不動産を共有名義で相続するのは避けるべき理由と対処方法
複数の相続人がいる場合、よくある悩みのひとつが不動産の取り扱いです。
不動産を相続する人が明確に決まっている場合は別ですが、とりあえず相続人全員の共有名義で相続しようとするケースも少なくありません。
また、これまでは不動産を誰が相続するかが決まるまでは、名義を被相続人のままにしておくケースもよくありました。
しかし、2024年(令和6年)の4月から相続登記が義務化され、原則として、相続により不動産を取得した日から3年以内に相続登記が必要です。そうすると、期限までに話し合いがまとまらず、とりあえず相続人全員の共有名義で相続登記をするケースも増えるでしょう。
しかし、不動産を共有名義にするのはリスクが高いため、避けるべきです。その理由や共有名義を避けるための方法などについて解説します。
この記事の監修者
司法書士法人リーガル・デザイン代表社員:細沼 昭久(ホソヌマ アキヒサ)保有資格:司法書士・行政書士
弊社は2018年に司法書士・行政書士事務所として開業し、2021年に法人化いたしました。
弊社には中国やベトナムをはじめとする外国人スタッフが複数名在籍しており、日本のお客様のみならず海外からのお客様にも数多くご利用いただいております。
私たちはお客様のあらゆるニーズにお応えできるよう真摯に向き合い、お客様にとっての最善を法的な観点からご提案いたします。
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もくじ
不動産を共有名義で相続するのは避けるべき理由
不動産を共有名義で相続すると、公平な遺産分割ができたように見えます。しかし、不動産の共有は実はとても不安定で、さまざまなデメリットが発生するリスクがあります。
不動産を責任をもって管理する人がいなくなる
不動産を共有名義で相続したときに問題となるのが、管理です。
共有名義の不動産は、共有者全員が権利と義務を共有します。そのため、特定の人だけが管理をしていた場合、不平等感が生じてトラブルに発展するリスクがあります。
また、ほかの相続人と共有名義で所有する不動産は、単独名義の不動産と比較すると、管理がおろそかになりがちです。
不動産の管理には、修繕費や固定資産税などさまざまな費用が発生します。自分だけの不動産であれば、費用を負担することをある程度は我慢できるでしょう。しかし、共有名義の不動産だと、将来的にはほかの相続人のものになる可能性があるわけですから、それに費用をかけるのは嫌だというのが人の心理です。
不動産の共有者がお互いにそういう心理にあると、結局、負担を押し付けあって、責任をもって不動産を管理する者がいなくなってしまいます。
不動産を売却したり、賃貸したりすることが難しくなる
不動産を共有名義にすると不動産を売却したり、賃貸したりすることが難しくなります。共有名義の不動産は、売却する場合は共有者全員、賃貸する場合は共有者の過半数の同意が必要になるためです。
各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
相続で不動産を共有名義にすると、相続人=共有者です。相続人同士の仲が悪いと、同意を得るのは難しいでしょう。
特に売却の場合は、ひとりでも反対する人がいれば売却ができません。意地悪な相続人がいて、金銭的な理由ではなく、たんなる嫌がらせで反対されてどうしようもない状態になるおそれもあります。
将来の相続が発生したときに共有関係が複雑化する
不動産を共有している名義人の1人が亡くなった場合、共有持分は名義人の相続人に受け継がれます。相続が発生するたびに共有持分が細かく分かれてしまい、共有関係が複雑化するリスクがあります。
2人の名義人が共有する不動産で、片方が死亡するケースを考えてみましょう。
この場合、死亡した名義人の共有持分は一定の例外を除いて、相続の対象になります。もう片方の名義人が引き継ぐわけではありません。死亡した名義人の相続人同士が話し合い、次の持分所有者が決まります。
このとき、複数の相続人がいれば、死亡した名義人が1人で所有していた共有持分を複数人で相続するため、共有する名義人がさらに増えてしまいます。
不動産を共有する名義人が増えるほど共有関係が複雑になり、管理がより難しくなります。
共有名義に対する司法書士の見解
監修者からのコメント
共有状態にすることで、手続きの負担が減るなどのメリットもありますが、共有名義で相続した場合、他の相続人と連絡が取れず名義変更ができないといったトラブルが起こることがあります。
共有者間での連携が取れなかったために、不動産の維持管理・活用がうまくいかないケースも多々見られます。
対策として、相続前の段階では遺言書の作成や生前贈与など、相続後の段階では換価分割や代償分割などが考えられます。ご自身で対処法についてよく調べ、当事者間での対処が難しいと感じた場合には専門家に相談されるようにしてください。
不動産を共有名義にする以外で、公平に遺産を分割する方法はある?
遺産を相続人同士で公平に分割しようとする場合、不動産を共有名義にして相続するのがわかりやすい方法です。しかし、前述したようにさまざまなデメリットがあり、決して最良のものではありません。
そこで、それに代わる公平な分割方法を紹介します。
不動産を売却して現金で分ける(換価分割)
換価分割とは、被相続人が所有していた不動産を売却して、その売却代金を相続人同士で法定相続分に分割する方法です。
たとえば相続人が配偶者と子ども2人のケースで、不動産を4,000万円で売却できたとします。この場合、配偶者が2,000万円、子どもがそれぞれ1,000万円ずつ受け取ります。
不動産の場合、物理的に公平な分割(分筆)をするのは難しいですが、現金なら相続人同士で簡単に分けられます。
また、以下のようなメリットがあります。
- 不動産が将来的に空き家・空き地になり荒廃してしまうことを防止できる
- 相続人は収益を得られる
- 不動産の有効活用にもつながる
ただし換価分割は、被相続人が所有していた不動産を相続人のうちの誰かが引き継いで所有しようとする場合は選択できません。
不動産を引き継ぐ人がほかの相続人に金銭を払う(代償分割)
被相続人が所有していた不動産を引き継ぐ相続人がいる場合、換価分割はできません。その場合、公平に遺産を分割する方法として、代償分割があります。
代償分割は、特定の相続人が不動産を相続する代わりに、ほかの相続人に対して承継した不動産の評価額の法定相続分に相当する金銭を代償金として支払う方法です。
たとえば、相続人が子ども2人で、一方が評価額が3,000万円の不動産を相続した場合、不動産を相続した人がもう一方に1,500万円を支払います。
代償分割は、不動産を資産として残しながら公平に分けられるメリットがあります。
また、たとえば、もともと夫婦で共有名義となっている不動産では、夫が死亡した場合、片方の共有者(妻)は死亡した夫の相続人になります。このケースでは、代償分割の方法を使い、夫の共有持分は妻が相続して妻の単独名義にし、その他の相続人には代償金を支払う方法が合理的でしょう。
ただし、代償分割の場合、代償金の算出でトラブルが発生するケースもあります。
不動産を物理的に分割する(現物分割)
現物分割は、不動産を物理的に分割する方法で、以下のようなケースに採用できる方法です。
- 土地の面積が広大で、法定相続分に従って分割(分筆)しても分割後の各土地が十分に単独利用できる面積がある
- 区分所有が可能な共同住宅など
この場合、土地を分筆して各相続人の単独所有土地にしたり、建物を区分建物として各相続人の単独所有建物として相続できたりします。
ただし現物分割は、遺産が非常に大きな土地や建物の場合は有効ですが、そうではない普通の相続ではあまり現実的ではありません。法定相続分で物理的に分割してしまうと、一つひとつの不動産を単独で利用するのが不可能となるためです。
すでに相続した不動産が共有ならば早めに解消を!
すでに共有名義で不動産を相続してしまった場合は、早めに解消しましょう。
可能なら、再度遺産分割協議を行う
遺産分割協議は、遺産の分割方法について相続人同士で話し合うことです。
共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
遺産分割協議で不動産を共有名義にすると決めた場合、相続人同士の合意が形成されたという一定の意味はあります。しかし、共有名義の状態では、相続登記をしていないのと同じです。
現在、日本では空き家や空き地の荒廃が問題視されています。その原因のひとつは、共有で相続された不動産で、共有者が同士でお互いに管理の負担を嫌って、責任をもって不動産を管理する人がいないことです。
不動産の名義人を決めることは、責任をもって管理する人を決める意味もあります。
不動産を共有名義で相続してしまった場合は、できれば再度協議を行い、責任をもって不動産を管理する人を決め、その人を単独の名義人とする名義変更を行いましょう。
ただし、遺産分割協議のやり直しには、相続人全員の同意が必要です。また、労力と時間がかかると理解しておきましょう。
共有持分の売却を検討する
すでに共有名義で相続登記を行ってしまった場合、不安定な共有関係を解消する方法として、共有持分をほかの共有者に売却する方法があります。
不動産を責任をもって管理する相続人に持分を売却すれば、買い取る人は、安心して不動産を管理できます。一方で売却する人にとっては、不動産の管理の負担から免れたうえで収入も得られるため、双方にメリットがあります。
不動産の共有持分は売却できる? 売却する方法や必要な費用・売却の際のポイントなど解説共有不動産全体を売却してしまう
相続した不動産を利用する相続人がいない場合は、その不動産全体を売却してしまう方法もあります。共有者全員の同意を得る必要がありますが、共有関係を解消する最も確実な方法です。
親が住んでいた土地や建物を売ってしまうのは気が引けるという人もいるでしょう。しかし、管理する人がいなくて荒廃してしまうよりは、売却して第三者が使ってもらったほうが資産を有効活用できます。
また、売却代金が相続人の生活に役立つなら、財産を残す側からしてもよいことでしょう。
トラブル回避のために不動産の価値を調べる
不動産を共有名義で相続するのはさまざまなリスクがあるため、避けるべきです。
共有名義を回避して公平に財産を分割する方法には、代償分割や換価分割があります。しかし、どちらの場合も不動産の価値を正確に把握していないと、トラブルに発展するおそれがあります。
換価分割の場合は、売却代金がいくらで、相続人それぞれにいくら配分されるのかが相続人の話し合いで重要です。
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