定期借地権のマンションが売れない?その原因と対策を不動産営業担当者が解説
定期借地権マンションは住宅ローンが組みにくかったり、期間満了時には資産価値がなくなったりといったデメリットがあります。そのため、売れないという意見が多々ありますが、適切な対策を講じれば十分に売れる可能性はあります。
定期借地権マンションの可能性を最大限に引き出す方法とは、何でしょうか。
不動産営業の第一線で活躍する私が、定期借地権マンションが売れない本当の理由と、確実に売れるようになる方法をお伝えします。
もくじ
【中古】定期借地権のマンションが売れないといわれる原因
定期借地権マンションの敷地は地主が所有しており、区分所有者に土地の所有権はありません。
また、借地権には期限が定められていて更新できないので、期間満了時には建物を取り壊して、更地で返還する必要があります。
したがって定期借地権マンションは一般のマンションとは異なり、永久に所有できる資産ではありません。
ここでは、定期借地権マンションが一般のマンションに比べて売れないといわれる原因を解説します。
居住可能期間に限りがある
定期借地権マンションは借地権の期限が来ると、建物を取り壊して更地の状態で地主に返還しなければなりません。
定期借地権は50年以上(50〜70年が一般的)の期間が定められています。たとえば借地権の期間が50年で築30年のマンションの場合、残存期間が20年なので、マンションに居住できるのは20年しかありません。
さらに、解体期間が1〜2年かかりますので、実際に居住できるのは18年程度になります。そのため、残存期間が過ぎてしまうと、住み続けられなくなります。
さらに、資産価値もなくなってしまう点が、普通のマンションとの違いです。
地代・解体準備金が余計にかかる
定期借地権マンションでは、通常のマンションにはない地代や解体準備金を毎月支払う必要があります。「地代」は地主に支払う土地代、借地料です。これはマンションによって徴収したりしなかったりするので相場はありませんが、一般的には毎月1〜2万円前後の負担になります。
解体準備金は、解体にかかる膨大な費用を事前に準備するためのお金です。これも、修繕積立金の中に含まれている場合や、新築時に一時金として徴収済の場合がありますので、徴収されないケースもあります。
ただし、物価の上昇などの影響で、解体費が当初より高額で資金が足りない場合は、追加で徴収されるおそれもあります。
いずれにせよ、地代や解体準備金は一般のマンションにはない費用なので、同じ価格のマンションと競合した場合、ランニングコストを含めた月々の支払いは定期借地権マンションのほうが高くなってしまいます。
ローンを組みにくい場合がある
定期借地権マンションは、主に以下のような理由から住宅ローンが組みにくくなります。
- 売買価格の全額を借入できないおそれがある
- 借入期間が短くなるおそれがある
- 定期借地権マンションには融資しない銀行がある
売買価格の全額を借入できないおそれがある
担保評価が低く見られてしまうため、住宅ローンを組める金額が少なくなって、自己資金を用意する必要が生じるリスクがあります。
借入期間が短くなるおそれがある
住宅ローンの期間は定期借地権の残存期間が上限となります。そのため、毎月の支払額が高くなってしまうおそれがあります。
定期借地権マンションには融資しない銀行がある
銀行によっては、地主の属性(個人・法人の場合など)によって融資できない場合があります。
また、そもそも定期借地権マンションには融資できないという銀行もあるので、住宅ローンを組める金融機関は限られます。
定期借地の満期を迎えたマンションが存在しない
定期借地権マンションは、1992年8月に施行された「借地借家法」により誕生しました。定期借地権の期間は50年以上ですので、実際に契約期間を終えた物件がまだ日本には存在しません。
つまり、契約期間が終わったら実際どうなるのかは、誰にもわからないのです。
定期借地は更新できませんが、また新たに契約をやり直すことは可能ですので、期間満了になっても住み続けられる可能性はありますが、実際のところは不確かです。
将来が不確実な点も購入をためらう一因になり、売りにくさにつながっています。
中古の定期借地権のマンションを売るための対策
定期借地権マンションは一般のマンションとは違う点があり、売れないといわれています。
しかし、定期借地権のマンションは決して売れないマンションではありません。
狙うターゲットを定めて、定期借地権マンションのメリットを説明するなど、しっかりと売るための対策をしていれば正しく売却できます。
住み替え前提で購入する層を狙う
定期借地権マンションは居住できる期間の上限が決まっています。そのため、購入する人は残存期間内に住み替えを前提としている方に限られます。
たとえば、以下のような買主がターゲットになります。
- 転勤することが決まっていて、住み替え時期が決まっている人
- 子どもが小学校に行くようになったら、戸建てに住み替えることを決めている人
- 子どもへの相続を考えておらず、老後は老人ホームなどの施設へ入居予定の人
中古の定期借地権マンションを売るときには、上記のように住み替え前提で購入する顧客層を狙っていきましょう。
定期借地権マンションのメリットを説明する
定期借地権マンションはデメリットだけではなくメリットもありますので、メリットをアピールすることで売りやすくなります。
定期借地権マンションのメリットを3点にまとめました。
土地代がかからないため安い
定期借地権マンションには土地の所有権がないため、一般のマンションの相場に比べると、価格自体は安いケースがあります。
物件のエリアなどにもよりますが、新築時には一般的なマンションに比べて2〜3割安いともいわれています。
土地の固定資産税がない
土地の所有権がないため、固定資産税がかかるのは建物分のみです。そのため、通常のマンションに比べると固定資産税が安くなります。
ただし、マンションの土地持分の割合は大きくないので、税額にそれほど大きな差があるとはいえません。
立地のよい物件が多い
定期借地権マンションは交通の便がよかったり、希少価値のある立地の優れた物件が多かったりします。
地主が手放したくなかった土地だから定期借地権マンションになっているということですので、それだけ資産価値の高い土地といえます。
普通のマンションが買えないエリアで相場より安く購入できるのは、定期借地権マンションの魅力のひとつです。
残存期間を確認し売却するタイミングを決めておく
定期借地権の残存期間が短くなればなるほど、マンションの資産価値は低くなってしまい、高く売るのが難しくなります。逆に、売却時期が早ければ早いほど売りやすくなります。
残存期間が十分に残った状態で売るのが、売却を成功させるコツですので、いずれ売却を検討するのであれば、「いつまでに売る」という逆算で売却するタイミングを決めておく必要があります。
計画なしで行き当たりばったりで売却することになると、残存期間が短すぎて売れないリスクも出てきます。
中古の定期借地権のマンションを売るための注意点
定期借地権マンションは一般のマンションと異なる点があるので、売却する際に注意すべき点がいくつかあります。これらの注意点を理解しないでいると、売却に失敗して売れないということもありますので気をつけましょう。
残存期間に余裕があるうちに売る
定期借地権の残存期間が残りどれだけあるかは、常に把握しておきましょう。定期借地権マンションを、より高く売却するには「タイミング」が大切です。
たとえば、残存期間が残り29年と30年では、たった1年ですが感じ方が違います。価格にも影響してきますので、残存期間は常に把握しておき「1年前に売っておけばよかった」ということがないよう注意しましょう。
地主への譲渡承諾料が必要な場合がある
定期借地権のマンションを売却するには、借地権を譲渡してもよいという許諾、つまり地主(土地を貸す人)からの譲渡承諾が必要です。
地主が土地を貸しているわけですから、どんな人に土地を貸し出すかは把握しておきたいはずです。
マンションによっては譲渡承諾をもらうのに、費用が発生する場合があります。通常、譲渡承諾料を負担するのは買主ですが、承諾料は必ず発生するものでもないですし、相場もバラバラです。
しかし、数十万円の譲渡承諾料が必要になることが売却の契約後にわかると、トラブルになったり、せっかくの契約がキャンセルになってしまったりするおそれもあります。
売却の際に譲渡承諾料が必要かどうかは、事前に調べておきましょう。
定期借地権の売却実績が豊富な会社に依頼する
定期借地権のマンションを売却するには、一般の区分所有権物件とは異なる専門的な知識と経験が必要です。そのため、確実に売るには定期借地権物件の売買実績が豊富な不動産会社に依頼したほうがよいでしょう。
一般的な不動産会社では、定期借地権物件の取り扱い経験が乏しい場合があり、その性質を十分に理解していないことがあります。定期借地権は借地期間が決まっているため、残存期間によって価格が大きく変動します。
定期借地権の売却には専門性が求められますので、豊富な実績を持つ会社に依頼することで、納得のいく価格での売却がしやすくなるでしょう。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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