土地売買契約書に印紙って必要?不要なケースや印紙税の軽減方法を解説
土地売買契約書は内容を確実に証明するためにも、印紙が必要です。しかし、印紙は場合によっては不要になったり、必要でも税金の軽減措置が受けられたりする可能性があります。
契約書作成時の要否判断や節税対策は、土地売買の大切なポイントです。この機会に契約書作成や、作成時のポイントなどに詳しくなって、トラブルのないスムーズな土地取引をしましょう。
もくじ
電子契約なら印紙は不要
契約を結ぶ際、PDF化した契約書や領収書などの書類を送受信することがあります。この電子契約をする場合、課税文書にあたらないため印紙は不要です。
土地の売買でも、「土地売買契約書」を電子データ化した文書は、課税文書にあたらないため、収入印紙は不要です。
理由は明確に示されていませんが、電子契約締結時に印紙税の有無について法律が定められていないから、とされています。今後、法律の改定が行われた場合、必要になる可能性があることを覚えておきましょう。
一方で、電子データ化した書類をコピーして相手に渡したときは、課税文書を作成したとみなされるため、印紙代・印紙税が発生します。
土地売買契約書とは
土地売買契約書は土地の売買で使用する契約書で、契約対象が土地のみの場合に作成します。土地の売買だけなら、必要なのはこの契約書だけです。
一方で「建物売買契約書」は、契約対象が建物の場合のみ作成します。
建築条件付土地の場合は、土地売買契約書と(建設)工事請負契約書の2種類が必要です。
建築条件付土地とは、売買契約後の一定期間内に売主または買主が指定する建築業者と、建物の建築を契約している土地のことです。建売住宅とは違い、購入者の希望に沿った建物を建築できる点が建築条件付土地のメリットです。
不動産売買契約書(土地建物売買契約書)とは
不動産売買契約書は、建売住宅や中古住宅を契約する際に発生する書類です。
民法第86条第1項によると、土地およびその定着物を不動産としており、建物も定着物として不動産に含みます。土地売買契約書と異なり、不動産売買契約書は幅広い状況で作成が可能な契約書です。土地と建物のセット・土地のみ・建物のみの、いずれにも対応できます。
不動産売買契約書に土地と建物がまとめて記載されている場合、契約はこの書類だけでかまいません。土地売買契約書や建物売買契約書などの契約書は不要です。
印紙税とは
印紙税は、金銭取引で契約書や領収書を作成した場合、その文書(課税文書)にかかる税金です。
印紙税の課税対象は、印紙税法に記載されている課税物件表のうち、20種類の文書です。
金額の少ない文書・非課税法人が作成する文書・行政上非課税とされる文書などは、非課税文書として明示されています。納税については、収入印紙を文書に貼り付けて消印を押すことで完了します。
土地の売買では、売主と買主のそれぞれが土地売買契約書に収入印紙を貼り付けなければなりません。
印紙税は売主と買主それぞれが支払う
契約書1通につき、定められた金額の収入印紙が必要です。
また、契約書は売主保管分と買主保管分の最低2通を作成します。2通以上保管する必要がある場合は、契約書の部数だけ収入印紙を貼る必要があります。
印紙税は課税文書を作成した人が負担しますが、契約書は双方が協力して作成する文書であるため、双方が等しく負担する義務があるのです。
ただし便宜上、作成側が印紙代を負担して相手に半額の負担を求める場合もあります。
土地の売買では「土地売買契約書」または「不動産(土地建物)売買契約書」が作成
土地の売買では、土地売買契約書か不動産売買契約書を作成する必要があります。書面契約での作成なら、取引額に応じた金額の収入印紙の貼付も必要です。
また売買契約で発生する関連書類にも、収入印紙が必要です。ここからは、関連書類について解説します。
土地(不動産)売買契約書以外で印紙税がかかる書類とは
土地(不動産)売買契約書以外に印紙税が必要な書類として、住宅ローン契約書や(建設)工事請負契約書が挙げられます。
住宅ローン契約書は特定の相手との継続した取引であるため、課税対象として扱われるのです。また、(建設)工事請負契約書に関しては、印紙税の軽減措置が設けられています。加えて現在は建設業でも電子契約が認められており、電子契約では印紙税が不要です。
媒介契約書も、2021年のデジタル改革関連法によって電子契約が認められました。
不動産譲渡契約書と建設工事請負契約書の軽減税率
不動産譲渡契約書と建設工事請負契約書には、印紙税の軽減措置が適用されています。期間は2014年4月1日から2027年3月31日までです。
ただし、これは2024年6月時点の情報であり、期間は延長される可能性があります。土地売買契約書も不動産譲渡契約書に該当するため、この措置を利用できます。
軽減税率の対象範囲
契約金額 | 本則税額 | 軽減税額 | 不動産譲渡契約書 | 建設工事請負契約書 |
---|---|---|---|
1万円未満 | 非課税 | ||
10万円以下 | 100万円以下 | 200円 | |
10万円を超え50万円以下 | 100万円を超え200万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 200万円を超え300万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 300万円を超え500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 1万円 | 5,000円 | |
1000万円を超え5000万円以下 | 2万円 | 1万円 | |
5000万円を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 | |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 | |
5億円を超え10億円以下 | 20万円 | 16万円 | |
10億円を超え50億円以下 | 40万円 | 32万円 | |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 | |
金額の記載のないもの | 200円 |
引用:国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」『「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の印紙税の軽減措置の延長について(平成30年4月)(令和6年4月改訂)(PDF/136KB)』
軽減税額の割合は契約金額1億円以下で半額、5億円以下で6割、5億円を超えるもので8割です。
土地売買取引は高額になる傾向があるため、印紙税も高くなります。納税を理由に取引が停滞しないよう、取引市場の活性化と円滑化の観点から、このような軽減措置がとられています。
印紙に間違いがあったらどうなる?
電子化で収入印紙を使わないことに慣れていると、必要となった際に戸惑うかもしれません。
以下は、印紙税法において問題とされる行為です。
- 収入印紙を貼り忘れる
- 消印を押していない
- 収入印紙の金額を間違える
- 収入印紙の購入額・貼付先を間違える
ここからは、印紙税に間違いがあった場合どうなるかと間違いへの対処法を解説します。
収入印紙を貼り忘れる
土地売買契約書に収入印紙が貼られていなくとも、契約が無効になることはありません。しかし、収入印紙がない状態で契約すると「本来の収入印紙の金額+その2倍の金額」の過怠税が発生します。
たとえば、1万円の収入印紙が貼られていなかった場合、過怠税は以下のとおりです。
過怠税の総額=1万円(本来かかる印紙税)+1万円×2(追加でかかる税金)=3万円
ただし、所定の申し出を行えば「本来の収入印紙の金額+その10%相当額」に減額できます。
消印を押していない
消印が押されていない場合も、契約が無効となることはありません。その代わりに、収入印紙の金額と同額の過怠税が発生します。
消印は、印紙税法の第三章第八条により「課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない」とされています。
なお、消印のことを
- 消印:印紙と台紙にまたがって押すことで印紙を使用済みにする
- 割印:契約書などの2通の文書をずらし、双方にまたがって押すことで互いを関連づける
収入印紙の金額を間違える
収入印紙の金額は、間違えないように調べておきましょう。契約書に貼る印紙の金額が過少だった場合、過怠税が課されます。
納めるべき金額より高額な収入印紙を貼ってしまった場合は、印紙税過誤納確認申請書を提出すると還付の手続きが可能です。この場合、還付できるのは作成から5年以内の契約書に限ります。
売買契約がキャンセルとなった場合は、貼付した印紙代の還付が受けられます。
収入印紙の購入額・貼付先を間違える
収入印紙の購入額を間違えた場合、郵便局で新しい収入印紙と交換可能です。また、封筒や行政機関に提出する文書など、印紙税の課税文書でないものに貼り付けた収入印紙も交換できます。
交換できるのは未使用かつ汚れていない収入印紙で、交換手数料は1枚あたり5円です。なお、消印があるものは交換できません。
たとえ未使用であっても、現金とは交換できないので、きれいな状態で保管しておきましょう。
印紙の購入方法
収入印紙は、コンビニエンスストア・郵便局・法務局で購入できます。ここでは、それぞれの特徴や取り扱い状況を解説します。
収入印紙は必要金額分を最低限の枚数で用意することが望ましいため、金額によっては購入できる窓口が限られるかもしれません。
コンビニエンスストアで購入
数百円程度の少額な収入印紙であれば、コンビニエンスストアで購入できます。
ただし、コンビニエンスストアは収入印紙を取り扱っていなかったり、取り扱っていても200円相当の印紙が多かったり、といったケースがほとんどです。
土地の売買はほとんどが高額であるため、コンビニエンスストアで購入できるケースは少ないでしょう。
200円より少額あるいは高額の収入印紙に関しては、郵便局や法務局で購入しましょう。
郵便局で購入
郵便局は一部の店舗を除き、全31券種の収入印紙を購入できます。ただし、小規模店舗では高額な印紙を取り扱っていないおそれがあります。
主要駅の近くにある大規模な郵便局なら、比較的多くの券種を取り扱っているでしょう。
5万円以上の印紙が必要である場合、取り扱っているか事前に問い合わせておくことをおすすめします。
法務局で購入
法務局に併設された売店(印紙売りさばき所)では、全31券種の収入印紙を購入できます。
郵便局とは異なり、すべての印紙を取り扱っています。高額な収入印紙が必要な場合は、法務局で購入するのが確実です。
価格を区分記載すると、印紙の経費を抑えられる
消費税のかかる取引では、消費税額がいくらかわかるように契約金額を区分記載しましょう。これにより、消費税分を課税対象額から除外できます。
税込表記でも、税抜金額または消費税額が併記されていれば、課税対象は税抜金額だけで済みます。
以下の表に示すような場合、契約金額が同じでも、課税対象額に40万円の違いが生じるのです。
契約金額の表記 | 印紙税額(軽減後) |
---|---|
540万円(消費税額40万円を含む) | 1,000円 |
540万円(消費税込) | 5,000円 |
まとめ
土地の売買では、契約書作成時に印紙税の納付が必要です。印紙税は売主と買主の双方が等しく負担する義務があります。
印紙税の課税対象となる書類は、土地売買契約書のほか、不動産譲渡契約書、住宅ローン契約書、建設工事請負契約書などがあります。特に不動産譲渡契約書と建設工事請負契約書には、2027年3月末まで軽減税率が適用される期間限定の措置があります。
一方、電子契約の場合は印紙税がかからないというメリットがあります。ただし、電子データをプリントアウトして書面で渡した場合は課税対象となるので注意が必要です。
印紙の購入は郵便局や法務局の窓口で可能です。金額に応じて最低限の枚数を準備し、価格を区分記載することで印紙代を抑えられます。
また、印紙の貼り付けや消印を忘れた場合は過怠税が課されるペナルティがあるので気をつけましょう。収入印紙の金額や貼付先を間違えた際の対処法も押さえておくとよいでしょう。
印紙税に関するルールをしっかり理解して、トラブルのない適切な土地取引を目指しましょう。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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