「住宅ローンの返済で苦しい」ギリギリ生活を解消する方法を銀行員が解説
住宅ローンの返済が重荷になって、生活がギリギリになってしまった。そんなときは、どのようにすればよいのでしょうか。
住宅ローンの返済が苦しいときには、いくつかの対処法があります。ただ返済に苦しむのではなく、どのような対処法があるのかを把握しておきましょう。
住宅ローンの返済が苦しくなる原因
住宅ローンの返済期間は35年、最近では50年など、人によっては人生の3分の1から半分以上の期間を要します。返済を続けているうちに、生活のなかでさまざまな変化が生じます。よいことも悪いこともいろいろですが、なかでも住宅ローンの返済が苦しくなることもいくつか潜んでいます。
私は銀行員として、住宅ローンの返済が苦しいと相談を受け、住宅ローンの返済ができなくなった人への対応をしてきました。どうして住宅ローンの返済が苦しくなるのでしょう。その原因を探っていきましょう。
住宅ローンの返済計画が甘かった
住宅ローンを申し込むと「返済計画」「返済比率」といった言葉が何度も登場します。返済計画というと難しく感じてしまいますが、要は「住宅ローンという借金を、どうやってやりくりし返済していくか」ということです。
返済比率も「住宅ローンを借りる人の年収に対して、返済額がどれくらいの割合を占めるか」というものです。住宅ローンは「返済比率は年収の30%以下が理想」と一般的にいわれています。つまり年収300万円の人なら、年間100万円の住宅ローン返済があると返済比率30%という理想的な範囲、ということです。
しかし、ここでいう年収は「支給額」で、税込み(税引前)の金額で、そこから税金や健康保険、年金などが引かれた「手取り年収」ではないことに注意が必要です。
たとえば、年収600万円の人が年間120万円の住宅ローン返済なら、返済比率は20%(120万円÷600万円)で、理想の返済比率よりさらに低いので余裕があるように感じられます。ところが、年収600万円を月収にすると50万円で、手取りは40万円程度です。
現実問題として、手取り40万円の家計で月々10万円の住宅ローンはかなりきついと思われます。なぜなら、手取りから住宅ローンを払い、残りのお金で生活費をやりくりすることになるためです。
不動産会社や銀行員が住宅ローンのシミュレーションをしてくれますが、ここで計算する年収は支給額で計算する場合がほとんどなので「不動産会社や銀行員のいうとおりにしたのに返済に行き詰まった住宅ローン地獄」といったことが起こります。
思わぬ失業、病気などで収入が減った
思わぬ失業や、病気などで収入が激変することも、人生のなかではよくあることです。こうした突発的な事態は、誰にでも起こりうることなので、計画が甘いなどと責められるようなことはないでしょう。
過去にも不況や世界規模の経済変動(リーマンショックなど)のときには、住宅ローンを払えない人が急増したことがあります。
突発的な事態は突発的だからこそ、日ごろからの備えが大切です。収入保障保険や医療保険などの保険加入は有効な手段ですが、保険料の負担が増えるうえに、何ごとも起きなければ保険料は無駄になってしまいます。選択と決断は慎重に検討しましょう。
出産(産休・育休)など生活の変化や離婚・別居
ペアローンは夫婦ふたりの収入をもとに住宅ローンの融資を受けられるため、大きな金額を借りられるのがメリットです。しかし、女性には出産や育休で働けなくなる時期があるため、一時的に住宅ローンの支払いが難しくなることがあります。
女性パートナーの出産や産休・育休は制度も拡充され、どの会社でも普通のことになりつつあります。産休・育休期間中の給与面でのサポートなども拡充する企業が増えているものの、それでもフルタイムで働いていたときと比べれば、どうしても収入は減少してしまいます。
そうした収入減少に対し、貯蓄などで備えていないと、住宅ローンの返済が苦しくなってしまいます。また、離婚や別居でも生活が大きく変化し、住宅ローンの支払いが困難になることもあります。
「住宅ローンで苦しい」状態から脱出する3つの選択肢
住宅ローンの負担が重くなりそう、すでに負担が重くなっている、といったときにやるべきことはいくつかあります。
まず、生活や収支を見直すことが、最優先にやるべきことです。しかし、住宅ローンでギリギリの生活をしている人は、生活費の切り詰めなどできることはすでに実践しているでしょう。そこで、これから考えられる方法を3つ紹介します。
借り換え――低金利への借り換えで返済を減らす
低金利の住宅ローンに借り換えられたら、返済額を減らせます。そのため、自分の金利を見直して、借り換えのメリットを検討するのはひとつの選択肢です。
ただし、いまは住宅ローン金利が低くなっているため、借り換えで返済額が減るかどうか、返済以外のデメリットがないかなどを確認する必要があります。
リスケ――金融機関に相談して返済計画を見直す
リスケジュール(リスケ)は、住宅ローンの返済条件を見直して、返済を続けられる金額まで一時的に返済額を減らす救済措置です。
ただし、リスケは借金を減額するのではなく、単に返済を繰り延べしているだけなので、いつかはもとに戻さなければなりません。住宅ローンを完済するまでの期間が延びることにも注意が必要です。
また、銀行がリスケ対応するにも、それで返済を続けられるのかの審査を受けます。そのため、すべての人がリスケをしてもらえるわけではありません。
任意売却――売却できれば借入金を大幅に軽減可能
任意売却とは住宅ローン返済中の自宅を、金融機関の許可を得て売りに出すことをいいます。住宅ローンを返済できなくなって自宅を競売にかけられると、市場価格より大幅に低い金額で売却することになります。
しかし、任意売却であれば不動産会社の仲介で売り出せるため、市場価格で自宅を売り出すことが可能です。金融機関の借入金を売却代金で返済し、残債があれば分割で返済していくことになります。自宅は失うものの、住宅ローンの負担を大きく軽減できるでしょう。
生活がギリギリでも絶対にやってはいけないこと
生活がギリギリで住宅ローンの返済が困難になっても、絶対にやってはいけないことがあります。
- 返済を無視する
- クレームで返済を減らそうとする
- お金を借りて返済する
住宅ローンの返済をより困難にしてしまう、絶対にやってはいけないことを見てきましょう。
返済を無視する
生活に疲れ果ててしまい、返済のことも考えたくないと無視する人も少なからずいます。こうなると、銀行からの返済をお願いする電話に出ない、電話に出ても返済について明確に答えない、あるいは督促状などが来ても読まずに捨ててしまうといったように、問題から目を背けてしまいます。
しかしこれは、問題から逃避しているだけで、ひとつも自分にとってプラスのことはありません。
クレームで返済を減らそうとする
返済が苦しいからと「住宅ローンの返済がこんなに多くなるとは聞いていなかった」などといって、クレームで返済を減らそうとする人がいます。実際にこういったケースに対応したことがありますが、クレームで返済は減らせません。根拠のないクレームをつけても、自分のためになることはひとつもありません。
お金を借りて返済する
住宅ローンの返済が苦しいからといって、ほかの金融機関からお金を借りて返済に回すのは、多重債務への入口です。絶対にやってはいけないことのひとつです。
一時的に住宅ローンを返済できたとしても、借金がどんどん増えていくだけなので避けてください。
持ち家、マンションを売却して住宅ローンを解消する
住宅ローンの返済が苦しくなったら、自宅を売却して返済に回すのは有効な手段のひとつです。せっかく購入した家を失うのは心苦しいかも知れませんが、住宅ローンの重荷を解消できることがあります。
住宅ローンを返済中の持ち家、マンションを売却するために知っておくことを解説します。
アンダーローンなら売却が可能
まず大原則として、住宅ローン返済中の自宅は担保になっています。そのため、売却するには金融機関の許可が必要です。住宅ローンの残債より自宅の価値が上回っていることをアンダーローンといいますが、その状態であれば金融機関の許可を得られる可能性が高いでしょう。
金融機関の許可を得られたら、不動産会社と媒介契約を結んで売りに出せます。
オーバーローンでも任意売却ができる
自宅の売却価格より住宅ローンの残債が大きいことを、オーバーローンといいます。金融機関はオーバーローンの状態だと、売却の許可を出すことは認めてくれません。自宅を売却したとしても全額返済されず、住宅ローンが残ってしまうためです。
しかし最近では金融機関の対応は、かなり柔軟になってきています。以前は認めなかったオーバーローンの売却でも、しっかりとした返済計画を確認できる場合であれば、売却を認めてくれることがあります。ただ、必ず認められるわけではないので、事前に不動産会社と相談して、しっかりとした返済計画を作成しましょう。
住宅ローン返済中の自宅売却は不動産会社に相談
住宅ローン返済中に自宅を売却するには、まずどれだけの金額で売却できるのかを把握する必要があります。そのために、まず住宅ローンの残債を調べて、不動産会社へ自宅の査定を依頼しましょう。不動産会社の査定価格で、アンダーローンかオーバーローンかを判断できます。
扱う物件の得手不得手があるため、不動産会社によって査定価格に差が生じることがあります。複数の不動産会社に査定を依頼し、より確実性の高い査定価格を把握しましょう。
複数の不動産会社へ査定を依頼するには、一括査定サイトを利用すると便利です。物件情報を一度入力するだけで、複数の不動産会社へ査定を依頼できるため、大幅に手間を省けます。
一括査定サイトの「リビンマッチ」であれば、チャット形式で質問に答えていくだけなので、簡単に入力できます。まずはリビンマッチを利用して、査定価格を調べてみましょう。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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