土地売買で発生する登録免許税とは?計算式や軽減措置、納付方法を解説
土地売買において避けては通れない登録免許税。具体的な金額や計算方法となると、頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。
- いったいいくら支払うことになるの
- 計算方法が複雑で、ややこしい
- 何か節税できる方法はないの
こういった疑問や不満を持つ方は珍しくありませんが、登録免許税にはさまざまな計算式や軽減措置が存在します。知っているか知らないかで大きな差が出る可能性があるのです。
本記事では土地売買における登録免許税について、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。計算式はもちろん、意外と知られていない軽減措置や、確実な納付方法まで、幅広くカバーしています。
登録免許税の「正しい知識」を身につけて、スマートな土地売買を実現しましょう。
もくじ
土地と建物に対して、登録免許税が課税される
土地や建物を新たに所有すると、登録免許税が課税されます。まずは登録免許税について、詳しく紹介しましょう。
登録免許税とは
登録免許税は、不動産の登記をする際に支払う税金です。
不動産登記は建物や土地の状況、権利に関する情報などを登記簿に記録することを指します。
購入や相続により不動産を取得した場合は、前の所有者から自分へ所有権を移すために「所有権移転登記」を行わなければなりません。その際に、登録免許税を納付する必要があるのです。
なお、登録免許税は会社や船舶、航空機、資格などの登記にもかかりますが、今回の記事では不動産における登録免許税に焦点を当てて話を進めていきます。
【土地取得】登録免許税の税率表
土地の取得における登録免許税の税率は、所有権を移転する理由によって異なります。
表にまとめると以下のようになります。
取得理由 | 税率 | 課税標準 |
---|---|---|
売買 | 2% | 不動産の価額 |
相続(法人の合併または共有物の分割) | 0.4% | |
その他 (贈与・交換・収用・競売など) |
2% |
上記の「不動産の価額」は、原則として固定資産課税台帳に記載されている固定資産税評価額です。
固定資産税評価額は毎年市町村役場から通知される固定資産税明細書に「価格」もしくは「評価額」と記載されています。固定資産税課税標準額とは異なるので、注意が必要です。
固定資産税明細書以外では、市町村役場で発行する証明書でも確認可能です。
固定資産税評価額が登録されていない場合は、登記官が認定した価額が用いられます。不動産を管轄する登記所で聞いてみましょう。
計算式と計算方法
登録免許税額を求める計算式は以下のとおりです。
登録免許税額=(課税標準)×(税率)
※課税標準は1,000円未満切り捨て
※100円未満切捨て
※計算した額が1,000円未満の場合は1,000円とする
繰り返しになりますが上記の「課税標準」は「固定資産税評価額」を指します。「固定資産税課税標準額」と混同しないよう、注意してください。
それでは、上記の計算式に従い、例を挙げて登録免許税額を算出しましょう。
移転理由が購入の場合
取得した土地の固定資産税評価額:1,350万8,867円
登記移転の理由:購入
上記の場合、課税標準額は1,000円未満を切り捨てて1,350万8,000万円です。
この価額を使って計算をします。
(課税標準)×(税率)=1,350万8,000円×2%=27万160円
100円未満は切り捨てになるため、登録免許税額は27万100円となります。
移転理由が相続の場合
取得した土地の固定資産税評価額:1,000万2,912万円、850万6,670万円(二筆)
登記移転の理由:相続
2つ以上の不動産を同時に移転登記する場合、評価額の合計から1,000円未満を切り捨てます。
1,000万2,912円+850万6,670円=1,850万9,582円
→1,000円未満切り捨てで1,850万9,000円
なお、2筆それぞれの土地において評価額の1,000円以下を切り捨て後で合算すると1,000万2,000円+850万6,000=1,850万8,000円です。本来の評価額と1,000円の誤差が生じるため、計算法を間違えないように気をつけましょう。
土地取得時の登録免許税を抑える方法
登録免許税は数十万円程度かかることもあります。ただでさえ出費の多い土地購入において、少しでも登録免許税の納税額を減らすには、どうすればよいでしょうか。
登録免許税を抑える方法を紹介します。
土地の売買等に係る登録免許税の特例を受ける
土地の売買にかかわる登録免許税は、令和8(2026)年3月31日まで軽減措置の適用を受けられます。特例が適用されると登録免許税が0.5%引き下げられ、1.5%となります。
ただし、贈与による所有権移転の場合は特例を受けられません。
相続による土地の所有権の登録免許税の免税措置を受ける
相続により土地を取得した場合、以下2つの条件のいずれかを満たすと、登録免許税の免税措置が適用されます。
相続による土地の取得者が相続登記をしないで死亡した場合
個人が相続(相続人に対する遺贈を含む)により土地の所有権を取得した場合に、その個人が土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡した場合は、特別な措置が適用されます。
そのため、平成30(2018)年4月1日から2025年3月31日までの間にその個人の相続した土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記に関しては、登録免許税がかかりません。
この免税措置を図に表すと以下のようになります。
Aの名義人(故人)から土地を相続したBが、移転登記の前に死亡した場合、Bを登記名義人にする場合の登録免許税は免税されます。
なお、BからCへの移転登記は免税措置の対象外となり、通常の登録免許税0.4%がかかります。
不動産の価額が100万円以下の場合
相続した土地が100万円以下の場合は、登録免許税が免除されます。登記移転の放棄により、所在者不明の土地が増えるのを防ぐために設けられた措置です。
なお、上記2種の免税措置を受ける場合は、いずれも申請書の「登録免許税」の欄に「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載します。記載がない場合は免税措置を受けられませんので注意が必要です。
免税措置の詳細と記載例は、法務局の「相続登記の登録免許税の免税措置について」で確認できます。
住宅に係る登録免許税の軽減措置を受ける
住宅を取得する際にも、一定の適用要件を満たしていれば軽減措置を受けられます。詳細は以下のとおりです。
【適用期限】
令和9(2027)年3月31日まで
適用条件
- 自己居住用の住宅である
- 登記される建物の床面積が50㎡以上
- 中古建物の場合、昭和57(1982)年1月1日以降に建築されたもの、もしくは一定の耐震基準に適合しているもの
- 新築住宅は建築後1年以内、中古住宅は取得後1年以上に登記するもの
軽減税率
本則と軽減措置の適用後の税率を比較すると、以下のようになります。
違い | 本則(%) | 軽減税率(%) |
---|---|---|
新築住宅(所有権保存) | 0.4 | 0.15 |
中古住宅(所有権移転) | 2.0 | 0.3 |
また、建物に関しては、一定の基準を満たした「特定認定長期優良住宅」や「認定低炭素住宅」において、さらなる軽減措置が適用されます。
特定の住宅に係る登録免許税の軽減措置については、法務局の「令和6年4月1日以降の登録免許税に関するお知らせ」をご確認ください。
上記の軽減措置は土地には適用されません。しかし、住宅と土地を併せて取得した際には住宅の登録免許税を抑えることで、全体的な登録免許税の節税につながります。
経費に計上する
不動産投資や事業のために土地や建物を購入する場合は、登録免許税を経費扱いにできます。登録免許税自体が安くなるわけではありませんが、経費を多く計上することで所得税を圧縮でき、結果として節税が可能です。
登録免許税だけではなく、司法書士に支払った委託料や文書作成の手数料、納付の際にかかった郵便料金や交通費なども経費扱いです。
確定申告には領収書が必要ですので、大切に保管しておきましょう。
登録免許税の納税方法
登録免許税は原則として現金で納付します。ただし、税額や申請方法によっては、現金以外での納付ができることもあります。
納付時に発行される領収証書は、登記申請の際に必要となる重要な書類です。紛失しないよう、大切に保管しましょう。
書面申請の場合
書面での申請は金融機関で行います。手順は以下のとおりです。
- 登録免許税納付用の書類を受け取る
- 必要事項を記入のうえ、窓口に提出する
- 指示に従って登録税を支払う
支払いは原則現金ですが納税額が3万円以下の場合は、収入印紙での納付が認められています。収入印紙は、金融機関や法務局内の印紙売り場で購入できます。
納付が完了したら、領収証書もしくは収入印紙を登録免許税納付用台紙の中央部分に貼り付けて提出します。台紙はA4コピー用紙で代用可能です。印紙の場合、消印(割印)は不要です。
なお、現金支払いはあくまで原則であり、納税額に関わらず収入印紙で納付するケースがほとんどです。支払い方法に迷った場合は、最寄りの法務局もしくは金融機関に尋ねるとよいでしょう。
オンライン申請の場合
登録免許税はオンライン申請も可能です。登記・供託オンライン申請システムを利用して登記を申請すると、登録免許税の電子納付に必要な「電子納付情報」が発行されます。
電子納付情報を取得すると、インターネットバンキング、モバイルバンキング、Pay-easy(ペイジー)マーク表示のあるATMのいずれかを利用して、登録免許税を納付できます。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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