土地売却で知っておくべき分離課税の基礎知識
土地を売却すると、そこから得た所得に対して税金がかかります。
土地売却は多くの場合、高額な取引となるため、税金も大きくなりがちです。税金について十分な知識がないと、予想外の負担につながるリスクがあります。
土地の売却にかかる所得は分離課税となり上手に活用すれば節税につながるメリットもあるので、理解を深め適切な準備ができるようにしましょう。
もくじ
分離課税とは?土地の売却にかかる税金の仕組み
所得に対してかかる税金は、「総合課税」と「分離課税」という2つの計算方式があります。
所得には、給与所得や事業所得などの種類別に分けられますが、それぞれの所得金額を合算して課税されるのが総合課税です。合算した金額が大きい(所得が高い)ほど、かけられる税率が高くなり、税額が高くなる仕組みです。
一方、ほかの所得とは分けられて課税されることを分離課税といいます。土地を売却して利益が出た時や退職金を一時金で受け取った時などは、一時的に大きな所得が発生した特殊な状況であることから、分離課税になります。
分離課税であれば、土地の売却によって所得が高額になっても、他の所得と合算されて高い税率(総合課税は最大で45%)が適用されるのを防げます。
なお、不動産運用による家賃収入は、不動産所得となり総合課税の対象です。
土地売却にかかる税金の計算方法
土地売却にかかる税金について、具体的な計算方法を確認していきましょう。
納税額は、土地を売却して得た収入から、その土地を取得した時の経費と売却した時の経費を差し引いた金額(譲渡所得)に一定の税率をかけて計算します。
まずは、以下の計算式で譲渡所得を求めます。
取得費と譲渡費用が多いほど譲渡所得を減らせるので、モレなく算入することで節税につながります。
取得費は、土地を取得する時にかかった費用になり、譲渡費用は、土地を売却するために直接かかった費用です。
取得費 | 譲渡費用 |
---|---|
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|
注意点ですが、土地の取得時の費用については、ずいぶん前のことなので詳細がわからない、書類が見つからないといったこともありえます。
その場合は売却金額の5%を概算取得費としてカウントできます。売却金額の5%を算入することで少しでも課税される金額を減らしましょう。
税率は土地の所有期間で変わる
譲渡所得が求められたら、その金額に税率をかけていきます。
税率は土地の所有期間によって以下のようになります。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
---|---|---|---|
5年超 (長期譲渡所得) |
15.315% (復興特別所得税0.315%を含む) |
5% | 20.315% |
5年以下 (短期譲渡所得) |
30.63% (復興特別所得税0.63%を含む) |
9% | 39.63% |
相続で土地を取得した時は、被相続人の取得した時期がそのまま相続人に引き継がれます。
なお、所有期間は売却した年の1月1日時点で区分されます。実際の所有期間ではない点に注意が必要です。
土地の売却にかかる税額のシミュレーション
土地を売却したらどれくらいの税金がかかるのか、具体的な数字をあてはめて計算してみましょう。
譲渡所得が600万円だと仮定すると計算式は、譲渡所得税 = 600万円 × 税率になります。
土地の所有期間別の税額は下の表のようになります。
税率 |
税額(所得税・住民税・ 復興特別所得税) |
|
---|---|---|
短期譲渡所得 (土地を売却した年の1月1日時点の所有期間が5年以下) |
39.63% | 2,377,800円 |
長期譲渡所得 (土地を売却した年の1月1日時点の所有期間が5年超) |
20.315% | 1,218,900円 |
土地の譲渡所得が600万円の場合の税額は、短期譲渡所得なら2,377,800円、長期譲渡所得なら1,218,900円となり、約115万円もの差が出ました。
少し待てば所有期間が5年を超えるというケースであれば、売却を延期したほうがよいでしょう。一方、現実には売却の時期を先延ばしにすることで好条件の取引を逃してしまうリスクもあります。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の税金の差額を把握した上で判断しましょう。
相続によって取得した土地を売却する時の特例
ここまでは原則の話をしましたが、相続した土地を売却した時には優遇措置があります。
相続した土地にかかわる特例は2つあります。
どちらも売却までの期限が決められていることには注意してください。
また、併用はできないので、比較して有利な方を選びましょう。
1.被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
相続した空き家を売却した時、譲渡所得から最大3000万円を控除できる特例です。
この特例は、空き家を取り壊して更地で売却した場合でも適用可能です。
特例を適用して譲渡所得を求める際の計算式は以下のとおりです。
つまり、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例を適用すれば、譲渡所得が3000万円以下なら税金はかかりません。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例の主な適用要件は以下の通りです。
- 相続開始日から3年を経過する年の12月31日までに売却
- 相続開始までは被相続人が居住していて、相続によって空き家になった
- 1981年5月31日以前に建築された家屋である
- マンションなどの区分所有建築物ではない
- 売却金額が1億円以下である
なお、相続人が3人以上いる場合には、控除額は2,000万円までになります。
2.相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続した土地を売却した場合、その土地について支払った相続税のうちの一定額を取得費に含めることで、譲渡所得を減らせる特例です。
適用要件は以下の通りです。
- 相続により財産を取得した者であること
- その人に相続税が課税されていること
- その財産を相続開始のあった翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却していること(相続税の申告期限が被相続人の死亡の日の翌日から10ヶ月以内なので、3年10ヶ月以内という意味)
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」の提供は、相続人本人に相続税がかかっていることが前提条件です。相続税が非課税だった場合は取得費加算の特例は使えません。
多くの人にとっては、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例を選んだほうが有利になります。相続税額が3000万円を超えた場合のみ「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」と比較して、より有利なほうを選びましょう。
確定申告が必要なケースと不要なケース
土地を売却したら、原則として確定申告が必要です。確定申告が必要なケース・不要なケースは以下の通りです。
確定申告が必要なケース | 確定申告が不要なケース |
---|---|
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順番に見ていきましょう。
①土地の売却で譲渡所得が出た場合
土地の売却代金から取得費(土地を取得するためにかかった費用)と譲渡費用(土地を売却するためにかかった費用)を差し引いて利益が出た時は、その利益に対して税金を払うために確定申告が必要です。
②特例制度を利用する場合
譲渡所得がない場合でも、それが「空き家特例」または「取得費加算の特例」を使って非課税になった結果なら、特例を申請するために確定申告が必要です。
③譲渡所得がゼロまたはマイナスだった場合
土地を売却したが費用のほうが高くなって利益が出なかった場合は、確定申告の義務はありません。税金をかける利益がないためです。
特例を使って税金がかからなくなった場合、確定申告をしなくてもよいと思い違いをしてしまう人がいらっしゃいます。
確定申告をしないと特例の適用がないので、必ず申告しましょう。
損益通算ができるケースもあるが、使える人は限定される
相続した土地の売却で損失が出てしまった場合、もし同じ年に別の物件を売却して利益が出ている場合には、損失と利益を相殺して課税される所得を減らすことで全体としての税負担を抑えることができます。
この損失と利益を相殺することを「損益通算」といいます。
ただし、損益通算できるのは土地や建物の譲渡所得に限られます。他の譲渡所得(株式を売って出た利益など)や、総合課税されている所得(給与や事業所得など)との損益通算はできません。
マイホームの買い換え時に損失が出た時や住宅ローンが残っているマイホームを売却して損失が出た時には、損失を給与所得や事業所得と損益通算できる特例がありますが、相続した土地についての損益通算の特例はありません。そのため、利用できる人は多くないでしょう。
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2022年からリビンマッチのコラム記事の執筆・編集を担当しています。不動産の財産分与に関する記事執筆が得意です。住宅設備機器の専門商社に6年間従事した知識と経験を活かして、不動産に関する知りたかったこと、知っておいた方がいいことをわかりやすく伝えられるように心がけています。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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