マンションの固定資産税がかからないケースを解説!新築のほうの税金が安くなることも
マンションを所有していても、固定資産税がかからないケースがあります。どういったときに固定資産税がかからないのか見ていきましょう。あわせてマンションの固定資産税を詳しく解説します。購入するマンションの固定資産税が気になる人は参考にして下さい。
もくじ
固定資産税のかからないマンションはある?
固定資産税は、一定以上の価値(課税標準額)がある土地や建物にかかる税金です。固定資産税がかからない不動産は、評価額が免税点に満たないものです。ここでは、固定資産税がかからない条件を詳しく解説します。
固定資産税がかからないマンション①|課税要件を満たさない
固定資産税は次の3つの課税要件を満たす建物に対して課税されます。
- 外気分断性がある
- 土地への定着性がある
- 用途性がある
外気分断性とは、屋根・壁・建具などで囲まれて風雨をしのげることです。土地への定着性は、基礎工事を行って建物が土地に物理的に固定されている、あるいは任意に動かせない状態であることを指します。用途性とは、住まい、店舗などの用途で使えることです。たとえば、壁で外気から分断され、コンクリートの地面にボルトで固定されたサンルームは、3つの課税要件を満たしているため固定資産税がかかります。課税要件を満たさないマンションは、まずあり得ないでしょう。
固定資産税がかからないマンション②|1月1日時点で存在しない
マンションを1月1日に所有していれば、その年の固定資産税が所有者に対して課税されます。1月2日以降に所有したマンションに関しては、その年は非課税になり、固定資産税を納めるのは翌年からです。逆に1月2日以降に手放したマンションに対しては、その年の固定資産税を支払う義務が生じます。ただし、実際にマンションを売買したときは、引き渡し日以降の固定資産税を日割りにして売主へ支払うことが一般的です。
固定資産税がかからないマンション③|免税点に満たない
固定資産税評価額が免税点に満たないマンションは、固定資産税がかかりません。免税点とは、そこを超えたら課税対象になる基準の金額です。固定資産税の免税点は土地が30万円、建物が20万円です。それぞれの課税評価額がこの金額に達しなければ、固定資産税は課税されません。固定資産税評価額が免税点に満たないマンションは、まずあり得ないでしょう。
ここまで解説したように、固定資産税のかからないマンションは、あまり現実的ではないようです。
マンションにも適用可能!固定資産税の減免措置
マンションの固定資産税には、いくつかの減免措置が設けられています。条件に当てはまる措置があれば活用し、節税しましょう。ここでは、固定資産税が対象になるいくつかの減免措置を紹介します。
住宅用地の固定資産税軽減措置
住宅用地に対する固定資産税の課税標準は、面積に応じて次のように減額されます。
固定資産税課税標準 | 都市計画税課税標準 | |
---|---|---|
200㎡以下の部分 (小規模住宅用地) |
1/6 | 1/3 |
200㎡を超える部分 (一般住宅用地) |
1/3 | 2/3 |
たとえば、300㎡の居住用地にかかる固定資産税の課税標準は、200㎡部分までは1/6、200㎡を超えた残り100㎡の部分は1/3に減額されます。
新築が中古より安くなるケース
「新築住宅特例」を利用できれば、新築マンションのほうが中古マンションよりも固定資産税が安くなるケースがあります。2026年3月31日までに新築された住宅は、新築住宅特例の減額特例が適用可能です。適用される条件は床面積が50㎡(戸建て以外の賃貸住宅は40㎡)以上280㎡以下の一般住宅、もしくは中高層耐火住宅です。一般住宅は新築後3年間、中高層耐火住宅は新築後5年間、120㎡部分までの建物の固定資産税が1/2になります。
長期優良住宅の軽減措置
長期優良住宅に認定されたマンション(3階建て以上で耐火・準耐火構造)は、新築から7年間、固定資産税が1/2になります。長期優良住宅とは長期にわたって良好な状態で使用できる措置を講じた住宅のことで「認定住宅」とも呼ばれます。この軽減措置は、耐震性や耐久性、可変性に優れた住宅を普及させるために設けられました。固定資産税だけでなく、所得税や登録免許税、不動産取得税の軽減措置も受けられます。
特定のリフォームをした住宅
マンションに特定のリフォーム工事を実施すると、固定資産税率の軽減措置を受けられます。マンションのリフォームで固定資産税が軽減されるものは、次の3つです。
リフォームの種類 | 適用条件 | 軽減内容 |
---|---|---|
バリアフリー |
|
翌年の固定資産税が1/3軽減 |
省エネ |
|
翌年の固定資産税が1/3軽減 |
耐震 |
|
翌年の固定資産税が1/2軽減 |
そのほかにも細かい条件があるため、不動産会社や税理士に事前に確認しましょう。マンションのリフォームは、管理組合の許可を得る必要があります。特に耐震リフォームは、マンション住人のうち4分の3の同意を得なければ行えないケースがほとんどです。
マンションの固定資産税を算出する方法
固定資産税額は、課税評価額に税率をかければ算出可能です。課税標準額は中古マンションの経年劣化や、タワーマンションにおける階数による差異を考慮して計算します。ここでは、基本の計算式と都市計画税や課税標準額の内訳について解説します。
固定資産税の基本の計算式
固定資産税額は、次の式で算出できます。
固定資産税額=固定資産税評価額×1.4%
- 土地評価額:実勢地価の70%前後
- 建物評価額:再建築価格×経年減価補正率
標準税率は一般的に1.4%ですが、自治体は財政状況に応じて設定の変更ができます。また、評価額の算出に使う数値の意味は、次のとおりです。
実勢地価 | 実際に売買された土地の価格 |
---|---|
再建築価格 | 同じ建物を再建築したときの想定建築費 |
経年減価補正率 | 建物の経年劣化を考慮した係数 |
固定資産税評価額は、3年に1度見直されます。経年減価補正率が下がるため、建物評価額は見直しにより下がることが一般的です。再建築価格が上がって見直し前より建物評価額が上がる場合は、見直し前の額に据え置くこととされています。
都市計画税とは
都市計画税は市区町村や郡が、都市計画に指定する区域の整備を図ることに使われる税金です。固定資産税と都市計画税は、同時に納付の通知が来ます。都市計画に指定される区域に含まれるものは、宅地や商業地、公共施設などを優先して整備する市街化区域と、緑地や農地を保全する市街化調整区域です。
都市計画税は、市街化区域内にある土地や家屋を対象として課税されます。購入するマンションが市街化区域内にあるかどうかを、不動産会社に確認しておきましょう。なお、市街化区域とは、都市計画法で「すでに市街地として栄えている、あるいは今後市街化を進める」と指定された地域のことです。
中古マンションで使用する経年減価補正率とは
経年減価補正率とは、経年劣化で建物の資産価値が下がったことを表す係数です。固定資産税評価額の計算式は、経年減価補正率を用いて次の用に計算します。
経年減価補正率は、建物の構造が木造とそれ以外(非木造)で異なります。マンションは鉄骨造や鉄筋コンクリート造(RC)のため、非木造に該当します。経過年数別の経年減価補正率は、次のとおりです。
経過年数 | 経年減価補正率 | |
---|---|---|
木造 | 非木造 (鉄骨造・RC) |
|
1年 | 0.8 | 0.9579 |
2年 | 0.75 | 0.9309 |
3年 | 0.7 | 0.9038 |
4年 | 0.67 | 0.8803 |
5年 | 0.64 | 0.8569 |
補正率は5年目以降も低下し続け、マンションは最大45年分が設定されています。木造と比べてマンションは補正率の低下が少なく、固定資産税評価額が下がりにくくなっています。
参考:京都地方法務局「経年減価補正率表について」「経年変化補正率表」(PDF)
マンションの固定資産税を算出する方法
固定資産税は、所有する土地の持分にかかります。マンションは集合住宅なので、敷地の持分を各所有者と分割しています。所有者の土地の所有面積は、専有部分に加えて共有部分を専有面積の割合で分けた面積の合計です。マンションの土地の固定資産税は、次の式で算出できます。
各所有者の土地の持分=各区分の専有面積÷マンションの専有面積
建物の固定資産税は、次の計算式のとおりです。
建物の持分=専有部分の床面積+持分で按分した共有部分の床面積
タワーマンションの固定資産税の注意点
以前は、マンションの階数による固定資産税額に差はありませんでした。しかし、タワーマンションは高層階の販売価格が低層階より高いにも関わらず、これまで固定資産税評価額が販売価格に見合っていませんでした。そのため、2017年度の税制改正でタワーマンションの固定資産税評価が見直され、階数によって異なる税率が採用されています。
タワーマンションの固定資産税額の算出には、次の計算式で求められる「階層別専有床面積補正率」が用いられます。
1階を100%とすると20階は105%、40階は110%というように、高層階になるほど補正率が上がって固定資産税が高くなる仕組みです。
マンションの固定資産税シミュレーション
新築・中古マンションのそれぞれを想定し、マンションの固定資産税がいくらになるかのをシミュレーションしていきましょう。新築、築10年、築25年のマンションの例はどれも東京都内の想定で、地価はすべて50万円/㎡としています。
新築マンションの固定資産税
地価 | 50万円/㎡ |
---|---|
再建築価格 | 32万円/㎡ |
課税床面積 | 80㎡ |
土地の固定資産税
地価=50万円×80㎡=4,000万円
土地評価額=4,000万円×70%=2,800万円
小規模住宅用地の固定資産税評価額=2,800万円×1/6=466万6,600円※
固定資産税=466万6,600円×1.4%=6万5,300円
※100円未満は切り捨て
マンションの固定資産税
再建築価格=32万円×80㎡=2,560万円
固定資産税=2,560万円×1.4%=35万8,400円
新築住宅特例を適用した固定資産税=35万8,400円×1/2=17万9,200円
土地とマンションの固定資産税の合計
新築住宅特例を適用したことによる軽減税率を反映した結果、土地部分をあわせた新築マンションにかかる固定資産税は 24万4,500円になりました。
築10年のマンションの固定資産税
地価 | 50万円/㎡ |
---|---|
再建築価格 | 29万円/㎡ |
課税床面積 | 70㎡ |
土地の固定資産税
地価=50万円×70㎡=3,500万円
土地評価額=3,500万円×70%=2,450万円
小規模住宅用地の固定資産税評価額=2,450万円×1/6=408万3,300円
固定資産税=408万3,300円×1.4%=5万7,100円
マンションの固定資産税
再建築価格=29万円×70㎡=2,030万円
経年減価補正率=0.7397(10年)
固定資産税評価額=2,030万円×0.7397=1,501万5,900円
固定資産税=1,501万5,900円×1.4%=21万200円
土地とマンションの固定資産税の合計
新築住宅特例を適用できないため、前述の新築より建物の資産価値が少ないにも関わらず、固定資産税は高くなりました。
築25年のマンションの固定資産税
地価 | 50万円/㎡ |
---|---|
再建築価格 | 26万円/㎡ |
課税床面積 | 70㎡ |
地価・床面積は前述の築10年と同じため、土地の固定資産税は同じです。
土地の固定資産税
マンションの固定資産税
再建築価格=26万円×70㎡=1,820万円
経年減価補正率=0.3992(25年)
固定資産税評価額=1,820万円×0.3992=726万5,400円
固定資産税=726万5,400円×1.4%=10万1,700円
土地とマンションの固定資産税の合計
築25年になると経年減価補正率が小さくなり、固定資産税を低く抑えられます。
マンションの固定資産税の納付時期と方法
固定資産税は納付期限が決められており、期限までに納付する必要があります。納付するときに手持ちの現金が不足しないよう、固定資産税はいつ、どのような方法で納めればよいかを把握しておきましょう。
固定資産税の納付時期
固定資産税は地方税で、納付時期は自治体によって異なります。たとえば、東京23区内は6月・9月・12月・翌年2月で、年に4回に分けて納付できます。1月1日時点で所有しているマンションは、その年に固定資産税が課税されます。新築を購入したときは所有権が移動した日を起算日とし、その日が1月2日以降であれば課税は翌年です。
中古マンションを購入したときは、購入した年までの固定資産税は以前の所有者が納めます。ただし、中古マンションの引き渡し時点で、引き渡した日以降の固定資産税額を日割りで清算して以前の所有者に支払うことが一般的です。
固定資産税を納付する方法
固定資産税の納税通知書と振込用紙は毎年4〜5月ごろに送られてきますが、発送日は自治体によって異なります。通知書に書かれている案内に従って、固定資産税を納めましょう。年4回の分割払いのほか、1年分を一括して払うことも可能です。
支払方法は口座振替やクレジットカード払いのほか、自治体によってはスマートフォン決済や電子マネーも利用可能です。PayPayのようなQRコード決済は、決済手数料が不要な代わりに納められる金額に上限があります。また現金以外の支払方法では、領収書の即時発行が難しいことがあります。ポイントを貯める、領収書がすぐに欲しいなど、状況に合わせて納付方法を選びましょう。
この記事の編集者
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