外国人向けに不動産を売買したい?利点と欠点、売る手順や注意点とは
近年、円安の影響で日本の不動産を購入するシンガポールや中国などの外国人が増加しています。とはいえ、外国人に不動産を売買するとなると日本人とは勝手が違うことが多く、不安な方もいるでしょう。
そこで、本記事では外国人に不動産を売買するメリットとデメリット、売買で失敗しないための対処法を紹介します。ぜひ外国人に不動産を売買しようか迷っている方は、本記事を参考にしてください。
外国人に不動産を売るメリット
メリットは主に2つあります。「売却確率が上がること」「売れない物件でも外国人になら売れる可能性があること」です。以下では、その理由について説明します。
売却確率が上がること
海外投資家が日本の不動産市場へ投資する額は、今後増加することが見込まれています。資料として、2020(令和2)年に国土交通省が発表したデータをご覧ください。
引用:国土交通省「令和 2 年度 海外投資家アンケート調査業務 図表 0-4 今後日本の不動産市場への投資額」
これは2019(令和元)年に日本へ不動産投資をした額が多い上位10社を対象とした海外投資家へのアンケート結果です。日本全体への不動産投資額を、今後「増加させる」と回答した投資家が100%であることが確認できます。
今後の日本の不動産市場について投資額を「増加させる」か「減少させる」かの意向を確認したとこ ろ、全ての投資家が日本全体への投資額を「増加させる」と回答している。
国土交通省「令和 2 年度 海外投資家アンケート調査業務」
それだけ海外投資家が日本の不動産に注目していることがわかります。売却相手を不動産売買に注目している外国人に広げることで、不動産の売却確率は上がる可能性があります。
海外投資家が日本の不動産に注目する理由
海外投資家が日本の不動産に注目する理由として、ESGへの積極的な投資が行われていること、名目GDPの世界ランキングが3位であること、建築技術が優れていることなどが挙げられます。
不動産投資を行う海外投資家はさまざまな判断基準をもっていますが、特にサステナビリティ(持続可能性)が備わっているかに重きを置いています。実際に、世界のサステナブル投資資産は2016年の22.8兆ドルから2020年には35.3兆ドルに増加しています。
近年「ESG」環境(Environment)・社会(Society)・ガバナンス(Govenance)という言葉がさまざまな場面で使われ、米・アップル社の「ESGに関する基準を設けて賞与に反映させる」動きが報じられたことで、日本国内でも「ESG推進」が注目されるようになりました。最近では「ESG経営」「ESG人材」など、「サステナビリティ」とほぼ同義語として使われることも増えており、その要因として日本のESG投資マーケットの成長が挙げられます。
日本のESG投資残高は、2016年の4,740億ドル(約50兆円)から2020年には2兆8,740億ドル(約315兆円)へと増加しました。世界から注目されているESGの投資拡大に加え、日本は2021年にIMF(国際通貨基金)が行った世界の名目GDPランキング、つまり国内総生産のランキングで3位という結果を残しています。
名目GDPランキングが3位になった背景として、日本は人口が多く(世界ランキング11位)、高品質なモノを生産できる技術力を持っており、ビジネス環境が整っていることが挙げられます。それゆえ海外企業が参入しやすく、日本支社が生み出した付加価値がGDPにも反映されているのです。
日本の不動産は経済規模が大きいうえに市場が安定しており、調達金利が低いこと、金融機関の信用、流動性が高いことが海外企業に評価されています 。投資用不動産を購入しようと思った際、中国やフィリピンなどの地域では外国人が土地を所有することを禁じています。それに対し日本では不動産所有の規制がなく、運用が容易にできます。中でも東京への期待は大きく、人口流入や不動産投資における優位性は継続すると考えられています。
さらに、日本の建設技術は世界的に優れていると多くの投資家から評価されています。日本は地震が多いうえに、東京などの人口密度が高い地域では面積の小さな土地を有効活用する建築技術が必要です。
気象庁によると2021年の地震発生回数は2,424回(震度1以上)で、多くの地震発生場所は日本海溝に近い東北と関東でした。これほど地震が多いのにもかかわらず、関東(東京・神奈川)では建物が倒壊していません。日本は過去の震災から学び、常に新しい技術を開発し、耐震基準の法改正を重ねてより強固な建築物をつくることに注力してきました。
建築基準法では旧耐震基準(1981年5月31日まで)は「震度5程度の地震で大きな損傷を受けない」でしたが、新耐震(1981年6月1日から)では「震度5程度の地震の損傷は軽微なひび割れにとどめ、震度6程度の大規模な地震には建物の倒壊や損傷を受けない」という基準に変わりました。
時間の経過と同時に建築技術も進歩し、日本の技術は高く評価され、世界的目線でみても日本の不動産は人気で売買確率が上がる、といえます。
売れない物件でも外国人になら売れる可能性があること
住居を選ぶ際、日本人と外国人では重視するポイントが異なるため、日本人に売れない物件でも外国人には需要があり、売れる可能性があります。
株式会社AlbaLinkが2021年に実施した「家を購入する際に優先したこと」のアンケート結果によると、日本人が家を選ぶポイントの第1位は「立地」でした。通勤や通学の利便性(駅から徒歩10分圏内)や商業施設までの距離(スーパーやショッピングモール)に注目しており、ほかにも自然環境がよく、子育て環境や治安のよい場所が選ばれています。第2位は「価格」、第3位は「間取り・広さ」です。
対して、アットハース株式会社が2015年~2021年に行った「日本に住む外国人が選ぶ入居条件」の調査によると、日本人と同様に1位は「立地」でしたが、2位は「キッチン設備」、3位は「バルコニーの有無」と日本人との違いが見られました。
ほかにもランキングには入っていませんが、外国人は日本ならではの和室や、新築より購入費用を抑えられることから中古物件を選ぶ傾向があります。この中でも特に日本人との違いは、「新築より中古物件を選ぶ」ところです。
日本人は「新しいモノを拒まない」という性格の方が多く、車や家も新しいモノを好む習慣があります。反対に外国人は古い建物や古い車に価値があるという考えを持っている方が多く、歴史のある古きよきモノが新しいモノに埋もれてしまうのを快く思っていません。つまり、空き家で古く売れない物件でも条件さえクリアしていれば、外国人には需要があるのです。
とはいえ、日本にいる外国人は少ないため、探すのが大変と思われる方もいるでしょう。しかし、在留外国人数は年々増加し、2020年には280万人を超えました。
グラフ:日本の在留外国人数(人)(2012年~2020年)
出典:統計ダッシュボード(https://dashboard.e-stat.go.jp/)
日本で生活するための家を求め、今後不動産会社を訪れる訪日外国人は増えるでしょう。
外国籍の方(非日本語話者)に不動産を売るデメリットと対処法
以下では、外国籍の方(非日本語話者)に不動産を売るデメリットと対処法を紹介します。
住宅ローン審査が通らない可能性がある
日本人は外国籍の方へ不動産を売却できます。注意すべき点は、住宅ローン審査が通りにくいことです。なぜなら、金融機関は外国籍の方へ融資したがらない傾向があるためです。
外国籍の方が不動産を購入する際、現金一括で購入してもらえれば問題はありませんが、多くの方は不動産を購入する際に住宅ローンを組む必要があります。ローンを組む際には審査という壁が立ちはだかります。
外国籍の方が住宅ローンを組める条件
下記は、外国籍の方が住宅ローンを組める条件の一例です。
- 永住許可があること
- 永住許可がない場合は、日本国籍か永住許可のある配偶者が連帯保証人になること
- 住宅ローンの申込時の年齢が20〜65歳、完済時の年齢が80歳未満であること
- 団体信用生命保険に加入できること
- 勤続年数2年以上で、前年度の年収が300万円以上の正社員もしくは契約社員であること
参考:新生銀行「外国籍の人は住宅ローンを組める?申し込みや契約の要点をチェック」
対処法
まず、不動産を現金で一括購入してもらうことを検討してもらいましょう。
不可能であれば永住権(10年以上日本に在留し、就労資格・居住資格を持って5年以上)を取得したのちに住宅ローンを組む、もしくは日本国籍の人と結婚し配偶者に連帯保証人になってもらう必要があります。
物件の契約や譲渡までに時間がかかる
物件の契約や譲渡には時間がかかるおそれがあります。日本人同士と違い書類の準備だけでなく、時間に対する意識や感覚に違いがあるためです。
たとえば、気候が温暖な国の方は時間にルーズだという結果が報告されています。
対処法
時間を守ってもらえない場合に備え、契約書面に期限の記載をしましょう。
日本人と同じ感覚でいると、トラブルになりやすい
外国籍の方に不動産を売却したあとは、日本人よりトラブルになりやすい傾向にあります。
対処法
売主がルールを把握し、事前に伝えましょう。
支払い通貨の違いにより利益が減る
時折、自国の通貨で払いたいと交渉をされることがあります。売主が日本円以外で不動産を売却すると、為替相場の影響や換金の手数料などで売却益が下がるおそれがあります。
対処法
契約書に明記したうえで、口頭でも支払いは日本円であることを説明しましょう。
値下げを要求される場合がある
外国籍の購入希望者から値下げを要求されるケースがあります。親族や知人のために「少しでも安く、よい物件を購入したい」という想いが強い国の方は、クレームや要望が大胆な可能性があります。
対処法
値下げできないと判断したときは、しっかり「NO」と伝えましょう。
不動産の仲介会社などの第三者から伝えてもらう方法もあります。困ったときの対処法として覚えておきましょう。
非日本語話者に不動産を売る手順と注意点
非日本語話者に不動産を売る手順と注意点を紹介します。
1.外国語に対応している不動産会社を探す
非日本語話者に不動産を販売する際は、言語の壁を乗り越える必要があります。
外国語に自信のない方は、外国語を話せる不動産会社を探しましょう。不動産会社を挟めば、トラブルが起きた際も代わりに対応してくれることがあります。
2.物件を下見してもらう
売主は購入希望者に物件の状態や周辺の環境を確認してもらいましょう。「想像と違う」「周辺の環境がよくなかった」など、購入後に不満を抱かれないようにするためです。
3.買付証明書を作成する
買主が購入の意思を示したら、買付証明書を用意しましょう。買付説明書は、物件の売主や不動産会社に物件を購入する意思を表すものです。
買付証明書には、以下の条件が記載されています。
- 購入希望価格
- 手付金
- 契約希望日
- 引き渡し希望日
- 住宅ローンの額
日本語で記載されていますので、非日本語話者用に翻訳された書類を準備しましょう。また、契約で必要なため、外国人登録証明書の確認とパスポートのコピーも忘れずにもらっておきましょう。
4.契約を締結する
売主と買主の合意で売買契約が成立します。売買契約書には印紙税がかかると同時に、物件購入価格に対し約10%の手付金を支払う必要があります。
なお、購入希望者が海外にいる場合は宅地建物取引業法に基づき重要事項を説明する必要があります。重要事項の説明はこれまで対面で行うのが原則でしたが、国土交通省の施策により2017年10月1日からZOOM(ズーム)等のオンラインでの実施が可能となりました。
しかし、中にはオンラインに対応していない会社もありますので、海外在住者に不動産を売却する際はオンライン対応をしている不動産会社へ依頼しましょう。
5.物件を引き渡す
支払いが終わったら不動産登記を行ったのち、買主に引き渡します。登記の際は在留カード、住民票、印鑑証明書、印鑑などが必要です。
売却価格には、仲介手数料や登録免許税などの諸経費も発生します。諸経費について疑念が生まれないよう、買主にしっかり費用の内訳を説明しましょう。
不動産売買に重要なのは、売り出し価格
不動産を売買する際に重要なのは、売却相手だけではありません。売り出し価格も重要です。
相場より安ければ購入希望者は増えるかもしれません。しかし、売却相手と直接やり取りするとなると、値下げ交渉のことも考える必要があります。値下げ交渉を前提とするなら、あえて相場より高い価格で売り出すのもひとつの方法です。
売り出し価格をいくらに設定するか判断する際は、一括査定サイトのリビンマッチを使うのがおすすめです。リビンマッチは売りたい不動産の情報を入力すると、最短45秒で最大6社の査定価格を確認できるサイトです。相見積もりで不動産の相場を把握できるため、売り出し価格を判断する際に便利です。
また、不動産売買は交渉のプロである不動産会社に任せると、スムーズにまとまることがあります。日本人相手でも交渉は大変なことがあります。まして、外国人に不動産を売買するとなると、言語対応や買付証明書の作成などで、注意すべき点がたくさんあります。
売買で失敗しないためにも、外国人の対応実績がある仲介会社に頼む必要があります。会社によって見積書の提案内容や査定価格が異なるため、ぜひリビンマッチで複数の会社を見比べてみてください。気になった会社へ不動産売買について質問してみて、専門的な回答をもらえた会社を中心に依頼する仲介会社を絞っていきましょう。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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