固定資産税を払えない場合の対策と滞納を防止する方法
不動産を所有している人には、毎年固定資産税が課されます。税金には納める義務があり、納めない場合は延滞金が加算され、滞納が続くと財産を差し押さえられるおそれがあります。
そのため、固定資産税が払えない状況になったら、地方公共団体(自治体)に相談するなどの対応が必要です。また、今後払えなくなるおそれがある人も早めに対策しておきましょう。
もくじ
固定資産税とは
まずは、固定資産税がどのような税金かを理解しておきましょう。
固定資産税は、毎年1月1日付けの不動産所有者に納税義務があり、市町村が徴収します。納付書は、4月〜5月の期間に送付されてきます。
約150年前に国の財政基盤の主要な税金として制定された「地租」と、約100年前に地方税として制定された「家屋税」を合わせて、1950年に市町村の財政基盤確立のために生まれた税金です。
固定資産税の計算方法
固定資産税は、土地と建物に対して評価額に応じた課税がされます。この評価額のことを、固定資産税評価額といいます。
具体的には、固定資産税評価額から決定した課税標準額に、1.4%の税率を掛けて税額を求めます。
基本的に、固定資産税評価額が課税標準額になりますが、住宅用地の場合は特例措置があり、税額が軽減されます。
固定資産税が払えないとどうなる?
固定資産税が払えないとどうなるのでしょうか。滞納した場合に受ける処分などについて理解してから、対策を検討しましょう。
延滞金が加算される
固定資産税は、年間の税額を4回に分けて納付するように、市町村から納付書が送られてきます。1期分の納付期限を過ぎただけでも延滞金が加算されます。
延滞金は最大で年14.6%を掛けて計算するため、滞納額が多額になると延滞金も大きな金額になります。
延滞金は、以下のように滞納している固定資産税の納付期限によって計算方法が変わります。
- 平成25年12月31日まで
- 平成26年1月1日~令和2年12月31日の期間
- 令和3年1月1日以後
平成25年12月31日までの税金に対する延滞金は、年14.6%です。ほかの期限区分については不動産がある市町村へ確認してください。
財産を差し押さえられる
納付せずに放置しておくと、財産を差し押さえられるおそれがあります。そして、差し押さえられた財産が強制的に売却されることもあります。
差し押さえは、滞納している納税者の以下のような財産が対象になる可能性があります。
- 家財や車などの「動産」
- 株式や投資信託などの「有価証券」
- 預金、支払予定の給与、売掛金などの「債権」
- 不動産
債権者である市町村は、差し押さえを実行するために、滞納者の財産を調査します。有価証券や債券はしっかりとした調査を行う必要がありますが、固定資産税を滞納している不動産についてはすでに明確になっているため、比較的簡単に差し押さえができます。
また、滞納した税金の督促状発送と差し押さえについては、次のような地方税法の定めがあります。
- 税金の督促状発送は滞納から20日以内
- 督促状発送から10日で差し押さえが可能
納税者が納期限までに固定資産税に係る地方団体の徴収金を完納しない場合においては、市町村の徴税吏員は、納期限後二十日以内に、督促状を発しなければならない。(後略)
固定資産税に係る滞納者が次の各号の一に該当するときは、市町村の徴税吏員は、当該固定資産税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して十日を経過した日までにその督促に係る固定資産税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。
法律上の規定により市町村は滞納処理を行うため、滞納した場合は市町村に相談するなどの早い対応が求められます。
固定資産税が払えないときの対策
固定資産税が払えないとき、あるいは払えなくなる理由が生じたとき、どのような対処をするのがよいのでしょうか。
いくつか方法がありますが、どの方法も最終的には固定資産税を支払うことが前提です。免除されるわけではないので注意しましょう。
地方公共団体(自治体)へ相談する
固定資産税が支払いできない場合は、まず徴収者である市町村の担当部署に相談します。
それによって、以下ができる可能性があります。
- 納期限の猶予(延納)
- 分納
相談するときは、以下の事柄を伝えましょう。
- 納税の意志があること
- 支払えない事情
- 納期限の猶予または分納の計画
また、固定資産税を納める所有者の状況によっては、地方公共団体で「減免制度」を設けているケースがあります。減免の条件についても確認しましょう。
延納や分納でも払えないなら不動産売却
市町村に相談して延納や分納を認められても、約定どおりに支払いができないこともあるでしょう。その場合、不動産を売却して税金を払い、残った資金の活かし方を考えるという方法があります。
固定資産税は所有している不動産に対して課税されるため、売却してしまえば次年度からの納税義務はありません。ただし、住宅ローンなどの借入残高や抵当権の有無で、売却方法が異なります。
なお、抵当権とは、債務者が住宅ローンの支払いが困難なときに、金融機関が不動産を強制的に売却して返済金を回収できる権利のことです。住宅ローンを完済すると、抵当権抹消の手続きができます。
通常売却
抵当権が設定されていない、もしくは設定されていても借入残高がない状態であれば、不動産の売却は難しくありません。
滞納を理由に市町村から差し押さえを受けていても、売却代金から滞納した固定資産税を支払うと差し押さえは解除されます。
固定資産税を支払ったあと、残った代金から仲介手数料などの諸費用を支払うと、残りは自由に使える資金にできます。
任意売却
抵当権が設定されており、住宅ローンの借入残高がある場合は、任意売却を行います。売却活動に入る前に金融機関に相談し、売却価格が借入残高を下回り一括返済できない場合であっても抵当権の解除がされることを前提に売却活動に入ります。
滞納している固定資産税は通常売却と同様に売却代金から支払い、残った代金から金融機関への部分返済と不動産仲介手数料などを支払います。そのため、売却代金からは自由に使える資金を残せません。
補足:固定資産税を滞納しないための準備
固定資産税の延納や分納をして時間的な猶予が生まれても、払えないことも考えられます。
不動産を取得する、あるいは所有していれば、固定資産税は払う義務があります。前述したように、固定資産税は市町村の財政にとって、非常に重要な収入です。
そのため、重要なのは、固定資産税を滞納しない準備をしておくことです。具体的には、以下のような方法があります。
- 固定資産税を払える利益を土地や建物から生み出す
- 固定資産税は不動産を所有し続ける経費と考えライフプランを立てる
1番目の利益を土地や建物から生み出すとは、つまり不動産活用です。たとえば、アパートや駐車場を経営して、賃料をもらう方法などが考えられます。
そして2番目は、住宅を取得する場合の資金計画を含めた人生設計です。
固定資産税を払えなくなってから不動産活用を考えても、時機を失しています。固定資産税を滞納している状態では、不動産を担保にした融資を受けることが難しいため、不動産活用の方法は限定されたものになるでしょう。
よくある固定資産税が払えなくなるケース
固定資産税が払えなくなるケースには、いくつかのパターンがあります。
現在は払えているからと安心している人でも、将来的にリスクがあることを理解しておきましょう。
住宅ローンの返済が困難になる
固定資産税が払えなくなるタイミングのひとつが、住宅ローンの返済が苦しくなったときです。
- 経済状況の悪化で収入が減少する
- 勤めていた会社が経営困難になりリストラになった
- 大病を患い長期入院になった
上記のような理由で収入が減ると、住宅ローンの返済に加え固定資産税の支払いも負担になります。
住宅ローンは毎月引き落としされますが、固定資産税を納付書で支払っている場合は年間4回あります。住宅ローンの返済を優先すると、固定資産税を滞納するケースがあります。
老後の収入が減少
退職して年金だけが収入源となり、毎月の収支が苦しくなると、固定資産税の支払いは大きな負担です。
特に、地価の高い地域で敷地面積が広い住宅の場合などは、軽減措置が適用されていても年金収入に見合わない固定資産税になることがあります。
また、住宅が鉄筋コンクリート造などでは、木造住宅よりも建物の固定資産税が高いです。そのため、収入に対する固定資産税の割合が大きくなってしまいます。
地価の高騰により固定資産税が上昇
所有地の周辺で再開発が行われ、これまでだと考えられないような人気を集めるエリアになるケースがあります。人気が高くなると地価も上昇し、地価の上昇は固定資産税を上げる原因です。
固定資産税は、3年ごとに見直されます。建物の場合は評価額が減少するため固定資産税は下がっていきますが、土地の評価額は3年ごとの見直しによって大幅に上昇する可能性があります。
所有する土地が活用していない遊休地の場合は、固定資産税は負担でしかありません。
固定資産税の支払いに不安があるなら
固定資産税は、不動産を所有していると必ずかかる税金です。支払いができなくなる不安があるなら、事前に対策を立てておく必要があります。
使っていない不動産でも、所有し続けると、固定資産税の支払いという継続的なコストがかかります。
固定資産税の支払いが難しくなったときの対策として、「不動産売却」は大きな決断ですが、もしも売った場合にいくらで売れるのかを知っておくことは重要です。所有不動産の現在価格を把握しておけば、万が一の場合のリスクヘッジになります。
不動産の現在価格を知るには、不動産一括査定サイト「リビンマッチ」を活用しましょう。リビンマッチは、複数の不動産会社による査定結果を比較できる無料のサービスです。簡易シミュレーターや1社だけの査定では目安しかわかりませんが、複数の査定結果を比較すれば、自分の不動産の相場がより正確にわかります。
まずは、将来への備えとしてリビンマッチを利用しましょう。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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