実家の持ち家はヤバい?相続で困らないために、いましておきたい対策
実家の持ち家を相続すると、税金や住宅ローンの負担、親族とのトラブル、空き家の管理など、多くの問題が待ち受けています。これらの問題に対処するには、事前準備が欠かせません。
この記事では、実家の持ち家がヤバいといわれる理由や、ヤバい状況にならないために早めにしておくとよいことを詳しく解説します。
もくじ
実家の持ち家がヤバいとウワサされる理由
実家の持ち家がヤバいといわれるのは、親の死亡や施設への入居によって実家に住む人がいなくなった場合に、さまざまな問題が生じる可能性があるためです。
ここでは、実家の持ち家がヤバいとウワサされる理由について解説します。
築年数が古いため、維持管理費に負担がかかる
親が高齢になるまで住み続けていた実家は古くなっている場合が多く、これからも実家を維持していくつもりであればメンテナンスや修繕などが必要不可欠です。
また、一度手を入れればよいというわけでもなく、手入れは定期的に行う必要があるため、実家が存在するかぎり維持管理費を負担し続けなければなりません。
人が住んでいない家は傷みやすいため、想像以上に手がかかるおそれもあります。</相続財産管理人p>
さらに、自分の持ち家が別にある場合は管理の手間や費用が二重にかかるため、負担が増えてしまいます。
近隣住民とトラブルになる場合がある
誰も住んでいない実家を放置した結果、以下のような理由から近隣住民とトラブルになるおそれがあります。
- 不法投棄されたゴミから異臭がする
- 庭が荒れ、害虫が発生する
- 野生動物が住み着く
- 伸びた草木が隣地に侵入する
空き家は人目のなさからゴミの不法投棄を招きやすく、不法投棄されたゴミがそのまま放置されれば腐敗して悪臭を放ちます。
また、庭が荒れて蚊やダニなどの害虫が発生するほか、ハクビシンやネズミなどの野生動物が住み着き、糞尿から悪臭が発生する事例もあります。
手入れされず伸びっぱなしになった草木が隣地に侵入し、隣人に迷惑をかけてしまうこともあるでしょう。
特定空き家に指定されると、固定資産税や都市計画税が上がるおそれ
実家が空き家になり、地方公共団体(自治体)から「特定空き家」に指定されると、固定資産税や都市計画税といった税金が上がるおそれがあります。
特定空き家とは、以下の条件のいずれかにあてはまる空き家を指します。
- 建物の老朽化や破損により倒壊などのおそれがある状態
- ゴミの放置や異臭、害虫の発生など衛生上有害となるおそれがある状態
- 立木の繁殖やゴミ、建物への落書きなどによって景観を損なっている状態
- 不審者の出入りや近隣への立木の侵入など、近隣住民の生活を妨げている状態
上記の条件以外にも、1年以上人が出入りしていない状態であることや水道、ガス、電気などが1年以上使用されていないことなど、ほかの事情も考慮したうえで判断されます。
住宅用地として利用している土地は、固定資産税が最大で6分の1、都市計画税は最大3分の1まで減額されています。しかし、特定空き家に指定されると住宅用地の特例が適用されなくなります。
住宅用地の広さ | 減額後の固定資産税 | 減額後の都市計画税 |
---|---|---|
200㎡まで | 6分の1 | 3分の1 |
200㎡を超える部分 | 3分の1 | 3分の2 |
特定空き家に指定された場合、まずは地方公共団体から助言・指導が入り、状態の改善を求められます。改善が見られない場合は、住宅用地特例の対象から除外する旨の勧告や改善命令を受け、命令に違反すれば50万円以下の過料が科されます。
それでも従わない場合は行政代執行により実家が解体されるうえ、行政代執行の費用は空き家の所有者に請求されます。
費用が支払えない場合は財産を差し押さえられてしまうため、特定空き家に指定されてしまう前に手を打つことをおすすめします。
相続時に「ヤバい」とならないための対策
相続時に困らないためには、早めの対策が重要です。
完璧に備えるのは難しいですが、相続について考え、いまできることをやっておくだけでも結果は変わってくるでしょう。
ここでは、相続時にヤバい状況にならないためにしておきたい対策を紹介します。
持ち家にある不要なモノは、全部片づける
相続の際にヤバくならないためにも、不要なモノは片付けておきましょう。親が亡くなり、いざ相続が発生してから片付け始めるのでは遅いためです。
ただでさえ実家の片付けは時間がかかるうえ、実家にあるモノを親がどうしたいと考えていたのか、を確認するすべがありません。
また、たとえ親が存命でも、年とともにモノを捨てられなくなったり正しい判断がしにくくなったりするため、できるだけ親が元気なうちから始めるのが理想です。
相続人全員で、誰が持ち家を相続するのか話し合う
実際に相続が開始する前に、相続人全員で誰が親の持ち家を相続するのか話し合っておくと相続の際にスムーズです。
重要なのは、相続人全員で話し合うことです。中途半端に一部の相続人だけで話し合って決めてしまうと、あとあとトラブルを招くおそれがあります。
また、相続人以外の人は話し合いに参加させないほうがよいでしょう。たとえば相続人の配偶者などが口出しすることで、話し合いがうまくいかなかったり関係自体がこじれてしまったりする心配があります。
話し合いがうまくいかない場合は、弁護士などの専門家に同席してもらうとよいでしょう。
可能であれば親本人の意向も聞けるとよいですが、タイミングを誤れば気を悪くしてしまう心配もあります。以下のような話題が出たときなど、親がその気になったタイミングを見計らって話を持ちかけるとよいでしょう。
- 両親のうち、どちらかが亡くなった
- よその家が相続でもめた
相続放棄と相続、どちらがよいか把握する
相続が発生した際、相続と相続放棄のどちらを選択するのがよいか把握しておくことも重要です。親の財産状況によっては、相続放棄を検討したほうがよい場合もあるためです。
ここでは、相続放棄を検討したほうがよい場合と実家を相続した方がよい場合についてそれぞれ解説します。
相続放棄を検討したほうがよい場合
以下のような場合は相続放棄を検討したほうがよいでしょう。
- プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多い場合
- 相続の際にもめる危険性が高い場合
- 相続財産が特定空き家に指定されそうな不動産である場合
相続では、プラスの財産だけでなく借金や負債などのマイナスの財産も引き継ぎます。マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合は借金だけが残ってしまうため、そのまま相続してしまうと自分が借金の返済をする必要があります。
相続の際にもめる危険性が高く、トラブルに巻き込まれたくない場合も、ケースによっては相続放棄を選択したほうがよいでしょう。
そのほか、相続財産が特定空き家に該当するほど老朽化の進んだ家である場合なども、相続放棄したほうがよいかもしれません。相続後は所有しているかぎり固定資産税や都市計画税、維持費などを負担していかなくてはならないためです。
ただし、家庭裁判所に相続放棄申述書を提出すると、原則撤回できません。そのため、相続放棄をする際は慎重に進める必要があります。
実家を相続したほうがよい場合
以下のような場合は、相続放棄をやめておいたほうがよい可能性があります。
- 自分が相続放棄をすれば相続人がいなくなる場合
- プラスの財産とマイナスの財産がはっきりしない場合
- 自分が相続放棄をした結果、ほかの相続人が借金を背負うことになる場合
相続人が自分1人である場合、自分が相続放棄すれば相続人がいない状態になります。その場合は相続財産管理人が選任されますが、相続財産管理人が選任されるまでの期間に生じた、家の倒壊や周囲への悪影響などといった問題の責任は相続放棄をした人が負う必要があります。
また、プラスの財産とマイナスの財産のうち、どちらが多いのかはっきりしない場合も、安易に相続放棄してしまうのはおすすめできません。
マイナスの財産が上回っていると思い込んで相続放棄をしたあとで、隠れた財産が見つかる可能性もあるためです。まずは相続財産の調査をし、相続人全員で今後の手続きについて話し合うべきでしょう。
相続放棄をすれば、その人ははじめから相続人ではなかったとみなされます。そのため、自分が相続放棄をしたことによって、本来相続するはずのなかった人が相続人となり、借金を背負う危険性があります。
借金を理由に相続放棄する場合は、関係者で話し合い、全員で申述するのがよいでしょう。
持ち家を相続する場合の維持管理費用やローンの計画
持ち家を相続したあと維持管理費用がいくらかかるのかについてや、住宅ローンが残っている場合は毎月いくら返済していかなければならないかなどをきちんと計画しておく必要があります。
自分にも持ち家がある場合は、家の維持管理費や住宅ローンなどの支払いが二重になるため、相続後に家をどのように扱うかについて早い段階から考えておいたほうがよいでしょう。
なお、相続対象の家の住宅ローンが残っている場合でも、住宅ローン契約時に団信(団体信用生命保険)に加入していれば返済義務はなくなります。
しかし、団信保険に加入していない場合は住宅ローンの残債を相続するため、相続後は相続人がローンを返済していく必要があります。
持ち家に誰も住まない場合は、所有するか手放すか決める
相続後、持ち家に誰も住まないのであれば、そのまま所有しておくのか手放すのかについて決める必要があります。
空き家になった家を放置しておくことはさまざまなリスクにつながり、売却するにしても、早いうちから行動し始めないと建物の価値がどんどん下がっていくためです。
ここでは、持ち家を所有し続ける場合と手放す場合それぞれの有効活用法を紹介します。
持ち家を所有し続ける場合の有効活用法
持ち家を所有し続ける場合の主な有効活用法は、以下のとおりです。
- セカンドハウスとして活用する
- 賃貸する
古くなった実家を、セカンドハウスとして活用するのもひとつです。実家を手放すと親族が集まる場所がなくなり疎遠になりやすいですが、定期的にセカンドハウスに親族が集まるようにすれば、疎遠になってしまうのを防げます。
ただし、固定資産税や維持管理費を支払い続けなければならないため、負担は大きいかもしれません。
そのほか、賃貸に出す選択肢もあります。
うまく賃借人が見つかれば、家賃収入で固定資産税や維持管理費をまかなえるでしょう。ただし、賃借人が見つかる保証はないうえ、見つかったとして賃借人が長期間住み続けてくれるとはかぎりません。
また、実家の状態によっては賃貸に出す前に修繕が必要な場合もあります。
所有権を手放す場合の有効活用法
所有権を手放す場合の主な有効活用法は、以下のとおりです。
- そのまま仲介または買取で売却する
- 古家付き土地として売却する
2023年、株式会社AZWAYが男女500人を対象に行った調査結果によると「実家が空き家になった場合の対応」として、わからないと答えた人の次に多かった回答が、500人中139人の売却でした。(参考:PRTIMES【実家が空き家になったらどうする?】男女500人アンケート調査)
売却と一口にいっても方法はさまざまで、仲介で売却する場合や買取で売却する場合、古家付き土地として売却する方法などがあります。
持ち家が比較的きれいでそのままでも利用できるようであれば、中古住宅としてそのまま売却するとよいでしょう。
なお、売却方法には仲介と買取があります。仲介は不動産会社に買い手を探してもらって売却する方法で、仲介手数料はかかりますが買取よりも高値で売却できる可能性があります。
一方、買取は不動産会社に直接買い取ってもらう方法で、相場価格よりも売却金額が安くなる傾向にありますが、買い手を探す手間や時間が不要な分、素早い現金化が可能です。
また、不動産として価値がなく、手を入れなければ住めないような家でも、古家付き土地としてなら売却が可能な場合があります。多くの場合、買い手が解体することを踏まえ、更地として売り出す場合よりも価格を下げて売却しますが、売却の際に手間や費用がかからない点はメリットといえるでしょう。
実家の持ち家対策は、家の価値の把握から!
親の死後、実家をどうするかは多くの人が頭を悩ませるテーマです。手放したほうがよい状況と手放したくない気持ちがせめぎ合い、なかなか決断できないケースも少なくありません。
そこで、まずは持ち家の価値を把握するところから始めてみるのがおすすめです。不動産の一括査定サイトリビンマッチなら、一度に複数の不動産会社から査定してもらえるため、査定金額や対応を比較でき、手間や時間もかかりません。実家の適正な価値を知ることで、選択肢も広がるでしょう。
査定したからといって、売却の必要はありません。価格をもとに売却するか判断したり、持ち家の使い道について不動産会社に相談したりする方が多いので、ぜひ気軽に利用してください。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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