不動産の相続税を計算する方法と節税について解説
被相続人(亡くなった人)から不動産を相続すると、相続税がかかることがあります。
相続税と聞くと高額になるイメージがあり、無事に納付できるのか不安になることがあるかもしれません。
結論から言うと、不動産の相続は控除や特例が適用されるため、相続税が発生する可能性は低いです。ただし、申請をしないと適用されない控除や特例も多いので、相続税の申告時には注意が必要です。
ここでは、不動産の相続でかかる相続税の計算方法、そして納税額を抑えるための節税対策を解説します。
もくじ
不動産の相続税はどうやって決まるのか
相続税は、相続人が受け取ったすべての遺産の価値を合算した額に対してかかります。そのため、不動産以外にも相続する遺産がある場合、すべての遺産の価値を把握してからでないと納税額を求められません。
遺産が不動産だけだった場合の相続税は、以下の手順に沿って求めます。
- 不動産の評価額を計算する
- 評価額から基礎控除を差し引く
- 各相続人の相続額に応じた相続税を計算する
不動産の評価額を算出する
不動産の相続税は、購入時の価格ではなく、相続する時点の評価額に対してかかります。購入時の価格で相続税を申告すると、本来納める必要のない相続税が発生するおそれがあります。
税金を多く納めるぶんには税務署から指摘されることがないため、無駄に高い税金を納めることになってしまいます。
実際に、税理士をしている筆者の知人に話を聞くと、相続税申告をご自身でおこなった人で、不動産を購入した当時の価格で相続税申告をしていた人がいるそうです。
不動産の相続の計算根拠を確認したときに、何十年も前の売買契約書が出てくることが1年に2~3回ある、ということなので、不動産の価値を計算するときは購入時の価格で計算しないよう注意しましょう。
なお、不動産の評価額を算出する方法は、のちほど説明します。
評価額から基礎控除を差し引く
基礎控除とは、遺産の評価額から一律で引くことのできる控除金額のことを指します。不動産の評価額が基礎控除よりも低ければ、相続税は発生しません。相続税の基礎控除額は、下記の計算式で求められます。
法定相続人とは、民法で定められた被相続人の財産を相続できる人のことを指し、主に配偶者と血族が該当します。 たとえば、被相続人の妻と子の2名が法定相続人の場合、基礎控除額は4,200万円です。
遺産の評価額が 4,200万円以下であれば、相続税はかかりません。申告も不要です。
各相続人の相続額に対して課税される
基礎控除を差し引いたあとは、法定相続分どおりに各相続人の相続税を計算します。
法定相続分とは、民法に定められた相続人が2名以上いる場合の各人の相続割合のことです。また、相続税の総額を計算する際は、相続税の速算表を使うことをおすすめします。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額(万円) |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | ー |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200 |
6億円超 | 55% | 7,200 |
※国税庁「 No.4155 相続税の税率」より引用
実際に以下の事例で、相続税を計算してみましょう。
【事例】
- 法定相続人 配偶者、子ども1人 計2人
- 課税総額 8,000万円(基礎控除4,200万円を差し引き済)
この場合、法定相続分は配偶者、子どもがともに割合が1/2となるので以下のようになります。
配偶者の仮の相続税=法定相続分4,000万円×20%-200万円=600万円・・・①
子どもの仮の相続税=法定相続分4,000万円×20%-200万円=600万円・・・②
法定相続人の子どもが2人いる場合は、割合は1/4(1/2×1/2)です。
この事例では、配偶者と子が納める相続税の額は600万円ずつです。ただし、相続税を申告するときは、控除や特例が適用できる場合があるため、納税額をさらに抑えられます。
不動産の評価額を求める方法
それでは、不動産の評価額を算出する方法を解説します。注意すべき点は、土地、戸建て住宅、マンションでそれぞれ算出方法が異なります。
土地の評価額を求める方法
被相続人から土地を相続した場合や、土地が含まれる戸建てやマンションを相続した場合は、土地だけの評価額を算出する必要があります。土地の評価額は、路線価がある地域は路線価方式で算出し、路線価がない地域の土地は倍率方式で算出します。
路線価方式の算出方法
路線価とは、土地が面している道路ごとに設定された1㎡あたりの価額のことをいいます。
路線価方式の計算方法は、以下のとおりです。
たとえば、路線価が20万円、奥行価格補正率が1.0、面積が500㎡の土地の場合、土地の相続税評価額は、1億円となります。
路線価が設定されているかどうかは、全国地価マップの「住所サーチ」で調べられます。路線価は国税庁の路線価図・評価倍率表で個別に確認しましょう。奥行価格補正率は、奥行価格補正率表をご確認ください。
倍率方式の算出方法
路線価がない場合は倍率方式で算出します。倍率方式の計算方法は、以下のとおりです。
まず、固定資産税評価額を確認します。土地の所有者宛に毎年市区町村から送付される固定資産税納税通知書を見て確認できます。次に、倍率を確認します。これは路線価同様、路線価図・評価倍率表で確認してください。
たとえば、固定資産税評価額が4,000万円、倍率が1.0の場合、土地評価額は4,000万円となります。
このように、路線価の有無で計算方法が変わります。
戸建ての評価額を求める方法
戸建て住宅の評価額は、固定資産税評価額を倍率1.0倍にした額となります。つまり、固定資産税評価額=相続税評価額です。毎年4月〜6月ごろに固定資産税納税通知書が送られてくるので、そちらで固定資産税評価額を確認できます。
マンションの評価額を求める方法
相続した不動産がマンションの場合、土地部分と建物部分の評価額を足した合計額が、相続税評価額となります。
土地部分は、以下の2パターンとなります。
①路線価が設定されている場合
路線価×マンション全体の面積×ご自身の持分割合
②路線価が設定されていない場合
マンション全体の固定資産税評価額×道路ごとの設定倍率×ご自身の持分割合
建物部分は、マンション全体の固定資産税評価額×ご自身の持分割合がそのまま相続税評価額となります。
不動産を相続するときの節税対策
不動産の相続ではいくつか節税できる特例があり、適用することで納税額を抑えられます。
ただし、特例や控除を適用するには、確定申告が必要です。無理にご自身で進めるのではなく、税理士の方に相談することをおすすめします。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、相続した土地の相続税評価額を減額できる特例です。種別が特定居住用宅地等であれば、330㎡まで評価額を最大80%減額できます。
家の相続では、この特例が多く使われており、種別や面積によって減額できる割合が決まってきます。
たとえば、土地評価額が5,000万円の300㎡の宅地を相続した場合、80%の4,000万円を減額できるため、土地評価額は1,000万円です。
なお、減額の対象は土地のみです。条件がありますが、自分で確認するにはやや複雑なので、税理士などの専門家に相談して適用要件を確認しましょう。
配偶者の税額軽減控除
配偶者の税額軽減控除は、被相続人の配偶者が受け取った遺産に対して適用できる控除です。配偶者が相続する遺産額が1億6,000万円、または法定相続分と比較して、金額の多いほうが控除されます。
たとえば、被相続人の遺産2億円を配偶者と子ども2人の3人で相続して、配偶者が1億5,000万円、残り5,000万円を子ども2人で分けた場合、配偶者は、配偶者の税額軽減控除を適用すれば、相続税がかかりません。
また、遺産額が10億円あり、法定相続分で相続した場合、配偶者の相続分は50%の5億円になります。この場合、相続額に関係なく法定相続分に収まっているなら、配偶者の税額軽減控除を適用すれば相続税はゼロです。ただし税額がゼロでも、軽減制度を使う場合は相続税の申告書の提出が必要です。
使いにくい土地は減額措置あり
相続した土地が活用しづらい特徴を持っている場合、相続税評価額を減額できる可能性があります。以下のケースの場合は活用しづらいため、評価額が下がります。
【土地の形状、エリアによって減額できるケース】
- 形がよくない土地。正方形や長方形ではない土地やL角地
- 間口が狭い、奥行きが長い土地
- 狭い道に面した土地
- がけ地や地面が傾斜している土地
- 道路に面していない土地
- 土砂災害特別警戒区域や急傾斜地崩壊指定地区に指定されている土地
※ほかにも、複数該当するケースがございます。
ただし、土地の形状を判断するのは難しいため、税理士などに相談してみましょう。
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「不動産を相続したけれど使い道がない」「相続税が高くて納付が難しい」という場合は、相続後の売却を検討しましょう。相続した不動産を売ってしまえば、維持管理に必要な費用が発生しません。
また、相続税の申告期限は相続が発生した翌日から10カ月以内ですが、そこまでに不動産を売却できれば、売却代金を相続税の納付に充てられます。
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2022年からリビンマッチのコラム記事の執筆・編集を担当しています。不動産の財産分与に関する記事執筆が得意です。住宅設備機器の専門商社に6年間従事した知識と経験を活かして、不動産に関する知りたかったこと、知っておいた方がいいことをわかりやすく伝えられるように心がけています。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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