マンション売却における名義の役割と名義変更の方法
マンションを売却する際、度々問題になるのが「名義」です。
相続や売買などでマンションの所有者が変わったときは、名義を変更する必要があります。相続では、名義変更を忘れたままになっているケースも多く、マンションを売ることができなかったり、手続きが面倒になったりします。
しかし、名義に関する問題は意外と見落とされがちで、売却を考え始めてから初めてその重要性に気づくケースも少なくありません。
マンションの売却をスムーズに行うためにも、名義について確認しておきましょう。
もくじ
マンションの名義とは?
マンションの名義とは、不動産登記簿に記載された所有者のことです。名義人とも呼ばれます。マンションの所有権を法的に証明する役割やマンションに関する権利を行使できる正当な権限を持つため、単なる名前以上の重要性を持ちます。
たとえば、マンションの売却や賃貸、改築などの重要な決定は、基本的に名義人以外はできません。名義人は複数人になる場合もあり、その場合は名義人全員の同意が必要です。
マンションを売れるのは名義人だけ
日本の法律では、マンションの売却は名義人の同意が無ければ成立しません。
名義人以外の人物がマンションを売却できてしまうと、不正な取引や詐欺的な行為が横行するおそれがあるためです。
たとえば、名義人が認知症で意思能力が無い場合であっても、配偶者や子が売却を勝手に進めることができてしまいます。名義人が遺書を残していて、マンションの相続人が決まっていても、相続が発生した時点で売却済みになっていると、相続トラブルに発展してしまいます。
そのため、名義人以外の人がマンションを売却する場合は、売却の前に名義変更の手続きを行うか、名義人の同意を得る必要があります。
共有名義のマンションは名義人全員の同意がないと売れない
1つのマンションを複数の名義人で所有することを「共有名義」といいます。
共同名義のマンションを売却するには、名義人全員の同意が必要です。一部の共有者だけの判断でマンションが売却されてしまうと、他の共有者の財産権が侵害されるおそれがあるためです。マンションの名義人が10人いたとして、そのうちの9人が売却に同意をしても、残りの一人が反対すれば売却はできません。
ペアローンでマンションを購入した場合も、住宅ローンの名義人2人がマンションを所有することになるため、共有名義となります。夫婦でペアローンを組んでいれば、売却するのにお互いの同意が必要です。
共有持分が相続されると時間の経過とともに名義人が増え続けます。名義人が増えれば、全員の同意を得るのが困難になるため、売却がより難しくなるリスクがあります。
マンションの名義を変更する方法
名義人以外の人がマンションを売却する場合や、名義人から相続する際は「名義変更」が必要です。
名義変更の方法は、主に法務局での登記手続きを通じて行われます。まず、変更内容に応じた必要書類を準備します。これには、登記申請書、本人確認書類、印鑑証明書などが含まれます。共有名義の場合は、全ての名義人の同意が必要となるため、それぞれの署名や捺印が求められます。
次に、法務局に出向いて申請を行います。オンラインでの申請も可能ですが、初めての方は窓口での手続きがおすすめです。
申請の際は、登録免許税の納付も忘れずに行いましょう。手続きが完了すると新しい登記簿が発行され名義変更が反映されます。
マンションの売却を考えている場合、名義変更は重要なステップとなります。適切な手続きを踏むことで、スムーズな売却につながります。専門家のアドバイスを受けながら、慎重に進めることをおすすめします。
法務局で名義変更の手続きを行う
名義変更の手続きは、マンションの所在地を管轄する法務局で行います。マンションの所在地が住んでいる地域から離れている場合は、ウェブ登記手続の利用を検討しましょう。
ウェブ登記手続は、オンラインで登記手続きができるサービスです。ウェブ会議を利用するため、法務局の担当者に質問したり説明を受けたりしながら手続きを進められます。
名義変更には以下の書類が必要になるため事前に準備をしておきましょう。
- 登記申請書
- 登録免許税納付書
- 権利証や登記識別情報
- 本人確認書類
- 印鑑証明書
相続の場合は戸籍謄本や遺産分割協議書、贈与の場合は贈与契約書も必要です。書類を揃えるには、事前に法務局や市区町村役場で取得すべき書類もあります。
特に相続関係の書類は複雑なため、専門家に相談することをおすすめします。手続きにかかる費用は、登録免許税が不動産の評価額に応じて決まります。一般的に、評価額の0.4%程度です。所要時間は、書類の準備に1〜2週間、法務局での手続きに2〜3週間程度かかることが多いです。ただし、ケースによって異なるため、余裕を持って計画することが大切です。
なお、手続きに不安がある場合は、司法書士に手続きを依頼しましょう。別途報酬が発生しますが、専門家に依頼することで名義変更がスムーズに進められます。
共有名義のマンションは名義を一本化する
共有名義のマンションは、一人の名義に集約することで名義変更できます。
名義一本化の手順は、名義人同士で話し合いを行い、誰が所有権を持つかを決定します。次に、他の名義人から所有権を譲渡してもらう必要があります。この際、譲渡する側に相応の対価を支払うことが一般的です。
場合によっては、他の共有者の持分を買い取る必要があるため、資金が必要になることもあります。買取価格は物件の評価額や共有持分比率などを考慮して決定されます。
資金調達が困難な場合は、金融機関からの借り入れを検討することも一案です。
名義人同士で同意が得られたら、不動産の持分全部を譲渡する旨の契約書を作成します。その後、登記申請書類を準備して管轄の法務局で所有権移転登記を行います。
登録免許税や司法書士への依頼費用などの諸経費が発生します。名義一本化は売却をスムーズに進めるために重要ですが、共有者間の合意形成や資金面での準備が必要となります。専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが望ましいでしょう。
マンションの名義変更が難しいケース
マンションの名義変更は、正しい手順で手続きを行えば名義変更が完了します。しかし、以下のケースでは、名義変更が難しくなるため注意が必要です。
- 名義人に意思能力がない
- 共同名義人の同意が得られない
- 共有名義人が行方不明
上記のケースであっても名義変更が不可能なわけではありません。しかし、専門的な知識が必要になるため、専門家のアドバイスを受けながら慎重に対応することが重要です。
法律の専門家や不動産の専門家に相談し、適切な対応策を見出すことが望ましいでしょう。マンションの売却や名義変更の手続きを円滑に進めるためには、事前に名義に関する問題を整理し、必要な準備を整えておくことが大切です。
名義人に意思能力がない
マンションの名義人に意思能力がない場合、売却手続きが複雑化する可能性があります。認知症や精神疾患などにより、名義人が契約行為を行う能力を失っている状況では、本人の意思を確認することが困難です。
このような場合、家庭裁判所に後見人選任の申立てを行い、成年後見制度を利用することが一般的な対応策となります。選任された後見人が名義人に代わって売却手続きを進めることができますが、後見人の権限には制限があるため、家庭裁判所の許可が必要となる場合もあります。
また、名義人の意思能力が完全に失われていない場合は、任意後見制度の活用も検討できます。この制度では、本人があらかじめ指定した任意後見人が、本人の判断能力が不十分になった際に財産管理などを行います。
ただし、これらの手続きには時間がかかるため、マンション売却を急いでいる場合は注意が必要です。また、後見人が選任されても、本人の最善の利益を考慮して売却の是非を判断する必要があります。
名義人の意思能力に疑問がある場合は、早めに専門家に相談し、適切な対応策を検討することが重要です。
状況によっては、売却以外の選択肢も含めて慎重に判断する必要があるでしょう。
共同名義人の同意が得られない
マンションの共有名義人の同意が得られない場合、売却は進められません。共有名義のマンションを売却するには、法律上、全ての名義人の同意が必要になるためです。
話し合いでの解決が難しい場合は、以下のような対応が考えられます。
- 話し合いの継続:まずは粘り強く交渉を続け、同意を得られるよう努力します
- 調停の利用:話し合いで解決できない場合、第三者を介した調停を検討します
- 持分の買取:同意しない名義人の持分を買い取り、名義を一本化する方法もあります
- 裁判所の介入:最終手段として、裁判所に共有物分割請求を行うことも可能です
いずれの方法も時間と労力がかかる可能性が高いため、専門家のアドバイスを受けながら慎重に対応することが重要です。また、将来的なトラブルを避けるためにも、マンション購入時から名義の一本化を検討することをおすすめします。
共有名義人が行方不明
共有名義人が行方不明の場合、マンションの売却手続きは非常に困難になります。この状況では、以下のような対応が必要です。
不在者財産管理人の専任
行方不明の共有名義人の権利を保護し、適切に管理するため、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる必要があります。この手続きには時間と費用がかかりますが、法的に正しい方法で売却を進めるために不可欠です。
調査の実施
行方不明の名義人の所在を確認するため、可能な限りの調査を行います。親族や知人への聞き取り、住民票の追跡、公的機関への照会などが含まれます。
公示送達
所在が不明の場合、裁判所を通じて公示送達を行い、法的に通知したとみなす手続きを取ることがあります。
共有物分割請求
最終的な手段として、裁判所に共有物分割請求を行い、裁判所の判断を仰ぐことも検討します。
専門家への相談
このような複雑な状況では、弁護士や司法書士などの法律の専門家に相談し、適切な対応策を見出すことが重要です。
共有名義人の行方不明は、マンション売却の大きな障害となりますが、適切な法的手続きを踏むことで解決の道筋を見出すことができます。ただし、時間と費用がかかる可能性が高いため、早めの対応と専門家のサポートが不可欠です。
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マンションの名義を変更した後は、売却に進めます。マンションを高値で売却するには、複数の不動産会社の査定を比較することが重要です。不動産会社によって査定額に差があるからです。同じマンションでも、会社によって数百万円以上の査定額の開きがあることも珍しくありません。
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2022年からリビンマッチのコラム記事の執筆・編集を担当しています。不動産の財産分与に関する記事執筆が得意です。住宅設備機器の専門商社に6年間従事した知識と経験を活かして、不動産に関する知りたかったこと、知っておいた方がいいことをわかりやすく伝えられるように心がけています。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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