原野商法の二次被害とは?被害者が再び狙われる理由と具体的な手口、対策を徹底解説
高度成長期にあたる1960年から1980年ごろの約20年間を中心に大流行し、社会問題として国会でも取り上げられました。
原野商法の本質は、悪質な詐欺です。しかし当時、法整備の遅れもあり、有名人を起用したチラシや広告などで大々的に宣伝され、被害者が急増しました。
平成に入ってからはすっかり姿を消したように思えた原野商法ですが、手を替え品を替え、いまもさまざまな詐欺行為が行われ続けています。
そして、平成の終わりごろから、原野商法による被害者を再度ターゲットとした新たな勧誘行為が多く見られます。
2023年に放送予定である大人気ドラマのスペシャルドラマ「正直不動産スペシャル」(主演:山下智久)でも、原野商法に関するエピソードが取り上げられています。
原野商法の二次被害について、悪徳業者の具体的な手口や対策を紹介します。
もくじ
原野商法とは
高度成長期に被害が多発した原野商法とは、どのようなものだったのでしょうか。
原野商法が流行した背景
戦後から昭和の中期ごろに高度成長期を迎え、都心を中心とした土地の高騰による不動産バブルが発生しました。それまでは価値が低かった、ただ広いだけの土地でも、建物や商店などが建設されたことで価格が高騰し、突如として金のなる木に生まれ変わったのです。それを目の当たりにした人々は、土地活用による
一方で、こうした欲望に付け込んだ悪徳業者が、何の開発計画のない二束三文の原野を、あたかも将来的に値上がりするかのように説明し、売りつけるようになりました。
いまから見ると「そんなの詐欺ってわかるだろ」と思いがちですが、被害はあとを絶ちませんでした。
被害が拡大した原因
原野商法の被害が長期間にわたって拡大した理由のひとつは、情報量の少なさにあります。インターネットが普及していない時代では、情報量が圧倒的に少なく、購入した原野が将来値上がりするかどうかは、実際に時間が経過しなければわかりません。
そのため、原野商法の被害者が、実際に被害にあったと気づくまでには時間がかかります。また、被害に気づいたあとも、役所などに訴え、訴えを受けた役所から政府が報告を受けるまで、ある程度の時間が必要です。
その結果、社会問題化したころには、原野商法を行う業者は手にした大金を持って姿を消していました。
原野商法の具体的な手口
昭和の原野商法でもっともポピュラーなのは、架空のニュータウン造成やテーマパークなどを建設しているように見せかける手口です。
具体的には、大きな原野を1区画ごとに
たとえば、100坪の原野があれば、一戸建てを建設するのにふさわしい20坪や30坪ずつに分けて販売し、実際に宅地分譲を行う計画があると思い込ませるものです。
また、当時はイメージ戦略が重要でした。有名芸能人やスポーツ選手などが、詐欺行為とは知らずに広告塔として利用されていたのも、被害を拡大する原因のひとつです。
原野商法の二次被害
原野商法の二次被害は、たびたび政府による注意喚起が行われています。
以下は、国民生活センター公表資料をもとに内閣府大臣官房政府広報室が作成した、原野商法の二次被害トラブルの年度別相談件数です。
2009年に比べて、2018年の相談件数は約4倍に増えていることがわかります。
原野商法の二次被害について解説します。
原野商法の二次被害とは
原野商法の二次被害とは、原野商法で購入した原野を高値で買い取るといった勧誘を受け、結果的に支払いを求められるなどの被害です。
詳しい手口は後ほど紹介しますが、たとえば、原野を高値で購入するといって、土地の測量や整地、地盤調査などの名目で支払いを求めるのです。
さらに、以下のようなケースもあります。
- 税金対策や手続き費用などの複雑な説明を行い、さらには新たな土地を購入させる
- 管理費が未払いだとして、突然多額の滞納金を請求する
二次被害が拡大する原因
原野商法の被害者が購入した原野は価値がほとんどないため、活用や処分できないまま所有しているケースが多いです。
また、価値の低さから、原野には以下のような特徴があります。
- 固定資産税が少額
- もともと荒れ地のため維持管理費用がかからない
そのため、急いで売却する必要に迫られないことが考えられます。
所有し続けていると、「一度、だまされた人は再度だましやすい」と、悪徳業者に狙われます。昭和の原野商法から約40年が経過し、当時の被害者が高齢化していることも原因のひとつでしょう。
詐欺に気づかずに原野を購入した人は、家族への後ろめたさや相続の問題から、終活の一貫として原野問題を解決したいと考えており、その気持ちが狙われているともいわれています。
原野商法の二次被害の手口をわかりやすく説明
原野商法の二次被害を引き起こす悪徳業者は、主に以下3パターンの手口を使っています。
- 下取り型
- サービス提供型
- 管理費請求型
それぞれの特徴を説明します。
下取り型
下取り型には、以下のようなケースがあります。
- 売却するために売買契約を結んだつもりが、新たな原野の購入契約だった
- 売却するための担保として自宅を明け渡すようにいわれる
ただの下取りで終わらず、気づかないまま被害にあっているのが特徴です。
不動産契約における契約書は、専門用語が小さな文字で書かれています。そのため、宅地建物取引業の免許を持つ不動産会社に委任する高齢者が多いことも、悪徳業者に狙われる理由のひとつでしょう。
サービス提供型
サービス提供型は、原野を売却する前提に整地や測量などのサービス提供を行い、高額な金額を請求する手口です。
以前は原野商法の二次被害として主流でしたが、最近では減少傾向にあります。
管理費請求型
突然、身に覚えのない管理費を請求される管理費請求型は、ただ請求するだけではなく、言葉巧みに督促に対して異議申し立てをさせないようにするのが特徴です。
たとえば、「原野を高く買います」といって被害者に近寄り、信頼を得たタイミングで別業者を装い管理費を請求。困った被害者が相談したところ「自分が対応するから異議申し立てなどせずに待ってほしい」と伝えます。
被害に気がついたころには、督促が有効なものとなり、支払義務が生じているおそれがあります。
原野商法の二次被害対策
原野商法のような悪質な詐欺行為に対しては、「オレオレ詐欺」や「振り込め詐欺」と同様の考え方で冷静に対処しましょう。
独立行政法人の国民生活センターは、原野商法に対し消費者へのアドバイスとして、以下の注意喚起を行っています。
- 「土地を買い取る」「お金は後で返す」などといわれても、きっぱり断りましょう
- 宅地建物取引業の免許を持っていても、安易に信用しないようにしましょう
- 根拠がはっきりしない請求には、お金を支払わず毅然(きぜん)と対応しましょう
- おかしいと気づいたり、トラブルにあったら消費生活センターなどに相談しましょう
- 周りの人も高齢者がトラブルにあっていないか気を配りましょう
独立行政法人 国民生活センター「より深刻に!「原野商法の二次被害」トラブル-原野や山林などの買い取り話には耳を貸さない!契約しない!-」
被害にあったときの行動
もし、原野商法の二次被害にあってしまった場合は、消費者センターや弁護士に相談しましょう。
まずはクーリング・オフが利用できるかどうかを確認します。難しい場合は、詐欺による取消、または
この錯誤無効は、民法95条で以下のように定められています。
意思表示は、(中略)錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
ただし、以下のようにも記されています。
錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、(中略)意思表示の取消しをすることができない。
錯誤は、主に動機と表示の2種類が認められます。
- 動機の錯誤
- 動機と結果が異なること
- 表示の錯誤
- 意思と表示が異なること
たとえば原野商法の二次被害では、「原野を売却して金銭を得る」ことを動機としていたのに対して「新たな原野を購入させられた」ことは、動機と結果が異なります。この場合、被害者には大きな過失がないため、動機の錯誤として契約行為を無効にできるかもしれません。
また、「売却」したつもりで契約書を結んだが、実際は「購入」していた場合、意思と表示が異なるため、表示の錯誤として認められる可能性があります。
原野を売りたいなら信頼できる不動産会社に相談
原野は大きな利益を生み出さず、さらに新たな問題を呼び込む可能性があります。原野を所有し続けるメリットはほとんどないため、早めに手放すのも得策です。
ただし、安全に不動産売却するなら、複数の不動産会社の中から信頼できるパートナーを探しましょう。
実際、高槻市が原野商法の二次被害を注意喚起しているページでも、以下のように記載されています。
売りたい土地があれば、土地のある地元の不動産会社に相談し、相場を確認しておきましょう
まずは、不動産一括査定サイトの「リビンマッチ」を利用しましょう。リビンマッチは、複数の不動産会社から査定結果を受け取り、比較ができる無料のインターネットサービスです。
1社だけでは本当に適正な価格か不安でも、複数社を比較すればおのずと相場がわかります。また、加盟している地元に根付いた信頼できる多くの不動産会社から提案も受けられるメリットもあります。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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