借地権の相続ルール!手続きの流れや費用、知っておくべき5つの注意点
借地権は不動産に関わる権利ですが、通常の土地や建物の相続とはルールが異なります。知らずに手続きを進めていると、トラブルに巻き込まれるリスクも。費用の面でも手順の面でも、気をつけなければならない点が存在するのです。
相続に際して、借地権をめぐる争いは避けたいものです。借地権の相続ルールを確認して、将来のトラブル回避につなげましょう。
もくじ
借地権は土地を借りる権利
借地権とは土地を借りる権利のことです。建物を建てるには、地主へ地代を支払う必要があります。
また、借地権には普通借地権・旧借地権・一般定期借地権の3種類あります。
普通借地権と一般定期借地権の違いは契約の更新ができるかできないかであり、旧借地権は1992年(平成4年)8月1日より前に設定された借地権を指します。
所有権との違い
所有権と借地権は、「土地を所有するか、借りるか」の立場が異なります。
所有権があれば法律の範囲内で自由に土地を活用したり、売却したりできます。
一方、借地権は毎月地代として地主への支払いがありますが、土地の購入費のような一度に大きな額を支払う必要性はありません。
許可なしに借地権を相続できないケース
相続では被相続人の一切の権利義務を相続人が相続するため、借地権も相続可能です。
借地権を相続する際に地主の許可は必要ありませんが、特殊な条件下においては地主の許可が必要です。どのようなケースに許可や承諾料が必要か事前に知っておきましょう。
借地権の相続にあたって地主の許可が必要なケースの代表例は、以下のとおりです。
第三者に遺贈
借地権を第三者に遺贈するときは、地主の許可と譲渡承諾料の支払いが必要です。
遺贈とは遺言書の内容に従って法定相続人以外の人が遺産を得ることで、遺贈は譲渡と同じ扱いになります。第三者への遺贈の際に必要な譲渡承諾料は、借地権価格の10%程度が目安です。
被相続人が亡くなった際は、相続・遺贈の際に不備がないように遺言を確認しておきましょう。
建替えや増改築
借地の賃貸借契約書で「増改築禁止特約」が定められているケースは、相続後であっても地主からの許可を得ないと建替えや増改築ができません。
建替えや増改築の際に支払う承諾料の目安は、借地権価格の3~5%程度です。
もし、地主の許可を得られなかった場合は、借地非訟の手続きを行い裁判所から許可を得る必要があります。許可を得ていないまま建替え・増改築を行った場合、賃貸借契約を解除されるリスクもあるため注意が必要です。
相続した借地権を売却
相続した借地権は売却も可能ですが、地主からの許可と承諾料が必要です。このときに支払う承諾料の目安は、借地権価格の10%程度です。ただし、借地権を買い取るのが地主である場合、承諾料は必要ありません。
地主の許可を得ず売却した場合、契約違反をしたとして賃貸借契約を解除されるリスクがあるため注意しましょう。
必要であれば、地主に買い取ってもらえるかを相談するとよいでしょう。
借地権の相続手続きの流れ
借地権を相続する流れは、以下のとおりです。
- 法務局で土地・建物の全部事項証明書を取得し、対象となる不動産についての情報を確認する
- 地主に連絡し、相続が発生したことを伝える
- 相続人が複数いる場合は誰が借地権を相続するのかを決めて遺産分割協議書を作成する(遺言書によって借地権の相続人が定められているときは、借地権のために遺産分割協議書を作る必要はない)
- 書類がすべてそろったら、法務局に名義変更の申請をする。郵送提出の場合は、法務局に到着したときが相続登記の申請日とされる
ここでは借地権を相続する際に必要な書類と、かかる費用について解説します。
必要な書類
借地権の相続で必要になる書類は、以下のとおりです。
必要書類 | 取得方法 |
---|---|
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 | 市区町村役場で取得 |
相続人全員の現在の戸籍謄本 | 市区町村役場で取得 |
被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票 | 市区町村役場で取得 |
相続人の住民票もしくは戸籍の附票 | 市区町村役場で取得 |
遺産分割協議書もしくは遺言書 |
遺産分割協議書:相続人で協議して作成 遺言書:遺言者が作成 |
固定資産税評価証明書 |
遺産分割協議書:相続人で協議して作成 遺言書:遺言者が作成 |
相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書を作成する場合のみ必要) | 市区町村役場で取得 |
必要な費用
借地権の相続の際にかかる費用は、次のとおりです。
かかる費用の種類 | 必要な費用 |
---|---|
建物所有権の名義変更における登録免許税 | 固定資産税評価額×0.4% |
借地権の名義変更における登録免許税 | 固定資産税評価額×0.2% |
戸籍謄本 | 1通450円 |
除籍謄本・改製原戸籍 | 1通750円 |
住民票・戸籍の附票 | 1通300円 |
借地権の相続時に起こりがちなトラブル
借地権の相続の際、さまざまなトラブルが起こるおそれがあります。
ここでは借地権の相続時に起こることが多い3つのトラブルと、対応方法を紹介します。
支払い義務はないのに、名義変更料・承諾料を要求される
借地権の相続の際に、地主から名義変更料や承諾料を要求される場合があります。
法律的に名義変更料や承諾料の支払いに応じる義務はありません。
しかし、今後も地主との関係を円滑に保ちたい場合、自身にとって少額と感じるようであれば支払っても問題ありません。
要求される金額が非常識な場合や今後の関係性で不安を感じる場合、不動産会社に相談する選択肢を持つこともおすすめします。
地主から立ち退き・値上げを要求される
借地権を相続するにあたって、地主から立ち退きや賃料の値上げを要求されることがあります。借地権の相続に地主からの許可は不要なため、応じる義務はありません。
値上げも、これまで支払ってきた地代が地価や周辺の賃料相場と比べて著しく低い場合、地代を要求されることがあります。値上げを要求されたときに金額が妥当か判断するために、周辺の地価や賃料相場を調べておくとよいでしょう。
売却を拒否される
借地権を相続した土地の売却を地主に拒否されることがあります。この場合、契約書内に土地の「地上権」と「賃借権」を有しているかを確認しましょう。
地上権は地主の土地を使用できる権利です。この地上権を有している場合、地主に報告がなくても第三者へ売却ができます。
賃借権も地上権と同様、地主の土地を使用できる権利ですが、賃借権の場合、地主に承諾を取る必要があり、勝手に売却はできません。
賃借権で売却の必要性がある場合、地主との交渉が必要です。
借地権の相続で知っておくべき5つの注意点
借地権の相続は頻繁に起こらないため、思わぬトラブルに遭うことがあります。ここからは、借地権の相続でトラブルや思わぬ出費を避けるための注意点を5つ紹介します。
借地権にも相続税がかかる
借地権を相続したら、相続税を払わなくてはいけません。相続が発生した日から10カ月以内に相続税申告をする必要があります。申告が遅れた場合、無申告加算税を支払う必要があるため、忘れずに支払いましょう。
借地権の相続税評価額は、その土地の路線価の3~9割が目安です。評価額が高額な場合は、納税資金対策が必要です。
相続税について不明点がある場合は、税理士に相談することをおすすめします。
共有する場合は全員の同意が必要
特定の相続人が定まらない場合は、借地権や建物を兄弟で共有も可能です。
兄弟姉妹で借地権を共有相続している場合、借地権や建物の売却の際には全員からの同意が必要です。
相続した借地権を兄弟で共有し、その子どもにまた借地権が相続されることを繰り返すと、将来的に権利関係者が何十人にも増えるおそれがあります。借地権や建物の共有状態は、早めに解消したほうがよいでしょう。
兄弟間で事前に相談し、借地権付き建物はできる限り単独での相続をおすすめします。
更新時には更新料の支払いが必要
普通借地権には契約期間があり、更新時には更新料の支払いが必要です。
更新料の支払い義務は法律に定められていませんが、地主との良好な関係を保つためには支払ったほうがよいとされます。
更新料は借地権価格の3~5%程度が相場ですが、地域によっては借地権価格の10%程度の場合もあります。
金銭価値が高い借地を受け継いだ場合、必然的に更新料が高額になります。受け継いだ土地を活用するために、必要な費用はあらかじめシミュレーションしておきましょう。
建物消失後、放置すると借地権も消滅する
火災や地震などによって建物が消失した場合、そのまま放置すると借地権が消滅するおそれがあります。
亡くなった人が所有していた借地権や建物を放置していて建物が消失した場合、必要な対処をしましょう。
建物消失から2年以内なら、建物が存在したことを登記情報で証明できます。さらに消失日および再建築する旨を借地内のわかりやすいところに提示し、借地権を保全しましょう。
借地上に建物が建っている場合は、登記申請書を作成する必要
借地に建物が建っている場合、借地だけを相続した場合にはない手続きが発生するケースがあります。
借地権の所有に名義変更手続きは必要ないケースが多いものの、借地に建築されている建物については登記情報が登録されているため、相続時には建物の名義変更手続きが必要です。借地に建っている建物の名義変更を行う際は、法務局で登記申請手続きをしなくてはなりません。
登記申請の際は、必要書類を収集して登記申請書を作成する必要があります。スムーズに手続きを進めたい場合は、司法書士に依頼するのがおすすめです。
借地権の相続でよくある質問
- 相続放棄できる?
-
「地代や借地権の更新料・建物の解体費用を負担したくない」などの理由で、相続放棄をしたいこともあるでしょう。
相続放棄は相続を知った日から3カ月以内に「相続放棄申述書」を提出し、家庭裁判所に申し立てることによって可能になります。
ただし、相続放棄をすると、預貯金や株などほかの遺産も相続できなくなります。売却益を得られなかったり後順位の相続人とトラブルになったりするリスクも考慮しておきましょう。
- 借地権は契約期間中であっても解約できる?
-
借地契約を一方的に中途解約することは、基本的にできません。借地契約を終わらせたいときは、契約の期間満了時に地主に対して更新しないことを知らせましょう。
更新を取りやめる際は借地上の建物を取り壊すのか、地主に買い取ってもらうのか、などをあらかじめ地主と相談しておく必要があります。
なお、契約期間中であっても双方の合意があれば解約可能です。どうしても中途解約したい場合は、地主に申し出てみましょう。
- 借地権の相続登記に期限はある?
-
以前は借地権の相続登記に期限はありませんでしたが、2024年4月1日に相続登記の義務化が開始されました。これにより建物の取得日から3年以内に登記しなかった場合、10万円以下の過料が課されるようになりました。
- 借地権の相続登記に期限はある?
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以前は借地権の相続登記に期限はありませんでしたが、2024年4月1日に相続登記の義務化が開始されました。これにより建物の取得日から3年以内に登記しなかった場合、10万円以下の過料が課されるようになりました。
- 地主が亡くなった場合は?
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契約中に地主が亡くなった場合は借地権の相続と同様に、地主の相続人が借地契約上における貸主の地位を相続します。
今までの権利義務関係のすべては相続人に継承されるため、借地権に影響はなく契約内容も変更されません。
ただし、第三者に対して借地権がついた宅地が売却され、新たな地主が現れたときは要注意です。新しい地主から立ち退くように命令された場合、対抗要件がない限り従わなくてはなりません。
まとめ
借地権はほかの財産と同様に、亡くなった人から相続できます。
借地権の相続において基本的に地主の許可は必要ありませんが、特殊なケースにおいては許可が必要なこともあるため状況をよく確認しておきましょう。
必要がないのに相続時に名義変更料・承諾料を要求された場合は支払いの義務はありませんが、地主との関係を良好に保つために少額であれば支払ってもよいかもしれません。
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この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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