【銀行員が解説】住宅ローン返済中に離婚がばれると問題ある?持ち家のある離婚の対処法を銀行員が解説
住宅ローンを返済中の夫婦が離婚したことが、金融機関にばれると問題があるの?住宅ローンを扱っている銀行員が「住宅ローン・離婚・ばれる」をキーワードに、こうした疑問にお答えします。
もくじ
住宅ローンと離婚に関する疑問「金融機関にばれる?」「ばれると問題ある?」
住宅ローンと離婚に関する疑問を、Q&A形式で解説します。ちなみにここの内容は、実際に銀行員としてお客様から受けた質問と、その回答をもとにしています。
疑問1 離婚したことを届け出ないとまずいの?
- 離婚したら住宅ローンを融資している金融機関に届け出ないとだめ?
- 「離婚したら届け出が必要」というルールはありませんが、金融機関に連絡したほうがよいでしょう。
住宅ローンの決まり・ルールを定めた「規定・約款」などには、届出事項に変更があったらただちに金融機関に届け出ること、といった内容があります。
ここでいう届出事項とは一般的に住所や電話番号、氏名、印鑑などのことで、「離婚」は届出事項にはあたりません。つまり、義務ではありません。
一部のネットの記事などには「離婚したことは金融機関に届け出る義務があり、届け出をしないでばれると、一括返済を求められることもある」といった記述もありますが、銀行員から見るとこれは言葉足らずだと思います。
離婚したこと自体は届け出る義務はないものの、離婚が原因で発生する問題と、その解決の過程で金融機関と歩調を合わせる必要があります。そのため、まずは住宅ローンの取引がある金融機関に連絡をしたほうがよいでしょう。
疑問2 住宅ローンのある家に住まないと、金融機関にばれる?
- 住宅ローンのある家に住んでいないことは、黙っていれば銀行にはばれない?
- ばれます。詳しくお話しすることはできませんが、間違いなく、いつかは金融機関にばれます。
住宅ローンは、自分や配偶者、家族が住むための家を購入するためのローンなので、借りた本人がその家に住むことが大前提です。自宅マンションを購入すると偽って他人に賃貸する「住宅ローンの偽装(俗にいう、なんちゃって住宅ローン)」は、住宅ローンのルール違反となります。悪質な場合は罪に問われることすらあります。
金融機関はお客様の現状把握を、定期的に行っています。たとえば「お取引内容の確認」などといった葉書を1年に1回程度のサイクルで発送するのも、現状把握のためです。
もちろん、お客様に取引内容を確認してもらい、疑問などあれば対応するといった本来の目的もあります。しかし、金融機関からの郵送物の一部は「転送不要」となっており、もし転居しているときは金融機関へ戻ってきます。こういったことから、住んでいないことが金融機関にばれてしまうのです。
そのほかにも金融機関が、住宅ローン利用者がその家に住んでいない事実を把握できる方法はありますが、極秘事項なので述べることはできません。
(前略)
1.借主または保証人が住所変更の届出を怠る、あるいは借主または保証人が銀行からの通知または送付書類等を受領しないなど、借主および保証人が責任を負わなければならない事由により、銀行が借主および保証人から最後に届出のあった氏名、住所にあてた通知または送付書類等が延着しまたは到達しなかった場合は、通常到達すべき時に到達したものとします。 京葉銀行「住宅ローン規定書 第16条 届出事項」
疑問3 離婚して住んでいないことがばれるとどうなるの?
- 離婚したので、住宅ローンのある家から自分だけ出ていこうと思う。自分が住んでいないことが金融機関にばれるとどうなる?
- ルールの上は住宅ローン残額の一括返済を求められるおそれがあります。ただし、お客様の状況や事情などによって、金融機関の対応も変わるため、行動に移す前に、まず金融機関へ相談してください。
住宅ローンを借りた人がその家に住まない場合は、住宅ローンの一括返済を金融機関から求められることもあると、住宅ローンの規定や約款に定められています。そのため、ルールの上では「住んでいないなら全額返済して」ということになります。これは、住宅ローンを借りた人がその家に住んでいないと、そもそも住宅ローンとして成り立たなくなるためです。
しかし、銀行員の私の経験では、離婚してそこに住んでいないからといって、全額返済をお客様に求めたことはありません。そのため、いきなり全額返済を求められることは少ないと考えています。
ただし、離婚をきっかけに返済が滞納して、全額返済を求められることになったお客様はいます。その家に住んでいないことより、その先にある問題のほうが重要なのです。
(前略)
債務者等(債務者又は連帯債務者のいずれか一人)について次の各号に掲げる事由のいずれかに該当し、又は抵当権設定者について(5)、(10)又は(14)に該当し、当行から請求したときは、本契約に基づく債務の全部又は一部につき期限の利益を失い、借入要項に定める返済方法によらず、直ちにその債務を返済するものとします。
(中略)
(8) 当行に届け出ないで取得対象住宅に債務者又は連帯債務者のいずれも居住せず、又は当行の承諾を得ないで取得対象住宅の全部又は一部を住宅以外の用途に使用したとき
(後略) 楽天銀行「楽天銀行住宅ローン約款」
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住宅ローン返済中の離婚で生じる問題
では住宅ローンの返済中に離婚すると、どういった問題が生じると考えられるでしょうか。考えられるいくつかの問題点を解説します。
問題1 どちらが住み続け、どちらが払うか?
離婚すると、どちらか一方が出ていき、一方がその家に住み続けるケースがよくあります。重要なのは離婚によって次の選択を迫られることです。
- どちらが住み続けるか
- どちらが住宅ローンを支払うか
- 家など不動産の名義はどうするか
たとえば、「住宅ローンを借りていた夫が出ていくことになり、家には妻と子どもが残って住み続ける」というケースで考えてみましょう。
家の住宅ローンは夫に返済義務があるため、出ていったとしても、その点に変わりはありません。引き続き夫が返済することになります。しかし、銀行員をしていた経験では「住宅ローンを借りている夫は、出ていくときに返済を続ける約束をしたが、その約束が守られなくなった」という問題に発展することが非常に多いのです。
出ていった夫には自分の生活があり、新しい家族ができるかもしれません。そのため「元の家と元の家族」のことが疎かになってしまう人もいます。
問題2 不動産の名義
土地や建物といった不動産は、お金を払った人の名義になるのが大原則です。これは、住宅ローンを借りて家を手に入れる場合でも同じです。
たとえば、住宅ローンを借りて住宅を新築する費用の全額を払ったなら、住宅は住宅ローンを借りた本人名義になるのが当然です。半分は夫の住宅ローン・半分は妻の自己資金なら、住宅の持ち分は半分ずつになります。
これはペアローン※1や連帯債務※2など夫婦共同で住宅ローンを借りた場合も同様で、住宅を購入する費用をどれだけの割合で払ったかで名義が決まります。
また、どちらかの両親の所有地に、住宅ローンで家を建てるのもよくあるケースです。しかし、離婚した場合は、こうした不動産の名義をそのままにできないケースが多いです。
たとえば、土地の名義は、次のような問題点が考えられます。
- 夫の親の所有地に、夫が家を建てた
- 夫が残るならいいが、妻はそのまま住み続けられるのか
- 夫の親の所有地に、妻が家を建てた
- 夫の親との関係をどうするか、そのまま残れるのか
妻と夫を入れ替えても、状況は同じです。もう少し掘り下げてみると、夫の親の所有地に夫名義で家を建てた場合なら、妻が出ていくだけだと住宅ローンと不動産の名義に影響がありません。
しかし、夫の親の所有地に妻が家を建てた場合は、どうでしょう。私が銀行員として対処した事例を紹介します。
《事例》別れた夫の親の所有地に住み続ける問題点
Aさん(女性・会社員・子どもあり)
夫の親の所有地に、夫単独の住宅ローンで家を建てた。夫の女性問題で離婚。夫は出ていくが養育費と住宅ローン支払いを続けると約束している。いまのところ養育費も住宅ローン支払いも約束どおり支払われ、今後も続くと見込まれる。子どもの祖父母である夫の親との関係は良好で、「これからも住んでいいよ」といってくれている
こういったケースで、発生する問題を考えてみましょう。
- 土地の名義を夫の親から妻に変えたい
- 土地名義を変えると、新しい名義人は前の所有者から土地をプレゼントされたと解釈され、贈与税の対象になります。息子の元妻や孫のために土地を元妻(または孫)名義に変更すると、贈与とみなされ、贈与税が発生するおそれがあります。
また、銀行は担保の不動産の名義変更を簡単には認めてくれないため、その点も注意が必要です。
- 土地の名義人である夫の親が死亡した
- 夫の親から見て相続人でない妻は、原則として土地を相続できません。夫が土地を相続した場合、両者の関係が悪化すると、夫から「出ていけ」といわれるおそれがあります。また、夫の兄弟が土地を相続した場合も「出ていってほしい」といわれるかもしれません。
遺言で「土地を元妻名義にする」としていても、ほかの相続人が納得できないと揉めることも考えられ、相続人との裁判に発展する最悪のケースも考えられます。
このように「親名義の土地に、夫が住宅ローンを借りて家を建てる」という、よくあるパターンでも、離婚をすると不動産がどちらの親名義なのかが重要になります。
離婚したときの持ち家の対処法
離婚したときの、持ち家の対処法について解説します。
対処法1 夫婦間でやり取りする
夫婦間で不動産名義をやり取りするのが、ひとつ目の対処法です。ただ名義を変えるだけだと不動産をプレゼント、つまり贈与になって税金が発生してしまうおそれがあります。そうならないために、財産分与を行います。
財産分与
財産分与は離婚するときに一方が、相手に対して財産を請求できる仕組みのことです。財産分与は夫婦の関係性から、次のような考えに基づいています。
財産分与についての考え方
- 離婚するとき夫婦の財産はどちらの名義でも、共同で形成したので公平に分配する
- 財産のある側は財産を分配することで、相手の生活を保障する
- 原則として離婚の原因をつくったほうが、損害賠償として財産を差し出す
これらはあくまで原則論で、実際には話し合いがまとまらず、弁護士を立てたり、家庭裁判所で離婚調停などに発展したりすることがあります。財産を2分の1ずつ分けることが多いようです。
不動産は財産分与で特に争点となる財産です。どちらか一方の名義の不動産であっても、これまで夫婦ふたりが協力した資産とも考えられる場合は、財産分与の対象になります。
対処法2 借り換え
家を出ていった相手名義の住宅ローンを、残ったほうの名義で借り換えることで、住宅ローンと家の不動産名義を手に入れる方法です。
これにはまず、金融機関に相談して借り換えに承諾してもらう必要があります。金融機関としても返済が続くことになり、また離婚に関する問題が整理されるため、借り換え自体に反発は少ないと考えられます。
しかし、残された相手に住宅ローンを払うだけの収入がないと、借り換えは難しいでしょう。たとえば、家に残った妻が専業主婦などの場合は、住宅ローンの借り換えは現実的ではありません。
対処法3 売却
財産分与は弁護士への依頼や離婚調停といった大きな問題に発展することがあり、また借り換えはそもそも実現性に疑問が残ります。そういった問題を解決する方法としては、売却がもっとも現実的でしょう。
ただし、住宅ローンが残っている家は金融機関の担保になっているため、売却して住宅ローンの残債を一括完済できることが条件です。この状態を、アンダーローンといいます。
しかし、住宅ローンの残債より低い金額でしか家が売れそうにない状態(オーバーローンといいます)だと、原則として金融機関は売却を承諾してくれません。とはいえ、金融機関によっては売却したあとに住宅ローンが残る場合でも、引き続き返済すると約束すれば担保の解除に応じてくれる可能性もゼロではありません。まずは、金融機関に相談することが大事です。
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