土地の相続税はかからない?かかる場合の税金対策や注意点も解説
土地の相続税は、相続税の基礎控除額3,000万円+(600万円×法定相続人の数)の範囲内であればかかりません。超えてしまった場合は課税されますが、特例制度を利用することで、相続税をゼロにできる可能性があります。
せっかく相続した大切な土地が原因で無駄な税金を支払うことがないよう、事前に対策しておきましょう。
もくじ
基礎控除額を超えなければ、相続税はかからない
現金、土地、有価証券など財産の種類によらず、「相続税の基礎控除額」を超えなければ相続税はかかりません。たとえば、基礎控除が4,200万円で、次のような財産が合計3,000万円なら相続税は発生せず、申告の必要もありません。
財産の種類 | 費用(万円) |
---|---|
現金 | 1,000 |
不動産(土地・家屋) | 1,000 |
生命保険 | 1,000 |
財産の合計 | 3,000 |
被相続人が死亡してから相続税の申告までは、10カ月以内におこなう必要があるため、あまり時間がありません。被相続人の財産全体の金額と基礎控除額を、あらかじめ把握しておくことが大切です。
基礎控除額は法定相続人の数により、異なる
相続税の有無と相続税の申告が必要になるかどうかの判断は、相続税の基礎控除額を把握することから始まります。基礎控除額は次の計算式で計算し、法定相続人の数によって大きく異なります。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人が2人なら基礎控除額は4,200万円、3人なら4,800万円です。
なお、配偶者は常に法定相続人となり、続いて次の順位で相続人となります。
- 死亡した人の子ども
- 死亡した人の直系尊属(父母や祖父母)
- 死亡した人の兄弟姉妹
たとえば夫が死亡したとき、妻は常に法定相続人になります。もし夫婦に子どもがいないときは父母などが相続人となり、父母がすでに死亡している場合などは兄弟姉妹が相続人です。
法定相続人のうち、相続放棄をした人がいるケース
夫が亡くなり、妻、子どもが3人(長男、次男、長女)いて、次男が相続放棄をした場合を考えてみましょう。
この場合は、相続放棄がなかったものとして考えます。そのため死亡した夫に妻と、子ども3人がおり、次男が相続放棄をした場合の法定相続人も4人となり、基礎控除は次のように計算します。
基礎控除:3,000万円+600万円×4人(妻、長男、次男、長女)=5,400万円
このことから、4人の法定相続人のうち相続放棄をした人がいても、通常の場合と同じく基礎控除額は5,400万円です。
法定相続人のうち、亡くなった人がいるケース
夫が亡くなり、妻、子どもが3人(長男、次男、長女)の家族で、長男がすでに死亡している場合について解説します。
この場合、長男に子どもがいれば、「代襲相続」となり、子どもの数だけ法定相続人の数に含めて計算します。仮に、長男の子ども(被相続人の孫にあたる)が2人いた場合は次のように計算します。
基礎控除:3,000万円+600万円×5人(妻、長男の子2人、次男、長女)=6,000万円
このように、法定相続人はすでに死亡している長男ではなく代襲相続人である長男の子どもを含めた5人となり、合計6,000万円となります。
土地の相続税を抑える方法
地価が高い土地や、面積が広い土地の場合は、土地の評価額だけで基礎控除を超えてしまうこともあります。
しかし、代々引き継いできた土地などは簡単には手放しにくいものです。ここでは、土地の相続税を抑える方法を3つ紹介します。
小規模宅地等の特例を利用する
自宅や事業用の土地を次の世代へ引き継ぐための制度として、「小規模宅地等の特例」があります。小規模宅地等の特例を活用できれば、自宅などの土地の評価額を最大80%減額できます。
「今後も引き続き自宅に住みたい」「事業を継続したいが土地の評価額が高くて相続税を支払えず、自宅や事業用地を手放さざるをえない」といった事態を防ぐためにつくられた特例です。
たとえば自宅の相続税評価額が3,000万円のとき、条件を満たせば相続財産に600万円(=3,000万円×80%)として加算して相続税の計算をおこないます。ただし、特例の適用には次のような細かい条件が複数あります。
- 自宅の場合は最大330平方メートルまで特例が適用される
- 被相続人に配偶者がいない
- 相続開始直前まで同居していた
- 適用となる自宅を相続開始時から相続税の申告期限まで有している
このほかにも適用には多くの要件があるため、自己判断せずに税理士などへ相談するほうが確実でしょう。
また、小規模宅地等の特例を適用する場合は、適用した結果、相続税が非課税となっても相続税の申告をおこなう必要があります。
相続税の配偶者控除を利用する
被相続人の配偶者に対する相続税を大幅に軽減する制度があります。小規模宅地等の特例と同様、被相続人の死後、自宅を含めた財産の相続税を支払えずに自宅を手放さなければならなかったり、その後の生活が立ち行かなくなったりを防ぐためです。
配偶者控除では、配偶者が取得した財産額が次の金額のどちらか多い金額まで、相続税が免除されます。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分(2分の1)相当額
たとえば、配偶者が被相続人の財産4億円の2分の1にあたる2億円を取得したとすると、2億円は非課税です。相続した2億円のなかに土地を含めれば、実質土地の相続税はかからないことになります。
参考:国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」
地価が上昇する見込みがあるなら、生前贈与を検討する
今後、地価が上昇する見込みがある土地を所有している場合は、生前贈与しておくのもひとつの方法です。
たとえば現在1,000万円の価値がある土地が、今後10年で3,000万円になる見込みであるとしましょう。
暦年贈与で生前、この土地を父親から子どもに譲る場合、現在の税率は30%で贈与税は177万円です。
- 基礎控除後の課税価格=1,000万円−基礎控除110万円=890万円
- 贈与税=890万円×税率30%-控除額90万円=177万円
相続時、土地の価値が3,000万円まで上昇していた場合、課税対象になる財産が2,000万円増えてしまいます。地価上昇後も土地や現金などの財産の合計が基礎控除内に収まれば問題ありませんが、基礎控除を超える見込みがある場合は生前贈与を検討してもよいでしょう。
ただし、贈与で土地を取得した場合は、相続時に比べて土地の名義変更にともなう登録免許税を多く支払ったり、不動産取得税を支払ったりする必要があるため、よく試算することが大切です。
相続の場合、原則として不動産取得税は課税されません。
土地を相続したときの注意点
最後に土地を相続したときの注意点を3つ解説します。割り増しの相続税を支払う、遺産分割でもめてしまう、といったトラブルに遭わないために、事前に確認しておきましょう。
10カ月以内に申告しないと、ペナルティがある
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月目の日です。たとえば6月1日に被相続人が死亡したことを知った場合、翌年4月1日が申告期限です。
申告期限までに申告しなかった場合は、相続税のほかに無申告加算税がかかり、税負担がより重くなります。さらに申告しなかったことが悪質と捉えられると重加算税を課されるおそれもあります。期限内に正しい申告をおこなうことが大切です。
無申告加算税
無申告加算税とは、申告すべき相続税があったが、期限内に申告をしなかったときに加算される税金です。無申告加算税で加算される税率は次のとおりです。
金額 | 納付すべき税額に対して加算される税率(%) |
---|---|
〜50万円までの部分 | 15 |
50万円超え〜300万円までの部分 | 20 |
300万円超えの部分 | 30 |
納める相続税が500万円だったとすると、無申告加算税を加え合計約620万円が支払うべき税金になります。
さらに、相続税の納税期限も、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月目の日です。そのため、無申告加算税に加え、さらに延滞税を支払う必要もあります。
参考:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」
重加算税
相続税の申告において、故意に相続財産を隠して申告するなど、悪質な場合には重加算税が加算されるおそれがあります。重加算税は、申告されていなかった相続税部分に加算され、税率は次のとおりです。
名称 | 増差本税に対する課税割合(%) |
---|---|
相続税の申告書を提出していた場合 | 35 |
無申告の場合 | 40 |
万が一、相続税を無申告のまま10カ月が過ぎ、さらに悪質だと判断された場合は40%もの税率が加算されます。さらに納税期限も過ぎているため、延滞税もかかります。
参考:財務省「納税環境整備に関する基本的な資料」
現金納付できないと損するおそれ
相続税は、原則現金で一括納付する必要があります。しかし、どうしても現金一括で納付できない場合は、現金一括以外に「延納」と「物納」ができます。
延納では、相続税を年払いで納付します。土地や国債、社債、税務署長が確実と認める保証人の保証などを延納する金額の担保とする必要があり、相続税を年払いで支払っているあいだは利子税が発生します。
さらに、延納でも相続税の納付が難しい場合は「物納」ができます。物納では、納められない相続税額を限度として、不動産や国債、上場株式などを現金の代わりに納めます。
ただし、物納できる財産は細かく定められており、適用となる条件は厳しいのが実情です。さらに、物納手続きが完了するまでの利子税がかかります。
参考:国税庁「No.4211 相続税の延納」「No.4214 相続税の物納」
遺産分割は相続税評価額(路線価)ではなく、時価をもとに計算
土地の遺産分割をおこなうときは、相続税評価額ではなく時価をもとに計算します。時価は不動産会社によっても評価額が異なるため、分割でもめる一因となりやすいのです。
たとえば長男と次男の2人で、自宅の土地と現金2,000万円の遺産分割をおこなうケースについて考えてみましょう。遺産分割にあたって、自宅の土地の評価額を査定するため、長男が不動産会社Aに、次男が不動産会社Bに行きました。
長男は、不動産会社Aに時価は1,000万円だと査定されました。一方、次男は不動産会社Bに、2,000万円で売れると査定されました。
土地を売却せずに長男が取得する場合、遺産を2人で平等に分けるにはどうすればよいか、意見が分かれてしまいます。
長男は土地の時価が1,000万円と考えているため、土地に加え現金を500万円取得し、次男が現金1,500万円を取得すればよいと考えました。
しかし、次男は土地の時価が2,000万円と考えているため、長男が2,000万円の土地、次男が2,000万円の現金を取得したいと考え、意見が割れてしまうおそれがあります。
土地などの不動産を取得すれば、その後の固定資産税や修繕費なども継続的にかかります。被相続人の生前や相続時には、複数社に土地の査定をしてもらい、正確な土地の時価を確認しておきましょう。
相続人間で土地の時価の認識が一致すれば、遺産分割争いを避けることにつながります。
この記事の編集者
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