太陽光発電(用地)の土地売却でよくあるトラブルと対処法を紹介
「思ったより売却価格が低い」「法的な問題が発生」…
これらは、太陽光発電用地の売却で多くの地主が直面する現実です。再生可能エネルギーへの注目が高まる一方で、その裏には意外な落とし穴が潜んでいるのです。
しかし、適切な知識と準備があれば、トラブルの多くは回避できます。本記事では、太陽光発電用地の売却でよく遭遇するトラブルとその対処法を詳しく解説します。
もくじ
太陽光発電用地(太陽光発電の土地)とは
太陽光発電用地とは、太陽光発電の事業として活用するための土地です。
近年、再生可能エネルギーを用いた発電の方法として注目されています。太陽光発電を設置できる土地の種類(地目)は、以下のとおりです。
- 雑種地
- 原野(雑草が生育する土地)
- 山林(竹木が生育する土地)
- 宅地(建物の敷地、またはその機能を持つ土地)
地目は、不動産登記事務取扱手続準則の第68条、第69条をもとに判断します。課税時期の現況によって、どの地目を適用するか判定されます。
参考:国税庁「土地の地目の判定」
太陽光発電ができない土地とは?
各種地目が畑や田の土地は、農地以外の用途で使用できません。ただし、農地転用の許可を取れば太陽光発電を設置できます。
また、1つの土地には1つの太陽光発電のみという条件です。同一の土地における複数の発電システム設置は「分割案件」と呼ばれ、2022年の電気事業法施行規則改正により設置の許可がほぼ下りなくなりました。
同様の理由で、すでに太陽光発電用地として整備された土地の隣に太陽光発電設備を設置することも、土地の所有者が同じである場合は分割案件とみなされ許可されません。土地の所有者は1年前までさかのぼって調査されるため、申請直前に所有者を変更しても結果は同じです。
太陽光発電の土地売却でよくあるトラブル事例
太陽光発電用地の売却で発生しやすいトラブル例を4つ紹介します。
とくに多いケースが、契約の内容や条件が原因で起こる太陽光発電事業者とのトラブルです。また、近隣住民との関係もトラブル要因です。
売買契約を結んだのに契約を白紙に戻された
太陽光発電の事業者と売買契約を締結したにもかかわらず、土地を売却できないことがあります。
事業者が太陽光発電を設置する目的は、売電による利益の獲得です。そのためソーラーパネルを設置できない理由があると、土地の取引自体を中止してしまいます。
たとえば土地に問題があり発電事業の許可が下りないときや、開発資金を調達できないときに契約中止に至るケースがあります。
太陽光発電の土地売却は「停止条件付売買契約」が一般的です。停止条件付売買契約は、事業の申請受理や工事着手を契約開始の条件とする形式を指します。
契約から引き渡しまで3カ月以上がかかる
売買契約の締結から土地の引き渡しまでの期間が長く、3カ月以上かかる場合があります。
太陽光発電のために農地を転用するときは、地目の転用申請や開発許可の届出が必須です。また、事業の開始には、経済産業省資源エネルギー庁や電力会社への申請も必要です。
届出や申請には契約書を提出する必要があり、書類の準備を含めると引き渡しまで長い時間がかかります。
このような理由から、土地をいち早く手放したいと考えていても、思い通りに進まないおそれがあるのです。
売却を急がされて安値で売却してしまう
太陽光発電の事業者に早期売却を迫られて、相場よりも安い価格で土地を売却してしまうケースがあります。
原野や山林など、通常では売却しづらい土地でも活用できる点が太陽光発電の特徴です。そのため早く土地を購入したい事業者が、売主を急がせることがあります。
また、事業者が不動産の査定価格を高く提示しておいて、手続きの間に価格を下げたり、売主に不利な条件を追加したりなどのケースもあります。
売主側は不動産の知識を持ったうえで事業者同士を比較し、不利な契約を結ばないようにしましょう。
近隣住民と関係が悪くなる
近隣住民との関係が、太陽光発電の設置によって悪化することがあります。主に設置が完了してから発生するケースが多く、要因は景観の悪化や反射光の被害などです。国や電力会社の認可を得て設置している以上、土地の売主に責任はありませんが、近隣との関係悪化につながるおそれがあります。
また、近隣トラブルは周辺の地価に悪影響を及ぼすおそれがあります。太陽光設備で日照条件が変わると、農地に影響が出ることもあるでしょう。
太陽光発電の土地売却でトラブルを回避する方法
ここでは、トラブル対策の方法を4つ紹介します。
土地の調査や太陽光発電業者の比較など、事前の調査が重要です。売買契約書の精査も欠かさず実施しましょう。
まず、太陽光発電用地として売却可能か確認する
まずは、売却する土地が太陽光発電に利用できるのかを確認しましょう。
太陽光発電への適性が確認できれば、売買契約を結んだにもかかわらず停止条件の発動で売却が取りやめられるリスクを抑えられます。
太陽光発電を設置できない土地の場合は、転用の手続きを取る必要があります。ただし、第一種農地や、農業振興地域の区域内にある土地は原則として転用禁止です。これらの土地は、良好な農地を確保するための地目であるためです。
農地転用の手続きは複雑であるため、行政書士への相談をおすすめします。
複数の太陽光発電業者を比較する
複数の太陽光発電事業者を比較して、土地の売却先を検討しましょう。売却価格や契約の条件は、複数の会社を比較すると相場がわかりやすくなります。
以下は、比較する際のポイントです。
- 各会社の太陽光発電事業に関する実績
- 営業担当者や会社全体の顧客対応
- 土地売却の見積もり内容
さらに、取引で不明な点は問い合わせを行い解決を図ることで、不利な条件で売却するリスクが軽減できます。
売買契約書が適正か慎重に見極める
売買契約書の内容が適正かを、慎重に見極める必要があります。
太陽光発電や土地売却の知識がなければ、不利な契約条件を提示されても気づけないおそれがあります。確認しておきたい契約条件は、以下のとおりです。
- 売却価格
- 引き渡しの時期
- 停止条件
- 決済方法
相場よりも不当に安い売却価格ではないか、事業者側が簡単に契約を解除できる条件が付いていないかなどの観点を確認しましょう。
弁護士による契約書チェックの依頼も、効果的な解決策です。
太陽光発電用地としては売却しない(通常売却を検討する)
太陽光発電用地だけではなく、通常の土地売却も検討をしましょう。
太陽光発電用地としての土地売却は、住宅をメインに扱う不動産会社が断るような郊外の土地を買い取ってもらえる可能性があります。
しかし、トラブルに巻き込まれ思ったような売却活動が進まないおそれも存在します。
土地売却のトラブルを避けたい方や売却が難しいと感じたときは、不動産会社への相談をおすすめします。土地の地目や周辺環境を踏まえたうえで、最適な活用方法のアドバイスを受けましょう。
太陽光発電事業者に土地を売却するメリット
太陽光発電用地の売却はトラブルが発生しやすい一方で、事業者に土地を売却することのメリットも存在します。
活用方法が限られる土地や、そもそも売れにくい土地でも、太陽光発電が設置できれば売却の可能性が高まります。
通常の土地活用が難しい場合でも売却の可能性がある
太陽光発電用地の地目である原野や山林は、一般的な住宅や商業施設の用地には不向きです。したがって、不動産会社に相談しても、売却の仲介を断られるケースが多いです。
一方で、通常では扱いづらい土地でも活用できる点が、太陽光発電用地の大きなメリットです。不動産会社が敬遠する土地であるからこそ、太陽光発電事業者に買い取ってもらえる可能性があります。
売れにくい土地でも売却しやすい
通常は売却しづらい土地でも、太陽光発電事業者は積極的に買取活動を実施しています。
活用方法に困っている空き地や相続で入手した土地の活用方法として、太陽光発電の設置は効果的です。
ただし、不動産会社への通常売却に比べると、太陽光発電事業者への売却は安い価格での取引になる傾向にあります。そもそも用途が限られるため、通常売却がしづらいことが原因です。
太陽光発電の土地売却に関するよくある質問
太陽光発電用地の売却について、よくある質問をまとめました。
土地売却の相場や太陽光発電の設置に向いている土地の条件は、太陽光発電用地の売却を検討するときには押さえておきたいポイントです。売却が初めての方は、ぜひ参考にしてください。
土地売却の相場は?
通常の土地売却よりも、太陽光発電用地の売却価格は安くなる傾向にあります。
具体的には、最低でも1坪あたり5,000円の売却価格が見込めます。加えて、日照条件や土地の整備状況などがよければ、より高額での売却も可能でしょう。
しかし太陽光発電用地以外の地目で売却できれば、より高い価格がつく可能性があります。
太陽光発電に向いている土地の条件は?
太陽光発電に向いている土地の特徴がわかれば、売却する土地を選定するときに役立ちます。以下は、太陽光発電に適した土地の条件です。
- 電柱や木などの遮る物がなく、日当たりがよい
- 傾斜が少なく、平地が多い
- 海から離れている
- 地盤が安定している
とくに日照条件は、太陽光発電で重要です。また平地が多いと土地の造成が楽なため、ソーラーパネルを簡単に設置できます。
海との距離や地盤の安定性は、災害リスクを抑えるために必要な条件です。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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