不動産売却をしたら確定申告が必要!? 自分で申告するときの流れを紹介
不動産を売却して利益が出たときは、確定申告が必要になります。購入したときよりも不動産が高く売れて、さまざまな経費で差し引いても利益が出るような場合は、譲渡所得という利益に対して税金がかかり、確定申告をして税金を納めなくてはならないのです。
会社員だとなじみがないかもしれませんが、確定申告は個人でも問題なく行えます。自分で確定申告を行う方法と流れを解説します。
不動産を売却した年は確定申告が必要
不動産を売却したときは、人によって確定申告が必要であったり、必要のなかったりします。
正確には細かく計算する必要があるのですが、おおまかに分けると不動産を購入したときより高く売れたときに確定申告が必要で、購入したときより安く売れたときは確定申告が必要ないことが一般的です。
ただし、損益通算を行うときは、確定申告をする必要があります。損益通算とは、損失と利益を相殺して、所得にかかる税金を節約できる仕組みです。
また、条件を満たして特例が適用されると、税金の負担を大幅に減らせます。こういった特例を利用するときは、確定申告が必要です。
不動産を売却したら確定申告は自分で行う
不動産を売却して利益を得たときは確定申告を行い、納税する義務があります。確定申告を怠ると、所得隠しや納税逃れと判断され、罰せられるおそれがあります。
一方で確定申告には、税金に関する知識が必要です。自分で確定申告を行うことに不安を感じるときは、税理士への依頼をおすすめします。税理士に依頼すれば、作成した書類のチェックや税額の計算などの依頼が可能です。ミスやトラブルを未然に防げます。
不動産売却後に自分で確定申告をする流れ
不動産を売却したときの確定申告は、どのような流れで行うのでしょうか。自分で確定申告をする際の作業を6段階に分けて解説します。書類の準備から納税まで、時間に余裕を持って進めていきましょう。
必要な書類を準備する
確定申告書の用紙と、確定申告書に記載する内容を証明する書類を用意します。
手元にない書類は、公的機関の窓口やWebサイトから入手できます。書類によっては、手続きから入手まで時間がかかるため、期限ギリギリではなく早めに準備をしてください。
特例について調べる
土地売却に伴う確定申告では、適用できる特例がないか調べておきましょう。特例を利用すると、課税対象の譲渡所得から一定額を控除でき、納税額を軽減できます。
なお、特例のなかには併用できるものもあるため、さらなる節税を期待できます。各特例の適用基準やルールをよくチェックしておきましょう。
売却益を確定する
不動産の売却で得た譲渡所得を計算する方法を解説します。譲渡所得に一定の税率をかけた金額が、納税額になります。譲渡所得の計算式は、以下のとおりです。
取得費は、該当の不動産を購入したときに費やした金額です。譲渡費用は、不動産の売却に要した経費を指します。
何が取得費や譲渡費用の対象になるのかがわからないときは、不動産会社、税理士、税務署などの専門家へ相談してください。
書類の記入と作成を進める
金額が確定したら、確定申告書類を作成します。主な作成方法は、以下の3つです。
- 紙に手書きで作成
- 国税庁Webサイト(確定申告書等作成コーナー)で作成
- 確定申告用ソフトで作成
国税庁のWebサイトや確定申告用ソフトは、パソコンで手軽に書類を作成できます。パソコンに慣れない方は、Webブラウザで動作する無料のe-Taxソフト(Web版)がおすすめです。個人事業主や副業などで確定申告を行う方であれば、お手持ちのソフトで対応できます。
書類を税務署に提出する
確定申告の書類は、期限内に税務署へ提出します。不動産売却で譲渡所得を得た人は、確定申告書に加えて以下の書類を提出します。
- 譲渡所得の内訳書
- 売買契約書、領収書のコピー
- 登記事項証明書
提出方法は、e-Taxでの電子申告か、税務署への郵送、税務署への持ち込みから選べます。パソコンで書類を作成したときは、e-Taxでの電子申告が便利です。一方で、窓口に持ち込むと書類不備のチェックや、控えの交付が受けられます。状況や都合に応じて提出方法を選びましょう。
納税をする
申告した所得税額を納付したら、その年の確定申告が終了します。主な納税の方法には次のものがあります。
- 振替納税
- 納付書
- 電子納税
- クレジットカード
振替納税は口座振替依頼書を提出し、指定した口座から引き落としで納税する方法です。納付書は税務署窓口、コンビニ、ATMなどで現金で納付できます。電子納税は、e-Taxで納税できるダイレクト納付と、インターネットバンキングの2種類があります。
「国税クレジットカードお支払サイト」から、クレジットカードによる納付もできます。ただし、クレジットカード会社へ手数料が発生するのでご注意ください。
自分で確定申告をする前に知っておきたいこと
確定申告の仕組みや基礎知識を知っておくと、手続きをスムーズに進められたり、税金を節約できたり、さまざまなメリットがあります。確定申告を行う前に知っておきたいことをまとめましたので、ぜひチェックしてください。
確定申告の基礎知識
確定申告とは、1年間の所得額を税務署に申告する手続きのことです。申告した所得に応じて、定められた所得税を納付します。
確定申告の受付期間は、毎年2月16日〜3月15日です。この期間中に、前年の所得を計算して申告します。
会社員は税金が源泉徴収されて年末調整で還付を受けられるため、基本的に確定申告は不要です。ただし、不動産の売却や株の配当などの所得を得たときは、会社員でも申告の義務が生じます。
取得費と減価償却費
取得費とは不動産の購入で、必要になった費用のことです。取得費に含まれる主な費用は、以下のとおりです。
- 不動産の購入代金
- 印紙税や登録免許税
- 購入時に不動産会社に支払った仲介手数料
- 土地の造成費用や測量費用
建物の取得費を算出する際は、上の費用合計から減価償却費を差し引きます。減価償却費とは経年による不動産の価値低下を踏まえ、使用期間(経過年数)に応じて見積もる費用のことです。非事業用であるマイホームの減価償却費は、以下の式で計算します。
償却率は、建物の構造によって異なります。以下の表を参考にしてください。
区分 | 償却率 |
---|---|
木造 | 0.031 |
木造モルタル | 0.034 |
鉄筋コンクリート | 0.015 |
金属造① | 0.036 |
金属造② | 0.025 |
金属造①は、軽量鉄骨造で骨格材の肉厚が3mm以下のもの、金属造②は骨格材の肉厚が3mm超4mm以下のものを指します。
譲渡費用
譲渡費用とは、不動産の売却活動にかかった費用のことです。次のものなどが譲渡費用にあたります。
- 売却時に不動産会社へ支払った仲介手数料
- 売主が負担した印紙税
- 売却先を変更した際の違約金
不動産の売却に直接かかった費用のみが、譲渡費用として認められます。売却前に発生した建物の修繕費用や、建物にかかる固定資産税などは譲渡費用に含まれません。
譲渡所得と譲渡所得税
譲渡所得は、不動産の売却額から取得費と譲渡費用を差し引いた後に残る所得のことです。譲渡所得税とは、譲渡所得に一定の税率を掛けて算出される税金のことです。譲渡所得税は、復興特別所得税を含む所得税と住民税の2種類をまとめた総称です。
所得税と住民税の税率は、売却した不動産の所有年数によって異なります。
所有年数が5年を超えている長期譲渡所得と、5年以下の短期譲渡所得で税率が異なります。それぞれの税率は次のとおりです。
税金の種類 | 長期譲渡所得の税率 | 短期譲渡所得の税率 |
---|---|---|
所得税 | 15% | 30% |
復興特別所得税 | 0.315% | 0.63% |
住民税率 | 5% | 9% |
合計 | 20.315% | 39.63% |
軽減税率の特例
軽減税率の特例は、10年以上所有したマイホームを売却したときに適用できます。軽減税率の特例を適用すると、譲渡所得にかかる税率は以下のようになります。
譲渡所得が6,000万円以下 | 譲渡所得が6,000万円超 | ||
---|---|---|---|
6,000万円以下の部分 | 6,000万円を超える部分 | ||
所得税 | 10% | 10% | 15% |
復興特別所得税 | 0.21% | 0.21% | 0.315% |
住民税率 | 4% | 4% | 5% |
合計 | 14.21% | 14.21% | 20.315% |
譲渡所得が1億円の計算例は次のとおりです。
軽減税率の特例を適用しない場合の譲渡所得税額
譲渡所得税額=1億円×20.315%=2,031万5,000円
軽減税率の特例を適用した場合の譲渡所得税額
6,000万円以下の部分=6,000万円×14.21%=852万6,000円
6,000万円を超える部分=(1億円-6,000万円)×20.315%=812万6,000円
譲渡所得税の総額=852万6,000円+812万6,000円=1,665万2,000円
前年と前々年に同じ特例を利用していないことや、親族間での売却でないことなどが適用の条件です。
3,000万円特別控除の特例
3.000万円特別控除の特例は、マイホームを売却したときに最高3,000万円を譲渡所得から控除できます。所有期間の長短に関わらず適用が可能です。
この特例を利用するには、売却年を含む過去3年に同じ特例を利用していないこと、親族間の売買でないことなどの条件を満たす必要があります。
3,000万円特別控除の特例と軽減税率の特例は併用できるため、大幅な節税を期待できます。これらの特例を利用するには、確定申告が必要です。
マイホーム買い替えの特例
マイホームを売却して新居を購入したときは、特定のマイホームを買い換えたときの特例が利用できます。この特例では、売却したマイホームにかかる譲渡所得税の納税を、購入した新居を売却するときまで先延ばしにできます。
新居売却時の納税額は、旧居と新居の譲渡所得を足した金額で計算されます。
特例を適用するには2023年(令和5年)12月31日までにマイホームを売却しており、売却した年の前年から翌年までに新居を購入する必要があります。この特例は、軽減税率の特例や3,000万円特別控除の特例と併用できません。
相続財産を譲渡したときの取得費の特例
相続した不動産を売却したときに利用できる特例で、取得費に相続税の一定額を加算することで譲渡所得税を軽減できます。
特例を利用するには、以下の3つの条件があります。
- 相続や遺贈で取得した不動産である
- 取得した人に相続税が課されている
- 相続日から3年10カ月以内に売却する
このように、譲渡所得にかかる税金に対して適用できる特例は複数ありますが、適用できる条件はそれぞれ異なります。詳しくは、不動産会社に相談しましょう。
譲渡損失の特例
譲渡所得を計算した結果、マイナスになることがあります。これを譲渡損失といい、ほかの不動産売買で得た譲渡所得と相殺して課税対象額を少なくできます。この仕組みが、損益通算です。
不動産売却で生じた譲渡損失は、通常は給与所得や事業所得と損益通算できません。しかし一定の条件を満たせば、譲渡損失の特例で給与所得や事業所得と損益通算できます。
譲渡損失の特例を適用できる条件は、主に次のとおりです。
- マイホームを売却した
- 2023年(令和5年)12月31日までにマイホームを売却し、売却した年の前年から翌年までに新居を購入した
- 5年を超えて所有していた など
1年目に損益通算をしても所得から控除しきれなかった損失は、翌年以降3年間にわたって繰越控除ができます。また、不動産を売却した際に売却益が住宅ローンの残債額を下回ったときも、差額の損益通算が可能です。
確定申告に必要な書類
不動産の売却で確定申告を行うときは、確定申告書のほかにも必要な書類があります。それぞれの書類は、税額を算出するときの根拠として用いられます。申告の期限に間に合うよう、早めに用意しておきましょう。
不動産売買契約書
不動産の売買契約書を確定申告書に添付すると、不動産の売却価格や取得費の根拠として利用できます。購入と売却の契約書を、用意してきましょう。
購入時の契約書がなく取得費の判定ができないときは、売却額の5%を取得費として計算します。ただし、不動産の取得費は売却額の5%を上回るケースがほとんどです。取得費が実際の金額よりも低くなると譲渡所得額が増え、それに伴い納税額も増えてしまいます。元の売主や不動産会社に契約書のコピーを依頼する、再発行を依頼するなどして、契約書を準備してください。
売買時の経費の領収書
不動産売買で発生した経費の領収書は、取得費と譲渡費用を計算する際に必要です。主な領収書には、次のものがあります。
購入時(取得費に算入)
- 仲介手数料
- 測量費用
- 登記費用
- 不動産取得税や印紙税などの税金
- 土地の造成費用など
売却時(譲渡費用に算入)
- 仲介手数料
- 印紙税
- 建物の取り壊し費用
- よりよい条件の契約を結ぶために契約解除したときの違約金 など
取得費や譲渡費用に算入可能な領収書を添付していなければ、それだけ譲渡所得が高くなって納税額も増えます。できるだけ多くの領収書を用意しましょう。
登記事項証明書
登記事項証明書は不動産に関する情報を記載した書類で、自身の所有物であったことを証明します。仮に登記事項証明書をなくしても、法務局で再発行が可能です。
売却した、または買い換えた物件の不動産番号を確定申告書に入力すれば、登記事項証明書の添付を省略できます。
不動産番号は、不動産の名義を変更した際に法務局で発行される登記完了書や、法務局から送付される登記識別情報通知に記載されています。
譲渡所得の内訳書
譲渡所得の内訳書は、譲渡所得を構成する売却代金、取得費、譲渡費用の詳細を示すものです。国税庁のWebサイトからフォーマットをダウンロードするか、税務署の窓口で入手して作成します。
国税庁のWebサイトにある「確定申告書等作成コーナー」では、譲渡所得の内訳書をオンラインで作成できます。不動産の情報や各費用の金額を指示に従って入力するだけで作成可能です。自動で計算されるため、計算の手間やミスも減らせるでしょう。
確定申告に不備があるとどうなる?
確定申告は複雑な計算や書類への記入などがあるため、書類不備が起こるおそれがあります。もし、確定申告で不備があったときは、どうなってしまうのでしょうか。
加算税が発生する
申告内容に不備があると、追加で課税されることがあります。特に所得の過少申告は、ペナルティを受けるおそれがあります。加算税には次のものがあります。
- 過少申告加算税(追加で納める税額の10%)
- 無申告加算税(納税額の50万円までは15%、50万円超の部分は20%)
- 重加算税(過少申告で35%、無申告で40%)
- 延滞税
故意の過少申告や無申告には、もっとも厳しい重加算税が課されます。申告の不備に自ら気づいて修正したときは、ペナルティが軽減されます。
税務署からの調査が入る
税務署が申告内容のミスや虚偽記載を疑い、申告者に対して実施する調査が税務調査です。税務調査は、申告内容の不審な点を確認する目的で実施されるものです。申告者には、税務署からの電話や通知書が事前に届き、書類の準備を求められます。
税務調査で実施される内容は、申告者に対する書類の提出依頼や質問です。正当な理由なく調査官の依頼に応じなければ、罰則の対象となるおそれがあります。税務調査を受けるときは、誠実な対応をしましょう。
この記事の編集者
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