夫の死後、家を売る決心?その理由や方法、高値売却のための注意点
夫との死別。最愛の人を失ったうえに、葬儀や保険の手続きなどやるべきことが多ければ、精神的・身体的負担はかなりのものでしょう。特に、夫との思い出の詰まった家を手放す決断をするのは難しく、売却に向けての準備にも時間がかかります。
そこで本記事では、夫に先立たれてしまった持ち家がある妻に向け、必要な情報をわかりやすくまとめました。ぜひ、今後の一歩を踏み出すための参考にしてください。
夫の死後、家を売る理由
夫が亡くなったあと、夫と一緒に住んでいた家に住み続けるか、いまの家を売って新しい家に引っ越すか、ふたつの選択肢があります。
夫との思い出が詰まっている家を大切に思う気持ちは共通していますが、家を売る決断をする人は少なくありません。
夫の死後、家を売る理由について挙げていきます。
生活費が困窮しそう
夫が亡くなったあと、生活費は大きな問題になります。特に夫が大黒柱だった場合、生活費の確保が一番の課題となるでしょう。
収入を得るため、家を売却して資金を手に入れる選択をする人もいます。
また、子どもがいる場合、家を売却してまとまった資金を得ることで、子どもの教育費の心配が軽減されます。
家を売却することで生活の質を維持し、将来への不安を和らげることにつながるでしょう。
夫を思い出してしまってつらい
愛する人の死は、とてもつらいものです。共に過ごした家にはたくさんの思い出が詰まっており、悲しみを増幅させてしまうこともあるでしょう。
家に住み続けることが精神的な負担となる場合、新しい生活の場のために家を売却する選択肢もあります。
新しい家でスタートを切ることは、前向きな気持ちになり、明るい未来へとつながるでしょう。
相続人で平等に財産を分ける
夫が亡くなった際、相続問題が発生するかもしれません。特に相続人が複数いる場合、家などの不動産をどのように分けるかは大きな問題です。
家を売却し、その収益を相続人で分配することも選択肢のひとつです。現金は分割しやすい財産のため、公平かつ円滑な相続が可能になるでしょう。
たとえば、家を売却して得られた資金を兄弟で分けて、それぞれの新しい生活資金として利用できます。
このように、家を売却することで相続のときに発生する、さまざまな問題が解決する可能性は高いでしょう。
第二の人生をスタートしたい
夫の死後、新しい人生を始めたいと考えるのは自然なことです。家を売却することは、環境を変えたり、生活スタイルを変えたりする大きなきっかけとなるためです。
たとえば、田舎から都市部へ移住したり、一軒家からマンションに引っ越したりするケースがあります。
趣味のガーデニングに没頭するため庭付きの家に引っ越すなど、自分のやりたいことを追求するのもよいでしょう。
少し極端な例ですが、家を売った資金で世界一周の旅に出る人もいます。家を売却すると資金作りもできるので、将来の選択肢も広がります。
夫の死後、家を売ったあとは?
ここでは、家を売ったあとのお金と住む場所について解説します。
どのくらいのお金になるのか
夫が亡くなったあとに家を売った場合、どれくらいのお金が手元に残るのでしょうか。売却価格は立地、築年数、家の間取りや状態などによって大きく左右されます。
また、家を売却すると、相続税などの税金がかかる可能性があります。家を売るときにかかる税金について順に説明します。
夫が亡くなり家を売ると決めても、すぐに売却の手続きはできず、まず家の相続の手続きをする必要があります。
家を相続する際には、登録免許税と相続税がかかります。以下はそれぞれの概要です。
登録免許税:固定資産税評価額の約0.4%
相続登記の際に納める国税です。法務局に登記申請をするときに印紙を購入します。
相続税
遺産総額(不動産と預貯金などの金融資産)が相続税の基礎控除を超えたときに発生します。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
なお、配偶者が家を相続した場合、相続税における「配偶者の税額の軽減」を適用し、相続税がかからないケースもあります。詳細は国税庁のホームページ、「配偶者の税額の軽減」をご参照ください。
次に、家の所有者となった妻が家を売るときには、売却によって得た利益に税金がかかります。
課税譲渡所得金額の計算方法
譲渡価格-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(一定の場合)=課税譲渡所得金額
また、税率は売却する家の所有期間によって異なります。所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」に該当します。
区分 | 所得税(%) | 住民税 (%) |
---|---|---|
長期譲渡所得 | 15 | 5 |
短期譲渡所得 | 30 | 9 |
詳細は国税庁のホームページ「土地や建物を売ったとき」をご参照ください。
とはいえ、計算方法だけ挙げてもイメージがわきにくいでしょう。具体的に、夫を亡くした妻が家を売却した例を見ていきます。
たとえば、夫が3,000万円で購入した一軒家に夫と妻が住んでいて、10年後に夫が亡くなりました。築年数は経過したものの地価が上昇したため、妻は住んでいた家を3,500万円で売却できました。その場合をシミュレーションしてみましょう。
- 売却益=3,500万円-3,000万円=500万円
- 課税譲渡所得金額の税率=売却益500万円×15%=75万円
この75万円を税金として支払う必要があります。単純計算ですが、上記の例では500万円-75万円=425万円が妻の手元にあります。
しかし、マイホームの売却には「3,000万円特別控除の適用」を受けられる可能性があります。3,000万円特別控除とは、マイホームを売ったときに所有期間は関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例です。
詳細は、国税庁のホームページ「マイホームを売ったときの特例」でお確かめください。このケースで3,000万円特別控除を適用した場合、500万円の利益があっても税金は発生しません。
なお、上記はあくまで一例ですので、実際の税金については税理士など専門家に相談することをおすすめします。
妻はどこに住むのか
夫が亡くなり、家を売却したあとの居住先は経済状況や家族構成などによって変わってくるでしょう。
たとえば、子どもが独立している場合は、家のメンテナンスが少なく生活に便利なマンションやアパートを選ぶことが多いです。
家族との距離を考え、慣れ親しんだ故郷に戻る人もいるでしょう。
また、夫を亡くした女性が都市部の家を売却し、子どもが住む町に移住したケースもあります。
居住先の選択は、新たな生活スタイルの実現につながるでしょう。
夫の死後、妻が家を売る方法
夫が亡くなったあと、妻が家を売却する方法について順を追って説明します。
1.相続登記をする
夫が亡くなったあと、妻は家をそのまま売却することはできず、まず相続登記をする必要があります。相続登記とは、不動産の所有者が亡くなったときに、相続人へ名義変更をする手続きのことです。
夫を亡くしても、法務局が家の所有者を勝手に名義変更してくれることはありません。
相続登記には、以下のふたつの方法があります。
- 相続人(ここでは妻)が自分で申請書を作成して申請する方法
- 司法書士など資格を持つ代理人に依頼する方法
また、相続登記は2024年4月1日から義務化されるため注意しましょう。
2.すべての相続財産の価値を予想する
相続の際は、亡くなった夫が残したすべての財産の価値を正確に把握することが必要です。残した財産によっては、相続税の支払い義務が発生する危険性があるからです。
財産は不動産だけではなく、預金、株式、生命保険などすべての資産が含まれ、財産の評価が相続税の計算基準です。
正確な財産評価は法的なトラブルを避けるためにも必要です。複雑な計算式が必要になることもあるため、税理士など専門家に相談するのもよいでしょう。
3.不動産会社を選定する
家を売却する際には不動産会社の選定がとても重要です。残念ながら女性ひとりで不動産取引を行う場合、以下のような偏見から男性に比べ不当な扱いを受ける危険性があるためです。
- 女性だから法律に詳しくないだろう
- 夫を亡くしたばかりで、冷静な判断ができないだろう
不動産の一括査定サイトリビンマッチでは、第三者機関により不動産会社を事前審査しています。不動産会社探しに迷ったら、こうした審査基準が設けられている査定サイトを活用するのも一案です。
4.家の価値を最大化する
今後の生活のために少しでも家を高く売る方法として、家のリフォームやメンテナンスが必要になる場合があります。
家をよりキレイに仕上げて必要な修理を行うと、より高い価格での売却が期待できます。また、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、ホームステージング(家を見栄えよくするための装飾)を行うことも、売却価格を高める効果があるでしょう。
5.売却後の計画を立てる
家を売却したあとの住まいや生活スタイルも重要です。売却から得られる資金の管理、新しい住まいの選定、生活スタイルの変更など、家を売却することによって生じる変化に対応するためのプランを計画しましょう。
夫を失ったあとの生活再建は、これまで夫とふたりで行ってきたことをひとりで行わなければなりません。
家族や信頼できる友人に協力を求めたり、専門家に相談したりして、冷静に前向きに対応しましょう。
余分な相続税を支払わず、高値で家を売るための注意点
妻が高値で家を売るための注意点を説明します。
相続で発生する費用を把握する
家を相続した際には、さまざまな費用が発生することを理解しておきましょう。相続にかかる費用は相続税や登記費用だけではなく、必要に応じて税理士など専門家への報酬もかかります。
また、売却前は固定資産税がかかり、都市計画税が発生する場合もあります。家の築年数によっては屋根や外壁の修繕費など、維持費もかかります。また、キッチンやお風呂など水回りのリフォーム代などが必要となる場合があります。
相続税の節税対策を検討する
余分な税金を支払わないためには、相続税の節税対策を検討しましょう。
配偶者への相続では、先述した配偶者の税額の軽減や3,000万円特別控除、そのほかにも小規模宅地の特例など、さまざまな税額軽減措置が適用されることがあります。
また、生命保険金の非課税枠などを利用する方法もあります。相続人が多数いる、財産が多いなど複雑な場合は、税理士など専門家への相談も検討してみましょう。
相続税は早めに申告する
相続税が発生する場合は、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に相続税申告を済ませてください。
申告期限を過ぎてしまうと、延滞税など余分な費用がかかる危険性があります。
売却タイミングを検討する
家を売却する際のタイミングは、売却価格に大きな影響を与えます。不動産市場は季節や経済状況によって変動するため、基本的に好景気の時期に売却しましょう。
たとえば、オリンピックやワールドカップなど大きなイベントが開催され、経済が上向きなときは不動産市場も上昇傾向にあり、より高い価格での取引が期待できます。
また、季節によっても不動産市場は変動するため、一般的に春や夏の引っ越しシーズンに合わせた売却がよいでしょう。
家の市場価値を正確に把握する
妻が高値で家を売却するには、家の市場価値を正確に把握することが大切です。
市場価値には立地、築年数、家の状態、近隣の不動産価格など、さまざまな要素があります。正しく家の市場価格を把握するには、複数の不動産会社から査定を受けることをおすすめします。
また、不動産市場は常に変動しているため、最新の市場情報を把握することも重要です。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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