却するマンションに抵当権がついていないことを証明できます。
物件を所有していることを証明する
登記簿謄本は、不動産の所有権を主張するときに利用できます。マンションの一室を売却するときは、ほかの所有者と自分の区別をつけることが重要です。そこで一部事項証明書を用意し、売却する部屋の所有権が自分にあることを証明します。登記簿謄本は誰でも閲覧できる書類であり、買主以外の第三者が取引に介入したときでも自身の所有権の公(ルビ:おおやけ)に主張することが可能です。公共性の高さが、登記簿謄本の強みといえます。
物件の正確な情報を確認できる
所有権以外の権利関係を知りたいときに、登記簿謄本が役立ちます。売却するマンションの権利状態は、契約の前に売主・買主の双方が把握しておくことが大切です。権利状態が明確であれば、トラブルの防止につながります。登記簿謄本があれば、抵当権設定の有無や共同保有者の有無、持分比率の内訳など、細かな権利関係の確認が可能です。抵当権や共同保有者の有無は、マンション売却の成否に直結するため、入念なチェックが必要です。
権利関係を明確にする
登記簿謄本に記載されている情報をもとに、自分が不動産に対して持っている権利を公に主張できます。所有権や抵当権、共有持分など、あらゆる情報の証明が可能です。全部事項証明書があれば過去の所有権移転登記や抵当権抹消登記も含めて、マンションの購入から売却に至るまでの手続きに関係する権利を、すべて証明できます。権利関係を明確にできればマンションの買主から信用を得やすく、スムーズな取引に役立つでしょう。
敷地権に関する記載内容を理解する
登記簿謄本には、敷地権に関する記載があります。敷地権とはマンションやアパートなど、区分建物と呼ばれる集合住宅で適用される権利のことです。建物全体の敷地面積に対して、保有個数や専有面積の割合に応じて各部屋の所有者に土地利用の権利が与えられます。区分建物の登記簿謄本を取得すると、敷地権の対象である部分の面積や割合など、敷地権に関する情報を収集できます。敷地権は売却時の査定に影響するため、売主が内容を理解しておくことが重要です。
マンションの登記簿謄本とは
登記簿謄本とは、不動産の所有者や権利関係の情報を記載した書類です。現在は登記簿謄本に代わって「登記事項証明書」の名称が用いられていますが、この記事では主に「登記簿謄本」を用います。記載事項の種類や閲覧の手続きなど、登記簿謄本の基礎知識を解説します。
マンションの情報が記載された書類
登記簿謄本には、マンションや土地などの、不動産と所有者に関する情報が記載されています。不動産の売買取引をするには権利関係の把握が必要で、そのときに登記簿謄本が役立ちます。登記簿謄本の記載内容は、不動産の所在地と地番、所有者の住所、氏名などです。権利の移転があったときは、その履歴も記載されます。登記簿謄本を用意しておけば、不動産の所有者は自らが持つ権利を第三者に対して主張できます。登記簿謄本は、不動産を安全に取引するために重要な書類なのです。
どのような情報で構成されているのか?
登記簿謄本の文面は、表題部、権利部甲区、権利部乙区の3部門で構成されています。表題部は、不動産の物的状況を記載する部門です。不動産の所在地、地目、面積など詳細な状況を示します。権利部甲区では、所有権に関する情報が記載しています。所有者の住所氏名や登記の目的、所有権の取得年月日などです。権利部乙区には抵当権や根抵当権など、所有権以外の権利情報が記載されています。
現在の名称は登記事項証明書
現在、登記簿謄本は登記事項証明書に名称が変わっています。デジタル技術の発展にともない、以前は紙で管理していた登記簿謄本が電子化され、オンラインでの閲覧が可能になるとともに名称が変更されました。変更されたのは名称のみで、内容や記載事項は従来と変わりません。そのため、不動産売買の取引や手続きの場面では、現在も登記事項証明書のことを登記簿謄本と呼ぶことがあります。
登記簿謄本を閲覧できる人は?
登記簿謄本は、誰でも取得・閲覧が可能です。不動産の所有者本人や家族などの関係者だけではなく、取引と関係のない第三者も閲覧・取得できます。登記簿謄本を取得するには、交付申請書の提出が必要です。更新誓書の提出は郵送や法務局窓口のほか、オンラインでも行えます。交付申請をすると、登記簿謄本を郵送または法務局窓口のいずれかで受け取れます。取得にかかる手数料は、窓口での申請よりもオンラインからの申請のほうが安価です。オンラインは受付時間が長く、窓口に行く時間が取れないときに便利です。
登記簿謄本のチェックポイント
登記簿謄本を取得したときに、押さえておきたいポイントを紹介します。特にマンションの売却が目的のときは、敷地権や差押登記、抵当権など権利関係の確認が重要です。
敷地権と非敷地権
マンションのような区分建物の権利形態は、敷地権と非敷地権の2種類に分類可能です。どちらが設定されているかは、登記簿謄本の表題部に記載されています。敷地権は建物にあたるマンションと建設に用いた土地を、一体として登記している形態を表します。それに対して非敷地権は、建物と土地の登記が分かれている形態です。非敷地権のマンションを売却するときは、建物と土地を分離して売却する必要があります。多くのマンションでは敷地権が設定されていますが、念のため確認をおすすめします。
差押登記や仮登記の確認
マンション売却時は、物件に差押登記や仮登記がなされていないかを確認します。これらの情報は、登記簿謄本の権利部(甲区)に記載されています。差押登記は不動産に差し押さえの処分が下されたことを示し、競売の手続きが開始されていることを意味する登記です。所有者による金銭債務の滞納が、差し押さえ処分の原因です。差押登記を解除するには、残債を一括で返済する必要があります。仮登記は登記に必要な書類が揃っていないときや、買主が物件の所有を予約したときに利用されます。条件が揃えば、本登記への移行が可能です。
抵当権が設定されているか
抵当権が設定されたままでは、マンションの売却はできません。マンションを購入するときに住宅ローンを組むと、その物件を借入金の担保にして抵当権が設定されます。この抵当権の権利者は、住宅ローンの債権者である金融機関です。売主本人が以前に購入したマンションであれば、住宅ローンの返済状況や抵当権登記の状態を把握しています。相続したマンションでは、売主が抵当権の存在を知らないおそれがあるため、事前の確認が大切です。
抵当権の抹消手続き
抵当権の登記を抹消するには、住宅ローンの完済が必要です。ただし、住宅ローンを返済し終わると自動で抵当権が抹消されるわけではなく、抹消の登記手続きが必要です。登記申請書のほかに、抵当権者である金融機関から送付される書類をあわせて法務局に提出します。申請書の作成や書類の管理に不安があれば、司法書士への依頼がおすすめです。
登記簿謄本の種類
登記簿謄本には4つの種類があり、それぞれ記載されている情報が異なります。不動産取引の目的や用途に合わせて、適切な種類の書類を取得しましょう。ここでは、各登記簿謄本の概要を解説します。
全部事項証明書
全部事項証明書は、不動産に関する過去の情報すべてが記載されている登記簿です。過去の所有権や抵当権など権利関係の履歴が網羅され、所有者の情報もすべてわかります。必要な情報がすべて網羅されているため、全部事項証明書だけ用意しておけばほぼすべての場面で対応できます。ただし後述する「閉鎖事項証明書」の情報は、一部記載されていないケースがあるため注意が必要です。
現在事項証明書
現在事項証明書は、発行の時点で効力を持っている事項だけを記載した書類です。過去の所有者に関する情報や、抹消された抵当権の情報などは省略されています。取引時点での権利関係だけを明らかにしたいときは、現在事項証明書だけで足ります。必要な情報だけが記載されているため、全部事項証明書より内容を読み取りやすいことが利点です。また、過去に権利関係でトラブルが発生していた場合、その情報を省略した現在事項証明書を提示することでイメージの悪化を避けられます。
一部事項証明書
一部事項証明書は該当の不動産から一部分の区画を指定し、その部分の情報だけを記載した書類です。ひとつの不動産に多数の権利者が存在するケースは全部事項証明書だと記載事項が多く、読解に手間がかかります。一部事項証明書を利用すると、必要な部分だけの情報収集が可能です。マンションの売買取引では、一部事項証明書がよく利用されます。所有する一室のみを売却したいとき、その部屋の情報のみを閲覧できて便利です。
閉鎖事項証明書
閉鎖事項証明書には、全部事項証明書に記載されていない過去の情報が載っています。「閉鎖」とは、なくなった建物や合併された土地など、今後新たな登記が発生しない不動産に付与された登記の状態です。また、デジタル化にともない、紙媒体の謄本も閉鎖の対象とされました。全部事項証明書でも収集しきれない過去の不動産履歴を集めたいときや、すでに滅失している建物の情報が欲しいときは閉鎖事項証明書が有効です。
マンションの登記簿謄本を取得する方法
ここでは、登記簿謄本を取得するまでの流れを紹介します。登記簿謄本の取得申請をする前に、該当のマンションを識別する情報と取りたい登記簿の種類を把握しておくことが大切です。そのうえで、法務局窓口、郵送、オンラインの3つから都合のよい申請方法を選びましょう。
登記簿謄本を取得する準備
登記簿謄本の取得準備として、売却するマンションの地番や家屋番号を把握します。地番や家屋番号は、マンションの購入時に使用した登記簿謄本や、固定資産税・都市計画税の納税通知書などで確認可能です。地番や家屋番号が把握できたら、交付申請書を記入・提出します。交付申請書には地番や家屋番号など、登記簿を取りたいマンションの詳細情報に加え、現在事項証明書や一部事項証明書など必要な登記簿の種類を記入します。
取得方法の種類ごとにかかる費用・支払い方法
交付申請書の提出には、次の方法があります。
- 法務局の窓口で提出
- 郵送で提出
- オンラインで提出
それぞれの手数料と支払い方法、書類の受取方法と所要時間は、次の表を参考にしてください。
法務局の窓口 | 郵送 | オンライン | |
---|---|---|---|
手数料 | 600円 | 600円 | 郵送受取は500円、窓口受取は480円 |
支払い方法 | 申請書に収入印紙を貼付 | 申請書に収入印紙を貼付 | インターネットバンキングやATM |
受取方法 | 法務局の窓口 | 法務局から郵送 | 郵送または法務局の窓口 |
所要時間 | 申請当日に入手可能 | 申請後数日〜1週間で到着 | 郵送では翌日以降、窓口では申請後数時間 |
おすすめは、手数料の安いオンラインからの申請です。
法務局の窓口で取得する
法務局の窓口で申請すると、その場で登記簿謄本を取得できます。マンション売却の手続きまでに時間の余裕がなければ、窓口での申請がおすすめです。法務局の窓口で取得するには、まず法務局で交付申請書を受け取ります。次に必要事項を交付申請書に記入し、発行手数料600円分の収入印紙を貼ります。収入印紙は法務局で購入できます。交付申請書を窓口に提出すれば、手続きは完了です。窓口で登記簿謄本を取得できます。発行までの所要時間は、法務局の混雑状況によりますがおおよそ10〜20分が目安です。
郵送で申請する
郵送で申請すると、法務局から登記簿謄本を返送してもらえます。自宅や職場が法務局から離れていたり、登記簿謄本の用意まで時間に余裕がある場合におすすめです。交付申請書は、法務局のWebサイトからダウンロードできます。印刷して必要事項を記入し、収入印紙600円分を貼付すれば書類の用意は完了です。郵送するときは送付する封筒に加え、同封する返信用封筒にも切手を貼ります。郵送完了から返送までにかかる期間は、数日から1週間ほどです。
オンラインでも申請が可能
オンラインでの申請は、手続きの手間と費用を削減できます。法務局の「かんたん証明書請求」サービスが、オンライン申請用の窓口です。このサービスの利用には申請者情報登録をする必要があります。画面の案内に従って、不動産情報の入力や手数料納付の情報を入力し、申請を進めます。受取方法は、法務局窓口と郵送の2つから選択可能です。オンライン申請は、手数料がほかの取得方法よりも安いのが特徴です。特に法務局窓口での受け取りは、最安値の手数料480円で登記簿謄本を取得できます。
参考:登記ねっと 供託ねっと「かんたん証明書請求」
登記簿謄本の読み方
マンションの登記簿謄本には、表題部とふたつの権利部に加え、共同担保目録を記載することがあります。マンション売却時には、すべての記載事項と読み方を把握しておくことが大切です。ここでは、登記簿謄本に記載されている内容の読み方を解説します。
表題部
表題部には、家屋番号や地番、建物の概要など、物件の基本情報が記載されています。次の表で、マンションを想定した表題部の記載内容を紹介します。
記載の区分 | 主な記載内容 |
---|---|
一棟の建物の表示 | マンション一棟の所在地、名称、構造、床面積 |
敷地権の目的である土地の表示 | マンションが建てられた土地の地番、地目、面積 |
専有部分の建物の表示 | 自身が所有する部屋の家屋番号、名称、構造、床面積 |
敷地権の表示 | 専有部分に付与された敷地権の種類、割合、所有者 |
売却するマンションの所有分のみ登記簿謄本を取得すると、表題部に4つの区分が記されます。4つの区分を大きく分けると、マンション全体に関する情報が「一棟の建物の表示」と「敷地権の目的である土地の表示」の2項目、所有部分に関する情報が「専有部分の建物の表示」と「敷地権の表示」の2項目です。
権利部(甲区)
権利部(甲区)には、マンションの所有権に関する情報が記載されています。現所有者である、売主本人の情報が記載される場所です。具体的な記載内容は、現所有者の住所や氏名、所有権に関する登記の目的、取得年月日です。登記の目的は、所有権の移転や保存など、所有権がどのように動いたかを示すもののため、過去の所有者情報も記載されます。権利部(甲区)の内容をもとに、売主はマンションの所有権を公に主張できます。
権利部(乙区)
権利部(乙区)は、所有権以外の権利関係を記載する区分です。甲区と同様に、登記の目的や権利者の氏名が表示されます。マンションの登記簿謄本では、主に抵当権の設定や抹消に関する登記情報が記載されます。たとえば、購入時に住宅ローンを組んでいたときは、ここに抵当権設定の履歴が表示されており、借入金額や借入先の金融機関を確認できます。抵当権は、マンション売却前の抹消が必要です。抵当権がすでに抹消されている事実を示すには、権利部(乙区)を提示します。
共同担保目録
共同担保目録は、ひとつの抵当権で担保にかけられている不動産の一覧表です。登記簿謄本の交付申請書には共同担保目録への記載を希望する記入欄が設けられており、権利部(乙区)と合わせて担保に関する情報がわかるようになっています。記載内容は、担保に入っている不動産の所在地や地番、抵当権の優先順位です。マンションの登記簿謄本では駐車場棟、管理人室、集会室など共有する部分が担保に入れられるケースが多く、それらが共同担保目録に記載されます。
売却するときはマンションに強い不動産会社へ相談を
不動作会社ごとに得意としている分野があるため、マンションを売却するときに近所の不動産会社へ相談してもうまくいかないことがります。マンションの売却に強い不動産会社を見つけるなら、一括査定サイトの「リビンマッチ」を利用しましょう。
売りたいマンションの情報を入力すれば、対応できる複数の不動産会社が査定をしてくれます。サポートの手厚い会社、早く売るのが得意な会社など、不動産会社もさまざまです。信頼できる不動産会社を見つけて、マンションを高く、早く売却しましょう。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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