不動産の割賦販売(かっぷはんばい)とは?意味や利点と欠点などを解説
不動産の割賦販売では、販売価格を分割で回収します。たとえば、3,500万円で不動産を販売したとします。この3,500万円を10年間で毎年350万円ずつ支払う契約で販売するのが、割賦販売です。
本記事では不動産の割賦販売の利点と欠点、スムーズに販売するための注意点をわかりやすく解説します。
もくじ
不動産の割賦販売とは
不動産の割賦販売では、分割で支払う契約を結んで販売します。
一般的な不動産販売では、売却代金を一括で受け取れます。引き渡し時までに、現金一括払いか住宅ローンを借り入れるなどして、売主の手に渡ります。
しかし、買主が引き渡し時に代金を一括で支払えなかったりローンを借りられなかったりした場合は、売主が代金を一括で受け取れません。事情がある買主に譲歩する形で売主が「分割払い」を許容するのが、割賦販売です。
割賦販売できる不動産とは
割賦販売はすぐにお金を用意できず、かといって住宅ローンも借りられないケースで有効です。
たとえば、親族関係など特別な関係の売買では割賦販売が向いています。これは、貸付金を賭け事などに不正利用されるおそれがあったり、不動産仲介を通さないために必要な書類がそろわなかったりといった理由で、金融機関でローンを借りるのが難しいためです。
また、再建築ができない「再建築不可物件」も割賦販売に向いています。たとえば、以下のような物件は、再建築不可物件に該当します。
- 再建築に必要な接道要件を満たしていない物件
- 自然環境を重視し市街化を抑制する「市街化調整区域」であるために、建て替えの許可がおりない物件
再建築不可物件は不動産価値が低いとされるのが一般的なため、金融機関が融資をしたがらない傾向にあります。しかし、ローンが不要な割賦販売であれば売買しやすくなります。
割賦販売できない不動産
割賦販売できるケースは限られています。
不動産の所有者がローンを支払っている場合、借入先の金融機関などから抵当権が設定されています。抵当権が設定されたままでは、売買ができません。ローンの残債務を完済して、抵当権を抹消する必要があります。
金融機関からの借り入れの際(金銭消費貸借抵当権設定契約)には、ほとんどの場合、返済途中に売買して所有権移転することを禁止しているためです。土地だけでなく建物も同様です。
割賦販売で不動産を売却する利点
割賦販売で不動産を売却する利点には、何があるでしょうか。主なものを挙げてみました。
売れにくい不動産も割賦販売契約なら売れる可能性
訳アリ物件などさまざまな理由で売れにくい不動産も、割賦販売契約なら売れる可能性があります。代表的なのが、再建築不可の不動産です。このような不動産はローンが借りられないことが多いため、売れにくくなります。
しかし割賦販売ならローンを借りなくても購入できるため、売れる可能性が出てきます。また、古い借家などでも長年にわたって入居している人からの家賃を割賦支払いに変え、売却できたといった事例もあります。
買主の対象がひろがる
一般的な不動産の販売で、ローンが借りられないため購入を諦めざるをえないといったケースは少なくありません。
ローンが借入できない原因が不動産ではなく借り手側、つまり買主側にあるケースは、ローン審査が通りにくい条件の人です。
- 転職したばかりで勤続年数が短いうえに所得が低い
- フリーランスや自営業をスタートしたばかりで実績が少ない
- 過去に金融で事故歴があり信用情報に登録(いわゆるブラックリスト)されている人
上記のようなローンを借入できない条件の人たちの中には、実際に返済できる自信はあっても審査上の規定で借入できない人もいます。
しかし割賦販売ならローンを借りなくても分割払いで売買が可能なので、このような買主でも購入対象になる可能性が高くなります。
親族間での売買がしやすい
110万円を超える生前贈与をすると、贈与を受けた側は贈与税がかかります。しかし、贈与ではなく親族間の売買であれば、贈与税を避けられる可能性が高くなります。
しかし、親族間の売買ではローンの借り入れができません。金融機関の住宅ローンは親族間での不動産売買のケースが少なく、また必要もないと考えるためローンの対象としていないからです。しかし、割賦販売なら可能です。
付き合いが長く、血のつながった親族関係であれば、お互いの人となりをよく理解しており意思の疎通がしやすいぶん、長期的な分割払いの契約でもお互い合意しやすくなるでしょう。
また、取引価格や引き渡し時期などの融通も利きます。大切な家を第三者に譲り渡すのではなく、身内に譲り、愛着のある家に住んでもらえる点もメリットです。
割賦販売で不動産を売却する欠点
通常の売買ができなかったり難航したりするケースでも販売できる一方で、注意しておきたい欠点もあります。
自分のケースに合っているかどうかも含めて、欠点のほうも理解しておきましょう。
売却代金を全額回収できないおそれ
不動産の割賦販売では引き渡し後、売買代金のほとんどを長期にわたり何度か分割して支払うことが多いため、そのあいだに買主サイドにトラブルがあった場合、支払えなくなるおそれがあります。金融機関は、そのような緊急時にも代金を回収できるよう、不動産に抵当権を設定します。
しかし、引き渡し時に所有権を買主へ移転登記をしていると、すでに不動産は自分のものではなくなります。一般的な不動産売買では、買主が売買代金を全額支払ったタイミングで所有権移転登記を行いますが、割賦販売での所有権移転登記のタイミングは全額支払ってもらう前に行う場合があります。
分割払いの支払いが止まった際、対応が難しくなり、売買代金を回収できなくなるリスクがあります。
親族以外への売却相手を見つけるのが難しい
不動産の割賦販売には買主の対象が広くなるというメリットもありますが、最終的に双方が契約内容の合意に至るまでには高いハードルを越える必要があります。
分割支払いの条件は合意しにくい項目のひとつです。買主は少しでも負担を減らせる長期の支払いを希望しがちですが、売主にとっては長期になるほど支払いが滞るリスクが大きくなります。
特に難しいのは登記のタイミングです。登記のタイミングが遅いほど売主の負担は少なくなりますが、反対に買主の負担が大きくなります。登記のタイミングが遅いとは売主が物件の所有権を保持し続け、所有権を移転しない状況が続いていることを指します。
所有権が売主にある場合、買主が支払いを滞らせた場合でも物件の所有権が買主に移っていないため、ほかの買主を見つけるなどの対策が可能です。これは、売主にとっては万が一のリスクヘッジになりますが、買主にとってはすでにある程度の金額を支払った状態で別の買主に不動産を売却されるおそれがありマイナスポイントです。
難しい合意でも血がつながった親族関係であれば、意思の疎通がしやすく信頼しやすいですが、信頼関係をいちから築く必要のある他人同士では双方の落としどころを見つけるのに苦労しやすくなるでしょう。
贈与税課税の危険性
不動産の割賦販売は特に親族間でのケースが有効ですが、親族間での割賦販売の場合、利息をなしにしたり、かなり低い利息を付けたりも珍しくありません。
しかし無利息や低利息にして不動産を割賦販売すると、利息分が贈与にあたる可能性があるので注意が必要です。不動産の親族間売買でも売買金額が相場とかけ離れておらず、現金で買うなら問題ないのですが、割賦販売はローンと同じなので、利息を付けるのが相当だという考え方です。
しかし税制上、どのくらいの期間にいくらの金額や利息が贈与にあたるのか、基準が明確になっているわけではありません。
スムーズに割賦販売するためのポイント
割賦販売で不動産を売却する利点や欠点をみてきました。総合的にみて不動産の割賦販売をスムーズに行うためのポイントを整理してみましょう。
抵当権を抹消する
売買の対象となる不動産に抵当権が設定されたままだと、割賦販売ができません。基本的には売買前に売主サイドでローンを完済し、抵当権を抹消する必要があります。
手持ちの資金で完済できないケースでは、買主の協力を求めることも含めて考える必要があります。たとえば、買主サイドでローン完済に必要なだけの手付金を用意することが挙げられます。手付金は引き渡しの前に支払われるお金ですので、そのお金で(手持ちの資金と併せて)ローンを完済し、抵当権を抹消します。
登記のタイミングをよく話し合う
不動産の割賦販売では売主と買主との分割払いが終わるまで、長期的な付き合いになります。その中で、どのタイミングで所有権を移転するかがポイントです。
相手方や不動産会社などに任せてしまうと、売買代金を回収できなくなったり、住んでいる家にいつのまにか抵当権が設定されていたり、さまざまなトラブルのもとになります。所有権移転・登記のタイミングは双方よく話し合って、合意できる内容にしておくことが極めて重要なポイントです。
贈与税を回避する
主に親族間での割賦販売で、無利息や低利息で売買すると課税対象になることがあります。そのため、金利をいくらにするかは無駄な税金を支払わないために重要です。親族間での割賦販売では一般的なマーケット金利として、金融機関でローンを組んだ場合の利息を参考に設定するとよいでしょう。
分割払いの内容は契約書などの書面で明記し、契約書は双方が所持します。また、支払いは現金でのやりとりではなく、金融機関で振込みをして通帳記帳し証拠として残るようにしておくと贈与税の回避に有効です。
適切な不動産会社に相談する
不動産の割賦販売は通常の売買ができなかったり難航したりするケースで有効なので、専門的なノウハウやトラブル対処、法的知識や経験が必要です。
直接個人間や親族間でも売買は可能ですが、契約書などを作成するには双方のリスクを考慮した合意のもとに適切に行われる必要があります。そのためには専門的な経験のある不動産会社が適切です。
不動産会社の仲介には仲介手数料が発生しますが、専門性と実績のある不動産会社なら売買のリスクをなくし適切な対応で安全な契約が成立します。
不動産を売却・購入したいのに「ちょっと訳アリ物件」「ローンが借入できない」で止まっているなら、専門性と実績のある不動産会社へご相談ください。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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