家督(カトク)とは?意味や使い方、昔と同じ相続方法の利点と欠点、注意点
家督とは簡単にいうと、家族のうえに立つ一家の主人のことです。昔は家族の生計を立てる義務を負った者、おもに長男が備える権利と義務、地位という意味で使用されていました。
本記事では家督や家督相続についての説明、家督相続と同様に単独相続する方法のメリットとデメリット、実家を相続する際の注意点を解説します。
もくじ
家督とは?現代と古代で異なる意味の違い
現代において「家督」という言葉は、決して馴染みのあるものではありません。しかし、「家督を譲る」「家督を継ぐ」などは、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
「家督」とは、時代によって意味が異なります。現代と古代でどのように違うのか、解説します。
現代では家長
現代における「家督」とは“家長、つまり家族のうえに立つ一家の主人”のことです。その家を継ぐべき“跡取り”という意味でも使われます。
また、“相続すべき家の財産”や、“相続すべき事業や権利”を「家督」とまとめることもあります。「家督」を用いた表現の一つとして「家督を継ぐ」がありますが、実家の財産を受け継ぎ、守り伝えることを指します。
古代では戸主の身分に備わる権利と義務・戸主の地位
古代でいうところの「家督」には、“
そして、戸主が隠居や死亡をした際には、戸主の長男が財産をすべて相続するというのが原則だったのです。
「家督」のルーツは、武家社会といわれています。鎌倉時代には武士団を統率する長を「家督」と呼び、室町時代以降は家族に対して絶対的な支配権を持つ家父長制家族の家長を指しました。
江戸時代になると、その家の財産や相続人が「家督」といわれるようになったのです。
家督相続とは?家長の身分と財産を1人で引き継ぐこと
家督相続とは兄弟姉妹やそのほかの家族が何人いたとしても、長男が単独で財産を相続して次の戸主になることです。戸主が生存中であっても、隠居や国籍喪失などで相続が開始される制度でした。
家督相続の特徴は、下記の4つです。
- 財産相続・・・戸主が所有する一家の財産を相続させる
- 身分相続・・・戸主としての地位や義務も相続させる
- 単独相続・・・財産を1人で相続する
- 生前相続・・・戸主の隠居など、死亡以外の理由でも相続できる
家督相続は、明治31年7月16日に制定された旧民法で採用され、現行民法が制定された昭和22年5月2日までの間、家制度の中心とされてきました。
その後、家督相続制度は日本国憲法24条の法のもと、平等規定に反するものとして廃止されました。
家督相続と同じ相続方法、単独相続の利点と欠点
現代では家督相続は認められておらず、遺産は平等に分ける必要があります。しかし、現在でも、自分の財産を分割することなく家督相続と同様に単独相続する方法があります。
遺産を家督相続のように単独相続する方法は、以下の3点です。
- 遺言書を作成する
- 家族信託制度を利用する
- 遺産分割協議を行い、相続人全員の同意を得る
これらの手続きを踏むことで、家督相続のように特定の一人が財産を受け継ぐことが可能です。ただし、配偶者や子ども、親には遺留分があります。遺留分とは、たとえ遺言でも奪えない最低限の遺産相続分のことです。
遺言書に「すべての財産を〇〇に相続させる」と書かれていたとしても、遺留分を請求された場合は対応します。
また、家督相続と同じ方法をとることに対しては、利点もあれば欠点もあります。ここからは、利点と欠点を見ていきましょう。
単独相続の利点
主な利点は次の3点です。
- 子供や孫世代での相続がスムーズ
- 親族や家族間でのトラブルが少ない
- 土地や不動産を自由に管理・処分できる
一つずつ解説していきます。
子どもや孫世代での相続がスムーズ
たとえば、不動産を共有名義のまま相続すると、自身の子どもや孫世代での相続は非常に困難なものとなります。
兄弟が多ければ多いほど、段階を追って共有者は増えていきます。親の代からの土地や不動産を、後の世代にも引き継いでいってもらいたいと考えるのであれば、単独相続にするのがおすすめです。
収益や権利関係のトラブルが少ない
不動産の共有者が多いほど意見の不一致は生じやすくなります。不動産の取り扱いをめぐって、トラブルに発展するケースも珍しくありません。
権利関係が大きく変化するような内容の場合、共有者全員の同意が必須です。たとえば、共有物の遺産を処分したいと思っても、全員の意見が一致しなければ処分できません。
遺産分割が為されないまま共同相続人が亡くなると、相続人の子が相続をする代襲相続が発生します。相続が繰り返され、共有者がさらに増えることで、よりトラブルに発展するリスクが高まります。
土地や不動産を自由に管理・処分できる
売却に限らず、賃貸借や大規模修繕においても、全員の同意は欠かせません。共有者が遠方だったり、不仲だったりする場合は、全員から同意を得るのは困難でしょう。
しかし、単独相続であれば自由に管理ができますし、売却もスムーズです。
単独相続の欠点
主な欠点は、次の3点です。
- 遺留分をめぐるトラブルが起きる
- 費用や手間が発生する
- 相続放棄しなければ、マイナスの財産を一人で相続することになる
欠点についても一つずつ解説をしていきます。
遺留分をめぐるトラブルが起きる
遺留分とは、一定の相続人に対し遺言の内容にかかわらず必ず相続できる遺産の一定割合のことです。
遺言に単独相続が記されていた場合でも、遺留分侵害額請求が行われると、遺言書どおりの遺産配分にはなりません。両者納得であれば問題ありませんが、被相続人が生前にしっかりと意思を伝えるなど準備をしておかない限り、トラブルに発展しやすいでしょう。
費用や手間が発生する
財産を単独で相続すると、相続にかかる費用や手間は一人で負担する必要があります。たとえば、不動産を相続した場合、維持管理するにあたって、さまざまな経費がかかります。
複数人で共有すれば一人当たりの負担は減りますが、一人で管理していくとなると負担は大きくなるでしょう。
相続放棄しなければ、マイナスの財産を一人で相続することになる
相続は、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も相続します。親が亡くなってから借金があったことを知るケースは少なくありません。
相続とは、亡くなった親の土地や不動産などプラスの財産を引き継ぐだけでなく、借金も引き継ぐことです。借金を引き継ぐということは、返済する義務が一人にのしかかるという意味を持ちます。
相続を放棄するという手段も一つですが、マイナスの財産のみを放棄することはできません。相続放棄を選択するのであれば、プラスの財産、マイナスの財産すべてを取得する権利を放棄する必要があります。
実家を相続する際の注意点
不動産である実家は、現金のように融通が利きません。そのため、実家を相続する際には注意が必要です。
複数人で財産を相続する必要はないか再確認
不動産は、複数の相続人で共有名義として相続することが可能です。
しかし、共有名義にした場合、売却したいと考えても共有者全員の同意が必要で、一人でも反対者が出たり、うつ病や認知症になった人がいたりすると、売却はスムーズにいかないでしょう。そのため、不動産を共有名義で相続することはあまりおすすめではありません。
ただ、相続する財産が不動産のみだと、共有名義にせざるを得ないケースもあります。実家以外に相続財産があるかどうかと、財産を相続する権利のある法定相続人が誰なのかは、しっかり確認をしておく必要があるでしょう。
相続登記をする
実家を相続する際には、必ず相続登記をしましょう。相続登記を怠ったまま、次の相続が発生した場合、さかのぼって権利関係を証明しなければならず手続きが複雑化します。また、権利が証明できなければ、トラブルに発展するおそれがあります。
また、法改正により相続登記は2024年の4月1日から義務化されます。実家を取得した相続人は所有権の取得を知った日から3年以内に申請しないと、罰則として10万円以下の罰金等が科されますので注意しましょう。
登記手続きは、相続する実家の住所地を管轄する法務局で行います。相続登記には、戸籍関係書類や相続人に関する書類、固定資産評価証明書などが必要です。登記申請書と必要書類を提出して申請しましょう。登録免許税もその際に納付します。
実家を空き家にしない
放置されたままの空き家が社会問題として取り上げられることが増えています。空き家には数多くのデメリットがあります。
建物の劣化だけでなく、放火やシロアリ発生などのリスク、台風の影響で建物が飛散し加害責任を問われるようなケースも考えられます。また、相続をした時点で、たとえ自分が住んでいなくても、固定資産税の負担を背負う必要があります。
実家の扱いに迷ったら、家の価値を確認しよう
実家をどうすべきか、相続すべきか財産をどのように分割すべきか判断に迷ったら、実家の価値を確認してみましょう。
実家の価値が高いということは、客観的に見て実家に住むメリットが大きいと証明されたようなものです。価値が高ければ、ひとまず実家に住んで様子をみるもよし、売却して得たお金を一人占めするもよし、家族や親戚みんなで平等にわけるのもよいでしょう。
反対に価値が低ければ、実家に住むのはやめたほうがよいかもしれません。家督相続のように単独相続する場合、もしくは実家や実家の財産を平等に分ける場合は、どうすれば実家を有効活用できるのか検討しましょう。
実家を解体して更地にした土地を売却してもよいかもしれません。解体すれば実家の管理費用はかかりませんし、ーから家やお店を立てたい人に売却しやすくなります。更地にして駐車場経営をしてもよいでしょう。
実家の活用方法は多種多様です。実家を相続するか実家の財産をどうするか迷ったら、家の価値を不動産の一括査定サイトで確認しましょう。
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