高低差のある土地の評価は低い?相続税評価額の計算方法や売却戦略
高低差のある土地は利用価値が低いとみなされ、税制上の評価額が平たんな土地よりも低くなることがあります。また、土地の条件によっては、売買取引においても影響があります。
高低差のある土地の評価をケース別に詳しく解説します。
もくじ
高低差のある土地は評価が低い?
高低差のある土地はどのような特徴があるのでしょうか。税制上の評価方法やメリットとデメリットなどを詳しく解説します。
高低差のある土地の種類
高低差のある土地には、以下のようなさまざまな種類があります。
- 1筆の土地そのものが傾斜地
- 道路より地盤が高い(または低い)
- 周辺全体が傾斜地のため宅地造成※した結果、高低差がある
- 自然の地形ががけ地で、道路や隣地との境界に高低差がある
このように、自然の地形が平たんではなくある程度の高低差が生じてしまうケースや、宅地造成の結果で高低差が生じるケースもあります。
一般的に、不動産査定では、高低差の程度や土地の形状、周辺との状況など、その土地が持つメリットとデメリットを加味して、利用面を考慮したうえで評価をします。
高低差のある土地のメリット
高低差のある土地のメリットは、周辺よりも高い土地と低い土地の2つのケースで異なります。
周辺よりも高い土地
周辺の土地や道路よりも高い土地は、造成住宅地などで多く見られますが、以下のようなメリットがあります。
- 眺望や採光、プライバシーなどの面がよい
- 浸水や洪水など災害による被害が少ない
特に、高台や斜面地など、もともとの地形により周辺よりも高くなった土地の眺望のよさは、資産としての高い評価を受ける可能性があります。
周辺よりも低い土地
周辺よりも低い土地は、宅地造成ではなく、自然の地形によるものや道路整備などの結果生じるケースが多いです。
低い土地は、以下のメリットがあります。
- 周辺に建つ建物が高くなる傾向になり、強風時は周辺の建物が風除けになる
- 道路よりも地盤が低い場合は一般的に価格が相場より下がり、購入者にとっては安く取得できる
多くの人が感じるメリットではなく、限られた需要に対するメリットと考えるとよいでしょう。
高低差のある土地のデメリット
高低差のある土地を利用する際は、次のようなデメリットに十分な注意が必要です。
盛土 の場合は地盤の強度が低く、地盤改良などが必要- 土砂災害の危険がある
- 周辺より低い場合は、水害などの被害が大きい
- がけ条例の適用を受ける場合は、建物を建てられる範囲が限定される
また、デメリットといっても、以下のような点なら、人によっては許容できるかもしれません。
- 道路からのアプローチに費用がかかる
擁壁 ※の設置などで費用がかかる- バリアフリーにできない
高低差のある土地を利用するときは、土地の状態をしっかりと確認することが大切です。
地盤が高い土地は一定の需要がある
高低差のある土地は、平たんな土地よりも購入を検討する人が少ない傾向にあります。しかし、土地の状況によっては需要が見込まれる場合もあります。
高低差のある土地の需要として考えられるのは、前述したような高低差のある土地のメリットが評価される場合です。
- 眺望、採光、プライバシーなどの面がよい
- 浸水や洪水など災害による被害が少ない
典型的な例では、街並みを見渡せる住宅地は高級住宅地として地価が高いケースがあります。また、津波や洪水の危険の高いエリアでは、道路よりも地盤の高い土地を求める人が多いでしょう。
なお、周辺よりも地盤が高い土地には一定の需要がある一方で、地盤が低い土地はほとんど需要がありません。
評価額の「がけ地補正」とは
がけ地補正とは、一般的に急斜面の土地の利用価値は低いとして、決められた補正率を掛けて評価額を下げるものです。
高低差のある土地は、相続税評価額※1と固定資産税評価額※2を計算する際、がけ地補正が適用されるケースがあります。
相続税評価額のがけ地補正
相続税の場合、所管する国税庁のがけ地補正を適用すると、高低差のある土地の評価額を次の式で求められます。
がけ地補正率は、以下のように土地の総面積に対するがけ部分の割合と、がけのある方位によって細かく定められています。
土地の総面積に対するがけ部分の割合 | がけのある方位 | |||
---|---|---|---|---|
南 | 東 | 西 | 北 | |
0.10以上 | 0.96 | 0.95 | 0.94 | 0.93 |
0.20 | 0.92 | 0.91 | 0.90 | 0.88 |
0.30 | 0.88 | 0.87 | 0.86 | 0.83 |
0.40 | 0.85 | 0.84 | 0.82 | 0.78 |
0.50 | 0.82 | 0.81 | 0.78 | 0.73 |
0.60 | 0.79 | 0.77 | 0.74 | 0.68 |
0.70 | 0.76 | 0.74 | 0.70 | 0.63 |
0.80 | 0.73 | 0.70 | 0.66 | 0.58 |
0.90 | 0.70 | 0.65 | 0.60 | 0.53 |
参考:国税庁「奥行価格補正率表(昭45直資3-13・平3課評2-4外・平18課評2-27外・平29課評2-46外改正)」
がけ地等で通常の用途に供することができないと認められる部分を有する宅地(中略)の価額は、その宅地のうちに存するがけ地等の部分ががけ地等でないとした場合の価額に、がけ地補正率を乗じて計算した価額によって評価します。
たとえば、以下の図のようながけ地で計算してみましょう。
- 通常の宅地の相続税評価額:1億円
- 土地の総面積:300平方メートル
- がけ部分の面積:100平方メートル
- がけのある方位:東
この場合、土地の総面積に対するがけ部分の割合は、以下のように計算できます。
土地の総面積に対するがけ部分の割合=100 ÷ 300=約0.33
0.30以上のため、がけ地補正率表から、がけ地補正率が0.87だとわかります。
相続税評価額=1億円 × 0.87=8,700万円
がけ地があることで、1,300万円も評価額が下がります。
固定資産税評価額のがけ地補正
一方、固定資産税のがけ地補正は国税庁と異なります。方位による違いはなく、単純にがけ部分の割合に応じて地方公共団体(自治体)ごとに補正率が決まっています。
たとえば、東京都の場合は、以下のように定められています。
区分 | 土地の総面積に対するがけ部分の割合(%) | ||
---|---|---|---|
20%以上50%未満 | 50%以上80%未満 | 80%以上 | |
傾斜地 | 0.90 | 0.75 | 0.60 |
急傾斜地 | 0.75 | 0.60 | 0.50 |
参考:東京都主税局「令和3基準年度 画地補正率表」
がけ地補正の結果が査定に影響する可能性も
がけ部分の面積が大きくなると補正率が高くなり、路線価や固定資産税評価額も大きく低下します。
不動産査定では、路線価や固定資産税評価額も考慮して査定価格を算出する場合、ある程度がけ地補正の結果が反映される可能性があります。
ケース別!高低差のある土地の売却における評価の考え方
土地の価格を評価するうえで、高低差はひとつのポイントです。高低差がメリットとして評価される場合は、その土地の価値が高くなり、有利な条件で売却できる可能性が高いです。
一方で、高低差のある土地は平たんな土地よりも利用上の障害が多く、税制上平たんな土地と同等に扱うことに不公平感が生まれます。つまり、所有や利用をする立場からは、相続税や固定資産税が平たんな土地よりも軽減されるほうが望ましいといえます。
高低差のある土地を売却する場合は、ケース別にどのような評価がされるかを想定し、売り出し価格を検討しましょう。
造成宅地の評価
宅地造成された高低差のある土地を売却する場合、道路や隣地との高低差がある部分がどのようになっているかを確認します。
具体的には、以下の2点を確認しましょう。
法面 ※の勾配が30度以下か擁壁 があるか
しかし、
また、売却ができたとしても、購入者は
このような値引き交渉においては、条件によって幅がありますが、約10万〜200万円の値引きを求められる可能性があります。
道路より低い土地の評価
道路より低い土地には、次の2つのケースがあります。
- もともとの地形がその状態だった
- あとから行われた道路整備により道路のほうが高くなってしまった
道路に面しているとはいえ、道路からのアクセスは悪いうえ、高低差が大きいと利用方法が限られます。売却する場合、その土地の相場価格よりも大幅に低い価格を覚悟する必要があります。
ただし、何割安いかといった基準を当てはめることはできません。周辺の状況や立地条件、そして将来的に価格上昇が見込めるエリアかどうかによって、売却価格は左右されます。
もし一般仲介による売却が難しい場合は、不動産会社による買取も選択肢のひとつです。
がけ地の下にある土地の評価
隣地側にがけがある、がけ下の土地は、がけの状態によって売却が可能かどうか判断する必要があります。
がけ地に関しては法律上の規制があり、この規制が適用される場合は建築できる範囲が限定されます。そのため、売却しても、購入者が予定していた建築ができないおそれがあります。
また、がけ部分に
このような課題をクリアできない場合は、売却そのものが難しいと考えましょう。
土地の一部ががけ地になっている土地の評価
売却予定の土地にがけがある場合は、土地のある地方公共団体のがけ条例の適用を受けるかどうかを確認しなければなりません。
がけ条例は、地方公共団体ごとに決められており、全国統一のルールではありません。しかし、がけの上端や下端から一定距離の範囲は建築行為が禁止されています。
たとえば、東京都では、以下のように定められています。
高さ二メートルを超えるがけの下端からの水平距離ががけ高の二倍以内のところに建築物を建築し、又は建築敷地を造成する場合は、高さ二メートルを超える擁壁を設けなければならない。
また、がけの定義や安全性についても詳しく定めています。
がけ条例の適用を受ける場合はまず、がけの安全性と法律上の有効性を確認する必要があります。安全性や法律上の有効性が確認できるのであれば、相場価格に近い価格での売却が可能でしょう。
ただし、高低差の程度によっては、購入者からの値下げ交渉はあると考えるほうが妥当です。この場合の高低差の程度については、宅地造成規制法の制限を受ける、1メートル超の高低差が目安と考えられるでしょう。
がけの安全性や法律上の有効性が確認できない場合は、以下どちらかの方法を選びます。
- 安全対策を行ったうえで売却する
- 現状を正確に伝えたうえで、売却価格を購入者と協議し、そのまま売却する
そのまま売却する場合は、安全対策にかかる費用の金額を目安として、値下げを求められる可能性があります。売り出し価格によっては、売却そのものが難しいかもしれません。
高低差のある土地の売却方法
高低差のある土地は、平たんな土地と違い、売却方法に工夫が必要です。
値引き前提での売却戦略を立てる
あえて地盤の高い土地を求めるケース以外では、ほとんどの人が求めるのは平たんな土地です。
そのため、高低差のある土地を利用する際には、造成や
そのため、値引き交渉が行われるケースが多く、売主としては値引きに応じる準備をしておく必要があります。
売り出し価格や商談のベースとなる価格については、仲介を依頼する不動産会社とよく相談し、値引き前提での売却戦略を立てましょう。
建築や土木工事にも精通した不動産会社に依頼する
高低差のある土地を売却することは、容易ではありません。
たとえば、既存の建物や
また、高低差のある現状のまま売却しても、購入者の利用方法によっては購入後に多額の費用が発生します。そのような費用が不明確な場合は、商談そのものが進みません。
高低差のある土地の売却では、単に不動産売却だけでなく、そのあとの造成や
事前に土地の価値を確認しておく
高低差のある土地といっても、その評価はさまざまであり、売却方法についてもケースバイケースで検討する必要があります。土地の正確な評価を把握していなければ、いざ売却しようとしても、条件によってはそもそも売れないかもしれません。
まずは、不動産一括査定サイトの「リビンマッチ」を活用して、「いま、土地はいくらで売れそうか」を正確に知っておきましょう。リビンマッチは、土地の簡単な条件を入力するだけで、複数の査定結果を無料で確認できるインターネットサービスです。
高低差のある土地を売却するにあたって、適切な不動産会社を探すきっかけとしても、効率的で賢い手段です。
高低差のある土地の評価に関するよくある質問
- 高低差のある土地ってどういう土地?
- 自然の地形が平たんではなくある程度の高低差が生じてしまうケースや、宅地造成の結果で高低差が生じるケースもあります。
- 高低差のある土地は評価が低い?
- 税制上では、急斜面の土地の利用価値は低いとして、決められた補正率を掛けて評価額が低くなるケースがあります。また、高低差のある土地は、平たんな土地よりも購入を検討する人が少ない傾向にあります。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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