子供のためにしたい「お金の残し方」|あると喜ばれるお金や注意点とは
子供とずっと一緒にいられればよいですが、寿命から考えれば親は子より先に亡くなるものです。「自分がこの世を去っても、子供が十分に暮らしていけるように」と考えたとき、ある程度のお金を残してあげたいと思うことでしょう。
そんな子供思いの方へ子供のためにお金を貯める方法や、何目的のお金が必要とされているのか解説します。
もくじ
子供のためにしたい「お金の残し方」
子供のためにお金を残したいという思いは、多くの親が持っています。とくに子供が障害児である場合などは、親亡き後も子供が生活に困らないようにしたいのが親心です。
ここでは、子供のためにお金を残すための方法について解説します。
自分名義でお金を貯金しておく
預貯金として子供にお金を残す場合、子供名義ではなく自分名義で貯金しておいたほうがよいでしょう。
理由は以下のとおりです。
- 子供名義の口座にすると名義預金と判断されやすい
- 被相続人と口座名義人が異なるため相続税の申告が漏れやすい
名義預金とは被相続人が子供名義で銀行口座を開設し、その口座にお金を積み立てていくことです。名義預金と判断された場合、そのお金は被相続人の死後、相続税の対象となります。
また、子供名義にした場合は口座の名義人と実際の持ち主が異なるため、そのお金の存在を子供が把握していなければ相続税の申告が漏れてしまうおそれがあります。
相続税の対象であるにもかかわらず申告しなかった場合、ペナルティとして通常よりも多く相続税を支払わなければなりません。
しかし自分名義の口座であれば、申告漏れは起こりにくいでしょう。相続税の基礎控除額の範囲内であれば、相続税もかかりません。
相続税の基礎控除額の範囲内のお金、つまり3,000万円+(法定相続人の数×600万円)におさまるお金を、自分名義で貯めておくとよいでしょう。
持ち家を売却して、資金化しておく
持ち家を売却して資金化しておくのも、子供のためにお金を残す方法のひとつです。持ち家を資金化せずそのまま残した場合、状況によってはかえって子供の負担になる心配があるためです。
生前に売却したほうがよい主な理由は、以下のとおりです。
- 遺産にかかる基礎控除額が引き下げられたことで、不動産が課税対象となるケースが増えている
- 親の死後、親名義の持ち家を売却するには相続登記をする必要がある
遺産にかかる基礎控除額は、平成27(2015)年より前は「5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)」と定められていましたが、改正により大幅に引き下げられました。
そのため平成27年1月1日以降に発生した相続については、改正後の基礎控除額である「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」が適用され、改正前よりも相続税がかかる可能性が高くなっています。
また、親の死後に親名義の持ち家を売却する場合は相続登記が必要です。売却しない場合でも、令和6(2024)年4月1日以降に相続が発生した不動産は3年以内の相続登記が義務化されるため、どちらにせよ相続登記は必須です。
なお、正当な理由なく相続登記を怠った場合、10万円以下の過料を支払う必要があります。
特に、将来親名義の持ち家に子供が住む可能性が低い場合は、生前の売却を検討したほうがよいかもしれません。めんどくさい相続登記も親が責任を持って済ましておけば、子供の負担も減ります。
贈与税や相続税対策をする
贈与税と相続税、両方の対策として有効なのが暦年贈与を活用する方法です。
贈与税には110万円の基礎控除があり、1年間で贈与を受けた財産の合計が110万円以下であれば贈与税がかかりません。この仕組みを使って行う贈与を暦年贈与といいます。
たとえば120万円を贈与した場合、120万円から110万円を引いた残り10万円に対して税金がかかりますが、贈与額が110万円の場合は贈与税がかかりません。
つまり、110万円を年に一度、10年にわたって贈与し続けた場合は、贈与税をかけることなく1,100万円が贈与できるのです。うまくいけば相続財産を減らすことにもつながります。
ただし、毎年同じ時期に同じ金額を贈与してしまうと、はじめから多額の贈与を予定していたとみなされます。贈与の時期や金額がワンパターンにならないよう注意が必要です。
また、本人の意思で贈与を行ったことや、いつ誰から誰に対していくら贈与を行ったかを客観的に証明する方法として、贈与契約書を作成しておくとよいでしょう。
そのほか、相続開始前3年以内に行われた贈与に関しては、相続税がかかることも覚えておきましょう。また、「令和5年度(2023年度)税制改正大綱」によって、2024年1月1日以降は段階的に相続税がかかる贈与期間の延長が確定しています。
最終的には、最短で2031年1月1日以降の相続から、相続開始前7年以内に行われた贈与に対して相続税がかかるため、注意しましょう。
暦年贈与で子供にお金を残すなら、自分が元気なうちから早めに始めることが大切です。
生命保険の加入など、長期的な資産形成を行う
子供にお金を残す方法のひとつとして、生命保険を使った贈与が挙げられます。生前贈与でお金を残すと子供がお金を使い込んでしまう心配もありますが、生命保険であれば自分が死亡するまで使い込まれる心配がありません。
このとき契約者を自分(親)にしてしまうと「みなし相続財産」に該当するため、子供が受け取った保険金に対して相続税がかかります。しかし、子供を契約者にしておけば相続税の対象から外れます。
死亡保険金にも税金はかかりますが、一時所得として扱われるため通常の半分程度の所得税で済みます。そのほか不動産投資やNISA(ニーサ、小額投資非課税制度)など、長期的に資産形成をしておくのもおすすめです。
教育費用の積立制度に加入する
教育費用を積み立てて子供にお金を残すのも、一般的な方法です。
- 定期預金
- つみたてNISA
- 児童手当
- 学資保険
それぞれ解説します。
定期預金
預入期間を決め、満期までコツコツ積み立てていく方法です。給料日などの決まった日に、一定の金額が口座に振り込まれるようにしておけば、意識せずとも勝手に貯まっていきます。
また、定期預金にしておけば気軽に引き出せないため、途中で使い込んでしまうことも防げます。元本割れの心配もありません。
つみたてNISA
つみたてNISAは、少額から気軽に始められる積立投資です。
コストをかけずに投資でき、通常は投資で利益があった場合にかかる税金も、つみたてNISAであれば20年間かかりません。長期的な積み立てに適しています。
児童手当
0歳から中学校卒業まで支給される児童手当を、自主的に積み立てていくのもよいでしょう。支給額は所得によっても異なりますが、児童手当を一度も使うことなく貯め続けた場合、総額で約200万円になります。
生活費のあてにしてしまうとなかなか貯まりませんが、はじめからないものと思って貯めていくと、意外に貯められるものです。
学資保険
学資保険は、毎月支払う保険料を貯蓄していくタイプの保険商品です。預貯金の場合はほとんど利息がつかず、預けた金額以上には増えません。
しかし、学資保険であれば返戻率が100%を超えるケースが多いため、預貯金よりも多く受け取れる可能性があります。
また、保険商品であるため、さまざまな保障がついています。満期を迎えるまでに親が死亡した場合も、その後の支払いが免除されたり一定の保険料が支払われたりといった保障はメリットといえるでしょう。
注意!子供がお金を手にするタイミングが重要
子供がお金を手にするタイミングはいつでもよいわけではありません。たとえば、ビル・パーキンス氏の著書「DIE WITH ZERO(ダイウィズゼロ)」(ゼロで死ね)には、子供に財産を与えるタイミングは26〜35歳がもっとも適していると記されています。
26〜35歳にお金を渡すのがよい理由は、若すぎても資産管理が難しく、逆に老いてしまってからではせっかくお金があっても、何かを楽しむための体力や健康を失っている心配があるためです。
たとえば、20~30代で子供を授かり80歳で亡くなったとします。その場合、自分たち親が亡くなった時点の子供の年齢は50〜60代です。親子の年齢が大きく離れていなければ、60代以上の年代で相続する可能性もあります。それでは遅いというのがDIE WITH ZEROの考え方です。
また、内閣府の「子どものいる世帯の年齢層別消費支出」の調査結果によると、子供のいる世帯の子育て費用のピークは子供が18~21歳のときです。自分の子供が30歳で子供(親から見た孫)を授かっていたら、子供が48歳~51歳のときにもっとも子育て費用がかかる計算です。
その場合、孫の大学の学費や仕送りなどにお金を使ってもらうには、遅くとも子供が48歳~51歳までにまとまったお金を受け取れるようにすれば、子供も孫も助かるでしょう。
死後、子供は親のために金銭的負担を払う!残しておくと喜ばれるお金
親の死後、子供は親の葬儀費用や相続登記費用など、親のためにさまざまな負担を強いられます。
ここでは、残しておくと喜ばれるお金について解説します。
教育資金
子供のために残しておくと喜ばれるお金といえば、教育資金が挙げられます。子供1人を大学まで行かせようと思ったら、幼稚園から大学まですべて公立だった場合でも1,000万円を超える費用がかかるためです。
進路によっては予想外に大きな費用がかかるため、学費はネックになりやすい問題です。中には希望の進路に進めない人や進学そのものを諦めてしまう人もいるため、資金を残しておくと喜ばれるでしょう。
通常、110万円を超える贈与を行うと贈与税がかかりますが、「教育資金の一括贈与」の制度を利用すれば、最大1,500万円まで非課税での贈与が可能です。
なお、「教育資金の一括贈与」の制度を利用するには、以下のような要件を満たす必要があります。
- 受贈者が贈与者から見て30歳未満の子供や孫であること
- 受贈者の前年の所得が1,000万円を超えていないこと
- 贈与者が受贈者から見て祖父母や父母であること
なお、教育資金の一括贈与は2023年3月末まで利用できる制度でしたが、2023年の税制改正によって2026年3月末までに延長されました。
結婚資金
結婚資金も自分たちで用意するとなると負担が大きく、統計情報リサーチの「結婚式費用の平均額と統計分布」によると結婚式費用の平均額は316.2万円です。
結婚式の規模やゲストの数にもよりますが、その中でも約50〜150万円が自己負担額の相場といわれています。これは、式場に支払う費用であるため、新婚旅行や新居のための費用なども含めると費用は大きく膨らみます。
しかし親からの援助があれば、そのぶん思い出に残るよい式を挙げ、不安のない新婚生活をスタートさせられるでしょう。
結婚資金に関して300万円まで非課税で贈与できる「結婚・子育て資金贈与の特例」という制度も存在しますが、結婚資金に関しては、そもそも贈与税の対象にならないケースが多く、あまり利用されていません。
親だけで暮らしていけるだけの介護費用
子供からすると、親だけで暮らしていけるだけの介護費用はぜひとも残しておいてほしいものでしょう。
自分たちの生活に加え、親の介護費用も負担しなければならないとなると、あまりにも負担が大きいためです。
公益財団法人生命保険文化センターが行った調査によると、介護をするにあたって一時的に必要となる費用は平均74万円、月々の費用は平均8.3万円という結果が出ています。(参考:公益財団法人生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」)
また、介護期間の平均は5年1カ月ということから、1人あたり約580万円(一次的な介護費用74万円+月々の介護費用約506万円)必要であるとわかります。夫婦2人分の場合、1,000万円では足りません。子供に負担をかけないためにも、介護費用はぜひ確保しておきたいところです。
お墓の購入費用
全国優良石材店の会による「2019年お墓購入者アンケート調査」によると、全国におけるお墓の平均購入価格は160.7万円でした。
このように、お墓は決して安いものではありません。そのため、すべて子供に負担させるのは酷でしょう。
存命のうちに自分でお墓を用意する「生前墓」というものもあるため、早めに検討しておくのもひとつです。
葬儀費用
葬儀費用をあらかじめ用意しておくと、子供にかかる負担を減らせます。葬儀はある程度予想できる場合もありますが、予期せぬタイミングで訪れることも珍しくありません。
その場合は短期間で葬儀費用を工面しなければならず、何も備えがなければ大きな負担がかかります。
葬儀にかかる費用は、宗派や依頼する葬儀場によって異なりますが、一般的に葬儀料一式と飲食代、火葬代で120万円程度です。(参考:経済統計局「2020 年基準改定における冠婚葬祭サービス価格の把握について(案)」)
そのため、葬儀費用としては平均相場の120万円程度を目安に残しておいたほうがよいでしょう。
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持ち家に子供が住まないなら、生前に売却して資金化が吉
子供にお金を残す際に有効な方法は、持ち家の売却です。数千万円で購入した持ち家は、売却すればある程度のお金になります。現金化したお金は、子供が必要なタイミングで渡せますし、遺産として残すことで将来に役立ちます。
持ち家の売却によって得られる資金は、子供の将来の教育費や結婚費用、起業資金などに活用できます。また、現金化することで子供にとってより柔軟な選択肢が生まれ、子供自身のキャリアアップにもなります。
家を所有しているかぎり、定期的なメンテナンスや修繕管理に加え、固定資産税や都市計画税などの支払いが続きます。子供に相続される場合は相続登記もしてもらう必要があり、何かと負担です。
そこで、持ち家を売却して住み替える際は、不動産の一括査定サイトリビンマッチの利用がおすすめです。完全無料で最大6社から「持ち家がいくらで売れるか」査定してもらえます。
査定金額を確認し、子供のために持ち家を売却すべきかどうか検討してみましょう。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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