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離婚で退職金を取られない方法はある?損をしないためのポイント

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離婚で退職金を取られない方法はある?損をしないためのポイント

退職金制度がある会社に勤めている場合、一定の年数以上勤務すると退職時に退職金が支給されます。離婚時の財産分与では、この退職金も対象になるため、配偶者から請求されたときは原則として応じなければなりません。

しかし、長年の勤務で得た退職金を可能な限り手元に残したいと考えるでしょう。そこで、退職金を財産分与の対象から外す、あるいは分与額を抑える方法はあるのか、また財産分与において損をしないためのポイントについて解説します。

財産分与では退職金をいくら支払うのか?

退職金の財産分与は、2分の1ずつ分けるのが一般的です。

財産分与の対象になるのは、入社から退職までの期間のうち婚姻期間(同居)に発生した退職金だけです。結婚前や離婚後に発生した分は、財産分与の対象にはなりません。

そのため、退職金を受け取った後、財産分与の対象となる金額を計算して求める必要があります。

退職金受け取り後の財産分与の計算方法

退職金受け取り後の財産分与の計算式は「退職金額 × (婚姻期間÷勤務期間)」です。

夫が長年勤めてきた企業から退職金を得たケースについて、分与額を算定します。

  • 財産分与を支払う側:夫
  • 財産分与を受け取る側:妻
  • 婚姻期間(同居期間):35年
  • 夫の勤続年数:40年
  • 夫の退職金額:2,000万円
  • 分与割合:各2分の1

退職金額2,000万円 × (婚姻期間35年÷勤続年数40年) ÷ 2 = 875万円

妻の退職金の財産分与額は875万円です。

退職金受け取り前の財産分与の計算方法

退職金受け取り前の財産分与の計算式は「退職金相当額×(婚姻期間÷勤務期間)」です。

夫が受け取った退職金を財産分与する際の分与額を算定します。

  • 財産分与を支払う側:夫
  • 財産分与を受け取る側:妻
  • 婚姻期間(同居期間):14年
  • 夫の勤続年数:20年
  • 夫の退職金相当額:1,400万円
  • 分与割合:各2分の1

退職金相当額1,400万円×(婚姻期間14年÷勤続年数20年)÷2=490万円

妻の退職金の財産分与額は490万円です。

離婚で退職金を取られない方法はある?

離婚の際、財産分与の対象になるのは、婚姻中に得た夫婦の共有財産(預貯金、土地・建物、株式など)です。

夫婦のどちらか一方が得た退職金も分与対象となる可能性があります。退職金の分与を拒否できるのか、退職金を取られない方法などについて解説します。

退職金を独り占めするのは可能か?

夫が既に退職金を受け取っている、または退職金を受け取るのが確実であるという場合、妻は退職金の財産分与の請求が十分可能です。

一方、夫が退職金だけは離婚後の自分の生活資金としたいので、分与対象から外してほしいと妻を説得し、妻の同意が得られるならば独り占めもできます。

また、次のようなケースでは妻が退職金の財産分与を望んでも、その請求は認められない可能性があります。

  • 離婚時に退職金が支払われておらず、請求しても退職金の支給時期が10年以上先になる
  • 夫の勤務先に退職金に関する規程がない

とくに夫が勤務している事業所に退職金規程がない場合、退職金を受け取れないケースがほとんどです。

夫が退職金を渡さなくても分与割合に影響なし?

夫が退職金の財産分与を拒否し、妻が納得したという場合でも、共有財産の分与割合は基本的に2分の1ずつとなります。

もちろん、協議したうえで夫婦の事情に合った割合で分けて構いません。

たとえば、妻が亡くなった両親から受け取った多額の遺産を有していた場合、夫へ無理に2分の1で分けるよう請求をせず、共有財産を「夫7:妻3」という割合で合意する取り決めも有効です。

離婚時に退職金を隠すと、差し押さえを受けるリスクも

夫が退職金を妻へ分与したくなくて、金融機関に「隠し口座」を開設し、そこへ退職金を入金するケースが想定されます。

ただし、次のような方法で退職金の存在が発覚する場合もあるため注意しましょう。

  • 妻からの調査:通帳のコピー、クレジットカードの支払状況を調査され発覚
  • 弁護士会照会:妻の代理人に弁護士が就任した場合、弁護士から金融機関へ夫の預金口座の有無の確認が行われ発覚
  • 裁判所への調査嘱託:離婚調停、離婚裁判などの際、夫の預金口座の調査を妻に申し立てられ発覚

一方、妻から財産分与を請求される前に、「退職金をすべて使い果たせばよいのでは」と考える人も多いことでしょう。

しかし、妻が夫の使い込みを予期し、裁判所に「仮差押」を申し立てる可能性があります。

仮差押とは、財産を相手から処分されないよう一時的に差し押さえる手続きです。この申し立てが認められると、夫は勝手に退職金を使えなくなります。

財産分与で少しでも損をしないために

離婚を決め、財産分与について話し合う場合、夫婦それぞれの口座名義となっている預貯金、婚姻中に得た土地・建物・自家用車などの他、退職金などを事前に把握する必要があります。

正確に共有財産を調べなければ、夫婦が平等に財産を分けるのは困難です。共有財産と特有財産の区別、トラブルなく財産分与を進めるコツについて解説します。

そもそも給与や退職金は特有財産ではない?

財産分与の対象となるのは、婚姻中に協力して得た夫婦の財産です。この財産は「共有財産」と呼ばれています。

家庭を経済的に支えてきた夫からすれば、「自分が勤務先で得た給与や退職金は、妻の協力を得たわけではない」と思うかもしれません。

しかし、妻が共働きならば、妻の収入があったおかげで、夫名義の口座の預貯金が減少せずに済んだともいえます。

また、妻が専業主婦であっても、妻が家庭に関する一切の活動を行ってくれたおかげで、夫は安心して仕事に従事できたと考えられます。

そのため、婚姻中に夫の得た給与・退職金も、基本的に共有財産です。

一方、夫婦の共有財産と認められない財産は「特有財産」と呼ばれます。特有財産とは、主に次のような財産を指します。

  • 夫婦の一方が相続した遺産
  • 婚姻前に積み立てた預金や株、購入不動産・自動車など
  • 夫婦のどちらかに贈与された物

上記の財産の場合、基本的に夫婦で協力して得た財産とはいえません。

ただし、独身のときに預金口座を開設しても、婚姻中も同じ預金口座に貯金していた場合、共有財産に含まれる可能性があるため、注意が必要です。

円滑に財産分与を進めるコツ

夫婦間でトラブルなく財産分与を進めたいならば、お互いに正確かつ誠実な財産開示(お互いの預金口座を開示し合うなど)が求められます。

また、財産分与の取り決めに双方が納得した場合、義務ではないものの、必ず「財産分与契約書(合意書)」を作成しましょう。

この契約書(合意書)があれば、離婚当事者が約束した内容を忘れるような事態は避けられます。

なお、夫婦で取り決めた内容を公正証書で作成したほうが、より確実に財産分与の手続きが進められます。

公正証書は公証人(公証作用を担う公務員)が作成する公文書であり、公証役場に原本が保管されるので、当事者の一方から破棄されたり内容を改ざんされたりするリスクもありません。

その他、公正証書に「財産分与の支払義務を履行しなかったならば、強制執行されてもかまわない」という文言(強制執行認諾)を明記すれば、当事者の一方が約束を破った場合、裁判手続きを経ずに強制執行ができます。

ただし、裁判手続きを経ずに強制執行ができる財産は、現金・貯金などのような金銭債務に限られます。

まとめ

離婚時の財産分与で退職金を巡るトラブルは珍しくありません。

退職金は婚姻中に得た共有財産と見なされるため、原則として分与対象になります。しかし、夫が妻の同意を得て退職金を独占することは可能です。

また、退職金が支払われていない場合や、夫の勤務先に退職金規程がない場合は、分与の請求が難しくなることもあります。

退職金を隠す行為は、差し押さえのリスクを含め、リスクが伴います。財産分与で損をしないためには、夫婦の共有財産を正確に把握し、特有財産との区別を明確にすることが重要です。

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