所有権移転登記の費用相場を紹介!安く済ませる方法はある?
不動産登記記録に記載された内容に変更が生じた場合は、必要書類を用意し法務局に申請書とともに提出します。登記記録に変更が生じる原因は、引っ越しをして住所が変わる、不動産売却による名義変更などさまざまです。
今回はその中でも、所有者から別の所有者に権利が移転する「所有権移転登記」について、費用相場や費用を安く済ませる方法を紹介します。
もくじ
所有権移転登記の原因と費用相場
所有権移転登記には、必ずその原因が必要となります。たとえば、現在の所有者がAさんとして、これをBさんの名義に移すためには何の原因もなしに移すことはできません。また、その原因によって申請のやり方や必要となる書類も異なります。
所有権移転登記をする場合は、登録免許税という費用がかかります。これは不動産評価証明書に記載された不動産価格に、決められた税率をかけて計算します。さらに、司法書士に依頼した場合は報酬が必要です。報酬は、事務所単位で設定しているため、決まった価格はありませんが、おおよその相場は存在します。
所有権移転登記の原因や費用相場について、解説していきます。
売買を原因とする所有権移転登記
売買による所有権移転登記とは、不動産を第三者に売却した結果、不動産の所有権を買主名義に移すことです。売買による所有権移転登記の申請は、必ず売主と買主が共同でしなければなりません。このような申請形式を共同申請といいます。
権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
また、登記をすることで登記記録上不利益となる当事者を「義務者」、登記記録上利益を受ける当事者を「権利者」といいます。売買による所有権移転登記の申請では、売主が登記記録上は名義を失うことになるため義務者となり、新たに権利を受ける買主が権利者です。
このように両当事者が形式上は対立した形になりますが、実際には必要な書類をそろえるだけで何か特別な手続きをするものではありません。ただ、不動産取引は一般的には高額になるため、当事者が書類を自分で作成して法務局に申請するケースは稀です。
また、買主側が売買代金を用意するために銀行から融資を受けて不動産を購入するケースでは、所有権移転登記とともに抵当権設定登記を申請します。その際に資格のない当事者に申請を任せることはありません。不動産登記の専門家である司法書士が書類を作成して、間違いのないよう細心の注意を払って申請します。
所有権移転登記に限定すると、当事者がそろえるものは以下のとおりです。
義務者(売主) | 権利者(買主) |
---|---|
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費用相場
売買で納める必要のある登録免許税は土地代に1,000分の15(1.5%)、建物代に1,000分の20(2.0%)をかけて求めます。
たとえば、土地が1,000万円、建物が500万円の登録免許税は、土地につき15万円、建物につき10万円、合計25万円です。
ただし、建物の場合には下記の要件を満たすことで、所有権移転登記の税率が1,000分の3(0.3%)に軽減されます。
- 居住するために購入する
- 建物の床面積が50㎡以上
- 昭和57年1月1日以降に建築された建物である
上記の例で建物の価格が500万円とした場合には、15,000円まで軽減されます。また、所有権移転登記の報酬としては約4〜5万円で設定されることが多いです。しかし実際には、報酬以外にも取引の立会日当などで数万円必要となります。
ちなみに、所有権移転登記の登録免許税は買主が負担するのが慣例となっています。
費用項目 | 費用相場 |
---|---|
登録免許税 | 建物:不動産価格の1,000分の3(0.3%) 土地:不動産価格の1,000分の15(1.5%) |
司法書士への報酬 | 約4〜5万円 |
立会日当 | 数万円 |
相続を原因とする所有権移転登記
相続を原因とした所有権移転登記は、登記記録上の名義人が死亡したときに、名義を相続人に変更するための登記申請です。
不動産は預貯金のように分配できません。分配の代わりに共有という形で登記をするのがひとつの方法です。しかし、不動産の共有状態というのはひとりの判断で売却できないなど、あまり望ましい状態とはいえません。
民法では遺産分割協議といって、相続人全員の話し合いによって民法で定められた相続分割合とは異なる方法で遺産を分配することが認められています。たとえば、妻が不動産を、長男と次男が預貯金を半分ずつ分けると、不動産の名義を妻単独にできます。
相続を原因とする所有権移転登記は、売買のように義務者や権利者の対立構造は存在しません。名義人は亡くなっていますから、権利を取得する相続人のみが申請人となって申請します。
相続を原因とする所有権移転登記の申請は、戸籍などを集めるのに時間がかかるため用意する書類は、ほかの申請と比べると多いです。しかし、売買のような対立構造がないため、特殊な事情がない限りミスがあってもやり直せることが多く、司法書士に依頼せずに法務局のホームページなどを参考に作成できます。
ただし、急いでいるときや書類に印鑑をもらい直すことがはばかられるような相続人がいるときは、最初から司法書士に依頼して間違いのない書類を作成してもらいましょう。
費用相場
相続を原因とする所有権移転登記をする場合の登録免許税は、土地建物にかかわらず不動産価格の1,000分の4(0.4%)です。つまり、仮に不動産価格が1,000万円であれば4万円の収入印紙代が必要となります。
司法書士への報酬については、約8〜10万円としている事務所が多いです。
費用項目 | 費用相場 |
---|---|
登録免許税 | 不動産価格の1,000分の4(0.4%) |
司法書士への報酬 | 約8〜10万円 |
贈与を原因とする所有権移転登記
贈与は、無償で不動産をあげた場合に発生する登記手続きです。申請形式は、売買と同じく登記名義人が義務者、不動産をもらう人が権利者として所有権移転登記をします。
売買と同じく必要となる書類は、義務者が権利証(または登記識別情報)、印鑑証明書、権利者が住民票です。
費用相場
贈与を原因とする所有権移転登記の登録免許税は、土地建物にかかわらず不動産価格の1,000分の20(2%)となります。1,000万円であれば20万円です。
司法書士への報酬は、贈与契約書の作成をプラスした総額で平均約8〜10万円です。
費用項目 | 費用相場 |
---|---|
登録免許税 | 不動産価格の1,000分の20(2%) |
司法書士への報酬 | 約8〜10万円 |
財産分与を原因とする所有権移転登記
財産分与を原因とする所有権移転登記は、離婚に伴って他方の配偶者に不動産を渡すときに申請する登記です。登記名義人が義務者、財産分与として不動産を受ける人が権利者として登記を申請します。
申請に必要な書類は売買と同様です。
費用相場
財産分与を原因とする所有権移転登記の費用と登録免許税の税率は同様であるため、先述した贈与と同じ費用になります。
費用項目 | 費用相場 |
---|---|
登録免許税 | 不動産価格の1,000分の20(2%) |
司法書士への報酬 | 約8〜10万円 |
所有権移転登記は自分でできれば安く済む?
所有権移転登記を安く済ませる方法として挙げられるのは、自分で書類を作成して申請することです。自分でできれば、司法書士への報酬は不要で登録免許税のみで済むため節約につながります。
ただし、司法書士が関与せずに売買による所有権移転登記を行うことは、まずありません。
対して、相続を原因とする所有権移転登記は急いでいない場合や間違えてやり直しても問題ないようなケースであれば、自分で準備して申請することもできます。法務局のホームページにひな形が掲載されていますし、法務局で登記相談を受け付けています。予約して、作成したものが正しくできているかを確認してもらうのもよいでしょう。
贈与や財産分与についても、急ぎのケースでなかったり、やり直しても問題なかったりするケースでは自分で申請してもよいでしょう。ただし、スピーディーに間違いなく手続きしたい場合は、登記手続きの専門家である司法書士に依頼して進めたほうがよいでしょう。
大手住宅メーカーの注文住宅販売や不動産テック企業の仲介業務に4年間携わり、不動産取引にかかわった件数は350件以上にわたります。2021年よりリビンマッチコラムの執筆・編集を担しています。皆さんが安心して不動産取引を行えるよう、わかりやすくリアルな情報を発信します。
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