株価と不動産価格の関係性とは。今後の日本はどうなる?
株価と不動産価格は似た動きをすることが多いですが、どのような関係なのでしょうか。 関係性がわかれば、株価と不動産価格の上がり下がりの予測が立てられます。
株価と不動産価格の相互関係に焦点を当て、日本経済の現状と将来展望を考察します。
もくじ
株価と不動産価格の関係性
一般的に、株価と不動産価格は連動した動きをとることが知られています。ここでは具体的にどのような関係性があるのか、その背景事情なども含めて読み解いていきます。
株価と不動産価格は連動する?
株価と不動産価格の相関については、過去のデータを参照すると非常によく理解できます。 国土交通省が不動産価格の動向を示すべく指数化した統計データとして、不動産価格指数という指標があります。これは2010年の平均値を100として基準化しています。
株価と不動産価格指数の値動きを比較すると、緩やかに連動していることが見てとれます。以下は不動産価格指数の計測が始まった2008年4月以降の日経平均株価と不動産価格指数(戸建てとマンション)の推移です。
国土交通省の「不動産価格指数」と「Google Finance」より作成
一口に連動しているといっても、その相関関係にはいくつかポイントがあります。
まず、不動産の売買は株式相場よりも流動性が低く、株価より遅れて連動する傾向があるという点です。加えて、不動産価格は景気の影響を受ける一方で、その変動幅は株価よりも軽微であるという点も指摘されています。
2008年のリーマンショックでは株価は大きく下がりましたが、マンション価格はごくわずかしか下落せず、その後すぐに持ち直しています。一般的には株価の上昇が不動産価格の上昇につながりやすいといえますが、変動幅やタイムラグなども考慮する必要があるといえるでしょう。
株価の影響度合は戸建てとマンションで異なる
株価の上昇は投資に回せる資金の増加をもたらし、不動産の購入意欲を高め、不動産価格の上昇につながるといわれています。 しかし先に少し触れたように、その内容は決して一律ではありません。
たとえば、戸建てとマンションとでは価格を決定する要素が異なるため、違った展開を見せます。 まず、マンション市場では株価の変動が価格に与える影響が非常に顕著です。
これは、マンションの取引が集中している大都市や人気エリアにおいて、株価の変動が投資家や富裕層の投資意欲や資金の流れに影響を及ぼすためです。 株価の上昇により富裕層の資産が増加し、高級マンションや都心部の物件を購入する傾向が高まると、需要が増えてマンション価格が上昇する可能性があります。
一方、戸建ての場合、株価の上昇は一般的にあまり関係がないといわれています。戸建ては個別の物件であり、価格は地域の需要・供給バランスや物件の条件によって形成されます。 したがって、株価の変動は直接的に戸建ての価格に反映されることは少ないといえます。
なぜマンション価格は株価と連動する?
不動産価格のうち、マンション価格が株価と連動する原因の一部は、富裕層の動きに着目することで見えてきます。
日本人の総個人資産の半分以上は、60代以上が保有しているといわれています。株価の上昇により資産を増やした高齢の富裕層が、資産を増やすこと以上に重視している金銭的リスクが相続税です。 資産を現金で持っておくよりも相続税の評価額が下げられるという点で、節税策としてマンション投資が検討される傾向があります。
この富裕層の分散投資の進展が、マンション価格と株価の連動性を生み出す要因となっています。
一方、外国人投資家の投資行動も、マンションと株価の連動性に影響を与えています。2023年は為替市場で歴史的な円安が進行しており、2022年10月に1ドル151円台をつけ反転したあとも、130円〜140円台をキープし続けています。 日本の上場企業には輸出企業が多いことから、一般的に円安は株高をもたらす傾向があるといわれています。
そして、円安により不動産価格が海外から見ると割安となることから、海外投資家による不動産投資も進みやすくなります。 その中でも特に大都市圏の好立地のマンションは売却も容易とみられるため、投資を呼び込みやすい傾向があります。このような外国人投資家の動きが、マンション価格の上昇を生むことになります。
今後の日本はどうなる?
「2025年に不動産大暴落が起きる」などといった言説をネットなどで散見します。 未来のことは誰にもわかりませんが、必要以上におそれるのではなく、予測するなら明確な根拠をもって正しくリスクを把握する必要があります。
株価に比べて不動産価格は上昇や下落が遅行するため、短期的な事象に惑わされず、長期的な視野で見極めていくことが大切です。
人口の変動
人口変動は株価や不動産価格に影響を与える重要な要因です。 人口が減少すると、需要や生産活動の低下が引き起こされ、企業の業績悪化や株価の低下が予想されます。
逆に人口が増加すると、需要の増加や経済活動の活発化がもたらされ、株式市場にポジティブな影響を与える可能性があります。
一方不動産価格も、人口の増減によって影響を受け、需要拡大が見込まれる地域では上昇する傾向があります。地域的な特性で考えると、首都圏の人口増加や都市集中型の進展が、不動産価格に影響を与えています。 都市部は利便性が高いことに加え、新型コロナウイルス感染症以降の「ウィズコロナ」の考え方の普及により、今後さらに都市集中型の傾向が強まることが予測されています。
そのため、都市部の不動産価格は一層上昇し続ける可能性があります。その一方、郊外の不動産価格は少しの上昇または現状維持程度に収まると予想されることが多いです。
実際、2022年2月に全国宅地建物取引業協会連合会の実施した「不動産の日アンケート」によると、新型コロナウイルス感染症の影響で住み替えをした方の割合は2.8%となっています。 このように、郊外への転居ニーズは新型コロナウイルス感染症以降も強くなっていないため、都市部から距離のある郊外の需要は、あまり上がらないと考えられます。
金利変動の影響
株価と不動産価格双方に影響を与える要素のひとつとして、金利が挙げられます。 低金利のうちは銀行から融資を受けやすいことを背景に、不動産投資と株式市場への投資が促進される傾向があります。
日本では長年にわたり、金融緩和政策によって長期金利が低く抑えられていたため、2023年現在は株価上昇につながりやすい環境にあるといえます。 ただし、2022年12月に日銀が長期金利の変動幅を0.25%から0.5%に修正したことで、「今後は利上げ路線に変更するのでは」という声が大きくなりました。
これは、アメリカを中心に海外でインフレ抑制のため金利が上昇傾向にあり、国内外の金利差の拡大が急激な円安を招いている、という事情も一因としてあります。 金利の上昇は住宅ローンの金利増加を意味し、月々の返済額が増えるため、不動産市場にマイナスの影響を及ぼすことが懸念されています。
また購入者の借入可能額の減少により、不動産価格を下げなければ売れない状況に陥る可能性があります。
ロシアによるウクライナ侵攻の影響
2022年2月、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を行い、世界各国に衝撃を与えました。 日本でもウクライナ侵攻当日の2月24日、日経平均株価は2022年初来安値となる2万5,970円82銭を記録するなど、株価へ甚大な影響を与えています。
また、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、世界的なエネルギー価格の高騰が起こっています。 この背景として、ウクライナはロシアと欧州を結ぶ重要なエネルギー輸送ルートの一部であるという点が挙げられます。
ロシアは天然ガスの主要な供給国であり、ウクライナを通過するパイプラインへの影響から、供給不足や供給停止のリスクが高まり、エネルギー価格の上昇を引き起こしています。 こうしたエネルギー価格の高騰は、建設コストを押し上げることにつながります。
加えて、西側諸国でロシアとベラルーシへの経済制裁で木材輸入が禁止されたため、世界的に木材の供給が減少しました。 ロシアは世界最大の針葉樹材の輸出国です。制裁が今後も継続されることを考慮すると、木材不足は慢性的な問題となる可能性があります。
こうした木材不足は建材の供給不足を引き起こし、建築業界はコスト増や物資の確保に苦められることになりました。 需要と供給のバランスが崩れ、需要が高まる中で資源の不足が続けば、事業者側も経費増加を回避するために価格を上げざるを得なくなります。
このように、今後の日本の株価や不動産価格を把握するためには世界情勢にも注目する必要があります。
大手住宅メーカーの注文住宅販売や不動産テック企業の仲介業務に4年間携わり、不動産取引にかかわった件数は350件以上にわたります。2021年よりリビンマッチコラムの執筆・編集を担しています。皆さんが安心して不動産取引を行えるよう、わかりやすくリアルな情報を発信します。
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リビンマッチ編集部
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