早わかり!土地の売却でできる節税のポイント&計算方法
土地を売却するときには、さまざまな税金がかかります。手もとに残る金額をできるだけ多くするには、適切に節税することが大切です。
土地を売却するときにできる、節税のポイントと正確な税額を把握するための計算方法を紹介します。
もくじ
土地の売却でかかる税金の種類
土地を売却したときは、次の税金がかかります。
- 消費税
- 印紙税
- 譲渡所得税
- 復興特別所得税
- 登録免許税
ここでは、それぞれの税金について解説します。
消費税
消費税は、商品の販売やサービスの提供に対してかかる税金で、2019年(令和元年)10月に10%(国7.8%、地方2.2%)へ引き上げられました。
土地の譲渡は消費税の課税対象ではないため、売買契約の際には消費税が課税されません。ただし、土地売買契約が成立した際に支払う不動産会社への仲介手数料や、登記手続きを司法書士に依頼したときの手数料は、「サービスに対する対価」のため、消費税の対象です。
したがって、仲介手数料や司法書士への手数料など、サービスに対する対価を支払う段階で消費税が発生します。
印紙税
印紙税は、契約などの取引で作成する書類にかかる税金です。土地売却では土地売買契約を締結するときにかかります。売買契約書に印紙を貼り付けて消印をすることで印紙税を納税したとみなされます。印紙を貼り付けても消印をしていないと納めたことになりません。
納税しない場合、印紙税の金額に応じて過怠税が課されるおそれがあり、 過怠税の金額は印紙税の3倍です。
不動産の譲渡に関する契約書では、2027(令和9年)3月31日までの間に作成されるものは印紙税の軽減措置が講じられています。そのため、本来より低い税率になっています。
印紙税の税率は、次のとおりです。1億円以下の取引は、通常の半分に減額されています。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
譲渡所得税
土地を売却して利益が発生した場合は、譲渡所得税という税金が発生します。譲渡所得税は、土地の売却金額から取得費や譲渡費用などの経費や控除などを差し引いて残った利益に対してかかる税金です。したがって、利益が残らない場合は課税されません。
譲渡所得の計算式は、次のとおりです。
なお、課税される譲渡所得税率は、売却した土地の所有期間が5年を超えているかどうかで違いがあります。不動産を売却した年の1月1日時点で、所有期間がどれくらいなのかを確認します。
5年を超えているかどうかで、税率が約半分も違うため、所有期間が5年前後の不動産を売却するときは売るタイミングを見極めることが必要です。
譲渡所得税は確定申告後に納付します。譲渡所得税の詳しい税率は、のちほど詳しく解説します。
復興特別所得税
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興財源に充てることを目的とした特別税で、所得税額に対してプラスされます。2037年(令和19年)まで各年分の基準所得税額の2.1%を、所得税とあわせて申告・納付する税金です。
復興特別所得税は、確定申告書での記載漏れがよく見られるため、忘れずに記載しましょう。
登録免許税
ローンを利用して土地を購入した場合は、金融機関が担保として土地に抵当権を設定します。売却する際にローンの残債があった場合は、金融機関の承諾を得てから販売活動を行うことになります。
実際に抵当権抹消手続きをするのは売買契約後、土地売却金の残代金決済や引き渡しのときです。残代金決済日や不動産の引き渡し日に「所有権移転の登記」と「抵当権の抹消登記」のふたつを同時に行います。
抵当権の抹消登記を行う際にかかる登録免許税の税額は、不動産1個につき1,000円です。たとえば、ひとつの土地が分筆されて2筆ある場合は、2,000円を登録免許税として納めます。
なお、所有権移転の登記にかかる登録免許税は、売主と買主が連帯して登録免許税を納付する義務(登録免許税法 3条)を負いますが、買主が負担するのが一般的です。
土地の売却でできる節税のポイント
土地を売却するときは、「印紙税」「登録免許税」「譲渡所得税」などの税金がかかりますが、このなかで節税できる可能性があるのは「印紙税」と「譲渡所得税」です。
土地の売却でできる、節税のポイントを解説しましょう。
電子契約なら印紙税が不要
印紙税は「紙の文書」に対して課税されるため、電子契約で土地売買契約を行った場合はかかりません。したがって、印紙税を節約したい場合は、電子契約を採用するとよいでしょう。
とはいえ、不動産売買契約の一連を完全に電子契約化するには、重要事項説明書や契約書、その他すべての関連書類も電子化しなければなりません。一部の書類だけを書面で交付するのは管理に手間がかかるようになります。
また、電子契約では、書類のやり取りがすべて電子ファイルで行われるため、電子ファイルの保管には高度なセキュリティ対策が必要です。
現時点ではすべての不動産会社が電子契約を取り入れているわけではないため、利用できるかどうかは契約した不動産会社によります。
譲渡所得税を抑えるポイント
譲渡所得税は所有期間によって税率が大きく違うため、どのタイミングで売却するかが節税のポイントとなります。譲渡所得税を抑える主なポイントは次のとおりです。
- 長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率を比較する
- 取得費に加算できる費用を調べる
- 特例の利用で譲渡所得から控除する
それぞれのポイントについて解説します。
長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率を比較する
譲渡所得の税率は次のとおりです。
所有期間 | 譲渡所得税の税率 | |
---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63%(所得税 30.63%・住民税 9%) |
長期譲渡所得 | 5年超え | 20.315%(所得税 15.315%・住民税 5%) |
所有期間が5年を超えると、長期譲渡所得になって税率が下がります。5年のラインで税率が半減するため、少しでも譲渡所得税を抑えたい人は5年以上所有してから売却するとよいでしょう。
取得費に加算できる費用を調べる
土地を売却して得た譲渡所得は、土地の売却金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。取得費を増やすとそれだけ譲渡所得を少なくできるため、かかった費用をリストにまとめて計算しましょう。
土地の売却で取得費にできるものは次のとおりです。
- 売却した土地の購入代金
- 仲介手数料
- 購入時に納めた登録免許税、不動産取得税、印紙税などの税金
- 借主に支払った立退料
- 土地の埋め立て、土盛り、地ならしなどの造成費用
- 購入時に支払った土地の測量費
- 土地の利用が目的だった場合の建物の購入代金や解体費用 など
土地を取得するときにかかった費用をすべて洗い出して、取得費に計上しましょう。
特例の利用で譲渡所得から控除する
土地を売ったときは譲渡所得の金額を計算する際に、特例として特別控除が受けられる場合があります。
主な特例は次のとおりです。
特例の種類 | 主な内容 |
---|---|
マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例 | 所有期間の長さに関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる。土地の場合は家屋を解体して1年以内に譲渡契約を締結する |
公共事業などのために土地や建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例 | 公共事業用に土地建物が収用されて譲渡所得が発生する場合、要件を満たしていれば5,000万円を控除できる |
特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例 | 土地区画整理事業により土地等が買い取られた場合などに譲渡所得から2,000万円を控除できる |
特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例 | 宅地造成事業のために土地を売却した場合、要件に合えば譲渡所得から1,500万円を控除できる |
平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例 | 平成21年に取得した土地または土地の上にある権利を平成27年以降に譲渡した場合、または平成22年中に取得した土地などを平成28年以降に譲渡した場合は、譲渡所得から1,000万円を控除できる |
農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例 | 農業経営基盤強化促進法の農用地利用集積計画などにより、譲渡した場合には800万円を控除できる |
低未利用土地等を売った場合の100万円の特別控除の特例 | 都市計画区域内にある一定の低未利用土地等を500万円以下(または800万円以下)で売った場合、その年の低未利用土地などの譲渡にかかる譲渡所得の金額から100万円を控除できる |
出典:国税庁「No.3223 譲渡所得の特別控除の種類」
特例の要件に該当する場合は、譲渡所得から控除金額を差し引けるため、譲渡所得税がかからないケースもあります。特に「マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除の特例」は、要件に該当することが多いのでうまく活用しましょう。
土地売却時の譲渡所得税の計算方法
実際に土地売却でかかる、譲渡所得税を計算してみましょう。
譲渡所得税の計算方法
次の例をもとに、譲渡所得税を計算していきましょう。
不動産の種別:土地(自宅の敷地として利用、建物を取り壊したあとに売却)
所有期間:7年
控除前の譲渡所得:4,000万円
利用する特例:マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除
その他:家屋を取り壊した日から1年以内にその敷地を売る契約をしているなど、3,000万円の特別控除の要件に該当
マイホームを取り壊したあとの敷地を売ったときに、一定の要件(家屋を取り壊した日から1年以内にその敷地を売る契約をしているなど)に該当する場合は「マイホーム(居住用財産)を売った場合の3,000万円の特別控除」を受けられます。
それでは実際に計算していきましょう。最初に課税譲渡所得を算出します。計算式は次のとおりです。
この式に当てはめて計算すると、次のようになります。
この場合、課税対象となる譲渡所得は1,000万円です。
次は、この譲渡所得1,000万円に対して税率をかけます。7年間所有していたので長期譲渡所得税率(20.315%)を使用します。
計算式はこちらです。
長期譲渡所得税額は2,031,500円となります。
取得費がわからないときの計算方法
売った土地が先祖伝来のもの、あるいは購入した時期が古いなどで取得費がわからないケースがあります。そのような場合は、売却金額の5%相当額を概算取得費として計上できます。
なお、実際の取得費が売却金額の5%相当額を下回る場合も、売却金額の5%相当額を取得費とすることが可能です。たとえば、2,000万円の土地を売却した場合は、100万円を取得費にできます。
この記事の編集者
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