不動産の相続でよくあるトラブル7選と回避するコツ
相続が発生し、被相続人(亡くなった人)が不動産を所有していた場合、分割方法をめぐってトラブルに発展するケースが多くあります。
不動産は遺産のなかでも価値が高く、平等に分け合うことが難しいためです。相続人同士の話し合いで不満が起きやすい傾向があり、トラブルを防ぐには適切な対策が欠かせません。
そこで、不動産の相続で発生するトラブルの事例と回避するコツを紹介します。事前に理解しておけば、遺産分割を円満に進められるでしょう。
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もくじ
不動産の相続でトラブルが発生することが多い!
一般社団法人 相続解決支援機構の「相続トラブルとその解決に関する調査(2023年)」では、相続でトラブルが発生した原因として「不動産の相続」と答えた人が44%と最多です。次いで「相続財産の配分割合」が19%、「相続人同士の仲が悪かった」が13%と続いています。
引用:一般社団法人 相続解決支援機構「相続トラブルとその解決に関する調査(2023年)」
自分にはまだ関係ないと不動産の相続について検討するのを先延ばしにすると、トラブルに発展して、解決に多額の費用がかかるおそれもあります。トラブル事例と解決策を理解し、事前に対応することが大切です。
不動産の相続でよくあるトラブル7選
不動産は平等な分割が難しいため、以下のようなトラブルに発展するケースがよくあります。
- 誰が相続するかでもめる
- 不動産の評価が決まらない
- 登記名義人が被相続人以外だった
- 空き家を相続した
- 相続税が支払えない
- 代償金の支払いでもめる
- 想定していない相続人がいた
トラブル例1:誰が相続するかでもめる
不動産を相続人の誰が相続するかでもめるケースがあります。不動産ごとに価値が異なり相続人同士での調整が難しいためです。
たとえば、田舎にある土地を相続しても使い道に困るうえ、売却も難しそうだとなれば、全員が相続したくないと考えるかもしれません。反対に、価値の高い土地であれば取り合いになることも考えられるでしょう。
相続人同士で遺産分割協議が進まない場合は、裁判に発展してしまい、相続に時間がかかってしまうケースもあります。複数の不動産を所有していたり、相続人が多くいたりする場合は事前に対応を検討することが大切です。
トラブル例2:不動産の評価がまとまらない
不動産の評価が相続人同士で異なることでトラブルに発展する可能性があります。不動産にはさまざまな評価方法があり、評価方式や評価をする人によって評価額が異なるためです。
たとえば、遺産分割において代償分割をするケースで考えてみましょう。代償分割は、不動産を相続した人が不動産を相続する人以外に代償金を支払う方法です。
このとき、不動産を取得する相続人は代償金の支払いを抑えたいため、不動産を低く評価します。一方、代償金を受け取る相続人は代償金を多く受け取りたいため不動産を高く評価するでしょう。このように評価に違いがあると、支払金額の調整がまとまらないことがあります。
不動産の評価がまとまらない場合、不動産鑑定士に鑑定を依頼したり裁判で評価額を算定したりすることになり、遺産分割までに時間と費用がかかります。
トラブル例3:登記名義人が被相続人以外だった
不動産の登記名義人が被相続人以外だったことが発覚し、トラブルに発展するケースがあります。
たとえば、父が所有者であると思っていた不動産の名義が祖父のままで名義変更されていないケースもあります。その状態で父が死亡した場合は、祖父の相続登記手続きが必要です。
しかし、相続人が複数いたり高齢だったりする可能性が高く、書類がなかなかそろわず登記手続きに時間がかかってしまうおそれがあります。
所有している不動産については登記名義を確認しておくことが大切です。
トラブル例4:空き家を相続した
被相続人が相続発生直前まで住んでいた家などであればよいですが、使用していない空き家を相続し、トラブルに発展するケースがあります。
管理が行き届いていない空き家を相続すると、管理費の負担が増えるだけはありません。近隣住居に被害を出して行政処分をされたり、近隣住民から損害賠償請求をされたりするおそれもあります。
トラブル例5:相続税が支払えない
不動産の評価額が高い場合や相続財産の預貯金が少ない場合、相続税が支払えなくなってしまうおそれがあります。
相続税は、現金での納付が原則です。滞納が続くと、最終的に不動産を差し押さえられてしまうおそれがあるため、注意が必要です。
心配な場合は事前に不動産の査定を依頼し、評価額がいくらになるのかを把握しましょう。
また、相続税は、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に申告と納付が必要です。期限までの納付が難しい場合は相続税の納付期限を伸ばす延納申請や、相続税を現物で納付する物納制度の利用を検討してみましょう。
トラブル例6:代償金の支払いでもめる
不動産を代償分割にして相続する場合、代償金の支払いでもめるケースがあります。
相続人同士で代償金の取り決めをしていたにもかかわらず、不動産を相続した人から相続しなかった人に対して代償金が支払わないリスクが考えられるでしょう。
遺産分割協議において代償分割の支払いがされなかった場合にどうするかを事前に検討しておくことが大切です。
トラブル例7:想定していない相続人がいた
想定していない相続人がいることが発覚し、トラブルに発展するおそれがあります。
たとえば、前妻との間に認知した子どもがいることを被相続人が隠していた場合、相続人調査の際に発覚することがあります。遺産分割協議は相続人全員で行うため、一度も会ったことのない人と話し合いをすることになり、相続人同士での調整が難しくなったケースもあります。
また、相続が終わったあとに新たな相続人が見つかると、相続のやり直しが発生するおそれがあります。やり直しには手間や時間がかかるため、相続人調査をして漏れがないことを確認することが重要です。
不動産の相続でトラブルを回避するコツ
不動産を相続するときは、相続を開始する前にトラブルを想定した対応を検討しましょう。具体的なコツは、以下の4つです。
- 生前に話し合い、遺言書で受け取る人を指定してもらう
- 不動産の情報を確認する
- 専門家に相談する
- 不動産がいくらで売れそうかを確認する
生前に話し合い、遺言書で受け取る人を指定してもらう
不動産の相続については、生前に話し合っておくのがよいでしょう。
生前に相続の話を切り出すことをためらう人もいるかもしれません。しかし、生前に話し合いをして被相続人やほかの相続人の考えを知っておくだけでもトラブルは回避できます。
たとえば、正月やお盆の時期など親戚が集まる機会があれば、今後、所有している不動産についてどうしたいと考えているかを聞いてみましょう。
また、被相続人の生前に遺言書で不動産を受け取る人を指定してもらうのも有効な方法です。
被相続人の遺言書がある場合は、被相続人の意思を優先し、原則遺言書に従うとされています。遺言書では、不動産を受け取らない人には保険契約をしたり違う財産を与えたりすることで、バランスを考えてもらえるともめるリスクを減らせるでしょう。
不動産の情報を確認する
所有している不動産の登記名義や権利関係に関する情報を確認し、問題がある場合は事前の対応を検討しましょう。
不動産の登記に関する情報は、近隣の法務局で調査できます。また、「登記情報提供サービス」を使えばインターネット上で確認が可能です。
専門家に相談する
専門家に相談すると、不動産の相続トラブルを未然に防げる可能性があります。
たとえば、遺言書の記載が間違っており、無効になってしまうこともあります。また、相続税の計算が誤っていた場合はペナルティが発生するおそれがあります。専門家に依頼しておけば、このような事態は起きないでしょう。
また、相続人同士で直接話し合いをするよりも冷静に判断ができるメリットもあります。忙しく手続きが大変な場合やトラブルが心配な場合は専門家に相談してみましょう。
不動産がいくらで売れそうかを確認する
トラブルになりそうな不動産は事前に売却するのも有効な方法です。不動産を売却し、分割のしやすい財産にしておくことで遺産分割をスムーズに進められます。
また、前述したとおり、被相続人の生前に相続について話し合っておくのがおすすめですが、話し合うにも不動産の価値がわかっていなければ意味がありません。
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