「老後に家を買う」のは正解?メリットとデメリットと注意点
老後の家の購入は、年齢に適した住まいを選べたり、相続税対策になったりといったメリットがあるものの、住宅ローンをはじめいくつもの注意点があります。定年退職してからも安心して長く住める家を買うには、どうすればよいのでしょうか。
もくじ
老後に家を買うメリットとデメリット
厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査」によると、60歳定年は企業の72.3%、65歳定年は21.1%となっており、「60歳で定年退職したら老後」と考えられます。また、選択定年制※※を導入している企業では、退職年齢を50歳としている割合がもっとも高いという結果もあり、50歳から定年退職して老後というライフスタイルも増えています。
定年退職を迎えてからどうするか?と考えたとき「老後に家を買う」のは、おすすめできる選択肢です。まずは、老後に家を買うメリットとデメリットを見てみましょう。
メリット
定年退職を経て収入が大きく減った段階で、高価な家を購入するのはリスクといえます。それでも、老後に家を買うメリットは少なくありません。
年齢に適した家で暮らせる
自身の年齢に適した家を選んで暮らせるのは、大きなメリットです。
たとえば、多くの人が子育てを終えているでしょうから、子どもの部屋などを配慮する必要がありません。自身の年齢を物件選びの中心に考えて、バリアフリー対応など年齢に合わせて検討できます。家の間取りや内装など、自分たちの好みを家に反映できるでしょう。
相続税対策になる
家を購入する年齢は50~60代になるため、自分たちの死後に発生する相続税のことも忘れてはなりません。老後に家を買うことは、相続税の面でメリットがあります。相続財産は現金で残すよりも、不動産として残したほうが相続税を安く抑えられるためです。
相続税の計算をする場合、土地は相続税路線価をもとに評価し、建物は固定資産評価額から計算して税額が決まります。それにより、5,000万円で土地を購入して5,000万円で自宅を建てた場合、土地は4,000万円、建物は3,500万円程度の評価になります。
同じ1億円でも、現金のままなら相続ではそのまま1億円で評価されますが、土地と建物に変えることで相続税を抑えられるのです。
デメリット
定年後に家を買うことは、メリットばかりではありません。もちろん、デメリットもあり、実際に購入するときは、メリットとデメリットをはかりにかけて検討することが大切です。老後に家を買うデメリットを確認しましょう。
家の維持にコストがかかる
家の維持にかかる費用は、年間30~50万円といわれています。一戸建てか分譲マンションか、また都会か田舎かなどの状況や、土地と建物の面積でも変わりますが、少なくとも年間30万円以上の維持費が必要になる点はデメリットのひとつです。
参考:金融広報中央委員会「住宅購入後の維持費」
住宅ローンが組みにくい
基本的に年齢が上がるにつれて年収や勤続年数が上がるため、住宅ローンの審査にとおりやすくなります。しかし、それにも限度があり、多くのサラリーマンは給料をもらえる年齢、つまり定年までの年数がローンの借入年数となります。55歳で住宅ローンを借りる人が65歳定年なら、ローン返済年数の目安は10年程度です。
安定収入の給料が途切れる定年後では、さらに住宅ローンが組みにくくなる点に注意が必要です。
定年後でも住宅ローンは組める?
定年後に家を買うと決めたら、購入資金の手配が重要なポイントになります。現金で一括購入できる余裕があるのならよいのですが、まとまった資金がないのであれば、住宅ローンを組むのもひとつの方法です。
しかし、定年後だと定期収入となる給料がありません。定年後でも住宅ローンを組めるのでしょうか。
定年後に住宅ローンを組む、3つのポイント
定年後に住宅ローンを組むには、収入と年齢という高いハードルを越えなくてはなりません。このハードルを越えるための、3つのポイントを解説します。
返済比率
住宅ローンを組むには、次の年齢制限があります。
- 申し込み年齢
- 新しく住宅ローンを借りるときの年齢
- 完済時年齢
- 住宅ローンの最終回を返済した時点の年齢
金融機関によって多少の差はありますが、定年65歳のときに住宅ローンを借りる場合は、最長でも80歳までの15年しか住宅ローンを組めないことになります。
このときに重要になるのが「返済比率」です。返済比率は収入に占める、返済額の割合のことです。15年間で住宅ローンを返済しようとすると、それだけ返済比率が高くなります。
たとえば、次のようなケースを想定してみましょう。
- マンション価格:5,000万円
- 住宅ローン借入額:5,000万円
- 申し込み年齢:65歳
- 返済期間:15年
- 金利:1%
住宅ローンでは、一般的に返済比率は30%以内が審査において理想的といわれています。そのため、5,000万円の住宅ローンを組む場合には、年収1,200万円以上でないと審査通過は難しいでしょう。
資金計画
定年後に住宅ローンを組む場合、短期間で大きな返済額になるため、しっかりとした資金計画を持つことが重要です。借入の申し込みをして「たぶん返せるだろう」といった程度の意識では、審査を通過できる可能性は低くなってしまいます。
健康問題
住宅ローンを組むには、団体信用生命保険※への加入が必須です。「生命保険」とあるように、病気によっては団体信用生命保険に加入できないことがあります。団体信用生命保険に加入できないと、原則として住宅ローンを借りられないため、この点にも注意が必要です。
定年後に住宅ローンを組む・ポイント別に必要な準備
住宅ローンを組むにあたっての重要ポイントがわかったら、次はその対策を考えてみましょう。定年後に住宅ローンを組むには、次のような対策が必要です。
返済比率と返済計画の対策
返済比率と資金計画というお金の対策としては、自己資金を多くする方法が挙げられます。自己資金を多くすることで返済比率を下げられるため、住宅ローンの審査に通過しやすくなるでしょう。また、自己資金を増やすときは手もとに残すお金と、住宅購入に利用できるお金をしっかりと分けることが大切です。老後資金が極端に減ってしまっては、住宅ローンを組めても生活に不自由が生じてしまいます。
住宅金融支援機構で「住宅ローンシミュレーション」を用意していますので、資金計画を立てるときに活用してください。
健康問題の対策
病気をなかったことにはできないため、ワイド団信の利用を検討してください。ワイド団信は加入条件の病歴などが緩和されている団体信用生命保険で、一般的な団体信用生命保険より金利が0.2%ほど高くなります。金融機関で住宅ローンを申し込むときに、相談してみましょう。
老後のマイホーム計画で注意するポイント
老後のマイホーム計画は購入資金だけでなく、相続をも意識する必要があります。無計画に購入を進めてしまうと自分だけでなく、子どもたちに迷惑をかけてしまうおそれがあるのです。老後に家を買うにあたって、注意すべきポイントをしっかりと押さえておきましょう。
退職金すべてを家の購入資金に注ぎ込まない
貯蓄が少ない場合は、退職金をすべて家の購入資金に注ぎ込まないようにしましょう。定年退職で受け取れる退職金の平均は1,800万円程度といわれています。1,000万円以上にもなる退職金は、会社員が一度に受け取れる金額としては滅多にない金額です。冷静さを失わないようにして、しっかりと資金計画を立ててから利用してください。
参考:厚生労働省「令和3年賃金事情等総合調査(確報)」
相続する人のことを考える
購入するときは、自分の死後に相続する人も考えることが大切です。たとえば、高齢者しか入居できないシニアマンションなど限定的な物件を残されても、相続した子どもは利用できません。購入する物件は、相続する人のことも考えて、慎重に検討しましょう。
自宅の売却代金を購入資金にあてる
自宅を所有しているのなら、その自宅の売却資金を新居購入資金にあてられます。自宅の売却は、いくつかのメリットがあるため、老後に家を買う方法として理想的です。
- 貯蓄や退職金の出費が減る
- 「特定のマイホームを買い換えたときの特例」を利用できる
貯蓄や退職金を多く残せるとそれだけ老後資金に余裕ができますし、「特定のマイホームを買い換えたときの特例」を利用すれば、譲渡益に対する税額を抑えられます。
不動産を売却したときの特例は、次の記事で詳しく解説しています。
老後に住む家を決めるときのポイント
老後に家を買うときは、どんな家を買うのかが重要です。若いころと老後では、家に求めるものが大きく異なります。若いころと同じ感覚で選ぶと、住みにくい家になってしまうかもしれません。そういったことを考慮して、老後に住む家を考えてみましょう。
医療機関、商業施設が近い
いま、高齢者による自動車の運転事故が社会問題になっています。加齢によって認知力が下がり、思わぬ事故を起こすことがあるためです。そういった背景もあるため、自動車に頼らずに生活できる、公共交通機関を利用しやすい地域に家を購入することをおすすめします。医療機関や商業施設まで、乗り換えなく移動できる地域であれば、自動車を利用せずに生活できるでしょう。
ただし、特定の施設に頼り過ぎるのも、また別の問題があります。その施設がいつまでも営業しているとは限らないためです。また、医療機関は生活に欠かせないものでありながらも、人の生き死にに関わることから嫌悪施設※と考える人もいるため、あまり近くにあると家の価値を下げるおそれがあります。
バリアフリーで生活しやすい
せっかく家を買うのですから、長く快適に住めることが大切です。そのため、バリアフリーであることは、必須条件といえるでしょう。
バリアフリーとは、高齢者や体が不自由な人にとって障害となるものをなくして、生活しやすくすることをいいます。バリアフリーが徹底していると段差がなかったり手すりがあったりして、年を重ねてからも生活しやすいのがメリットです。
子ども世帯が近くに住んでいる
老後の生活では思わぬトラブルが発生することがあるため、いざという事態に備えて子ども世帯の近くに家を購入するのもよいでしょう。子ども世帯と交流しやすいため、ふだんの生活で助け合うことも可能です。また、いずれ家を相続することになっても、自分たちから近い物件なら売却しないで活用できるかもしれません。
ただし、子ども世帯に迷惑をかけない、適度な距離感を心得ておくことが大切です。
まとめ
老後に家を買うときは、メリットとデメリットの十分な理解が大切です。そして、定年退職によって安定した収入がなくなるため、資金計画を綿密に立てる必要もあります。どういった家を購入するのかも重要なポイントです。検討に検討を重ねて、慎重に進めていきましょう。
何かと手間がかかる老後の家の購入ですが、年齢に合った家に住むメリットは小さくありません。持ち家があれば売却して購入資金にすることも可能です。
家の売却価格がどれくらいになるのかを知るのなら、不動産会社の査定がもっとも正確です。「リビンマッチ」を利用すれば複数の不動産会社に査定を依頼できるため、より正確な価格を知ることが可能になります。まずはリビンマッチを利用して、不動産会社に相談してみましょう。
この記事の編集者
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