タワーマンションの未来は空き家だらけ?調査から見えてきた意外な真実
「タワーマンションが空き家だらけになるのでは」という懸念の声が聞こえてきます。しかし、こうした危惧に一石を投じる調査結果が出ました。
タワーマンションの調査から、これまでの予想を覆す事実が見えてきたのです。本記事では、その調査の内容を分析するとともに、タワーマンション(高層マンション)の今後について解説します。
もくじ
タワーマンションが将来、空き家だらけになると懸念される理由
タワーマンション(以下、タワマン)はその豪華な設備と眺望の良さから、多くの人にとって憧れの住まいです。ですが、将来的に空き家だらけになるのではないかという懸念が高まっています。
ここでは、タワマンの空き家問題の理由として、居住者の高齢化を起因とする住み替え、長期的維持や管理のノウハウ不足、修繕積立金不足を起因とした住人満足度の低下といった3つの観点からくわしく解説します。
居住者が高齢になり、より住みやすい家に住み替える
タワマンに住む人々の多くが中高年層であり、将来的には高齢化が進むと予想されます。高齢になると、タワマンのような高層住宅での生活が次第に困難になる場合もあります。
エレベーターの使用頻度が増え、階段の昇降が難しくなるだけでなく、緊急時の避難も大きな問題です。そのため、多くの高齢者がより住みやすい戸建てや低層マンションへの住み替えを検討することが予想されます。
結果として、タワマンの空室率が上昇し、空き家が増加するリスクが高まります。
長期的な維持・管理のノウハウが十分にない
タワマンは、その構造上、長期的な維持・管理が非常に重要です。ですが、多くの管理組合や管理会社は、タワマンの長期的な維持・管理に関する十分なノウハウを持っていません。
特に、建物の老朽化にともなう大規模修繕や、設備の交換が必要となる場合、適切な対応が取れないことも多いのが現状です。
これにより建物の価値が低下し、居住者の離脱を誘引する結果になっています。長期的な視点での維持・管理ができなければ、タワマンは魅力を失い、空き家が増える要因となるでしょう。
修繕積立金不足により、住人の満足度が下がる
タワマンの維持には高額な修繕積立金が必要ですが、多くのマンションでは積立金が不足しているのが現状です。
修繕積立金が不足すると、修繕が必要なタイミングで実施されず、建物や設備の劣化が進み放置されていきます。その結果、住人の生活環境が悪化し、満足度は低下します。
また、多くの修繕費用を負担することになれば、経済的な負担が増え、住人が引っ越しを検討する動きは避けられません。
こうした負の連鎖により、タワマンの住人離れが進み、空き家が増加する原因になります。
タワマンの建設数は減少傾向にある(首都圏)
国土交通省の「令和5年度 住宅経済関連データ」によれば、近年の超高層マンション竣工戸数は減少傾向にあります。
画像引用:国土交通省「(11)超高層マンション竣工戸数の推移(首都圏)」
統計データを見ても、これらの傾向は明らかです。
国土交通省の統計によれば、首都圏における超高層マンションの竣工戸数はここ数年で減少傾向が続いています。2010(平成22)年以前には年間1万戸以上が竣工されていたのに対し、2020(令和2)年以降には年間7千戸程度にまで減少しています。
この動向が経済的、社会的、政策的な要因が複合的に影響していることを示したものであることは、否めません。
これらの背景を踏まえると、首都圏におけるタワマン建設数が減少している現象は、単なる一過性のものではなく、今後も続く可能性が高いと考えられます。
経済的要因
経済的な要因としては、建設コストの上昇が挙げられます。建設資材の価格高騰や労働力の不足により、建設コストは増加傾向です。
そのため、デベロッパーは新規のタワマン建設に対するリスクを慎重に評価し、投資の見直しを行っています。
また、近年の地価上昇も建設コストを押し上げる要因です。特に都心部では地価が高騰しており、土地取得コストが上昇しています。これにより、タワマンの採算性が低下し、一部では新規開発が困難になっています。
社会的要因
社会的な要因として、居住ニーズの変化が挙げられます。以前はタワマンであること自体、居住する際のステータスとして人気がありました。
しかし、近年では家族向けの広い戸建て住宅や低層マンションの需要が増加しています。特にリモートワークの普及により、自宅での生活環境を重視する傾向が顕著です。
そのため、デベロッパーも市場のニーズに合わせた住宅供給にシフトしており、タワマンの新規建設は減少しています。
政策的要因
政策的な要因として、政府や地方公共団体(自治体)による規制の強化が挙げられます。特に、耐震基準の厳格化や建設許可の審査がより厳格化され、近年では新規のタワマン建設が困難な状況です。
また、都市計画の見直しにより、既存インフラの再整備や環境保護を重視する政策が進められています。これらの要因により、タワマン建設が制約されるケースが増えています。
新宿区のタワマンの実態
新宿区は東京都内でも屈指の商業エリアであり、高層ビルの建ち並ぶ風景が広がっています。
ここでは、新宿区におけるタワマンの実態について、新宿区タワーマンション実態調査報告書(令和元年度)の住民や管理組合の回答をもとに、くわしく解説します。
現時点で新宿区での空き家については「ない」と回答した管理者が約92%
新宿区のタワマンの管理組合に対する調査では、現時点での空き家について「ない」との回答が約92%に達しています。これは、新宿区のタワマンが非常に高い入居率を維持している証拠です。
新宿区の便利な立地や充実した生活環境が、多くの住民にとって魅力的に映っていることが伺えます。この高い入居率は、今後も新宿区のタワマン市場が活発に推移することを示唆しています。
修繕積立金は「足りている」管理者「足りていない」管理者で半々の結果に
タワマンの維持管理には修繕積立金が欠かせません。新宿区におけるタワマンの管理組合に対する調査では、修繕積立金が「足りている」と回答した管理者と「足りていない」と回答した管理者はほぼ半々という結果が出ています。
これは、タワマンの長期的な維持管理に対する財政的な課題が存在していることを示唆する結果です。
特に、老朽化が進むタワマンでは、修繕費用が増大する傾向にあり、積立金が不足するケースもあるため、住民や管理組合は計画的な財政管理を行う必要があります。
修繕積立金の滞納率は低い!「ない」と「1%以下」が約82%
修繕積立金の滞納率についての調査では「ない」と「1%以下」と回答した管理者が約82%に上っています。これは、新宿区のタワマン住民が修繕積立金をきちんと支払っていることを示しており、財政面での健全性が高いことを示唆する結果です。
滞納率が低いということは、住民間の協力やしっかりした管理がなされている証拠であり、住環境の維持に対する意識が高いとわかります。
平成21年以降に建設されたタワマンの約67%に不具合あり
新宿区で平成21(2009)年以降に建設されたタワマンの約67%に何らかの不具合が発生していることが報告されています。これらの不具合には、設備故障、汚破損、地下の漏水といったものが含まれます。
これは、近年建設されたタワマンでも定期的なメンテナンスが不可欠であることを示唆する結果です。
建物の品質管理や施工の精度に対する注意が必要であり、住民や管理組合は不具合の早期発見と対処に努めることが求められます。
世帯主は50代が最多
新宿区のタワマンに住む世帯主の年齢層を調査したところ、50代がもっとも多いという結果が出ています。これは、タワマンが比較的高価であるため、経済的に余裕のある世代が多く住んでいることを示した結果です。
50代は仕事や家庭が安定していることも多く、生活の質を重視する傾向があります。そのため、便利な立地と充実した設備を持つタワマンが選ばれています。
この年齢層の居住者が多いことで、タワマンの住民構成に一定の安定感がもたらされています。
住んでみた感想は「良かった」「住み続けたい」の回答が最多
新宿区のタワマンに実際に住んでいる住民の感想を調査したところ、「良かった」「住み続けたい」という回答がもっとも多い結果となりました。
多くの住民がタワマン生活に満足しており、その理由としては、立地の良さや眺望、充実した設備、管理体制の良さなどが挙げられ、これらの要素が住民の高い満足度につながっています。
特に、日常生活の利便性や快適さが評価されており、新宿区のタワマンが高い居住満足度を提供していることは明らかです。
高齢者ほど永住志向が強い
調査では、新宿区のタワマンに住む高齢者の多くが永住志向を持つことが明らかになりました。高齢者は生活の安定性や利便性を重視するため、一度住み慣れた環境から移動することを避ける傾向が顕著です。
新宿区のタワマンは、医療施設や商業施設へのアクセスが良く、日常生活の利便性が高いため、高齢者にとって魅力的な住環境だといえます。そのため、高齢者の永住志向が高くなり、住み替え需要が少なくなる傾向です。
江東区のタワマンは、それ以外のマンションより計画的な大規模修繕が実施
江東区は、東京都内でも特にタワマンが多く建ち並ぶエリアとして知られています。タワマンの住民が長期的に住み続けるためには、計画的な大規模修繕が不可欠です。
江東区のタワマンは、ほかのマンションと比較して計画的な大規模修繕が実施されていることが特筆すべき点です。江東区のタワマンはその構造と規模から、特に修繕が重要視されています。
江東区の「マンション実態調査報告書(令和4年3月)」によれば、多くのタワマンが修繕積立金の計画的な運用を行い、必要な時期に適切な大規模修繕が実施されています。これにより建物の劣化を防ぎ、長期間にわたり安全で快適な住環境を維持することが可能です。
また、江東区のタワマンは、大規模修繕に関する具体的な計画が立てられ、定期的な点検とメンテナンスが実施されています。
築10年、20年、30年といった節目ごとに大規模修繕が計画され、各段階で必要な修繕内容は明確です。これにより、突発的な故障や不具合に対処するだけでなく、予防的な修繕を実施することで、建物全体の耐久性を高めています。
さらに、江東区ではタワマンの管理組合が中心となり、住民の意見を反映した修繕計画が策定されています。この計画は、管理組合が建築士などの専門家と連携した修繕の必要性や優先順位を検討した結果です。
一方で、江東区はタワマンに対する支援制度も充実しています。修繕積立金の不足に対する助成や、技術的サポートを提供することで、タワマンの大規模修繕が円滑に進むよう支援しています。
これは、住民や管理組合が抱える経済的な負担を軽減し、計画的な修繕の実施を後押しできる制度です。
江東区のタワマンは計画的な大規模修繕がほかのマンションよりも実施され、その背景には管理組合の積極的な取り組みと区の支援制度があります。
【真相】タワマンが空き家だらけになるとは言い切れない
タワマンが将来、空き家だらけになるとの懸念が一部で広がっています。ですが、すべてのタワマンがこのような状況に陥るとは言い切れません。
実際には、空き家になるタワマンもあれば、安定して稼働するタワマンも存在する可能性があります。以下では、その根拠となる事例をいくつか紹介します。
- バリアフリー化などの対策を実施している管理者が多い
- 修繕積立金が不足するタワマンと、そうでないタワマンが存在する
- 住民のコミュニティが強固であるタワマンも多い
- 新しい技術を導入しているタワマン
一部のタワマン管理者は、高齢化社会を見すえてバリアフリー化を進めています。
たとえば、エレベーターの大型化や手すりの設置、段差の解消などは、住人が長く快適に住むための取り組み事例の一部です。こういった対策は、高齢者でも長期的に住みやすくなり、空き家の発生を抑える効果があります。
修繕積立金が不足しているタワマンでは、必要な修繕が実施されず、建物の劣化が進む危険性もあります。
一方で、計画的に積立金を確保し、大規模修繕を適切に実施しているタワマンも多く存在することも事実です。こうしたタワマンでは、建物の維持管理が行き届いているため、住民の満足度が高く、空き家のリスクは低くなります。
住民間のコミュニティが強固なタワマンでは、住民同士の協力体制が整い、管理運営もスムーズに行われています。
定期的なイベントやコミュニティ活動を通じて、住民の結束力が高まり、住み続けたいと感じる住民が増加します。このような動きも空き家対策となる要因です。
最新の建築技術やスマートホーム機能を取り入れたタワマンは、居住環境が快適でたいへん便利です。このようなタワマンは、若い世代やテクノロジーに敏感な人々からの人気を集め、安定稼働が期待できます。
これらの事例からわかるように、すべてのタワマンが空き家だらけになるわけではありません。適切な管理と対策を講じているタワマンは、長期にわたって安定して稼働し続ける可能性を秘めています。
タワマンの将来については、個別の状況や対策次第で大きく異なる点を考慮することが重要です。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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