60代で住み替えても大丈夫?失敗しない老後の住まいの選択肢
定年退職をしたあとは、通勤に便利な地域に住み続ける必要はありません。自分にとって住みやすい地域に住み替えるのもよいでしょう。
しかし、60代になってからの住み替えには、誰しもが不安を抱くと思います。住み替えに失敗したとしても、もう定期収入がないのです。老後の住み替えに失敗しないために、知っておきたいことを解説します。
もくじ
「60代の住み替え」で得られる大きなメリット
60代に住み替えを行うメリットには、次のようなものが考えられます。
- コンパクトな住宅に住み替えられる
- シニア向けの使いやすい住宅に住み替えられる
- 自分たちで使いやすいようにリノベーションができる
- 田舎などの住んでみたい場所で生活をはじめられる
- 持ち家をやめて、賃貸住宅に引っ越せる
これまで家族と一緒に住んだ家ではありますが、子どもたちが独立したり一緒に住んでいた両親が亡くなったりして、家族構成が変化することがあります。家族構成が変わると、いまの家だと広すぎてしまうでしょう。
そういったとき、住みやすい家に住み替えることで、ストレスなく生活を楽しめるようになります。
老後を見据えた「60代の住まい」の選択肢
住み替えのメリットを考慮しつつ、60代の住まいの選択肢について検討してみましょう。
コンパクトな住宅へ引っ越す
家のサイズをいままでよりも、小さくするという選択肢があります。家を建てたころは子育てを前提としていたため、部屋数が多い大きめの住宅になっているかもしれませんが、子どもたちが独立してしまうと部屋の数を持て余すかもしれません。コンパクトな住宅へ住み替える方法は全部で3つです。
- 二世帯住宅に改築する
- 敷地の一部を賃貸住宅にし、住宅面積を小さくする
- 現在住んでいる住宅を売却し、サイズが小さい物件に引っ越す
二世帯住宅にする場合は上下階に住宅を分け、1階を親世帯の居住スペースに2階を子ども世帯の居住スペースにすることで互いに独立性を保ちつつ、使用する住宅面積を小さくできます。
住宅を小さく立て直し、余った部分を賃貸住宅として貸し出す方法もあります。敷地面積が大きな住宅におすすめですが、周辺の日照権との関わりもありますので賃貸住宅のサイズや周辺の日当たりに注意が必要です。
いま住んでいる住宅を売却して、より小さな物件を購入して移り住むこともできます。住宅売却だけで足りない場合は退職金の一部などをあてることで、条件のよい物件を見つけられるかもしれません。
バリアフリーに対応したシニア向け住宅
シニア向け住宅(高齢者向け住宅)への住み替えも選択肢のひとつです。シニア向け住宅の種類は次の3つです。
- シニア向け賃貸住宅
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
- シニア向け分譲マンション
シニア向け賃貸住宅はバリアフリー構造の賃貸住宅のことで、段差がないことや手すりがついていることなど、高齢者にとって使いやすく整えられている賃貸住宅です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のような法的規制がないため、物件によってバリアフリーの考え方にばらつきが見られます。シニア向け賃貸住宅は一般的な賃貸住宅と同じため、敷金と月々の家賃・管理費などが必要です。
サービス付き高齢者向け住宅は、要介護度が高くない60歳以上の高齢者を対象とした住宅で「高齢者住まい法」の基準を満たしています。サ高住の契約も、基本的に一般の賃貸契約と同じで敷金や月々の家賃・管理費・別途契約するサービス料などが必要です。
シニア向け分譲マンションは、高齢者の生活に便利な設備やサービスが付いた分譲マンションです。分譲のため月々の費用はかかりませんが、物件購入費や税金、月ごとの支払い、修繕積立金、固定資産税などを支払わなければなりません。
自宅をリノベーションまたは建て替え
これまで住んでいた住宅を改築したり、リノベーションをしたりすることで住みやすくするという選択肢もあります。
二世帯住宅にするだけでなく、両親が亡くなったあとの二世帯住宅を一世帯向けにリノベーションをしたり、2階建て住宅の2階部分を撤去して平屋にしたりといった方法もあります。階段の上り下りがなくなり、管理すべき部屋も少なくなるので居住するうえでの負担がかなり少なくなるでしょう。
自宅のリノベーションをすると長年住んできた地域から引っ越すことなく、生活を継続できるメリットがあります。
都市部から環境のよい郊外や地方へ移住
いま住んでいる都市部から、生活環境がよい郊外や地方に移住する方法もあります。都市部に住むメリットは通勤や生活のインフラが充実しているためですが、退職後は通勤のことを考える必要がなくなるため、生活環境のよさを優先できます。
郊外暮らし・田舎暮らしのメリットは、自然を満喫できる点や騒音などの都会のストレスから距離を置ける点、居住費などが安いという経済的な利点があります。新鮮な食材を使った食事で、健康的になるといったメリットもあるでしょう。
しかし、交通機関や社会インフラ、介護施設は都市部よりも整っていないことがあります。移住する前に移住先の情報をしっかり調べる必要があるでしょう。
持ち家を売却して賃貸住宅へ住み替え
いま住んでいる持ち家を売却して、賃貸住宅に住むという選択肢もあります。自宅の売却でまとまった資金を手に入れて、賃貸移住のための資金を得られることや固定資産税の支払いが不要になる、家の修繕費を気にする必要がなくなるといったメリットがあります。気に入った物件に転居しやすいというメリットもあるでしょう。
しかし、持ち家と異なり家賃を支払い続けなければならない点や、リフォームなどで家の形を変えるのが難しいというデメリットもあります。いまの家に住み続けるか、売却して賃貸に引っ越すべきか、メリットとデメリットを比較してから決断しましょう。
シニアライフを快適にする住み替え先のポイント
60代以降のシニアライフを快適に過ごすには、何に気をつければよいのでしょうか。住み替え先を選ぶ際にチェックすべき、次のポイントを解説します。
- 買い物、通院に便利な立地
- 土地が平坦で歩きやすい
- 物件が売却しやすい
- 子ども世帯から近い
- セキュリティが高い
これらのポイントを押さえることで、シニアライフがより快適になるでしょう。
買い物、通院に便利な立地
買い物や通院に便利な立地を選ぶことはとても重要で、スーパーなどの商業施設に近い場所や、交通機関が便利な場所を選ぶ必要があります。少なくとも数日に一度は買い物をしなければなりませんし、野菜や飲み物など重いものも少なくないため、買い物がしやすい場所を選ぶのはとても大切なことです。
高齢になるにつれて増えるのが通院ですが、新たに住む場所が病院から遠いとかなり不便です。商業施設と同じように、病院に近い場所や交通の便がよい場所を選ぶとよいでしょう。
土地が平坦で歩きやすい
平坦で歩きやすい土地を選ぶことも大切なポイントです。高低差のある地域は徒歩や自転車での移動の際に体に負担がかかり生活に不便なため、勾配が緩やかな平らな場所が望ましいでしょう。住み替え先を選ぶときは、周辺地域を散策するなどの時間を設けることをおすすめします。
物件が売却しやすい
資産価値が高い地域や物件を選ぶことも重要です。夫婦だけで過ごすつもりで転居したものの、配偶者が亡くなって家族と同居することになったら物件を売却しなければなりません。
あまりに不便な場所の物件を購入すると、いざ売却するときに買い手がつかないおそれがあります。物件の買い手がつくような資産価値が高い地域を選ぶと、売却がしやすいという利点があります。
子ども世帯から近い
子ども世帯や近くに頼れる人がいる地域を選ぶことも重要です。高齢になると、どうしても健康面での不安が出てくるため、いざというときに頼れる人が近くにいると心強いでしょう。すぐ近くではなくても、車で1時間程度の比較的近距離に頼れる人がいる場所を選ぶと安心です。
セキュリティが高い
近年問題になっているのが、高齢者をターゲットとした犯罪です。高齢者をターゲットとした犯罪といえば特殊詐欺をイメージするかもしれませんが、侵入窃盗や強盗などの被害に遭うケースも増加しています。
こうした被害を防ぐには、オートロックなどがある安全な物件に住むのがもっとも確実です。一軒家であれば警備会社が提供している、シニア向けのホームセキュリティと契約するのもよいでしょう。
失敗しない「60代の住み替え」の注意点
60代の住み替えで失敗しないためには、次の点に注意が必要です。
- 地方移住はリスクを踏まえて判断する
- 賃貸は希望する物件を借りられないことがある
- 戸建てとマンションの違いを理解する
- できるだけ早い段階から住み替えを検討する
- 家族と話し合って認識のズレがないようにする
それぞれの内容を見てみましょう。
地方移住はリスクを踏まえて判断する
ひとつ目の注意点は、地方移住のリスクを事前に理解しておくことです。地方は都市部に比べて物価が安いと認識されがちですが、必ずしもそうとは限りません。北国に移住すれば、首都圏に比べると冬期の暖房代がかなり高くなりますし、南国に移住すれば夏が長いため暑さ対策の費用がかかります。
病院や介護施設も人口が多い地域より少ないため、いざというときに必要な治療や介護サービスが受けられないおそれがあります。公共交通機関が都市部よりも脆弱なため、マイカーが必須となることも忘れてはいけません。
地方のリスクをしっかり理解してから、移住を決定するべきでしょう。
賃貸は希望する物件を借りられないことがある
賃貸物件を借りる場合、高齢者は入居を断られるケースがあります。高齢者は事故や孤独死など物件内でなくなるリスクがあったり、支払い能力の不安があったりするため、物件オーナーが貸し出しに消極的になることがあるのです。
そのため、60代の高齢者だと、希望する物件を借りられないことがあります。いまの住宅を売却する前に、移住できる賃貸物件があるかどうかを確認しておきましょう。
戸建てとマンションの違いを理解する
住み替え先の住宅を戸建てにするかマンションにするか迷っている場合は、両者の違いについて把握する必要があります。
戸建て | マンション | |
---|---|---|
メンテナンス | 個人で実施 | 管理組合や管理会社が実施 |
管理費・修繕積立金・駐車場代 | 不要 | 必要 |
ペット | ○ | △ 物件による |
リフォーム | ○ | × |
セキュリティ | △ 警備会社に依頼 |
○ オートロックなど |
戸建てとマンションのどちらも一長一短があるため、どちらのほうがよいとは一概にいえません。決め手になるのは自分の生活スタイルとマッチしているかどうかです。
基本的に自由度を重視するなら戸建て、セキュリティやメンテナンスを重視するならマンションのほうが向いているといえます。どちらを選ぶかによって生活スタイルが大きく変わるため、選ぶ前に慎重に検討しましょう。
できるだけ早い段階から住み替えを検討する
住み替えを検討するなら、定年よりもなるべく早く検討したほうがよいでしょう。住宅のリフォームやリノベーションをするにしても、売却するにしても、移住先を決めるにしてもどの選択肢をとっても時間とお金がかかります。
ある日突然、住み替えを決定するわけにはいきません。住み替えの条件や必要な資金、移住の時期などについて検討し、自宅を売却した際の価格や移住先の物件の相場などについてもしっかり調べるべきです。
家族と話し合って認識のズレがないようにする
住み替えは自分ひとりでは決められません。一緒に暮らす家族の生活も大きく変化させることになるため、家族の意思確認が何よりも大切です。
もし、家族間の話し合いをしっかりと進めずに勝手に老後の住まいを決めてしまうと、家族関係が悪化するおそれがあります。住み替えをしたいと思ったら、ゆっくり時間をかけて家族の意思を確認しながら、しっかりと話し合う必要があります。
安心して暮らすための老後の資金計画
住み替え後に老後の生活を安心して過ごすには、事前に資金計画をしっかり練ることが大切です。ここでは、老後の資金をいかに確保し、安心して暮らすための経済的な基盤を確立するかについて解説します。
退職金、貯金はできるだけ残す
住み替えの資金として、退職金を考えている人もいるかもしれません。しかし、退職金をあてにしすぎるのはハイリスクです。退職金は老後の生活を守る資金のため、できるだけ手をつけずに残しておきたいところです。
これまで蓄えてきた資産や貯金も同様で、住み替えで消費しすぎるとあとの生活に支障をきたすおそれがあります。
住み替えで退職金や貯金を切り崩す場合は、将来の支出をしっかり見据えて生活に支障がない資金計画を立ててからにしましょう。
住宅ローンは無理のない範囲で組む
60代になっても安定した収入があれば、住宅ローンを組んで住み替えるための住宅を購入できます。代表的な住宅ローンであるフラット35であれば、申し込み時の年齢から80歳になるまでの期間が借入れ期間の最長となります。
申し込みができるからといって、住宅購入資金のすべてを住宅ローンで支払うのはリスクがあります。健康状態の悪化や何らかの事情で収入が減少したり、支払い不能となったりするおそれがあるためです。
住宅ローンを組む場合は、頭金を多めに用意して支払期間を短縮したり、高すぎる住宅の購入を避けたりといった配慮が必要です。
持ち家の売却代金を住み替え資金にする
現在持ち家があるのであれば、売却した代金を住み替え資金にすることもできます。しかし、持ち家がどのくらいの価格で売却できるかは、実際に不動産会社に査定してもらうまでわかりません。査定金額がわかれば、売却を前提とした住み替えを検討できるでしょう。
不動産は老後の住み替えの重要な資金源
所有している不動産は重要な資金です。いざとなれば売却して住み替えの費用にしたり、通院・治療の費用にしたり、さまざまな活用が可能です。ただし、不動産には現金化に時間がかかるという欠点があります。
不動産を老後資金として活用するのであれば、どれくらいの価値があるのか、どれくらい売りやすいのかなどを知っておくことが大切です。不動産価格の高いいまのうちに売却するのも、ひとつの方法といえるでしょう。
所有する不動産の価値は、不動産会社の査定を受けることで判断できます。1社だけの査定だと正確かどうかを判断できないため、できれば複数の不動産会社の査定を受けましょう。
一括査定サイトの「リビンマッチ」であれば、一度の入力で複数の不動産会社に査定を依頼できます。パソコンやスマートフォンから申し込めるので、売却を検討している人は利用してみましょう。思わぬ高値がつくこともあります。ぜひご利用ください。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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