不動産売買契約書に必要な印紙とは?税額や電子契約についても解説
不動産売買契約書には、印紙の貼付が必要です。しかし、「印紙」や「印紙税」は言葉こそよく聞くものの、きちんと理解できていない方も多いです。
不動産売買契約書に必要な印紙とはどのようなもので、どのくらいの税負担なのか、そして誰が負担するのかなど、印紙に関わる基本をわかりやすく解説します。
もくじ
不動産売買契約書とは
不動産売買契約書は、土地や建物などの不動産を取り引きする際に締結される重要な契約です。この契約書には、取引の対象となる不動産の詳細情報、売買金額、支払い条件、引渡し期日などが記載されます。
不動産売買契約の対象は多岐にわたり、土地のみ、建物のみ、または土地と建物のセットなど、取引の内容に応じて柔軟に対応ができます。つまり、不動産売買契約書は、さまざまな不動産取引において活用される普遍的な契約書なのです。売主と買主双方の権利と義務を明確にするため、また、将来的なトラブルを未然に防ぐために重要な役割を果たします。
不動産取引は高額になることが多いため、きちんとした契約書を作成し、取引内容を文書化しておくことが不可欠です。
なお、土地売買契約書は土地の売買のみで使用します。不動産売買契約書とは異なり、建物は含みません。
印紙(税)とは
印紙とは、特定の文書に対して税金が支払われたことを証明するための証票のことです。
印紙には税金がかかるものがあり、印紙税は印紙税法に基づき課税される国税です。領収書などに課税されるため、身近な税金ですが、わかりにくい税金でもあります。ここではどのような取引に印紙税が課税されるか解説します。
印紙税がかかるのは課税文書に対して
印紙税が課税されるものは、印紙税法で定められた課税文書に限られます。課税文書とは、以下3つのすべてに該当する文書をいいます。
- 印紙税法別表に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項が記載されていること
- 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること
- 非課税文書でないこと
課税文書に該当するか否かは、文書に記載されている内容に基づいて判断します。また、文章の判断は単純に単語や名称だけではなく、取引の当事者間における慣習などを考慮して総合的に行うとされています。
印紙税の課税対象となる文書
印紙税が課税される課税文書は、印紙税法で20種類の文章が定められています。下表は各課文書1号から20号と不動産関連取引での契約具体例です。
号 | 文書種類 | 不動産関連での具体例 |
---|---|---|
1 |
|
|
2 | 請負に関する契約書 |
|
3 | 約束手形または為替手形 | – |
4 | 株券、出資証券もしくは社債券または投資信託、貸付信託、特定目的信託もしくは受益証券発行信託の受益証券 | – |
5 | 合併契約書または吸収分割契約書もしくは新設分割計画書 | – |
6 | 定款 | – |
7 | 継続的取引の基本となる契約書 |
|
8 | 預金証書、貯金証書 | – |
9 | 倉荷証券、船荷証券、複合運送証券 | – |
10 | 保険証券 | 火災保険、地震保険など |
11 | 信用状 | – |
12 | 信託行為に関する契約書 | – |
13 | 債務の保証に関する契約書 | – |
14 | 金銭または有価証券の寄託に関する契約書 | – |
15 | 債権譲渡または債務引受けに関する契約書 | – |
16 | 配当金領収証、配当金振込通知書 | – |
17 | 売上代金に係る金銭または有価証券の受取書 |
|
18 | 預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳 | – |
19 | 消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、金銭の受取通帳などの通帳 | – |
20 | 判取帳 | – |
不動産の売買、地上権や土地の賃貸借、金融機関との金銭消費貸借契約などは第1号文章に該当します。契約書に記載された金額により、印紙税額が以下のとおり規定されています。なお、平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間は、軽減措置が適用されます。
契約金額 | 本則税率(円) | 軽減後の税率(円) |
---|---|---|
10万円を超え50万円以下のもの | 400 | 200 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1,000 | 500 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000 | 1,000 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万 | 5,000 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 2万 | 1万 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 6万 | 3万 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万 | 6万 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万 | 16万 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万 | 32万 |
50億円を超えるもの | 60万 | 48万 |
印紙税の負担者と納税方法
印紙税の納税義務は、課税文書を作成した時点で成立します。納税義務を負うのは、課税文書の作成者です。
ひとつの契約に対して2通の契約書を作成した場合、2通それぞれに印紙税がかかります。不動産取引や請負契約の慣習では、契約書を2通作成し、双方が1通ずつ保有する場合が多いです。その場合、双方が連帯して1通ずつ印紙税を負担します。
売買契約書が1通のみで、写しを保管する取り決めをした場合は注意が必要です。印紙税法では、写しや副本などであっても、契約の成立を証明する文書は課税文書に該当すると解釈されています。
実際の取引では、以下のものに該当すると課税されます。
- 契約当事者の署名があるもの、押印があるもの
- 正本や原本と相違がないことを当事者間で証明があるもの
- 写し、副本、謄本であることを契約当事者の証明のあるもの
印紙税の納税は、原則的に収入印紙で納付します。課税される契約書に印紙税相当額の収入印紙を貼り付ける方法です。
この場合、収入印紙を消印する必要があります。消印がない場合、納付したとみなされずに過怠税が生じることがあります。
参考
国税庁「印紙税の手引き」
国税庁「課税文書に該当するかどうかの判断」
電子契約なら印紙税は不要?
新型コロナウイルスの蔓延に伴い、リモートワークなど多様な働き方が求められる中で、電子契約が普及しています。
電子契約とは、電磁的記録で作成・締結する契約です。インターネットなどを活用して契約できます。日本はこれまでハンコ文化が強く、世界から遅れをとってきましたが、デジタルトランスフォーメーションの急速な浸透に合わせて、ビジネスの中で広がりを見せています。
電子契約における印紙税の扱い
印紙税法に記載されている課税文書の中には、電子文書や電子的記録の記載はありません。そのため、電子契約は印紙税の課税対象外となっています。
これは、国税庁の電子的記録に関する印紙税の取扱いに関する質疑応答事例や国会答弁(第162回常会答弁書)からも明らかとなっています。
このため、不動産売買契約書など課税文書を頻繁に用いる企業が、電子契約を活用することで節税効果が期待できます。また電子契約は、印紙税削減だけでなく、紙や保管スペース、郵送代など関連コストの削減、作業負担の軽減、業務スピードの向上にもつながるでしょう。
一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)と株式会社ITRが発表した「企業IT利活用動向調査2023」によると、電子契約利用率は約74%となっています。中小企業や不動産、金融業界で大きな伸びを示しており、さらなる普及が期待されています。
参考
国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」
参議院「印紙税に関する質問に対する答弁書」
不動産売買で印紙税以外にかかる税金
不動産の売買では、印紙税以外に以下の税金がかかります。
- 登録免許税
- 譲渡所得税
- 消費税
登録免許税
土地や建物の購入や建築をすると、登記が必要です。登記をするときは以下の登録免許税がかかります。
課税標準 | 原則 | ||
---|---|---|---|
建物 | 所有権の保存登記 | 固定資産税評価額 | 4/1000 |
建物 | 所有権の移転登記 | 固定資産税評価額 | 20/1000 |
土地 | 所有権の移転登記 | 固定資産税評価額 | 20/1000 |
土地 | 抵当権設定 | 債権金額 | 4/1000 |
住宅ローンが残っている不動産を売却する場合、抵当権を抹消してから買主に引渡します。このとき、抵当権抹消登記が必要になるため、登録免許税がかかります。
所有権移転登記は、通常は買主が行います。ただし、売買契約書で合意した場合、売主が負担します。
抵当権抹消の税額は1件につき1,000円です。マンションの場合は土地と建物でそれぞれに課税されるため2,000円となります。
なお、住宅用家屋の場合、さまざまな軽減税率があるため、国税庁のホームページで内容を確認するとよいでしょう。
譲渡所得税
譲渡所得とは、土地、建物などの資産を譲渡することで得た所得です。譲渡所得の金額は、次の計算式で求められます。
譲渡所得金額=収入金額※1-(取得費※2+譲渡費用※3)-特別控除額※4
※1:収入金額は、通常、対象不動産を売ったことによって買主から受け取る金銭の額
※2:取得費には、対象不動産の購入代金、購入手数料のほか設備費や改良費なども含まれる。なお、建物の取得費は、購入代金から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額
※3:譲渡費用とは、対象不動産を売却するために直接かかった費用で、主に以下のものです。
- 売却時に不動産会社に支払った仲介手数料
- 印紙税で売主が負担したもの
修繕費や固定資産税などその資産の維持や管理のためにかかった費用などは譲渡費用になりません
※4:特別控除額は、収用等により土地建物を譲渡した場合やマイホームを譲渡した場合など、特別控除は一定の要件を満たす場合に適用されます
また、譲渡所得の税率は、その不動産を保有していた期間によって異なります。短期保有(5年以下)の場合は約40%、長期譲渡所得(5年超)の場合は約20%と所有期間によって大きく異なる点に注意が必要です。
不動産を売却する際には、販売価格や税金などを考慮して損をしないようにしましょう。
参考
国税庁「登録免許税の税額表」
国税庁「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
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この記事の編集者
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