不動産売却時の確定申告を税理士に依頼する際の費用の相場と抑える方法
不動産売却で所得が発生すると、確定申告が必要です。確定申告の手続きはわかりにくい部分が多く、申告内容の間違いが起きるケースも少なくありません。
不動産売却は高額になりやすいため、確定申告での小さなミスが後々大きな損失につながるおそれがあります。確定申告は自分でもできますが、安心して終わらせるためには税理士への依頼を検討しましょう。
税理士と聞くと、依頼するのに高額な費用を請求されるというイメージがあるかもしれません。しかし、できることは自分で行うことで費用を抑えることができるのです。
今回は、不動産売却時の確定申告を税理士に依頼する際の費用相場と、費用を抑えるポイントについて詳しく解説します。
もくじ
不動産売却時の確定申告を税理士に依頼する費用の相場
税理士に不動産売却時の確定申告を依頼する際、報酬の相場は10万円から30万円です。一般的に、報酬額は譲渡所得額に応じて変動します。譲渡所得とは、不動産の売却で得られた売却価格からその不動産を購入した価格と売却にかかった経費を差し引いた所得です。
一定の条件を満たせば控除が適用され、譲渡所得にかかる税金の減額が可能です。控除の適用手続きを同時に依頼すると、税理士の工数が増えるため追加の費用が発生します。
基本的な報酬の相場
通常、税理士に支払う報酬は譲渡所得の額に応じて決められます。
たとえば、20年前に5,000万円で購入した土地を8,000万円で売却した際、経費として200万円かかったときの譲渡所得は、以下の通りです。
税理士への報酬額の目安を以下にまとめました。この例の場合、報酬額の目安は、6~12万円です。
譲渡所得額 | 報酬額(目安) |
---|---|
1,000万円未満 | 3~6万円 |
1,000万円以上3,000万円未満 | 6~12万円 |
3,000万円以上5,000万円未満 | 12~15万円 |
5,000万円以上8,000万円未満 | 15~24万円 |
8,000万円以上 | 24万円~ |
追加費用が発生するケース
追加費用は、税理士に特別控除の適用などを依頼したときに発生します。
いくつかの特別控除と追加費用の目安を、以下の表で紹介します。
特別控除の種類 | 内容 | 追加費用(目安) |
---|---|---|
マイホーム売却時の軽減税率の特例 | 所有期間10年超の不動産で、譲渡所得6,000万円までの税率を軽減 | 1万円 |
マイホーム売却時の3,000万円特別控除 | 所有期間を問わず、譲渡所得から最大3,000万円を控除 | 3万円 |
事業用資産の買換特例 | 事業用不動産などの買い替えで、譲渡所得への課税を繰り延べできる | 8~10万円 |
マイホームの譲渡損失の繰越控除 | 自宅の売却と新居取得で損失が発生すると、損失分を所得税から差し引ける | 3万円 |
不動産売却の確定申告を税理士に依頼するメリット
不動産売却時の確定申告を税理士に依頼すると、売主の手間を大幅に減らせます。さらに申告漏れやミスの防止、節税アドバイス、税務調査対応のサポートなどが受けられる点が、税理士に依頼する利点です。
ここでは、確定申告を税理士に依頼するメリットを詳しく解説します。
申告漏れや計算ミスを防げる
確定申告の内容に漏れや計算ミスがあると、追徴課税や加算税が発生する場合があります。また、申告内容にミスや不備があり控除の適用が認められなければ、本来減額になる金額に対して税が課せられるのです。
確定申告は申告時に間違いがあってもその場では指摘されません。申告漏れや計算ミスは、税務調査の段階で発覚するため、思わぬ負担が追加で生じるおそれがあります。
税理士は申告に関するプロで、知識と経験が豊かです。税理士に確定申告を依頼すれば、ミスの発生リスクを低減できます。また膨大で不慣れな事務作業を委託することで、いつも通りの生活を送れます。
節税のアドバイスがもらえる
節税とは、法律に沿って、できるだけ税金を抑えることです。一方でやりすぎた節税や申告の間違いは、知らないうちに脱税になってしまうかもしれません。脱税には追徴課税や懲罰が課されるだけでなく、社会的信用が失墜するリスクがあるのです。
税理士は、税に関する法令や知識に精通しています。節税のアドバイスを受けるなら、税理士が最適です。
不動産売却時に適用できる制度や控除にはさまざまな要件があります。制度を最大限活用して正しく節税するためには、専門家である税理士のアドバイスが不可欠です。
税務調査対応をサポートしてもらえる
国税庁の資料によると、2021年(令和3年)分の譲渡所得税の申告件数は、全国で55万6千件、このうち税務調査の対象になったのは1万6,714件でした。
税務調査を受ける確率は毎年2~3%程度で、調査を受けると約8割が修正申告を指示され、約2割は追徴税を含む何らかの罰を科されるといわれています。
確定申告を税理士に依頼すると、税務調査の対象となった際にサポートしてもらえます。税務調査で税務署から書類の提出や説明を求められたとき、税理士による適切な対応やサポートを期待できるのは大きなメリットです。
ただし税務調査の対応には、別途費用がかかります。
不動産売却の確定申告を税理士に依頼するデメリット
確定申告を税理士に依頼すると、多くの利点があります。一方で、税理士の選択が大変だった、想定以上の費用がかかった、などの話も聞かれます。
ここでは、税理士への依頼で予想されるデメリットについて解説します。
税理士選びが大変
税理士はそれぞれ得意分野を持つケースがあります。たとえば、不動産関係に強い、会社の監査や経営へのコンサルが得意などです。
不動産売却に関する依頼をするならば、不動産関係の実務経験が豊富な税理士を探すことがおすすめです。ただし、そのような税理士を探すには、選定の段階で時間がかかることが大きな負担になります。
苦労して税理士を探しても、得意分野と依頼したい内容が異なることや、自分の意図を汲んでもらえないといった問題が発生することがあるのです。
費用がかかる
確定申告は、本人もしくは本人から依頼を受けた税理士のみが可能です。自分で譲渡所得の確定申告をすれば無料で済みます。
しかし、税理士に依頼すると費用が発生します。税理士に依頼するかは、費用面での折り合いで判断することが大切です。ほとんどの方にとって、不動産売却は一生に何度もない取引でしょう。動く金額の大きさを考慮するのであれば、リスクが低減できるほうをおすすめします。
一方、投資目的で不動産売買の機会が多くなるのであれば、可能な限り自分で申告し、税務関連の知識と経験を増やすほうが、長い目で見れば多くの利益を得られます。
税理士に依頼する費用を抑える方法
税理士に依頼する際は、複数の税理士に見積りを取り、税理士本人の経験や仕事ぶりを含めた総合的な判断が大切です。また、不動産に関する書類や経費関連の書類などを自分のできる範囲で準備・整理しておくことが、費用の軽減に有効です。
ここでは、税理士に支払う費用を抑える方法について解説します。
複数の税理士に見積りを取る
確定申告を税理士に依頼するときは、複数人に見積もりを依頼します。税理士選びには、見積りの比較検討が重要です。
税理士の報酬は法律で定められておらず、それぞれの税理士事務所が自由に決められます。だいたいの相場はありますが、同じ内容でも違う報酬を提示されるケースがあります。複数の見積りを依頼することで、適切な相場がわかります。
また、見積りは価格だけで判断せず、想定される追加費用の項目や内容も吟味する必要があります。追加費用の料金体系が、税理士事務所によって異なるケースがあるためです。
できる範囲で書類を整理しておく
書類を準備し整理しておくことは、税理士費用の削減につながります。税理士への依頼は専門的な作業に限定し、自分でできる作業は自力で済ませれば費用を節約できるためです。
譲渡所得税の確定申告には不動産の登記事項証明書や固定資産評価証明書など、必要な書類があります。これらの資料は、できるだけ自分で準備しましょう。
前述した証明書以外にも、不動産を取得した際の売買契約書・仲介手数料の領収書などは自分で用意できる書類です。
また、書類のやりとりをオンラインで行えば、交通費や通信費を節約できます。
自力でできる作業について、税理士に指示を仰ぐことも費用を抑える方法です。
確定申告を税理士に依頼する際の注意点
不動産を売却した譲渡所得の確定申告を税理士に依頼する際、作業は以下のような流れで進んでいきます。
- 必要書類を準備する
- 税理士の選定、相談や見積りの依頼
- 申告書の作成、内容確認、控除の有無の確認
- 申告書の提出、税理士への報酬の支払い
ここでは、売主が気を付けるポイントについて解説します。
スケジュールに余裕を持って依頼する
確定申告を税理士に依頼するなら、スケジュールに余裕を持つことが大切です。複数の税理士に見積もりを取り、依頼先を選定する時間が必要になるためです。
通常、確定申告は売却した翌年の2月16日から3月15日までの期間に行います。申告の期限までに十分な準備時間が取れるよう、スケジュールを定めます。
多くの税理士は確定申告時期、業務が集中するため多忙です。せっかくよいと思われる税理士を見つけても、ギリギリ依頼すると断られるおそれがあります。
税理士への依頼時期は、税理士選定の期間や依頼内容を十分に共有できる時間を考慮して余裕を持つことが大切です。
確定申告に必要な書類
税理士に確定申告を依頼する際は、自分で用意できる書類はできるだけ事前に準備しておいたほうが経費を抑えられます。
不動産の売却に伴う確定申告に必要な書類は、以下のとおりです。
- 売買契約書のコピー
- 仲介手数料の領収書など売却にかかった金額を証明する書類
- 登記事項証明書
売却時の書類だけでなく、不動産取得時の書類、これまでの修繕費や設備投資に要した費用の領収書なども用意しておくと控除の適用で有利です。
資料は集めるだけでなく要目ごとに整理し、ファイリングしておきましょう。必要書類を紛失すると、正しい申告ができない・控除が受けられないなどの事態につながります。
不動産売却を依頼する不動産会社も比較が大切
不動産売却による確定申告を税理士に依頼すれば、売主にさまざまな利点がある一方で費用の問題が生じます。複数の税理士に見積りを依頼して比較検討すれば、費用を抑えつつ自分の状況に合った税理士を選ぶことが可能です。
不動産売却の仲介を依頼する不動産会社にも、同じことがいえます。複数の不動産会社に査定を依頼し比較することで、高く売却できる可能性が高まります。
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2022年からリビンマッチのコラム記事の執筆・編集を担当しています。不動産の財産分与に関する記事執筆が得意です。住宅設備機器の専門商社に6年間従事した知識と経験を活かして、不動産に関する知りたかったこと、知っておいた方がいいことをわかりやすく伝えられるように心がけています。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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