不動産を売却するときの消費税-課税事業者の場合の注意点
不動産を売却するときに、重要なポイントになるのが消費税です。特に、売主が課税事業者の場合は注意が必要です。課税事業者の不動産売却には、原則として売却価格に消費税が課税されます。不動産の売却による消費税の納付には、確定申告が必要となります。
不動産売却にともなう仲介手数料や諸経費も、売主が課税事業者の場合は消費税の対象です。売却価格に消費税を上乗せできない場合であっても、これらの経費にかかる消費税は仕入税額控除の対象となります。
課税事業者は不動産売却時の消費税の取り扱いについて十分理解して、適切に処理しなければいけません。ここでは、複雑だといわれる課税事業者が不動産を売却するときの消費税について、基本的なしくみと注意点をわかりやすく解説します。
もくじ
不動産を売却するときに、消費税はかかる?
不動産を売却するときの消費税は、売主が消費税の課税事業者であるかどうかによって扱いが変わってきます。原則として、個人が所有する不動産の売却は消費税が非課税です。一方、課税事業者の法人や個人事業主が事業用として所有している不動産を売却する場合は、消費税の課税対象となります。
不動産売却と消費税の関係について理解することは、適切な税務処理を行う上で非常に重要です。消費税の課税・非課税の判断を誤ると、予期しない税負担が生じる可能性があるので、十分に注意しましょう。
不動産売却時に消費税が課税されるケース
売主が課税事業者の個人事業主や法人の場合は、原則として事業用不動産の売却時に消費税が課税されます。課税事業者とは、法人や個人事業主で、その事業において課税売上高が「1,000万円を超える事業者」のことです。
ただし、課税事業者の事業用不動産であっても、一定の要件を満たせば非課税となる場合があります。たとえば、個人事業主が事業を廃止して2年以内に事業用不動産を売却する場合、解散した法人が清算期間内に不動産を売却する場合などです。
また、居住用として使う住宅の売却も、課税事業者の法人や個人事業主が事業として売却する場合は課税対象となります。
消費税が非課税となる不動産売却のケース
消費税を納める必要がない免税事業者が不動産を売却した場合は、売却による消費税は発生しません。ただし、免税業者が事業用不動産を売却したことによって課税売上が1,000万円を超えると、翌年から課税事業者になる可能性があります。
居住用の中古住宅を個人間で売買するときは、非課税となります。
課税の対象となるのは、建物のみです。土地の売却は、商品やサービスの消費ではなく、「資本の移転」であると解釈されることから、売主が課税事業者でも非課税です。しかし、宅地造成を目的とした土地の売却は、造成工事費に消費税が含まれるため、消費税を含む造成工事費が上乗せされて売却価格が決まることが多くなっています。
課税事業者が不動産を売却するときの注意点
課税事業者が課税対象の不動産を売却するときには、売却価格に消費税を上乗せする必要があります。2024年時点での消費税率は10%ですので、たとえば1億円の不動産を売却する場合は、消費税は1,000万円となり、買主から1億1,000万円を受け取ることになります。
課税事業者が不動産を売却する場合の仕入税額控除
課税事業者が不動産を売却する場合、不動産の取得時や保有期間中に支払った消費税について、仕入税額控除を受けることが可能です。仕入税額控除とは、事業者が商品やサービスを仕入れたときに支払った消費税を、売上にかかる消費税から差し引くことができる制度です。
不動産売却では、建物の建築費用や修繕費、不動産取得時の仲介手数料などに含まれる消費税が、仕入税額控除の対象となります。仕入税額控除を受けるためには、適切な会計処理と税務申告が必要です。売上と仕入を正しく計上して、控除対象となる消費税額を算出しなければなりません。
仕入税額控除は、課税売上割合(総売上の中で課税売上高が占める割合)が95%以上の場合は消費税額の全額が控除されますが、課税売上割合が95%未満の場合は仕入等に関する消費税額の中で課税売上に対応する部分のみ控除されます。
課税事業者が免税事業者に転じた場合や、不動産を非課税取引で売却した場合は、過去に受けた仕入税額控除の一部を返還する必要があります。これを税務用語で「調整対象固定資産に係る消費税額の調整」といい、税務上の注意点の一つです。
なお、2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されたことによって、不動産売却による仕入税額控除を受けるためには、適格請求書発行事業者として登録する必要があります。
課税事業者が不動産を売却するときの必要書類
課税事業者が不動産を売却するときには、売買契約書や不動産登記簿謄本など一般的な不動産売買の必要書類に加えて、消費税に関する書類の作成・保管が必要となります。
書類は、税務申告の際に必要になるだけでなく、将来の税務調査に備えて適切に保管しておくことが求められます。
1. 請求書または領収書
売却価格に消費税を上乗せした金額を記載した請求書や領収書を作成して、買主に交付する必要があります。この書類には、売主・買主の情報、不動産の詳細、売却価格、消費税額などを明記します。
2. 帳簿および証憑書類
不動産売却によって生じた収入や経費について帳簿に記録して、証憑書類(取引が完了したことを示す書類)を保管しなければなりません。
3. 消費税額の計算資料
不動産売却にかかる消費税額の計算の過程を示す資料を作成して、保管しておくことが必要となります。この書類には、売上に対しての消費税額や仕入税額控除の金額、控除対象外の消費税額などを記載します。
まとめ
課税事業者が不動産を売却する場合は、消費税の処理が複雑になる傾向があります。したがって、毎年の税制の変更にも注意を払いながら、適切な税務処理を行うことが求められます。不動産売却時の仲介手数料や諸経費にかかる消費税についても、適切に処理する必要があります。課税事業者が不動産を売却するときには、以下の点に留意しましょう。
- 不動産の種類や用途、売却先によって、消費税の課税・非課税が異なる
- 売却価格への消費税の上乗せ、仲介手数料等の経費にかかる消費税の処理
- 仕入税額控除の適用と適切な会計処理・税務申告
- 免税事業者への転換や非課税取引の場合における消費税額の調整
- 消費税に関する必要書類の作成・保管
不動産の売却は、個人にとっても法人にとっても重要な経済活動の一つです。不動産売却時の消費税は、売却物件の種類や用途、売却のタイミングなどによって課税・非課税が判断されます。
不動産売却時の消費税について理解を深め、不明な点があれば必要に応じて税理士などの専門家に相談してサポートを受けることをおすすめします。トラブルを避け、円滑な取引ができて、安心して不動産売却に臨むことができるでしょう。
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2022年からリビンマッチのコラム記事の執筆・編集を担当しています。不動産の財産分与に関する記事執筆が得意です。住宅設備機器の専門商社に6年間従事した知識と経験を活かして、不動産に関する知りたかったこと、知っておいた方がいいことをわかりやすく伝えられるように心がけています。
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