不動産の名義変更が必要になるケースとは?必要書類について解説
建物や土地などの不動産は、所有者が基本的に決まっています。所有者が変わったときは、法務局で名義変更の手続きが必要です。
では、不動産の名義変更をしないままだと、どのようなリスクがあるのでしょうか。ここでは、不動産の名義変更の必要性と手続きが必要になるケース、必要な書類と費用について解説します。
もくじ
不動産の名義変更はなぜ必要なのか
不動産の所有者は、法務局で管理されている登記簿謄本に記録されています。
登記簿謄本とは、所有者の氏名、住所、不動産を所有していた人の履歴、不動産の面積など不動産に関するさまざまな情報が記載された文書です。
登記簿謄本の情報は、常に最新の状態にしておく必要がありますが、自動で更新はされません。そのため、所有者が変わったときは、名義変更の手続きをして登記簿謄本の内容を変更します。
名義変更をしなければ、登記簿謄本の情報は古いままです。不動産の所有者と使用者が異なる場合があり、その結果、さまざまなトラブルにつながるおそれがあります。
名義変更をしていないと不動産を売却できない
不動産の売却は所有者の同意が必要です。それ以外の人が勝手に売ることはできません。
たとえば、不動産の所有者が認知症になり、売却について同意を得るのが難しい場合であっても、法的な手続きをせずに親族が代わりに売ることはできないのです。
また、不動産を相続した場合、名義変更をしなければ所有者が被相続人のままです。相続した不動産を売ろうとしても、所有者を相続人に変更しなければ売却はできません。
不動産の名義変更をしない場合、このようなリスクがあるため、不動産を取得した場合は、手続きをすみやかに行う必要があります。
不動産の所有者であることを証明できない
不動産の名義変更をしないと、登記簿謄本に氏名が記載されません。実際に不動産を使用していても、所有者でなければ自分の土地、建物だということを第三者に証明できないのです。
また、不動産の売却は所有者の同意があればできるため、今まで住んでいた家が、ある日突然売られてしまい、住めなくなるというリスクもあります。
たとえば、夫婦が離婚したあとに夫名義のマンションに妻と子どもが住み続けるケースで見てみましょう。
離婚のタイミングで名義変更をしておけば、所有者が夫から妻に変わります。名義変更の手続き完了後は、妻の同意がなければマンションは売却できません。
一方、名義変更をしなければ、所有者は夫のままです。妻と子どもが住んでいても、夫がマンションを売ってしまえば、2人は住み続けられないのです。所有者以外の人が住むこと自体は可能です。しかし、所有者であることを証明できなければ、さまざまなトラブルが発生するリスクがあります。
不動産の名義変更が必要になるケース
不動産で名義変更が必要なのは、以下のとおりです。
- 不動産の売買
- 不動産の贈与
- 不動産の相続
- 不動産の財産分与
それぞれのケースを確認しておきましょう。
不動産の売買
不動産を売買すると、所有者が売主から買主に変わるため、名義変更が必要です。名義変更をするタイミングは、不動産の代金支払いと引き渡しが完了したあとです。
名義変更の手続きは、売主と買主がそれぞれ必要書類を用意し、法務局に提出して申請します。名義変更が完了すると、不動産の登記簿に買主の氏名や住所が記載され、買主が正式に所有者となります。
名義変更の申請から完了までの期間は、平均で1週間程度です。しかし、書類の不備や、法務局の混雑状況によっては、さらに時間がかかることもあります。
なお、不動産の売買を不動産仲介会社に依頼した場合は基本的に司法書士が行うため、売主や買主が手続きを行うことは基本的にありません。
不動産の贈与
生前贈与は、財産の所有者が生きているうちに、財産をほかの誰かに無償で譲ることです。主に、相続税対策として行われます。不動産を贈与する場合には、所有者が贈与する側から贈与を受ける側に変わるため名義変更が必要です。
生前贈与では、贈与される人に対して、贈与税が財産に応じて課税されます。不動産の贈与では、名義変更によって登録免許税や不動産取得税がかかることも知っておきましょう。
不動産の相続
人が亡くなると、遺産が相続人に相続されます。遺産のなかに不動産が含まれている場合、所有者を被相続人(亡くなった人)から相続人に移す必要があるため、名義変更の手続きが必要です。相続によって名義変更をすることを相続登記といいます。
相続登記は、2024年4月1日より法改正によって義務化されます。
土地や建物など不動産の相続を知った日から、3年以内に名義変更が必要です。正当な理由なく名義変更をしない場合には、10万円以下の過料が科せられることがあります。
対象となるのは、法改正以降に相続した不動産だけではありません。法改正以前に相続した不動産も対象です。
共同名義の不動産は権利が複雑化する
不動産を相続する際、複数の相続人が共有名義で所有することがあります。共有名義は権利が複雑化しやすく、売却などの意思決定が困難になるため注意が必要です。
たとえば、被相続人が所有していたマンションを、配偶者と子ども2人の3人が共有名義で取得します。その後、子どものひとりが亡くなり、相続が発生した場合、マンションの権利は、子どもの配偶者や、その子どもが相続します。そこでまた相続が共有名義で行われた場合、マンションの権利を有する相続人がどんどん増えていくことになります。不動産の売却は、所有者全員の同意が必要になるため、権利が細分化すると全員の同意を得るのも難しくなってきます。
そのため、不動産の相続は、共有名義をできるだけ避けたほうがよいでしょう。
不動産の財産分与
夫婦が離婚をするときは、結婚期間中に築いた財産を分けあいます。この手続きを財産分与といい、割合は原則2分の1ずつです。
財産分与では、名義変更が必要になるケースがあります。夫婦の共有名義となっている不動産を、片方の名義に変更する場合や、夫名義の不動産を妻名義に変更する場合などです。しかし、住宅ローンが残っている不動産の名義変更は、手続きが複雑になることが多く見られます。
面倒だからと名義変更をしないでそのままにしておくと、勝手に売却されることや住宅ローンの支払いが滞るなどトラブルの原因になりかねません。弁護士や司法書士など、専門家に名義変更について相談するのがおすすめです。
名義変更に必要な書類
名義変更に必要な書類は、相続や贈与など目的によって異なります。主な必要書類は、次のとおりです。
不動産を名義変更する理由 | 名義変更に必要な書類 |
---|---|
不動産の売買 |
|
不動産の贈与 |
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不動産の相続 |
|
不動産の財産分与 |
|
不動産の名義変更は、書類の準備が大変です。取得だけで1カ月以上かかるケースもあります。申請が終わってしまえば、審査が完了するまでの期間は10日前後を見ておくとよいでしょう。
なお、名義変更の手続きは自分ですることも可能ですが、専門的な知識が必要になる場面が多いため、円滑に進めるなら司法書士へ依頼するのがおすすめです。
印鑑証明書は発行から3カ月以内のものを用意する
不動産の名義変更では印鑑証明書が必要です。印鑑証明書は、本人以外の取得が基本的にできません。そのため、実印と合わせて提出することで、不動産の所有者本人が名義変更を行うことを証明できます。
ただし、印鑑証明書は手続きを行えば登録する印鑑を変更できます。不正を防止するために名義変更では、3カ月以内に発行されたものを提出します。
印鑑証明書は、本籍地の役所ほか、郵送や地域によっては、コンビニで取得可能です。窓口とコンビニは、その場での受取が可能です。コンビニではマルチコピー機でプリントします。
登記識別情報通知
登記識別情報は、登記済権利証に代わるものです。不動産の名義変更をした際に、新しい所有者に対して通知されます。アラビア数字と符号の組合せによる12桁のパスワードです。
取得方法は法務局の窓口のほか、郵送やオンラインでも申請できます。審査には1〜2週間かかり、登記識別情報通知が発行されるのはそのあとです。
郵送で受け取る場合は、申請から2〜3週間を目安にしてください。費用は、不動産1つにつき300円です。
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書は、土地や建物などの価値がどの程度なのか、目安がわかる証明書です。
役所の窓口や郵送で取得でき、申請書に本人確認書類を添えて申請します。司法書士など第三者に依頼する場合には、委任状が必要です。郵送の場合は、届くまでに1〜2週間かかります。
費用は自治体ごとに異なり、1枚あたり200〜400円程度です。一戸建ての場合は土地と建物それぞれに必要なので、気をつけてください。
不動産を売却する前に価値を調べておきましょう
不動産の名義変更をしたあとに売却を検討している場合は、不動産会社の査定を依頼しましょう。
そのため、名義変更をする前には、不動産の価値を知っておくことが大切です。不動産の価値は、不動産会社の査定で確認できます。ただし、査定を依頼する不動産会社によって、査定価格が異なるため、複数の不動産会社に依頼をして査定結果を比較して選ぶことが重要です。
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2022年からリビンマッチのコラム記事の執筆・編集を担当しています。不動産の財産分与に関する記事執筆が得意です。住宅設備機器の専門商社に6年間従事した知識と経験を活かして、不動産に関する知りたかったこと、知っておいた方がいいことをわかりやすく伝えられるように心がけています。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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