その空き家、なぜ売らない?放置の理由ランキング!所有者は今後どうする?
街を歩いていると、明らかに「空き家」だとわかる物件を目にすることがあります。持ち主は、なぜ売らないのでしょうか。
本記事では、空き家を売らない理由をランキング形式で紹介します。
空き家を売らない理由ランキング
総務省が発表している「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年における全国の空き家数は約900万戸と過去最多です。総住宅数に占める割合は13.8%と、こちらも過去最高になっています。
増加傾向にある空き家をなぜ放置しておくのでしょうか。
最初の項では、国土交通省が発表している「令和元年空き家所有者実態調査」をもとに、空き家を売らない理由をランキング別に紹介します。
順位 | 理由 |
---|---|
1位 | 物置として必要 |
2位 | 解体費用をかけたくない |
3位 | さら地にしても使い道がない |
4位 | 好きなときに利用や処分ができなくなる |
5位 | 住宅の質の低さ(古い、狭いなど) |
6位 | 将来、自分や親族が使うかもしれない |
7位 | 取り壊すと固定資産税が高くなる |
8位 | 特に困っていない |
1位:物置として必要
空き家を売らない理由ランキングの1位は、物置としての利用価値があるからです。空き家にしておく理由のうち約60%を占めています。
空き家を所有する多くの人は、日常生活では使わないものの保管場所として使用しています。たとえば、普段は使わないけれど捨てるには惜しい、以下のようなものを保管しているのです。
- 季節用品
- 使用していない家具や家電
- 昔のアルバムや書籍
- 趣味の道具
特に都市部の住宅では収納スペースが限られるため、空き家が保管場所として重宝されます。
また、保管しているものを別の場所に移すには、コストや手間がかかります。そのため、空き家を物置として使用することは理にかなっていると考える人も多いのでしょう。
2位:解体費用をかけたくない
空き家を売らない理由ランキング第2位は、「解体費用をかけたくない」からで、約47%の人が回答しています。
古い家を解体するには数十万円から百万円以上の費用がかかることが多く、その費用の捻出が難しい所有者も少なくありません。
特に、地方の空き家や資産価値が低い物件では解体費用が売却益を上回ることもあり、解体する理由が見つからないと考える人もいます。
さらに、解体後の土地利用についても課題があります。解体しても土地の購入希望者が見つからなければ、固定資産税が増加するリスクも伴います。
特に地方では土地の需要が低いため、解体しても活用方法が見つからない場合が多く、結果として損をするおそれがあります。
解体せずに放置しておけば当面の出費をおさえられるため、多くの空き家が売却されずに残っているのでしょう。
3位:さら地にしても使い道がない
空き家を売らない理由ランキング第3位は、さら地にしても有効な活用方法がないからで、約37%の人が答えています。
2位の「解体費用をかけたくない」という理由とも重複しますが、地方や過疎地域では土地の価値が低いことが少なくありません。さら地にしたところで購入希望者が現れなかったり、地方公共団体(自治体)などでも新しい活用方法が見つからなかったりするケースがほとんどです。
さらに、都市部でも土地の再開発計画が進まない地域や、住宅地としての魅力が低いエリアでは、土地の利用方法が限られてしまいます。
以上の理由により、さら地にしても活用方法が見つからない場合は解体費用とその後の管理費用を考え、多くの空き家がそのままの状態で残り続けているのでしょう。
4位:好きなときに利用や処分ができなくなる
空き家を売らない理由ランキング第4位は、所有者が好きなときに利用や処分ができなくなるからで、約34%の人が回答しています。
空き家を所有していれば、所有者は将来的に利用も処分もできます。
たとえば、定年退職後に田舎に戻って住む予定がある場合や、子どもが独立して家族を持つ際に住む場所として考えている場合は空き家を保有していることで選択肢が増えます。
また、何らかの事情で急に住居が必要になった際、すぐに利用できる家があるという安心感も大きなメリットとなるでしょう。
空き家は売却すると再び取得するには大きなコストがかかるため、一度手放すと再取得が難しいというリスクもあります。
よって、多くの所有者は空き家を手放すことをためらい、結果として空き家が放置されます。
5位:住宅の質の低さ(古い、狭いなど)
空き家を売らない理由ランキング第5位は、建物が古かったり、狭かったりすることが要因となる住宅の質の低さを挙げていて、約33%にものぼります。
古い家は設備が老朽化しているため、給排水や電気設備の修理などが必要なケースが想定されます。修繕やリノベーションには多額の費用がかかるため、買い手が見つかりにくいでしょう。
また、築年数が数十年経過した住宅は、耐震性が十分ではないリスクもあり、現代の耐震基準を満たすには、さらに大規模な改修が必要です。
また、狭い家は現代のライフスタイルに合わず、需要が低い傾向にあります。
現代は広いリビングルームやリビングとダイニングの一体化、複数のベッドルームを希望する傾向にありますが、古い住宅はこれらの要件を満たしていないかもしれません。
そのため、リフォーム費用を考慮するとコストパフォーマンスが悪く、買い手が見つかりにくくなります。
6位:将来、自分や親族が使うかもしれない
空き家を売らない理由ランキング第6位は、将来的な生活の変化を考慮すると自分や親族が使う可能性があるからで約33%です。
たとえば、親が高齢になり介護が必要になった際、空き家があれば利用できるかもしれません。また、子どもが独立して家族を持つ際、住宅が必要になる場合も考えられます。
将来の不確定要素に備えて、空き家を保持しておくことは一種の保険のような役割を果たしています。
さらに、所有者自身がリタイア後に田舎暮らしを希望する場合や、都市部から離れた場所でのんびりとした生活を送りたいと考えている場合もあります。
このような場合は今すぐに売却するよりも、空き家を維持するほうが賢明な選択といえます。
7位:取り壊すと固定資産税が高くなる
空き家を売らない理由ランキング第7位は、固定資産税の軽減を考慮しているからで約26%です。
住宅用地の特例措置により、建物が存在する場合は固定資産税の軽減措置が適用されますが、さら地にすることで税負担が大幅に増加するリスクがあります。
よって、取り壊し費用だけではなく、その後の税負担増加も考慮するなら、空き家をそのまま放置するほうが経済的に有利と考えるケースは少なくありません。
8位:特に困っていない
空き家を売らない理由ランキング第8位は、所有者が特に困っていないからで約25%です。
所有者が現状に満足している場合、空き家をそのままにしておくほうが手間もなく、現状維持がもっとも簡単な選択肢です。
よって、固定資産税が比較的低く、空き家の維持管理にそれほどコストがかからない場合、所有者は空き家をそのまま放置することを選びがちです。
また、空き家が遠方にある場合は頻繁に訪問できないため、現状のまま維持するほうがラクでしょう。
さらに、空き家を所有することに感情的な問題が含まれる場合もあります。たとえば、家族との思い出が詰まった家を手放すことに抵抗を感じる場合や、将来的に何かに利用できるかもしれないという希望がある場合です。
以上の理由から特に大きな問題がない限り、空き家を保持することを選ぶ人は少なくありません。
今後も空き家にしておくつもりの人は約30%
国土交通省が発表している「令和元年空き家所有者実態調査」によると、約3分の1の所有者は今後も空き家にしておく予定と答えています。
一方、今後の空き家について考えを巡らせている人もいます。この項では今後の空き家の利用傾向について、統計をもとに解説していきます。
セカンドハウスとして利用予定の人は約18%
空き家を休暇や週末のリトリート(リフレッシュの手段)として使用する、セカンドハウスとして利用予定の人は約18%です。
これは、都市部に住む人などが都会の騒がしさから離れ、自然に囲まれた環境でリラックスできる、というメリットがあります。
また、家族で過ごす時間を持つための場所としても活用されています。たとえば、夏休みや冬休みなどの長期休暇に家族全員で田舎のセカンドハウスに滞在することで、自然と触れ合いながら充実した時間を過ごせるでしょう。
売る予定の人は約17%
さまざまな理由で空き家を売却して現金化する予定の人は、約17%です。
たとえば、相続で空き家を受け継いだ場合、売却して資金を有効活用しようとするケースは多いでしょう。
特に相続人が遠方に住んでいる場合、空き家の管理やメンテナンスは負担となるため、現金化は最適な選択肢と考えられます。
売却で得た資金は、ほかの投資や生活費に充てることもできます。相続した家を売却した資金を使って、都市部で新たな住宅を購入する場合や、子どもの教育資金として活用する場合もあります。
また、空き家を放置すると状態が悪化するリスクがあるので、修繕費用をおさえるためにも、できるだけ早く売却を検討したいと考えている人も多いでしょう。
取り壊す予定の人は約13%
空き家の老朽化や安全面、周辺環境への影響を考慮して、建物を解体する予定の人は約13%です。
築数十年を経過した木造住宅は、シロアリ被害や雨漏りなどの問題が発生しやすく、修繕費用が膨大になることがあります。このような場合、修繕するよりも取り壊してさら地にしたほうがコストをおさえられるでしょう。
さらに、取り壊し後の土地を再利用もできます。たとえば、新しい住宅を建てたり、駐車場や貸地として活用したりする選択肢があります。
空き家をそのままにしておくのは損かも?その理由とは
空き家の放置には、さまざまな理由があることがわかりました。しかし、空き家をそのままにしておくと、損をしてしまうおそれがあります。
この項では、空き家にしておくと考えられるリスクとその対処法を解説します。
特定(不全)空き家に指定されると、固定資産税が増えるおそれ
空き家をそのままにしておくと、特定(不全)空き家に指定され、固定資産税が大幅に増えるリスクがあります。
特定空き家とは建物の老朽化や管理不全により、周辺住民の生活環境に悪影響を及ぼすと判断された空き家のことです。以下のような建物が該当します。
- 倒壊の危険がある
- 外観が著しく破損している
- 不法侵入が頻発している
特定空き家に指定されると、通常の住宅用地の特例措置が適用されず、固定資産税が最大で6倍に跳ね上がることがあります。よって、所有者にとって大きな経済的負担となりかねません。
さらに、地方公共団体(自治体)から修繕や解体の指導が入り、その指示に従わない場合は、強制的な措置や罰則が科せられることもあります。
近隣からクレームが入ってからでは、対応を急ぐ必要
空き家を放置していると、近隣住民からクレームが入り、対応に労力を要したり、精神的に負担になったりするおそれがあります。
たとえば、雑草が伸び放題になったり、建物が老朽化して危険な状態になっていたりすると、周辺環境に悪影響を及ぼすかもしれません。
そのほかにもゴミの不法投棄が頻繁に行われるようになると、衛生的に問題となり、近隣住民から苦情がきてしまうでしょう。
さらに、空き家が放置されることで不審者が出入りしやすくなり、防犯上の問題も生じます。こうした問題が発生すると、地方公共団体からの改善指導が入り、所有者は速やかに対策を講じる必要があります。
いつか売る予定なら、手遅れになる前に売り出したほうがよい
空き家を将来的に売る予定がある場合、手遅れになる前に売り出すことをおすすめします。
空き家の状態が悪化するほど、修繕費用が増加し、売却価格が低下するリスクが高まります。特に築数十年の木造住宅は、経年劣化によって基礎や屋根、外壁の修繕が必要になる確率が高いでしょう。
また、空き家が市場に出回っている期間が長くなると、買い手の関心が薄れるため、売却の機会を逃すおそれもあります。
さらに、不動産市場の動向も考慮する必要があります。市場が活況を呈している時期に売却することで、高い価格での売却が期待できます。
一方、不動産市場が低迷している時期は価格が下落し、売却が困難になるでしょう。
空き家は売却することで、所有者は経済的な利益を得られ、将来的なリスクを回避できます。手遅れになる前に早めに対応しましょう。
この記事の編集者
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