【家の相続】兄弟げんかを防ぐために事前に理解しておくべきこと
親の家を兄弟で相続する際、トラブルに巻き込まれないためには事前の知識と準備が欠かせません。相続は本来、故人を偲び、残された家族の絆を深める大切な機会のはずです。しかし、相続財産の分配をめぐって兄弟間の関係が悪化し、泥沼の争いに発展するケースが後を絶たないのです。
「自分の家族なら、そんなことにはならない」と思うかもしれません。しかし、家は遺産のなかでも大きな割合を占めるため、どんなに仲の良い兄弟であっても相続をめぐり険悪な関係になるリスクがあります。
最悪の場合、裁判にまで発展し、お金も時間も感情も浪費することになりかねません。そうなる前に家の相続について正しい知識を身につけ、ルールに則った適切な分割方法を理解しましょう。
もくじ
兄弟で家を相続するときの流れ
家を兄弟で相続するときは、以下の流れで進めていきます。
- 遺産と相続人をすべて洗い出す
- 相続人同士で話し合いをして相続方法を決める
兄弟間の相続トラブルは、多額の相続財産がある富裕層だけの問題だと考えがちですが、実際はそうではありません。特に親の遺産の多くを家が占めている場合、トラブルが発生しやすい傾向にあります。そのため、相続の流れをしっかりと把握し、ルールに則って手続きを進めることが大切です。
遺産と相続人をすべて洗い出す
相続の手続きを行う場合、亡くなった人のことを「被相続人」、被相続人の財産を「遺産」と呼びます。
遺産の対象となる財産には下記のようなものがあります。
- 土地・建物・山林などの不動産
- 預貯金などの現金
- 株式などの有価証券
- 自動車
- 宝石などの貴金属
上記に挙げた「プラスの財産」だけでなく、負債や損害賠償責任など「マイナスの財産」もすべて「遺産」です。
相続の手続きは、こうした被相続人の財産のすべての価値を正確に算出し、合算したうえで行います。
家の土地だけでなく田んぼや畑など複数の不動産がある場合は、市町村の役所で固定資産税課税台帳を所有者ごとにまとめた「名寄張」を取得し、被相続人が所有していた不動産を一覧で確認します。
また、被相続人の財産を受け継ぐ権利を持つ相続人についても、現状の配偶者とその子供だけでなく、相続権を持つ人物をすべて洗い出す必要があります。
たとえば、亡くなった父親に離婚した前妻がいた場合、前妻との間に設けた子にも相続権があります。そのため、相続が発生した時点で連絡を取り、相続権があることを伝えて遺産分割協議に参加してもらわなければなりません。
家を相続するのが兄弟だけだと思っていても、調べてみると新たな相続人が見つかる可能性があります。相続が終わった後に新たな相続人が見つかると、やり直しになるリスクもあるため事前に確認しておきましょう。
相続人同士で話し合いをして相続方法を決める
「法定相続人」とは、民法で定められた被相続人の財産を相続できる人のことです。遺言書がある場合は、法定相続人に限らず相続ができます。しかし、遺言書がない場合は、基本的に法定相続人同士で遺産分割について協議し、相続の方法を決めることになります。
遺産分割協議は兄弟だけでなく法定相続人全員が参加しなければなりません。また、民法が定める「法定相続分」にしたがって、被相続人の子は遺産を平等に分割することが基本です。昔のように「長男がすべて相続する」ということはできません。
また、法定相続分とは、相続人が2人以上いる場合の相続割合のことです。それぞれの割合については、下記の表を参照してください。
分母は相続財産全体です。
相続順位 | 法定相続人 | 法定相続分 | 備考 |
---|---|---|---|
第一順位 |
配偶者 子 |
配偶者:1/2 子:1/2 |
子が複数いる場合 1/2を等分 |
第二順位 |
配偶者 親 |
配偶者:2/3 親:1/3 |
両親とも健在の場合 1/3を2等分 |
第三順位 |
配偶者 兄弟 |
配偶者:3/4 兄弟:1/4 |
兄弟が複数いる場合 1/4を等分 |
財産の相続人が被相続人の子だけだった場合、人数に応じて財産を等分します。合意が無い限り、兄弟によって割合が変わることは基本的にありません。
遺書があればその通りに相続する
民法で定める法定相続分はあくまで基準となる割合であり、遺言で相続分の内容が指定されている場合や相続人同士が合意していれば、法定相続分に従う必要はありません。
また、遺言書で遺産がまったく相続されなかった相続人でも「遺留分」は請求できます。遺留分は、通常は法定相続分の1/2です。(親などの直系尊属のみが相続人の場合は1/3です)。
相続する家を分割する方法
相続財産のなかでも家は公平に分割が難しく、トラブルにつながりやすい財産です。
ここでは、代表的な以下の4つの分割方法の仕組みについて解説します。
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
- 共有分割
また、それぞれの分割方法のトラブルになりやすいポイントも理解しておきましょう。
現物分割
現物分割とは、遺産をそのままの状態で分割する方法です。相続の基本的な考え方で、最も広く一般的に行われている分割方法です。たとえば、被相続人の遺産に家と車、現金があった場合、被相続人の配偶者が家を相続し、長男が車、次男が現金といったように遺産単位で分割をします。
ただし、相続財産の大部分を不動産が占めている場合、現物分割は現実的ではありません。
土地の場合は分筆してから相続が可能ですが、土地のうえに建物が建っている場合やマンションの場合は物理的な分割が難しくなるためです。仮に遺産が親が住んでいた家のみという場合、相続人の選定に関して、しばしばトラブルに発展しやすくなるのです。
また、土地を分割する場合も、分割によって資産価値が著しく下がってしまうケースがあります。接道状況などによって資産価値にばらつきが生じ、どの区画を誰が相続するかについてトラブルになることがあるため注意が必要です。
換価分割
換価分割は遺産となる不動産を売却し、その売却益を相続人同士で公平に分配する分割方法です。換価分割は遺産を公平に分割できるほか、現金化すれば相続税の納税資金として使えるメリットがあります。
ただし、立地条件によっては売却に時間がかかることや、希望価格で売れないということもあります。反対に、相続税評価額より高値で売れた場合、支払う相続税が増えてしまうケースもあります。
もう1点気をつけたいのが、親が家を購入した時期や価格が書類などで確認できない場合です。家を売って利益が出た場合、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた残りに対して譲渡所得税がかかります。
しかし、「みなし取得費」は売却価格の5%となるため、譲渡所得税が高額になってしまう可能性があるのです。
代償分割
代償分割は1人の相続人が家などを相続する代わりに、ほかの相続人に代償金を支払う方法です。
一般的に農業や事業などの家業に関連する不動産を相続する場合や、同居していた家族が自宅を相続する場合に取られる分割方法です。
しかし、家を引き継ぐ相続人がほかの相続人に代償金を支払えない場合、トラブルに発展しやすくなります。被相続人の財産が家業に関連する不動産のみという場合、事前に遺言書を作成しておく、遺留分相当額の生命保険に加入しておく、といった相続対策が必要です。
共有分割
共有分割は親の家など不動産を相続人全員で共有する分割方法で、現物分割の一種です。建物が付いた土地やマンションなども、相続割合に応じて公平に分割ができるため、遺産分割協議は比較的スムーズに進むというメリットがあります。
ただし、その後の売却や修繕の際には全員の合意が必要となるため、相続人間でトラブルが発生しやすくなります。また、相続が繰り返されると共有者が増え続け、権利関係が複雑化して管理が困難になるリスクがあります。
共有相続が数世代にわたって繰り返された結果、権利者が100人以上存在するというケースもあります。このような状況は「メガ共有」と呼ばれ、社会問題になっています。
家の相続について兄弟間で話がまとまらないときの対策
家の相続では、「住む予定はないなら換価分割で公平に現金で分けたい」「思い入れのある実家を手放したくない」「住む予定はないし税金の負担もあるので放棄したい」など、それぞれの相続人の主張が平行線で進まず、何年も話し合いが難航することがあります。
相続を知った時から3年以内に相続登記を行うことが義務化されたため、協議がまとまらない場合でも相続登記を行っておくことが重要です。自分一人でも法定相続分の名義変更の登記申請が可能ですが、協議が難航している場合は一旦、共有相続をしておくケースが多いでしょう。
第三者に間に入ってもらう
トラブルになりやすい事例として、相続人が兄弟に代償金を支払えないため、遺留分を請求する申し立てを起こすケースがあります。相続人は、家業を引き継いだり実家の家に住み続けていたりします。
家業を引き継いだり実家の家に住み続けていたりする
このように、遺産分割協議で兄弟間の話し合いが難航してしまうと、なかには年単位で話し合いが難航してしまうこともあります。
そうなる前に、弁護士に依頼をして専門的なアドバイスをもらいましょう。調停委員の話には耳を貸さないという人も、法律の専門家である弁護士の話であれば耳を傾けてくれることがあります。
亡くなった方の立場を考えると、自分が死んだ後に兄弟間で相続トラブルが起こることほど悲しいことはありません。そのようなトラブルを避けるためにも、できれば生前に弁護士を介して相続人全員が納得のいく形で遺産分割の合意をとっておくことが望ましいでしょう。
調停または裁判で決着をつける
兄弟間での遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所の遺産分割調停や審判手続を利用できます。調停手続では、各相続人の主張の聞き取りや必要に応じて鑑定を行ったうえで、調停委員が解決案を提示し、合意を目指して話し合いが進められます。
月に1回のペースで毎回1〜2時間ほど話し合いが行われ、解決までの回数はおよそ6〜10回ほどです。一般的に半年〜1年ほど期間がかかることは覚悟しておきましょう。調停で合意が成立すれば、裁判所が合意内容を証明してくれるため、後の紛争リスクが軽減されます。
また、話し合いが不調に終わり調停が不成立となった場合は、自動的に審判手続が開始され、裁判官が審判を行います。裁判になった場合、すでに当事者間の人間関係はこじれていることが多いため、原則として共有分割にはなりません。
そのため、代償分割で代償金の支払いを命じられるか、それが難しい場合は競売などで家を現金化し、公平に分配される(換価分割)ケースが多くなります。
換価分割で分割するなら一括不動産サイトがおすすめ
家の相続で換価分割を選択した場合、不動産を売却して相続人で分配します。しかし、不動産の売却には時間がかかることが多く、また、適正価格で売却できるかどうかは不動産会社の選択に大きく左右されます。
そこでおすすめなのが、不動産の一括査定サイト「リビンマッチ」です。リビンマッチは、一度の申込みで複数の不動産会社から売却査定を受けられるサービスです。各社の査定価格を比較することで、より高値で売却できる可能性が高まります。また、複数の不動産会社のなかから相性のよいところに依頼できます。
相続が発生した直後は、葬儀の手配や遺産の整理など、やるべきことが山積みで、不動産の売却にまで手が回らないことが多いものです。
しかし、リビンマッチなら、最短45秒で複数の不動産会社に一括で査定依頼ができるため、バタバタしている最中でも効率的に売却活動を進められます。リビンマッチは完全無料で利用できるため、ぜひこの機会にご活用ください。
2022年からリビンマッチのコラム記事の執筆・編集を担当しています。不動産の財産分与に関する記事執筆が得意です。住宅設備機器の専門商社に6年間従事した知識と経験を活かして、不動産に関する知りたかったこと、知っておいた方がいいことをわかりやすく伝えられるように心がけています。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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