不動産相続についての相談はどこにすればよい?ケース別の相談先やポイントを詳しく解説
相続の手続きは複雑で手間がかかりますが、専門家に相談することで相続人の負担を減らすことが可能です。手続きをスムーズに進めていくためには、相続の状況や相談内容にあわせて適切な相談先を選ぶ必要があります。
本記事では不動産相続の相談について、ケース別の相談先やポイントなどについて詳しく解説します。また相続した不動産の価値の調べ方や、活用方法についても紹介するので、相続手続きが控えている方はぜひ参考にしてみてください。
もくじ
相談前に確認しておくべき不動産相続の流れ
まずは相続について全体的なスケジュールを解説します。相続のおおまかな流れは以下のとおりです。
- 相続する財産や相続人を決める
- 遺言書の確認
- 法定相続人の確定
- 相続財産の確定
- 書類の準備
- 遺産分割協議
- 相続不動産の名義変更
- 相続税の申告・納付
それぞれについて詳しく解説します。
流れ1.相続する財産や相続人を決める
被相続人が亡くなった場合、まずは死亡の事実を知った日から7日以内に死亡診断書と死亡届を役所に提出しなければなりません。また公的な事務手続きと同時に相続の手続きを進めていく必要もあります。
相続時に財産争いなどの親族間のトラブルに発展するケースも珍しくありません。相続に関するトラブルをできる限り回避するためには、遺言書有無の確認や相続財産の把握、相続人の調査と確定などを適切に進めていきましょう。相続の手続きはやることが多く手間がかかるため、サポートが必要な場合は弁護士や司法書士などの相続の専門家に相談するのも一つの選択肢です。
流れ2.遺言書の確認
相続の手続きにおいては、遺言書に記載されている被相続人の意思を反映させなくてはなりません。遺言書の有無は相続手続きに大きく関わってくるため、早めに確認しておきましょう。
相続について専門家に相談する場合も、遺言書があるかどうかは必ず聞かれます。可能ならば生前に遺言書の有無を把握できていると相続時手続きがスムーズです。
遺言書があるかないか分からない場合は、金庫や引き出し、タンスの中を確認してみましょう。金融機関の貸金庫に遺言書が預けられている場合もあります。公正証書遺言であれば、公証役場の公正証書遺言システムで検索可能です。
遺言書を発見した場合、家庭裁判所で検認(相続人の立ち会いのもと開封)する必要があるため、その場で開けてしまわないようにしましょう。
流れ3.法定相続人の確定
相続手続きでは、法定相続人を確定させましょう。法定相続人とは相続の権利を持つ人であり、似た言葉である相続人は実際に財産を相続する人を指します。法定相続人については民法によって決められており、遺言書に記載がある場合を除くと配偶者や子、親族に相続の権利が発生します。
遺言書がある場合はその内容に従って法定相続人を確定します。遺言書がない場合は法定相続人を把握するため、被相続人の戸籍・除籍謄本を取得して配偶者や血族の調査が必要です。被相続人に非嫡出子(隠し子)がいる場合は、被相続人が認知していれば法定相続人に該当します。
法務局に必要書類を提出すれば、被相続人の相続関係を一覧にした「相続情報一覧図」の作成が可能です。相続情報一覧図は相続関係の証明に使えるため、取得しておけば相続手続きがスムーズになります。
法定相続人は被相続人との関係から相続での優先度を表す相続順位が定められています。必ず法定相続人となる配偶者に続き、子または孫が第1順位、直系尊属(父母)が第2順位、兄弟姉妹または甥や姪が第3順位です。上の順位の相続人がいる場合、下の順位の人は法定相続人とはなりません。
流れ4.相続財産の確定
法定相続人が確定したら、次は不動産を含めたすべての相続財産を調べる必要があります。相続財産には不動産や預貯金といったプラスの資産だけでなく、借金や損害賠償といったマイナスの資産も含まれます。相続税が発生するのは、プラスの資産からマイナスの資産と被相続人の葬儀費用を差し引いた金額に対してです。
相続の開始から3カ月以内なら、家庭裁判所に相続放棄を申立てが可能です。相続財産にマイナスの資産が多い場合では、相続放棄するケースが多く見られます。ただし、相続放棄が認められるためには申立て前に財産を使っていないことが条件です。
相続放棄の申立てでは必要書類をそろえなくてはならないため、早めに取りかかる必要があります。また相続放棄すると、下の順位の法定相続人に相続の権利が移動する点は留意しておきましょう。
流れ5.書類の準備
相続の手続きはいつ取りかかってもよいわけではなく、前述した相続放棄や準確定申告、相続税の申告と納付などには期限が定められています。手続きに必要となる書類は多く、取得に時間がかかる可能性もあるため、早めに準備しておくことが重要です。
相続の手続きで必要となる主な書類は以下のとおりです。
- 被相続人の戸籍謄本(※亡くなった日付以降に取得したものが必要)
- 被相続人の住民票の除票
- 遺言書または遺産分割協議書
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人の印鑑証明書
- 相続人の住民票の写し(※相続人全員分が必要)
- 相続対象の不動産の登記事項証明書
- 不動産の相続人の住民票
- 固定資産評価証明書(※不動産の相続が発生する場合に必要)
流れ6.遺産分割協議
遺産分割協議とは、相続人の間で相続財産の分け方を話し合うものです。遺産分割協議書は相続人全員の署名と捺印があれば有効となるため、遺産分割協議では必ずしも相続人同士で直接顔を合わせる必要はありません。
遺産分割協議書には決められた様式はありませんが、「誰がどの財産をどのように相続するのか」について明記する必要があります。財産のうち土地や建物などの不動産については、登記簿謄本に記載されている名称で正確に記入してください。
遺産分割協議には法的な期限が定められていないため、相続人全員の協力がなければ手続きを進めていけません。他の相続人から協力を得られない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てれば調停委員会による中立的な立場から相続の調整、解決策の提案などを受けられます。
流れ7.相続不動産の名義変更
相続した不動産については、被相続人から相続人へ名義変更する必要があります。相続不動産の名義変更は司法書士や行政書士といった専門家に依頼する場合が一般的ですが、自分自身で手続きすることも可能です。名義変更に必要な事柄は以下のとおりです。
- 相続不動産の登記事項証明書を取得(不動産の登記事項証明書は法務局で取得できる)
- 必要書類の準備(相続不動産の名義変更で必要となる書類は、被相続人の戸籍・除籍・改製原戸籍や住民票の除票、相続人の住民票や相続人全員の戸籍謄本、固定資産評価証明書、相続関係説明図など)
- 登記申請書の作成と提出
必要書類と登記申請書をそろえて、相続する不動産の所轄の法務局に提出してください。提出方法は窓口での受け渡しの他、郵送でも可能です。提出書類に不備がなければ約1週間で登記完了証と登記識別情報通知書が交付され、名義変更が完了します。
流れ8.相続税の申告・納付
相続でプラスの資産を引き継いだ相続人は、相続開始から10カ月以内に相続税の申告と納付の手続きをする必要があります。期限までに申告しない場合は加算税が、期限までに納付を完了しない場合や、納付した税金が不足している場合は延滞税が課されるため、相続税は早く正確に収めましょう。
相続税は前述したとおり、プラスの資産からマイナスの資産と被相続人の葬儀費用を差し引いた金額にかかります。ただし、相続税の基礎控除額を超えない分に関しては、相続税が発生せず申告の必要もありません。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人数)(※)
※出典:国税庁「No.4152 相続税の計算」
【ケース別】不動産相続はどこに相談するべきか
相続の専門家は弁護士・司法書士・税理士・行政書士です。相続に関する業務でも、それぞれ対応できる業務と対応できない業務があるため、状況に応じて適した専門家に相談しましょう。
また、不動産を相続すると電話や手紙が送られてくることがあります。こちらに関してはダイヤモンド不動産研究所の以下コラムが参考になります。
不動産を相続すると、なぜ電話やDMが来るの? 調査方法は違法なのか、信頼できるのかを解説!
相続トラブルを抱えているケース
相続に関して親族とトラブルが生じている場合は、弁護士に相談する必要があります。相続人の間で起こる紛争解決を取り扱えるのは弁護士のみです。そのため弁護士ではない人が紛争への介入や交渉の代理を行うことは禁止されています。
紛争であるか否かの基準は、相続人の間で話し合いによる合意形成ができるかどうかで判断されます。相続財産の分け方について相続人同士で意見が食い違う場合は、紛争に該当する可能性が高いため、相談先としては弁護士が適しているといえるでしょう。
相続財産の分け方についての相談や、相続の手続きに非協力的な相続人がいる場合の調停・審判については、弁護士のサポートが受けられます。また弁護士は遺言書の検認や相続放棄、成年後見の手続きが可能ですが、一方で相続税申告や相続財産の評価や相続不動産の所有権移転登記などは取り扱えません。
また弁護士に相談した場合、その他の専門家に依頼するよりも相談料が高額になる傾向にあります。相続トラブルを抱えていないのなら、後述するその他の専門家に相談すると費用を抑えられる可能性が高いでしょう。
相続トラブルがないケース
相続トラブルがない場合は紛争に該当しないため、司法書士への相談が可能です。たとえば前述した不動産相続の名義変更では、法務局で所有権移転登記をする必要がありますが、登記申請の代理権のある司法書士に任せられます。
他にも司法書士は弁護士と同じく、裁判所での遺言書の検認や相続放棄、成年後見の手続きが可能です。一方で、司法書士は相続税の申告の代理や、相続財産の評価はできません。相続についての相談内容や、依頼したい業務が司法書士でも取り扱えるものならば、弁護士ではなく司法書士に任せることで費用負担を軽減しやすくなります。
相続税の申告について相談が必要なケース
相続税の申告について依頼したい場合は、税理士に相談する必要があります。相続税の申告は税理士または、国税局長に税理士業務を行う旨を通知した弁護士のみ取り扱うことができ、通常の弁護士や司法書士、行政書士には認められていません。その他にも、税理士は法定相続人の調査や相続財産の調査・評価、遺産分割協議書の作成が可能です。
税理士は税金の専門家ですが、必ずしも相続関連の業務について経験豊富とは限りません。税理士によってもそれぞれ得意分野が異なります。
税理士選び次第では相続に関する知識量の違いによって納税額に大きな差が出る場合も考えられます。相続の相談については、相続業務の実績が多い税理士に依頼するのがおすすめです。
不動産相続を相談する際のポイントと注意点
不動産相続を専門家に相談する際は、いくつか押さえておきたいポイントや注意点があります。相続の相談では遺言書の確認が最重要です。また、相続には期限がある点や行政書士では携われる相続業務に制限がある点は、相談する上で知っておきたいポイントです。
遺言書の確認は相続における重要事項
遺言書の内容確認は、相続における重要事項です。相続では被相続人の意思が尊重され、原則として遺言書は法定相続よりも優先されます。つまり、相続財産の分割は遺言書の記載内容に則って決定されます。
遺言書はどのようなものでも有効になるわけではありません。書き方によっては遺言書が法的に無効となる場合もあります。遺言書が有効となるか無効となるかの判断が難しい場合は専門家に相談しましょう。
遺言書を発見した場合、自己判断で勝手に開けてしまわないことが重要です。遺言書は個人で開封するのではなく、家庭裁判所で検認(相続人の立ち会いのもと開封)する必要があります。誤って開けてしまうと、法律違反として5万円以下の過料(行政上の罰金)を科される場合があるため注意が必要です。
相続には期限があるため早めの相談が大切
相続の手続きの中には期限が設けられているものもあるため、相続が発生したら余裕を持って相談しましょう。期限がある主な手続きは以下のとおりです。
期限 | 手続き | 手続きの詳細 |
---|---|---|
3カ月以内 | 相続放棄・限定承認 |
|
4カ月以内 | 準確定申告 |
|
10カ月以内 | 相続税の申告・納税 |
|
相続の手続きでは、相続人同士の関係や利害関係について調査しなければならないケースも考えられるため、時間がかかる可能性があります。相続は専門知識が必要となることからも早めに相談しておきましょう。
行政書士は不動産相続の手続きができない
弁護士・司法書士・行政書士・税理士は、それぞれ相続の専門家といえますが、一方でそれぞれ業務範囲に制限があります。行政書士は相続の相談を受け付けていますが、不動産登記や相続税の申告の手続きなどはできないため、不動産の相続に関する依頼を受けられません。行政書士が受け付けている主な業務は、相続財産の調査や相続人の戸籍謄本の収集、相続人関係説明図の作成などです。
相続について親族間での争いがある場合も行政書士では相談を受けられません。前述したとおり、紛争への介入が認められているのは弁護士のみです。
銀行は直接不動産相続の実務は行えない
銀行でも基本的に相続に関する相談を受け付けていますが、直接銀行が相続に関わる実務を行うことは認められていません。相続の手続きについて銀行に相談した場合、相続財産の整理に直接関わることになるのは銀行と提携している税理士や司法書士です。
相続について銀行に相談した場合は、税理士・司法書士・行政書士・弁護士と比べても高額の費用がかかります。また銀行に支払う費用とは別に、銀行提携の税理士や司法書士への報酬を請求されるケースもあります。銀行に相続の相談をする際は、料金について事前に確認しておきましょう。
不動産相続相談料の目安
不動産相続にかかる相談料の目安について解説します。
各事務所によって相談料は異なる
相続についての相談料には法的な取り決めや上限はありません。弁護士や司法書士といった士業の事務所は報酬を自由に決められるため、各事務所によって相続の相談料が異なります。手続きの代理といった実務を依頼する場合は、相談料とは別に費用の支払いが必要です。相続の相談をしたからといって、必ずしも実務を依頼する必要はありません。複数の事務所に相談し、比較検討してから依頼先を決めるという方法も可能です。
無料相談をしている団体もある
相続の相談を無料で請け負っている団体もあります。たとえば、地方公共団体(自治体)や士業の職業団体は、無料相談の受付を実施している場合があります。無料相談の際は相談内容にあわせて相談先を選ぶようにしてください。
遺産分割協議書の作成を始めとする書類の作成や収集については、行政書士による無料相談が適しています。相続税に関してなら税理士に相談するとよいでしょう。名義変更といった不動産関連の手続きについては司法書士への相談がおすすめです。
ただし無料相談ではすでに弁護士に依頼している案件や、調停中の案件については受け付けていません。また無料相談は時間制限が設けられている場合が多く、回答も一般的なものとなる傾向にあります。
相続した不動産の価値を調べて活用する方法
相続した大切な不動産は価値をきちんと把握し、うまく活用することが重要なポイントです。ここからは不動産の価値の調べ方や、活用の方法についてそれぞれ解説します。
一括査定サービスを利用して価値を調べる
不動産の一括査定サービスとは、Webサイトで一度情報を入力するだけで複数の不動産会社による査定が受けられるサービスです。不動産の相場を把握するためには、複数の不動産会社による査定を比較検討しなければなりませんが、複数の不動産会社に対して1つ1つコンタクトをとっていると時間も労力もかかります。
不動産の一括査定サービスを利用すれば複数の不動産会社から見積もりを一度に受けられます。不動産サービス総合比較サイト「リビンマッチ」なら、無料で最大6社の不動産会社から査定結果をもらえて比較検討が可能です。相続した不動産の価値を知っておけば最大限活用できます。
相続不動産の活用方法
相続不動産について誰も住まない場合や使う予定がない場合、活用していないにもかかわらず維持管理のコストや固定資産税がかかり、経済的な負担が大きくなりやすいです。不動産の活用方法の例には、住居を住みたい人に貸し出したり、駐車場やコインランドリーの経営をしたりするケースが挙げられます。相続した不動産は経営に活用して、手放さずに収益につなげるのも選択肢の一つです。
ただし不動産を活用して収益を生み出すためには、初期投資が必要です。費用を投じても利用者が見つからなければ収支がマイナスとなってしまう可能性もあるため、不動産の活用は慎重に検討しましょう。
不動産の相続に関するよくある疑問
ここからは、不動産の相続に関するよくある疑問について回答します。
遺言書に不満がある場合はどうしたらよいでしょうか
遺言書は被相続人の意思を尊重するための手段ですが、その内容のすべてがそのまま相続財産の分割に反映されるわけではありません。民法によって法定相続人の最低限の権利が遺留分として保障されています。
相続の遺留分を有するのは、被相続人の配偶者や子または孫、直系尊属です。各人の遺留分は法定相続人の人数によっても異なります。たとえ遺言書で相続財産の分割について指定されていても、遺留分を有する相続人は相続の権利を主張できます。
相続した不動産のローンの残債に支払い義務がありますか
相続ではプラスの資産だけでなく、マイナスの資産も引き継ぎます。マイナスの資産であるローンの支払い義務についても、不動産を相続した場合にはセットで引き受けなくてはなりません。
ただし被相続人が住宅ローンを借りていたなら、多くの場合では団体信用生命保険にも加入しています。団体信用生命保険とは契約者が死亡・高度障害などを理由に住宅ローンを支払えなくなった場合、残りの返済を免除される保険です。被相続人が団体信用生命保険に入っていれば、死亡時に住宅ローンの支払い義務もなくなります。
まとめ
不動産を相続した場合は現金や有価証券と異なり、維持費用がかかります。また収益を生むためには不動産を活用する必要がありますが、初期投資が必要となりリスクも生じるでしょう。相続した不動産は活用するだけでなく、売却することでも相続人の利益を増やせます。
相続した不動産を活用する場合でも売却する場合でも、不動産の正確な価値を把握しておきましょう。不動産の一括査定サービスで複数の査定を比較すれば相続した不動産の相場を把握できます。
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この記事の編集者
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