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相続土地国庫帰属法をわかりやすく解説|デメリットや利用条件は?

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相続土地国庫帰属法をわかりやすく解説|デメリットや利用条件は?

相続した遺産のなかに、使い道のない土地が含まれていると困ったことになるかもしれません。なぜなら土地は、保有しているだけで固定資産税がかかったり、維持管理に手間がかかったりするからです。

相続した土地の扱いに苦慮する人が増えていることを背景に、土地を国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属法が制定されました。

相続土地国庫帰属法とはどんな法律なのか、利用するにはどうすればよいのかなどを詳しく解説します。

相続土地国庫帰属法とはどんな法律?

相続土地国庫帰属法とは、相続した土地を国に引き取ってもらえる制度を定めた法律のことです。相続土地国庫帰属法の主な内容と、法律が制定された背景、法律のデメリット、手放したい土地を国に引き渡すまでの流れを解説します。

相続土地国庫帰属法とは

相続土地国庫帰属法は令和3年(2021年)に制定された法律で、正式には「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」といいます。この法律により、相続で取得した土地を国に引き取ってもらうことが可能となりました。

相続土地国庫帰属法のポイントは、次の4つです。

  • 相続や遺贈などで取得した土地を、国に引き取ってもらう申請を出せる
  • 法務大臣は審査の必要に応じて、職員に調べさせられる
  • 土地を引き取る条件を満たすと判断されたら、国庫への帰属を認める
    所有権を国に移すこと
  • 国庫への帰属が認められると、負担金を納めて引き取りの手続きがはじまる

土地を国庫に帰属させる申請を出せるのは、土地を相続した人、遺贈された人、相続で土地の所有権の一部を取得した人です。この法律ができる前に相続した土地も申請の対象になります。申請が認められると、負担金を支払って国庫へ土地を帰属できます。

負担金は以下のように算定されます。

負担金の金額
宅地 面積に関わらず20万円
※一部市街地は面積に応じて算定
田畑 面積に関わらず20万円
※一部市街地、農用地区域等の田畑は面積に応じて算定
森林 面積に応じて算定
その他(雑種地・原野など) 面積に関わらず20万円

出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要

相続土地国庫帰属法が制定された背景

政府は法律制定の理由として、「所有者不明の土地の発生を予防するための方策」と説明しています。

なぜ、所有者不明の土地が発生してしまうのでしょうか。その背景には、次のような土地に対する考え方の変化があります。

  • 土地の需要が変化した
  • 土地の維持管理の負担が大きい
  • 土地だけ相続放棄できない

それぞれについて解説します。

土地の需要が変化した

第二次世界大戦後、日本の人口は増加の一途をたどりました。しかし、2008年の1億2,802万人をピークとして減少に転じます。そのうえ、人口は首都圏など一部の地域に集中する傾向がみられ、地方都市や郊外の人口が大幅に減少しました。

利便性が高い大都市周辺の土地は需要があるため高額で取り引きされますが、人口が少なく需要の少ない地方の宅地や農地、山林は買い手がつかず、固定資産税や土地管理の負担だけが増しています。

土地の維持管理の負担が大きい

買い手がつかない土地は「負動産」といわれ、所有者に大きな負担をかけています。土地などの不動産は所有しているだけで管理義務が発生するため、建物や土地を維持するために常に手を入れ、不審者の侵入や不法滞在を防ぐ手立てを講じなければなりません。

さらに土地の所有者は、固定資産税を納付しなければなりません。税率は各自治体で異なりますが、使い道のない土地でも納税しなければならず、所有者の負担となっています。

しかし土地は物品と異なり、捨ててしまうこともできません。他者に譲渡するか、自治体に寄付するしかないのですが、利用価値が低いと受け取ってもらえません。

土地だけ相続放棄できない

相続で土地を受け取らずに済ませるには、遺産相続時に相続放棄しなければなりません。遺産相続では原則としてすべての遺産を一括して相続するため、個別に土地だけを相続放棄することができないのです。

相続土地国庫帰属法のデメリット

不要な土地を国に引き取ってもらえるという点で、相続土地国庫帰属法は画期的なものです。しかし、次の点がデメリットとしてあげられます。

  • 手数料、負担金の負担がある
  • 審査を終えるまで時間がかかる
  • 更地にする手間がかかる

相続土地国庫帰属法の申請をするには、手数料が必要です。また、申請書の作成を代行できるのは弁護士や司法書士、行政書士で、彼らに報酬を支払う必要もあります。また、制度がはじまったばかりで調査に時間がかかるため、承認申請の受付から半年~1年ほどの時間がかかるといわれています。

審査項目が多く手続きに時間がかかることや、境界調査や残置物の撤去といった手間もかかります。こうした点は制度利用のデメリットといえるでしょう。

土地を引き渡すまでの流れ

相続土地国庫帰属法を利用して、土地を引き渡すまでの具体的な流れは次のとおりです。

  1. 国庫帰属申請書の提出:まずは最寄りの法務局へ国庫帰属申請書を提出します。申請書には該当する土地の所在地や面積、相続人の氏名や住所などが記載されます。
  2. 要件審査の実施:申請書を受け取った法務局は、却下要件や不承認要件に該当するかどうかを審査します。審査には一定の期間が必要で、これは審査の結果によります。
  3. 承認通知の受け取り:審査が通過すれば、申請者に承認通知が送られます。通知には、土地の国庫帰属日や必要な負担金等が明記されます。
  4. 負担金の納付:承認通知を受け取った申請者は、指定された期間内に負担金を納付します。納付方法は通知に記載されています。
  5. 土地の国庫への帰属:負担金の納付が完了すると、国庫帰属日に土地は正式に国庫に帰属します。これにより、土地所有者としての負担や義務が解消されます。

法務局の審査では、土地の使用状況や位置、負担金の額などが考慮されます。これらの要素は、申請が承認されるかどうか、そして土地が国庫に帰属するまでの時間に影響を与えます。

相続土地国庫帰属法の利用条件

相続土地国庫帰属法が適用されるのは、却下要件や不承認要件に当てはまらない土地です。それぞれの内容について整理します。

却下要件

却下要件に当てはまる土地は、申請段階で却下されます。

  • 建物がある土地
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 他人の利用が予定されている土地
  • 特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

引用:政府広報オンライン「相続した土地を手放したいときの『相続土地国庫帰属制度』」

つまり、土地の所有者と境界が明確で、かつ今後も利用される予定のない、管理のしやすい土地が対象です。あとから争いが起こる要素のある土地や、通常の管理ができないような土地は国に引き取ってもらえず申請が却下されます。

不承認要件

「却下要件」とは別に、申請の結果、国庫帰属が承認されない物件もあります。対象となるのは次の土地です。

  • 一定の勾配・高さの崖があって、管理に費用・労力がかかる
  • 土地の管理・処分を阻害する有体物がある
  • 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
  • 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
  • その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

引用:政府広報オンライン「相続した土地を手放したいときの『相続土地国庫帰属制度』」

不承認となるのは、管理ができない、管理に過度な費用・労力がかかる土地で、ほかには処分するときに負担がかかる土地も国庫へ帰属できません。

法務省の調査を見ると要件を満たす土地は少ないと考えられ、実際に制度を利用できる人は少数でしょう(法務省「法制審議会民法・不動産登記法部会第16回会議」)。

相続土地国庫帰属法の素朴な疑問

相続土地国庫帰属法についての疑問にQ&A形式で答えます。

法律の施行前に相続した土地

10年も前に相続した土地も対象になる?
法律施行前に相続した土地も対象です。

相続した土地であれば、たとえ数十年前に取得していたとしても、相続土地国庫帰属法の対象になります。そのうえで、却下要件や不承認要件に該当しなければ、申請・承認を経て国庫へ帰属されます。

親が騙されて原野商法で購入した土地

原野商法で親が騙されて買った土地にも利用できる?
適用可能です。ただし、不承認要件に該当するおそれがあります。

原野商法で買った土地か否かではなく、国が定める却下要件と不承認要件に該当していなければ申請可能です。

ただし、適切な造林、間伐、保育が実施されておらず、国が追加で整備しなければならない土地は「その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地」という不承認要件に該当するため、制度を利用できないかもしれません。また、自身が騙されて取得した土地は、相続土地国庫帰属法の対象外です。

家を建てられない土地

無接道地で家を建てられないけど大丈夫?
他人の土地を通行しないと出入りできない、無接道地(袋地)でも申請可能です。

ただし、袋地に出入りするための通路(他人の所有地)の通行が妨害されている場合は、引き取ってもらえません。

審査にかかる手数料

審査手数料はどのくらい必要ですか?
審査手数料は、土地一筆あたり14,000円です。

申請時に手数料相当額の収入印紙を貼って納付します。申請が却下・不承認でも、審査手数料は返金されません。

利用にあたっての相談先

この制度を利用するとき、誰に相談すればよいですか?
相談は各地の法務局で受け付けています。

相続土地国庫帰属法についての相談は、法務局の窓口か電話のどちらかの方法で対応しています。事前予約制になっているため、相談の申し込みが必要です。時間が1回30分と限られてるため、相談前に準備資料を作成しておきましょう。

相談の事前予約や準備資料は、法務省のサイトで詳しく解説しています。

法務省「令和5年2月22日から相続土地国庫帰属制度の相談対応を開始します

手数料や負担金以外にも費用がかかる

相続土地国庫帰属法は、相続した土地を国に引き取ってもらう法律です。法律制定の背景には、土地需要の変化により、相続しても負担が増える「負動産」が増えたことや、管理が行き届かない土地について各地で問題となっていることなどがあります。

しかし、すべての土地が引き取りの対象となるわけではありません。国が定める却下要件や不承認要件に該当する土地は引き取ってもらえません。

また、対象になる土地であっても、建物の撤去や土地の測量などの追加費用が必要になることもあります。制度を適用するか否か、法務局や弁護士・行政書士などと相談したうえで決めたほうがよいでしょう。

複数の不動産会社にも相談を

過去に不動産会社に相談して売却できず、相続土地国庫帰属法を検討しているのであれば、別の不動産会社に相談してはいかがでしょうか。

不動産会社ごとに得意分野があり、所有する不動産が不得意な不動産会社に相談していたのかもしれません。不動産売却では複数の不動産会社に査定を依頼するのが、早期売却の近道です。

複数の不動産会社に査定を依頼するときは、一括査定サイトのリビンマッチが便利です。売却したい不動産の情報と連絡先を一度入力すれば、対応できる不動産会社に一括で査定を依頼できます。

なかには所有者が気づいていなかった、意外な価値を見出す不動産会社があるかもしれません。まずはリビンマッチをご利用ください。

不動産会社に買い取ってもらえることも

できるだけ早く売却したいのであれば、不動産会社が買主になる、不動産買取という売却方法もあります。買主を探す時間がかからないため、それだけ早く売却できるのがメリットです。

ただし、不動産会社が再販売して得る利益を差し引かれているため、不動産売買の市場価格よりも安くなってしまいます。また、不動産会社が再販売をして売れると判断した不動産でなければ、買い取ってはもらえません。

それでも人によっては、取り引きがスピーディで、1カ月ほどで入金されるのは大きなメリットです。

リビンマッチでは、買取に対応する不動産会社に査定を依頼することもできます。早く不動産を売却したい方は、不動産買取の利用をご検討ください。

この記事の編集者

リビンマッチ編集部 リビンマッチ編集部

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