住宅ローン返済中に転勤が決まった!家は空き家・賃貸・売却のどれが正解?
住宅ローンの返済中に転勤が決まった場合、家をどうすればよいのでしょうか。空き家にして戻ってくるまで所有だけするのか、賃貸として貸し出すのか、はたまた思いきって売却するのかは判断が難しいところです。それぞれメリットとデメリットがあり、環境や条件などによって適切な選択肢は異なるでしょう。
また、転勤によって住宅ローン控除を受けられない可能性もあります。
住宅ローン返済中に転勤が決まったら家をどうするか、何に注意すべきか、一つひとつ問題を見ていきましょう。
もくじ
転勤に伴い住宅ローン返済中の家はどうする?
転勤が決まったとき、住宅ローン返済中の扱いについては、以下3つの選択肢があります。
空き家にする | 賃貸に出す | 売却する | |
---|---|---|---|
メリット | 賃貸に出したり売却したりする手間がかからない |
|
|
デメリット | 防犯上のリスクや建物の価値低下のリスクがある |
|
|
向いている人 | 転勤が短期間であることが確定している人 | 将来的に家を取り戻したい人 | 管理の手間や時間をかけたくない人 |
転勤で空き家にするのはリスクが高い
1年後に転勤先から戻ってくることが確定しているのであれば、空き家という選択肢もあります。しかし、空き家にすると、さまざまなリスクがあるため、あまりおすすめできません。
- 不審火や泥棒
- 戸建てであれば不法投棄の被害
- 水道を使用しないことによる水道管の劣化
- 空気循環が不十分なため湿気によるカビの発生
このように、防犯上のリスクや、いわゆる「部屋が傷む」という問題があります。
また、住宅ローン控除の対象外になったり、そもそも金融機関から一括返済を迫られたりするリスクなどがあります。そのため、転勤が短期間であることが確定している場合を除き、空き家にするのは有効ではないのが実情です。
賃貸に出す
管理の手間を考えると、売却するのがよいように感じますが、1年、2年で戻ってくる可能性もあるのなら、賃貸に出すことも検討できます。
賃貸に出すメリットとデメリット
賃貸に出す一番のメリットは、家を手放さなくて済むことです。気に入って買った家を維持したまま、いつかまた住める可能性を残せます。
また、賃貸物件として家賃収入を得られるのも魅力です。これにより、転勤先の住まいと今の家で発生する二重の費用負担を軽減できます。
一方で、思うように入居者が見つからず、想定したとおりの家賃収入が得られないリスクもあります。また、賃貸物件としての管理が必要なため、いままでは生じなかった手間がかかってしまいます。
何より、住宅ローン返済中だった家を賃貸に出すには、次にお伝えするように、ローンの借り換えや契約内容の変更が必要です。その結果、金利負担が増すなどのデメリットも考えられます。
賃貸に出すときの注意点
大前提として、住宅ローン返済中の家を住宅ローンの貸し手である金融機関の許可なく賃貸には出せません。
住宅ローンは、原則、自己の居住用物件の購入資金の貸し付けと決まっています。住宅ローンを組んで購入した家を、収益物件にするのはそもそも契約違反です。
では、住宅ローン返済中の家は賃貸に出せないのかというと、そうともいえません。方法としては2つあります。
- 金融機関の許可を得て賃貸に出す
- ローンを借り換える
転勤などやむをえない事情がある場合は、金融機関に相談すれば認められる可能性があります。無断で賃貸に出すと一括返済を求められるおそれもあるため、必ず相談しましょう。
そのうえで、いまの住宅ローンのままで賃貸に出せない場合は、賃貸物件でも利用できる不動産投資ローンなどへ借り換えます。
この場合、借り換えに伴って手数料などの諸費用がかかるほか、住宅ローンより金利が高いため、返済の負担も増してしまいます。また、住宅ローン控除も受けられなくなることにも注意しましょう。
賃貸に出す流れ
ではどのような手順で賃貸に出せばよいのでしょうか。
まずは、前述したように、現在の住宅ローンを組んでいる金融機関と相談します。
ローンの借り換えが必要なら、手続きを行いましょう。同じ金融機関の不動産投資ローンなどに借り換えられるのならよいですが、場合によっては別の金融機関を利用する必要があるかもしれません。借り換えにあたっては審査もあるため、早めの対応をおすすめします。
また、転勤先に引っ越したあと、遠方から物件の管理や入居者対応を行うのは簡単ではありません。必要に応じて、管理会社に依頼しましょう。管理委託費を支払ってでも、管理会社に依頼したほうが手間を抑えられます。
なお、入居者との契約内容にも注意しましょう。転勤が終わったあとにいずれ戻るつもりなら、入居者との契約期間に明確な期限を設定できる定期借家契約がおすすめです。定期借家契約以外であれば、戻りたいときに退去してもらえないというリスクがあります。
売却する
思い切って家の売却を検討するのもおすすめです。
売却するメリットとデメリット
家を売却して住宅ローンの残高を清算できれば、返済の負担から解放されます。
また、賃貸に出した場合に生じる物件管理の手間もかかりませんし、シンプルな解決法といえるでしょう。売れた額によっては、手元に資金が残るのも魅力です。
一方、すぐに売れなかった場合、その間は新たな住まいの費用と住宅ローン返済で二重の負担があります。
また、売却代金で住宅ローン残高をすべて返済できなかったら、自己資金の持ち出しが必要かもしれません。売却するなら、いかにスムーズに高い金額で売れるかがカギといえます。
売却するときの注意点
家を売却するとき、何より注意したいのが売却代金で住宅ローンを完済できるかどうかです。
売却価格が住宅ローン残高を下回る状態をオーバーローンといいます。売却代金だけでは完済できないため、自己資金を持ち出したり、別のローンで足りない分を借り入れるなどの対処が必要です。
また、オーバーローンの場合、貸し手である金融機関の許可なく勝手には売却できません。事情を説明したうえで許可を得てから売却する必要があります。これを任意売却といいます。
通常、住宅ローンが返済できなくなったとき、金融機関によって強制的に家を競売にかけられます。
競売に対して、任意売却は一般的な不動産取引の方法で家を売ります。競売よりも高い金額で売れるため、転勤のため売らざるを得なくなったといったときは任意売却を行うのが一般的です。
ちなみに、売却価格が住宅ローン残高を上回る状態のことをアンダーローンと呼びます。この場合は手元に利益が残るので、よりよい状態で売れたと考えられます。
売却する流れ
住宅ローンが残っている家を売却したい場合、最初に行うのは査定です。
売却自体は金融機関の許可が必要ですが、金融機関も家がいくらで売れそうなのかという情報がなければ判断できないので、最初にその予測を行います。
査定は複数の不動産会社に依頼するのがよいでしょう。そのうえで1社を選び、売却のサポートを受けます。
任意売却の場合は金融機関に申し入れて売却の許可を得ます。
あとは販売活動を行い、内見などの買主候補の対応、話がまとまったら契約、金融機関での手続き、引き渡し、といったプロセスを行います。
住宅ローン返済中に転勤が決まったときにすべきこと
返済中の住宅ローンがある人が転勤が決まったときにまずすべきことを紹介します。
忘れがちだけど金融機関に相談が必要
家を所有している会社員が転勤を命じられた場合、以下のように考えるべきことがたくさんあります。
- 家族を連れて行くのか、単身赴任するのか
- 家を空き家にするのか、賃貸に出すのか、売却するのか
- 新しい住居をどうするのか
考えるべきことの中で、住宅ローンを借り入れている金融機関へ相談することが、失念されがちです。正確には、転勤する際に金融機関へ相談が必要と思っていないケースが、ほとんどではないでしょうか。
金融機関と締結している住宅ローン契約書の条項に「本人または家族が生活する家に限る」や「本人が住むための家に限る」と記載されている場合は、単身赴任または住宅ローンの一括返済が必要です。
とはいえ、転勤を命じられた結果、仕事を辞めるか住宅ローンを一括で返済するかの選択を
家を査定して計画を立てる
転勤に伴い家をどうするのかは、多くの人が悩む問題です。さまざまな選択肢を持つことが重要なため、早い段階で査定依頼をするとよいでしょう。
不動産の一括査定サイト「リビンマッチ」を利用すると、一度の手間で複数の不動産会社から査定結果を無料で受け取れます。現在の不動産市場は高騰傾向にあるため、思いもよらない高額査定をされるかもしれません。
このような可能性を探っていくことが、転勤における家の問題を解決するために重要な手段なのです。
住宅ローン控除を受けられない可能性がある
住宅ローン控除は、正式には「住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除」といい、住宅ローン減税とも呼ばれます。住宅ローンを利用して住宅を購入したり、新築したりすると、一定期間、所得税や住民税が控除されます。
住宅ローン控除の金額は、入居した年度、また住宅の評価基準などにより異なります。
古くは1972年に制定された「住宅取得控除」が始まりで、当初は購入後3年間にわたって購入金額の1%にあたる税金が控除されました。現在の制度では、借入額の0.7%が13年間にわたり控除されます。
住宅ローン控除を受けている人は、転勤によって受けられなくなる可能性があるため注意が必要です。
単身赴任か家族を転勤先に連れていくかで異なる
住宅ローン控除の制度が適用される要件は、以下のとおりです。
- 控除を受ける世帯が引き渡し日または工事完了日6カ月以内に自ら居住する
- 住宅ローンの借入(返済)期間が10年以上である
- 控除を受ける人の所得が2,000万円以下である
- 対象の住宅の床面積が50平方メートル以上かつ2分の1以上が自身の居住用(店舗などではない)である
- 長期譲渡所得の課税特例などを居住した年を起点として前後2年、計5年間適用されていない
簡単に言い換えると、「2,000万円以上の給与を受けておらず、50平方メートル以上の家を購入し、10年以上のローンを組んだあと、速やかに入居している人」が対象です。
そのため、転勤をした場合、家に本人が住んでいないため原則として住宅ローン控除を受けられません。ただし、単身赴任で家に家族が住んでいる場合は、住宅ローン控除を引き続き受けられます。
住宅ローン控除の金額例
たとえば、2023年に居住した長期優良住宅※1または低炭素住宅※2であれば、以下のどちらか安いほうの金額が税金から控除されます。
- 借入限度額5,000万円 × 0.7%=35万円
- 住宅ローン残高 × 0.7%
たとえば、2023年に居住した長期優良住宅で年末の住宅ローン残高が4,000万円の場合、控除額は以下のとおりです。
住宅ローン控除額=4,000万円 × 0.7%=28万円
参考:国税庁「No.1213 認定住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)」
この控除が転勤によってなくなるのは、家計にとって負担が大きいでしょう。
2016年を起点として取り扱いが異なるので注意!
住宅ローン控除は、2016年4月の制度改正前とあとで決定的に異なる点があります。
それは、住宅ローン控除を受ける人が「居住者(日本で生活する人)」から「個人」に変更されたことです。2つの決定的な違いは、海外への単身赴任により、家族が住むことで住宅ローン控除の対象となるのかどうかです。
2016年4月1日以降に住宅ローンを組んで家を購入した場合、海外への単身赴任で海外に行く場合でも住宅ローン控除の対象です。しかし、それ以前の場合、海外赴任は対象外になる点に注意が必要です。
住宅ローン返済中の転勤に関するよくある質問
- 住宅ローン返済中に転勤が決まったら何をすればよい?
- 金融機関と締結している住宅ローン契約書の条項に「本人または家族が生活する家に限る」や「本人が住むための家に限る」と記載されている場合は、単身赴任または住宅ローンの一括返済が必要です。ただし、金融機関もある程度の配慮をする傾向にあるため、転勤が決まったら必ず金融機関に相談しましょう。また、住宅ローン控除を転勤によって受けられなくなる可能性があることを理解しておきましょう。
- 転勤に伴い住宅ローン返済中の家はどうする?
- 賃貸として貸し出すのか、空き家にして戻ってくるまで所有だけするのか、もしくは売却するのかを検討する必要があります。どの選択肢も一長一短であり判断が難しいですが、空き家や賃貸として維持する場合は、管理の手間や時間がかかるため、思い切って売却を検討するのもおすすめです。
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