家や不動産の売却の際に税金が控除される「3,000万円控除」とは? 利用できる条件や注意点など詳しく解説
「3,000万円控除」とは、マイホームを売却した場合に最大で3,000万円まで課税が控除される特例です。多くの人がマイホームを買い換えたり手放したりする際に利用しています。しかし法律の条文などを読んでも、よく分からないという人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では家や不動産の売却を考えている人に向けて、不動産売却にかかる税金、3,000万円控除とは何か、利用条件、確定申告の方法、よくある質問などについて解説します。また3,000万円控除を受けると使えなくなってしまう控除も多いため、住宅ローン控除やマイホームの買い換え特例などについても併せてみていきましょう。
不動産売却にまつわる税金対策を把握して、節税したりよりよいプランを計画したりする参考にしてください。
もくじ
不動産の売却益には譲渡所得税が発生する
不動産の売却益には譲渡所得税が発生します。譲渡所得税を知らないと、税金の申告もれや予想外の出費につながってしまいます。ここでは譲渡所得税についてや、計算方法について確認していきましょう。
譲渡所得税とは
譲渡所得税とは、土地や建物、株式や美術品などの資産を譲渡(売却)することによって得た所得に課税される所得税や住民税です。具体的には、住んでいるマンションを売却したり、親から相続した土地を売却したりして収入を得た際に、譲渡所得税がかかります。
不動産を売却した際の譲渡所得税は分離課税です。つまり、給与や株の売却など他の所得と区別して、課税されます。
譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間によって変わります。譲渡した年の1月1日時点の所有期間が5年以下の場合は、「短期譲渡所得」となります。短期譲渡所得の税率は39%(所得税30%、住民税9%)です。(※1)また譲渡した年の1月1日時点の所有期間が5年を超える場合は、「長期譲渡所得」となります。長期譲渡所得の税率は20%(所得税15%、住民税5%)です。(※2)
なお譲渡所得税の所得税分には、別途、復興特別所得税がかかります。平成25年(2013年)~令和19年(2037年)までの復興特別所得税の税率は2.1%です。
※1 出典:国税庁「短期譲渡所得の税額の計算」
※2 出典:国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」
譲渡所得の算出方法
譲渡所得の計算式は、以下のとおりです。
譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)
不動産売却の場合は、収入金額は売却価格です。また取得費は売却した土地や建物の購入代金・建築費・購入手数料などで、設備費やメンテナンス費用なども含まります。譲渡費用は仲介手数料や印紙代などです。
具体例で計算してみましょう。30年前に取得した土地、建物の売却価格が8,000万円、取得費が3,500万円、譲渡費用が500万円だったと想定します。以下の計算式のとおり、譲渡所得は4,000万円です。
譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)=8,000万-(3,500万円+500万円)=4,000万円
またこの例は長期譲渡所得にあたるため、税額は以下のとおりです。
所得税=4,000万円×15%=600万円
住民税=4,000万円×5%=200万円
譲渡所得税=所得税+住民税=600万円+200万円=800万円
復興特別所得税=所得税×2.1%=12万6,000円
譲渡所得税が抑えられる特別控除や特例
想定以上に譲渡所得税がかかることに驚いた人もいるかもしれません。しかし不動産を売却した際は、譲渡所得税が抑えられる特別控除や特例が複数あります。節税対策のためにも、それぞれの制度を知って活用するようにしましょう。詳しい情報を知りたい人は国税庁のホームページでも確認できます。
3,000万円特別控除
「3,000万円特別控除」とは、自分が住んでいる家を売却するか、家とともに敷地や借地権を売却した際に、最大3,000万円まで所得が非課税になる制度です。正式名称は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。
不動産を売却する際の特例はさまざまありますが、その中でも3,000万円特別控除は多くの人が利用できる代表的な控除です。3,000万円特別控除についての詳しい概要は、後ほど解説します。
所有期間が10年を超えた居住用財産を譲渡した場合に利用できる軽減税率の特例
所有期間が10年を超えた居住用財産を譲渡した場合には、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」を利用できます。
この特例は、売却した家や土地の所有期間が10年超なら、課税譲渡所得6,000万円まで税率を軽減できる制度です。 主な要件は次のとおりです。(※)
- 自分が住んでいる家を売る、または家とともに敷地などを売却する
- 売却した年の前年、前々年に軽減税率の特例を受けていない
- 譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年超
- 3,000万円の特別控除を除いた他の特例を受けていない
- 売却先が親子や夫婦など特別な関係者ではない
以前住んでいた家でも、住まなくなった日から3年以内であれば有効です。老人ホーム入居して1年後に不動産を売却したような場合でも、特例を受けられます。ただし細かな条件があるため、詳細は国税庁のホームページで確認してください。
※出典:国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
特定のマイホームを買い換えた場合に利用できる特例
「特定のマイホームを買い換えたときの特例」とは、居住用住居を買い換えた場合に一定の条件を満たすと売却益に対する税金を繰り延べられる制度です。
たとえば、過去に2,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却して売却益3,000万円を得て、新たなマイホームの購入資金に充てたとします。通常なら売却益3,000万円が課税対象となりますが、特例の適応を受けた場合は、将来、マイホームを売却するときまで課税を先送りにできます。
主な要件は以下のとおりです。(※)
- 自分が住んでいる家を売却する、または家とともに敷地などを売却する
- 売った年の前年、前々年に3,000万円の特別控除、軽減税率の特例、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例(※後述)を受けていない
- 新旧のマイホームが国内にある
- 売却代金が1億円以下
- 譲渡した年の1月1日時点で旧マイホームの所有期間が10年超で、居住期間が10年以上
- 旧マイホームの床面積が50平方メートル以上、新マイホームの土地面積が500平方メートル以下
- 旧マイホームを売った年の前年から翌年までの3年間に新マイホームを買い換える
- 新マイホームが2024年1月1日以後に入居した(または入居見込みの)建築後使用されたことのない家の場合、一定の省エネ基準を満たしている
- 新マイホームが耐火建築物の中古の家である場合、取得日から25年以内に建築されているか、一定の耐震基準を満たす
- 新マイホームが耐火建築物以外の中古の家である場合、取得日から25年以内に建築されているか、取得期限までに一定の耐震基準を満たす
※出典:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」
相続した実家などを売却する際に利用できる特例
相続した実家などを売却する際は、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を適用できます。一定の条件を満たすと、売却益のうち最大3,000万円まで非課税となります。
たとえば、不動産を現金化してから相続人同士で分配する際に、この特例を活用できます。従来、この特例の適用を受けるには、被相続人(亡くなった親など)が該当の家に住んでいる必要がありました。しかし現在は、被相続人が老人ホームなどに入所していたとしても、一定の条件を満たせば3,000万円までの控除を受けられます。
主な要件は以下のとおりです。(※)
- 売却した人が家、土地を取得する
- 相続、遺贈された一定の耐震基準を満たした家を売るか、家とともに敷地などを売る、または家を取り壊して敷地などを売る
- 相続開始日から3年経過した年の12月31日までに売る
- 売却代金が1億円以下
※出典:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
土地の売却で損失が出た場合に利用できる特例
土地の売却で損失が出た際には、「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を受けられます。一定の要件を満たせば、損失と他の所得の損益通算が可能です。
たとえば、土地の売却の損失が1,000万円で他の所得が500万円の時は、所得が相殺されて所得税がかかりません。さらに残りの損失500万円分は翌年以降の3年にわたって繰り越して、損益通算できます。住宅ローンが残っている状態でマイホームを売却して損失が出た場合などで、この特例の活用を検討可能です。
主な要件は以下のとおりです。(※)
- 売却する人が住んでいる国内の不動産(セカンドハウスは不可)
- 売却する人が住んでいない場合、住まなくなった日から3年経過した年の12月31日までに売却する
- 家を取り壊して土地を売却する場合、取り壊し日の属する年の1月1日までで所有期間が5年超、かつ取り壊し日から1年以内に譲渡契約し、住まなくなった日から3年経過後の年の12月31日までに売る。その間、駐車場など他の目的に利用しない
- 不動産が災害で失われた場合、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年超。かつ、3年経過後の年の12月31日までに売る
※出典:国税庁「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の対象となる「譲渡資産」及び「特定譲渡」とは」
公共事業などのために土地や建物を売却した場合に利用できる特例
公共事業などのために土地や建物を売却した場合は、「収用等により土地建物を売ったときの特例」が適用できる場合があります。たとえば、リニア新幹線のための土地収用によって、強制的に家を立ち退かなければならなくなったような場合に、売却益が最大5,000万円まで控除されます。
主な要件は以下のとおりです。(※)
- 売却した土地建物が固定資産(販売目的ではなく長期保有している)
- 代替資産を取得した場合に、課税の特例の適用を受けていない
- 最初の買取申出日から6カ月以内に売却
- 買取の申し入れを受けた者、または相続人が売却
※出典:国税庁「収用等により土地建物を売ったときの特例」
3,000万円控除とは
不動産を売却した際に多くの人が活用できる制度が、3,000万円控除(「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」)です。売却をした人がはじめに利用できないか検討すべき特例といえるでしょう。ここでは利用条件について詳しく解説します。
利用するための条件
3,000万円控除は所有期間の条件がなく、幅広いケースで活用できる特例です。ただし子や配偶者などへの譲渡はできない点や、他の特例との併用ができない点には注意してください。要件は以下のとおりです。(※)。
- 自分が住んでいる家を売却する、または家とともに敷地などを売却する。住んでいない場合は、住まなくなった日から3年経過後の年の12月31日までに売却し、更地にした場合は駐車場など他の目的に利用しない
- 売却した年の前年、前々年にこの特例、及び「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を受けていない
- 売却した年の前年、前々年に「マイホームを買い換えたときの特例」を受けていない
- 売却した年の前年、前々年に「収用等により土地建物を売ったときの特例」を受けていない
- 災害で失われた家の場合、住まなくなった日から3年経過後の年の12月31日までに売る
- 売主と買主が特別な関係にない(親子、夫婦などの取引は適用外)
なお、以下に当てはまる場合は3,000万円控除を受けられません。
- この特例目的で不動産を取得した場合
- 仮住まいの住居
- 別荘、趣味や娯楽のための家
このように、3,000万円控除はさまざまな条件があるため確認に手間がかかりますが、申請が却下されないように前もって内容を理解しておきましょう。
※出典:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
マイホームを取り壊して土地を売却した場合にも利用できる
3,000万円控除は家を取り壊した後に売却する場合にも、適用できます。古家を解体して更地にしておけば、すぐに建物を建てたい人や建物以外に利用したい人などに購入してもらえる可能性が上がります。こうしたメリットが見込める場合は、3,000万円控除を活用して更地を売却するのがおすすめです。 主な要件は、以下の2つです。(※)
- 取り壊し日から1年以内に敷地の譲渡契約を結ぶ。かつ住まなくなった日から3年経過後の年の12月31日までに売却する
- 取り壊してから、他の目的に利用していない(駐車場の経営など)
一度取り壊してしまうと、敷地の譲渡契約、売却の期限があるため、3,000万円控除が受けられないおそれがあります。複数の不動産会社に一括で査定してもらい条件を決めるなどして、なるべく早く買主を見つけるようにしましょう。
なお、家の一部を取り壊して敷地の一部を売却してしまった場合は、残った家が住める状態になっていると3,000万円控除が受けられません。
※出典:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
3,000万円控除を利用する際の注意点
3,000万円控除を利用する際は、その他の特別控除や住宅ローンについても考慮して総合的に検討しましょう。それぞれを併用できない控除も多いため、選択を間違えると節税額が少なくなってしまう場合もあります。ここからは、3,000万円控除と併用できる制度、できない制度について解説します。
3,000万円控除は住宅ローン控除との併用ができない
3,000万円控除は、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)と併用できません。また3,000万円控除は多くの特例とも併用できません。3,000万円控除と併用できない制度は以下のとおりです。
- 住宅ローン控除
- 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
- マイホームを買い換えたときの特例
- 収用等により土地建物を売ったときの特例
反対に、3,000万円控除と併用できる制度は「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」です。
このように3,000万円控除と併用できる税制優遇は多くありません。どちらの控除額が多いか比較しながら検討してみてください。
※出典:国税庁「住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
住宅ローン控除が利用できないケースがある
3,000万円控除の適用前後2年間は住宅ローン控除が利用できません。したがって、「旧マイホームの売却益に3,000万円控除を適用し、新マイホーム購入のための住宅ローンに住宅ローン控除を適用する」といったダブル控除は受けられません。
タイミングをずらす方法もありますが、現実的には資金的にも生活的にも難しい場合が多いでしょう。ほとんどの人は、住宅ローン控除と3,000万円控除のどちらかを選択します。
では、どちらがお得なのでしょうか。そもそも住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んでマイホームを購入した際に、年末時点での住宅ローン残高の0.7%が、入居日から最長13年控除される制度です。(※)
仮にマイホーム購入のために住宅ローンを組み、年末時点の返済残高が3,000万円だったとします。この場合の最大節税額は以下のとおりです。
節税額=3,000万円×0.7%×13年=273万円
一方、仮に所有期間5年超の旧マイホームの売却益が3,000万円の時に3,000万円控除を活用すると、譲渡所得税率は20%なので節税額は以下のとおりです。
節税額=3,000万円×20%=600万円
つまりこのケースでは3,000万円控除を申請したほうが、節税額が多くなります。どちらを選ぶか決める際は、不動産の売却価格や住宅ローンの返済計画などをシミュレーションしてみるとよいでしょう。
※出典:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
マイホームの買い換え特例・譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例が利用できないケースがある
3,000万円控除を利用して不動産を売却した年の前年、前々年にマイホームの買い換え特例と、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は使えません。
前述したとおりマイホームの買い換え特例とは、所有期間10年超、居住期間10年以上の家を1億円以下で売却した際に売却益を繰り延べられる制度です。(※1)3,000万円控除と併用すれば、税金を抑えてマイホームを買い換えられるでしょう。ただし、マイホームの買い換え特例は、あくまで新しい家を売却するまで納税を先延ばしにしているだけであるため、3,000万円控除のような直接的な控除とは異なります。
また譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は、旧マイホームの売却で損失が出た際に、他の所得と3年間繰り延べて相殺できる制度です。(※2)こちらも併用はできないため、3,000万円控除と比べて得になるほうを選びます。売却代金が予想と大きく変わる場合もあるため、前もって複数の不動産会社から査定してもらうとよいでしょう。
※1 出典:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」
※2 出典:国税庁「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の対象となる「譲渡資産」及び「特定譲渡」とは」
3,000万円控除と併用できる特例もある
3,000万円控除と無条件で併用できる特例は、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」のみです。この特例は、所有期間が10年超の家を譲渡した場合、3,000万円控除後の6,000万円以下の部分について、軽減税率が適用されます。(※)
たとえば、所有期間15年の家を売却した際の売却益が2億円、取得費が7,000万円、譲渡費用が1,000万円だとすると課税譲渡所得は1億2,000万円です。
課税譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)=2億円-(7,000万円+1,000万円)=1億2,000万円
ここで3,000万円控除が活用されるので、以下の計算式に当てはまります。
課税譲渡所得=1億2,000万円-3,000万円=9,000万円
このうち、6,000万円までの譲渡所得税は14%(所得税10%、住民税4%)、それ以上の3,000万円分の譲渡所得税は15%(所有期間15年で長期譲渡所得のため)です。したがって、課税譲渡所得は以下のとおりです。
課税譲渡所得=6,000万円×14%+(9,000万円-6,000万円)×15%=840万円+450万円=1,290万円
通常、6,000万円分に15%の税率がかかるところ14%になるので、1%分の60万円を節税可能です。つまり、3,000万円控除で15%分の450万円、軽減税率で60万円、合計510万円の節税が可能です。
※出典:国税庁「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
3,000万円控除の確定申告と必要書類
3,000万円控除を受けるには、必ず確定申告をしなければなりません。ここからは確定申告の概要と必要書類について解説します。
確定申告を行うには
3,000万円控除を利用する際は確定申告が必要です。3,000万円控除によって納税額がゼロになる場合でも、確定申告が必要になることに注意してください。確定申告の提出期限は、翌年の2月16日~3月15日であることが多いです。また、提出先は、申告時の住所を管轄している税務署です。
会社勤めの人の場合、確定申告の経験がない場合も多いでしょう。確定申告の書き方については税務署で無料相談会が開かれているので、不安な場合は相談してみましょう。会場や時間帯は国税庁のホームページで確認できます。
ただし、例年混雑している会場では入場整理券を入手しなければならないケースもあります。簡単な内容であれば、国税庁ホームページのチャットボット「ふたば」を利用して調べるのもよいでしょう。(※)
※参考:国税庁「ふたば」
また、各種の特例と併用するなどして申告手続きが複雑になる場合には、税理士に確定申告を依頼可能です。ただし税理士に手続き依頼すると、それなりの費用がかかることを認識しておきましょう。
確定申告に必要な書類
確定申告に必要な書類は以下のとおりです。
- 確定申告書B
- 確定申告書第三表(分離課税用)
- 確定申告書付表兼計算明細書(譲渡所得の内訳書)
- 住民票(除票)の写し ※住民票の住所と売却物件の所在地が違う場合
- マイホームを売却したときの書類(売買契約書、仲介手数料領収書など)
- マイホームを取得したときの書類(売買契約書、仲介手数料領収書など)
- 土地・建物の全部事項証明書 ※住まなくなってから売却した場合
- 本人確認書(マイナンバーカード、免許証など)
確定申告書関連の書類は、税務署で入手するか、国税庁ホームページからダウンロードできます。(※1)
※1 参考:国税庁「確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)」
住民票は家がある地方公共団体(自治体)の役所、家関連の書類は不動産会社からもらっているはずです。全部事項証明書とは登記記録を印刷したもので、法務局(登記所)または法務局の登記・供託オンライン申請システムから、オンラインで入手できます。(※2)いずれにしても複数の書類を準備しなければならないため、スケジュールに余裕を持っておきましょう。
※2 参考:法務局「登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと」
3,000万円控除についてよくある質問
ここからは3,000万円控除について、よくある質問をQ&A方式で解説します。
家を貸し出しても3,000万円控除は使えますか
家を貸し出しても、3,000万円控除を使える可能性があります。ただし3,000万円控除を使うには以下の3つの点を押さえておきましょう。
- 売却日が住まなくなった日から3年経過後の年の12月31日までである
- 借主と契約を結んで、売却日までに立ち退いてもらう
- 所有者が一方的に3,000万円控除を受けるかどうか決められない
なお、更地にして駐車場などとして貸していた場合は、3,000万円控除は受けられません。3,000万円控除の要件には、家の取り壊し日から譲渡契約の締結日の間、他の目的で利用してはいないという項目があるためです。(※)
※出典:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
土地と建物の所有者が異なっても3,000万円控除の対象となりますか
条件を満たせば、3,000万円控除の対象となります。土地と建物の所有者が異なる場合には、以下の3条件をすべて満たす必要があります。(※)
- 土地と建物を一緒に売却すること
- 土地の所有者と建物の所有者が親族関係にあり、かつ生活をともにしていること
- 土地の所有者と建物の所有者が、その建物に住んでいること
具体的には土地の所有者が妻、建物の所有者が夫で、一緒に生活している場合は3,000万円控除の対象です。
控除は建物に対して優先的に適用されます。たとえば建物の売却益が2,000万円、土地の売却益が3,000万円だったとしましょう。この場合、まず建物の売却益2,000万円が控除されます。そして残りの1,000万円分を土地の控除額として差し引けます。この場合、土地の売却益が3,000万円のうち1,000万円分が控除対象となり、残りの2,000万円が課税対象です。
このように、土地と建物で所有者が違う場合、課税額に大きな差が出るケースもあります。後々トラブルになる可能性もあるため、関係者同士で前もって話し合っておきましょう。
※出典:国税庁「家と敷地の所有者が異なるとき」
売却益が3,000万円以下でも確定申告は必要ですか
売却益が3,000万円以下でも、確定申告は必要です。売却益が3,000万円以下でも確定申告しなければ、3,000万円控除の特例は受けられません。通常どおり譲渡所得に対して課税されるため、高額の納税額になってしまうかもしれません。「3,000万円までは自動的に控除される」と勘違いして確定申告をしない人が多いので注意しておきましょう。
ただし3,000万円控除は任意の申告であるため、確定申告しなくても罰則は受けません。「控除額が少なく、確定申告が面倒」などと考えるなら、3,000万円控除を利用しない方法もあります。
3,000万円控除を利用したいのに、確定申告を忘れてしまった場合は、申告期限後に提出する「期限後申告書」を提出しましょう。申告すれば、3,000万円控除の適用を受けられます。反対に期限後申告書を出さずに税金を納めないと、無申告加算税または重加算税がかかり、さらに税金が増える可能性があります。
単身赴任していた場合でも3,000万円控除を受けられますか
単身赴任が終わってマイホームに住むと認められる場合は3,000万円控除を受けられます。
単身赴任に限らず、病気やケガによる転地療養、介護を受けるための老人ホームの入居などでも問題ありません。ただし家を2つ以上持っている場合は、主に住まいとして使っている家だけが3,000万円控除の対象です。
家に家族が住んでいない場合は注意が必要です。3,000万円控除には、「住まなくなった日から3年経過後の年の12月31日までに売却する」という条件があります。(※)このため、たとえば一人暮らしで転勤になり、3年を超えて空き家状態だった場合は、売却時に3,000万円控除を受けられなくなってしまいます。
※出典:国税庁「妻子だけが住んでいるマイホームを売ったとき」
不動産名義が複数名の場合はどうなりますか
不動産を共有している場合は、共有者1人につき3,000万円が控除されます。
仮に3人で共有していた不動産の売却益が9,000万円だった場合、譲渡所得の計算は、共有者の「所有権持分」によって分けられます。所有権持分とは、各共有者が持つ所有権の割合です。仮に3人の所有権持分が3分の1ずつであれば、この例では各人の売却益は3,000万円です。このため、各人が3,000万円控除を申請すれば、全員課税がかかりません。(※)
ただし建物を共有しておらず土地だけを共有している場合は、3,000万円控除を受けられるのは家の共有者だけです。3,000万円控除の特例は、あくまでも共有のマイホームを売却したときに受けられると考えておきましょう。
※出典:国税庁「共有のマイホームを売ったとき」
店舗併用の場合でも3,000万円控除の対象になりますか
店舗と家を併用していた場合でも、居住用に使っていた部分が3,000万円控除の対象になります。建物と敷地の売却代金のうち、居住用部分が占める割合の売却代金に対して、3,000万円控除が使えます。
計算式は以下のとおりです。
A=居住用の部分の床面積
B=店舗用の部分の床面積
C=居住用と店舗用に併用されている部分の床面積
居住用の建物面積=A+C×A÷(A+B)
居住用の土地面積=A+C×居住用部分÷家の床面積
これらから居住用部分が占める割合の売却代金を計算してください。ただし居住用部分が全体の90%以上になるときは、全体を居住用として控除を受けられます。(※)
※出典:国税庁「店舗併用住宅を売ったときの特例」
家を取り壊して土地のみを譲渡した場合でも適用が受けられますか
家を取り壊して土地のみを譲渡した場合でも要件を満たした場合は、3,000万円控除の適用を受けられます。
要件は3,000万円控除の要件に加えて、以下の3つです。(※)
- 家の取り壊し日から1年以内に敷地の売買契約を結ぶ
- 住まなくなった日から3年経過後の年の12月31日までに売る
- 家の取り壊し日~敷地の売買契約日までの間、貸駐車場など違う目的に利用していない
3,000万円控除はマイホーム売却のための特例であるため、土地のみの場合は条件が厳しくなります。そのため買主が決まってから家を取り壊したほうがリスクは低くなるといえるでしょう。
※出典:国税庁「マイホームを取り壊した後に敷地を売ったとき」
まとめ
3,000万円控除は、不動産を売却する多くの人が活用できる特例です。上手に利用すれば、大きな節税効果を見込めます。しかし3,000万円控除を利用すると、その他の特例を使えなくなってしまうケースも多い点に注意してください。また期日の制限がある3,000万円控除では、不動産を予定日までに売却する必要があります。
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この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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