長男は家を守るべき?家を継ぐ利点と欠点、継がない場合にしたい対策
長男だからといって、必ずしも家を守るべきとはいえません。現在は長男がその家に居住しているケースばかりでなく、家族のかたちも変わりつつあるからです。
本記事では実家が持ち家の長男に向け、長男が家を継ぐ利点と欠点、家を継がないと決心したらしたいことについて解説します。
もくじ
長男は家を守るべき?相続は家族全員平等
ほかに兄弟姉妹がいるのなら、その中で家に近い場所に住んでいる人が守るのもよいでしょう。元気なうちは母親がひとりで守る選択も、仕事であまり家にいない夫に代わって妻が家を守る選択も、おかしくありません。
昔ながらの考えや伝統を守るのも大切ですが、無理してまで守り通す必要はありません。その家庭ごとに、ベストなかたちを見つけましょう。
家を継いだら家を守ることになるのか
家を守るということは、物理的に家を管理していくことや健全な状態を保っていくことを意味します。一方、家を継ぐという言葉は会社や個人事業など、何かしらの家業がある場合に、そのまま家業や引き継がれてきた技術を継ぐという意味で使われます。
しかし、とくに家業があるわけではない普通の家でも、自分の子供に家を守っていってほしい、家を絶やさないでほしいという思いから「家を継いでほしい」と口にするケースが多いです。
つまり、「家を守る」ことと「家を継ぐ」ことは同義であるともいえます。それでいくと、家を継いだら自動的に家を守っていくことにもなると考えられます。
長男が家を継ぐ利点
長男が家を継ぎ、守っていくことにはいくつか利点があります。ここでは、3つの利点を解説します。
思い出の家を残せる
多くの人にとって、幼少期を過ごした実家は家族との思い出の詰まった大切な場所です。実家を出てから長い年月が経っていて、なかなか帰る機会がなかった人でも、やはり実家を処分するのは寂しいのではないでしょうか。
すでに両親が亡くなっている場合などはなおさらでしょう。そのような人にとって、思い出の家を残せるのはメリットといえます。
空き家問題の解消につながる
近年は、少子高齢化などが原因で空き家の増加が問題視されており、これを空き家問題といいます。人が住まなくなった家は空き家です。しかし実家に人が住んでいれば、放火や空き巣、建物の老朽化によって近隣住民に迷惑をかけてしまうなどのトラブルを避けられます。
生まれ育った家が空き家となり、ただ朽ちていくのは悲しいものです。また、特定空き家等に指定されると、以降は固定資産税の優遇措置を受けられなくなり、固定資産税の税額が膨らんでしまいます。
なお、特定空き家とは「空家等対策の推進に関する特別措置法」第二条により下記のように定義されています。
「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。
無理なく移住できるのであれば、実家を継いでそこに住むのも選択肢のひとつです。
住居費がかからない
実家の住宅ローンが残ってなければ、住居費がかかりません。現在、賃貸物件に住んでいる人にとって、家賃を支払う必要がないのは魅力的でしょう。
総合的に見て、移り住むことで生じるメリットがデメリットよりも上回る場合は、選択肢のひとつとして検討する価値はあるでしょう。
ただし、職場などが遠い場合や子供が転校する必要がある場合など、移り住むことで生活が一転してしまうかもしれない点も考慮しなくてはなりません。
長男が家を継ぐ欠点
家を継ぐことは、よいことばかりではなく欠点も存在します。
配偶者に同意してもらう必要がある
配偶者の同意は必要です。家を継ぐということは長男本人だけの問題なのではなく、家族も巻き込む問題だからです。
ただ不動産を相続するだけであれば生活に影響はありませんが、家を継いで守っていくとなると、一家の生活が一転します。
長男が独身であれば、長男本人さえよければ問題ありません。その後結婚するとしても、そのときすでに長男は家を継いでいるため、結婚相手さえよければ与える影響としては別の場所に住めないことくらいのものでしょう。
しかし、すでに結婚している場合はそうもいきません。これがきっかけで夫婦仲が悪くなり、最悪離婚などという事態に陥るおそれがあったりします。話し合いは慎重に行う必要があるでしょう。
実家が職場から離れている場合は仕事を辞める必要がある
実家が職場から離れている場合、距離によっては通勤ができないおそれがあります。その場合は、仕事を辞めることも視野に入れなければなりません。
長男が若ければまだよいですが、そうでない場合、再就職できる保証はありません。また、これまで積み上げてきたキャリアを捨てる覚悟も必要でしょう。
再就職できるのかどうか、本当にこのまま継いでしまっても問題ないのかをよく考え、決断する必要があります。
資産価値が落ちる
建物の資産価値は年々下がっていきます。一般的な木造の一戸建て住宅は、築22年で資産価値が0になるといわれています。
あとあと売却することになった場合、そのときにはさらに価値が下がっているおそれもあります。土地についても田舎の場合は過疎化が進み、資産価値が下落するリスクがあるため、早く売っておけばよかった、と後悔することもあり得るでしょう。
家を継がないと決心したらしたいこと
家を継がないと決めたら、一体何をすべきでしょうか。ここでは、家を継がないと決心したときにしておきたいことを解説します。
身内を説得する
まず、家を継がないと決めたことを、存命の親や兄弟姉妹などの身内に話しましょう。
昔の常識では、長男が継ぐべきだったのかもしれません。しかし常識というものは、時代の流れとともに変化していくものです。今の時代、長男だからといって必ず継ぐ必要はありません。
遠方に勤務している場合は、仕事を辞めて実家に住む必要があります。場合によっては、配偶者との関係が破綻するおそれもあります。
家を出てからこれまで築いてきた関係や生活もあるため、それを捨ててまで継ぐことはできない、ときっぱり言いましょう。
家は無理をして継ぐものではありません。たとえ形がなくなっても、家という概念がなくなってしまうわけではありません。
長男だから次男だからとこだわらず、近くにいて動ける人がいれば、その人が継げばよいのです。全員が無理というのであれば、実家を処分する方向で考えたほうがよいでしょう。
家をどうするのか決める
家を継がない場合、そのまま放っておくと空き家になってしまうため、家をどうするのかを決める必要があります。
たとえば、以下の方法があります。
- 中古物件として売却する
- 解体して土地を売却する
- 賃貸として貸し出す
それぞれの方法のメリットとデメリットを解説します。
中古物件として売却する
家を中古物件として売却するメリットは、以下のとおりです。
- 維持費がかからなくなる
- まとまったお金が入る
- 相続人同士で財産を分類しやすくなる
家を売却した場合、それ以降は固定資産税や都市計画税を納める必要はありません。掃除やメンテナンスなどの管理も要らず、維持費もかかりません。
また、売却すればまとまったお金が入ります。建物はどんどん価値が下がっていきますが、現金化してしまえば価値は下がりません。教育資金や老後資金など、さまざまなところに資金を回せるでしょう。
相続が発生した場合、相続人同士で財産を分けやすくなる点もメリットといえます。不動産のままだと分配が難しく、遺産分割協議がまとまらない可能性もありますが、現金化しておけば資産を均等に分られるため、もめる要因を減らせます。
中古物件として売却する場合のデメリットは、次のとおりです。
- そのままでは売れないおそれがある
- 希望額で売れる保証がない
- 兄弟姉妹や親戚が集まる場所がなくなる
中古物件として売り出す際、そのままでは売却できないケースもあります。たとえば、修繕やリフォームが必要な場合や、隣地との境界が決まっていないために、土地の境界確定が必要になる場合などです。その場合、その分費用がかかります。
また家が古い、田舎で交通の便が悪い、市街化調整区域で今後、家を立て直すことが難しい場合など、さまざまな理由から買い手がつかないことがあります。買い手がつかなければ希望額で売るのは難しいため、納得できない結果になることもあるでしょう。
これまで実家が親戚や兄弟姉妹が集まる場所になっていた場合、売却後は集まる場所がなくなります。実家の売却を機に集まる習慣が薄れ、しだいに家族や親戚と疎遠になるかもしれません。
解体して土地を売却する
家を解体して土地だけを売却する場合のメリットは、以下のとおりです。
- 家の管理が不要
- 古家がある場合よりも買い手がつきやすくなる
- 実家から解放される
自分が住んでいない家を管理するのは負担です。管理が長期にわたり、実家が遠方である場合などはさらに負担が増すでしょう。しかし、家を解体すれば管理は不要になり、管理にかかる費用も削減できます。
また、古い家がある場合よりも土地を自由にできる分、買い手がつきやすくなります。土地の境界確定や地盤改良などをしておくとさらに価値が上がり、売れやすくなるでしょう。
考え方によっては、実家から解放されるのもメリットでしょう。実家は思い出の詰まった大切な場所である反面、縛られる部分もあります。
継がないと決めるまでは、本当は継ぐべきなのではと散々迷った人もいるでしょう。しかし、解体によって存在がなくなることで、さまざまなしがらみから解放される可能性があります。
家を解体して土地だけを売却する場合のデメリットは次のとおりです。
- 固定資産税が上がる
- 解体費用がかかる
- 解体しても売れるとはかぎらない
居住のための建物の敷地となっている土地は、特例が受けられるため固定資産税が安くなります。しかし、建物を解体すればその特例措置が受けられなくなり、固定資産税が上がってしまいます。すぐに売れる場合はよいですが、長期間売れ残りそうな場合は要注意です。
また、更地にするためには解体費用がかかります。建物の構造や規模によっても異なりますが、一般的な一戸建て解体で約90万〜150万円かかるといわれています。ただ、行政によっては補助金が出る場合もあります。解体前に役場に問い合わせてみるとよいでしょう。
注意したほうがよいのが、解体しても必ず買い手がつくとはかぎらないことです。たしかに、古家が残っている場合よりも売れやすい傾向にありますが、それでも保証はありません。
長期的に買い手が見つからないと、その期間は高い固定資産税を支払い続ける必要があります。建物の劣化が著しい場合などは、事前に解体したほうがよいケースもありますが、金銭的なリスクを避けるために、買い手が見つかってから解体するのもひとつです。
賃貸として貸し出す
最後に、賃貸として貸し出す場合のメリットです。
- 実家を残したまま家賃収入を得られる
- 家が劣化しにくい
- 放火や空き巣の心配が減る
賃貸として貸し出す場合、家を手放すことなく有効活用が可能です。維持費を稼げるのは大きなメリットといえるでしょう。ゆくゆくは移住するつもりだという場合や、思い出の詰まった家を売りたくない場合に向いています。
家が劣化しにくいのもメリットです。家は、人が住むことで状態が保たれます。反対に、人が住んでいない家はすぐに傷んでしまいます。賃借人が家を大切に使用してくれる人であれば、家も長持ちするでしょう。
空き家のままにしておくと、放火や空き巣に遭うおそれがあります。被害が家だけで済めばまだよいですが、近隣にまで被害が及ぶと大ごとになってしまいます。しかし、人が住んでいればそのような心配も減るため、空き家にしておくよりもずっとよい選択肢であるといえるでしょう。
賃貸として貸し出す場合のデメリットは次のとおりです。
- 入居者が見つかるとはかぎらない
- 一度、賃貸借契約を結んだら貸主の都合で解約しにくい
- 管理や維持をしていくのに費用がかかる
立地条件や家賃、家の状態によっては、入居してくれる人がなかなか見つからない場合も考えられます。とくに古い一軒家の場合、入居者を探すのは困難です。入居者が見つかったとしても、見つかるまでに時間がかかるおそれもあります。
また、賃貸として貸し出した場合、
家があるかぎり、結局は維持費や税金がかかります。家賃収入がある分まだ負担は少なく済みますが、家賃でまかなえない部分については、実費でなんとかする必要があります。小さな修繕ならまだしも、場合によっては大掛かりなメンテナンスやリフォームが必要になるおそれもあります。
実家の扱いに迷ったら、価値を確認
実家の扱いに迷ったら、まずは価値を確認してみましょう。その結果しだいで、売却したほうが得なのかそうでないかなど、見えてくるものがあります。
実家の価値を確認するには、不動産の一括査定サイトがおすすめです。実家の情報を入力すると、最短45秒でいまの価値を確認できます。実家を実際にどうするか決めるのは、価値を確認してからでも遅くありません。
さまざまな方法を検討したうえで、もっとも納得のいく方法で実家をどうするのか判断しましょう。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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