【境界トラブルを防ぐ】事例と対策、売却方法まで紹介
境界トラブルにはさまざまな事例があり、いつ自分が当事者になっても不思議ではありません。大きなトラブルに発展すると、最終的に当事者のどちらかが引っ越さなければいけないケースもあるでしょう。
ここでは、境界トラブルの事例と対策を具体的に紹介します。また、トラブル後の売却方法についても解説します。
もくじ
境界トラブルの事例と対策
土地の境界トラブルにはさまざまな事例があり、境界の数だけトラブルがあるといっても過言ではありません。
主な事例と対策、解決方法について解説します。
境界線のはみ出しによる時効取得
自分の土地の一部を、いつの間にか隣人が取得しているという事例があります。
この事例は、民法の第百六十二条「所有権の取得時効」を起因とするトラブルであり、境界線をはみ出しつつ隣人が土地を使用し、以下のいずれかの条件を満たす場合は、その部分の所有権を隣人が取得していることもあります。
- 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する
- 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する
上記のいずれかの条件を満たし、時効によって土地の所有権を取得したと隣人が主張する場合は、時効が完成していないことを証明しなければ、その土地の所有権を失ってしまいます。
この時効取得によるトラブルは、常日頃から境界を確認し、隣人が境界線をはみ出しつつ土地を使用していないか、定期的に確かめることにより予防できます。
境界ブロックの修繕費用
境界線上、または境界付近に建てられたブロック塀は、修繕費用を誰が負担すべきか論争になり、トラブルに発展する事例があります。
修繕費用を負担するのはブロック塀の位置によって異なり、境界線より内側であればその土地の所有者が、境界線上にある場合は原則として隣人と折半しつつ負担します。
しかし、修繕を提案した者が負担するケースなどもあり、協議しつつ決定するのが通例です。
また、老朽化したブロック塀が地震で倒壊して通行人がけがをするという事例もあります。このトラブルは、ブロック塀に安全点検を実施することにより予防することが可能です。
地震で倒壊するおそれがあるブロック塀は解体せざるを得ませんが、自治体によっては解体費用に補助金が支給されます。
なお、道路と歩道の境界に設置された高さが10〜15cm程度の縁石と呼ばれるブロックなどを境界ブロックと呼びます。
その境界ブロックに足を引っかけて転倒したなどのトラブルは、道路が公道であれば市町村役場に、私道であれば所有者に苦情を申し立てれば、何らかの対策が講じられます。
境界付近の工事で隣地への立ち入りを断られる
境界付近に塀を建てようと工事を計画すると、隣人から隣地に足を踏み入れることを断られ、トラブルに発展するという事例があります。
その主な原因は、隣人とのコミュニケーション不足ですが、民法の第二百九条「隣地の使用請求」により、境界付近において障壁を設置する際は、隣人に隣地の使用を請求できると規定されています。
土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない
隣地は使用を請求できますが、隣人の承諾がなければ隣地を使用できないことになっています。
そのため、境界付近に塀を建てたいと工事を計画するものの隣人の協力が得られない場合は、建築業者と相談し、隣地へ立ち入りせず施工できる工事を実施するのが賢明です。
このような工事に慣れている業者であれば、境界線よりやや内側になりますが、隣地へ立ち入らず器用に塀を建ててくれます。
塀の設置工事後、隣地にはみ出している
境界付近へのブロック塀やフェンスの設置工事を業者に依頼したところ、土地の境界線をはみ出しつつ設置してしまい、隣人から苦情を受けるという事例があります。
この事例は、土地の境界線があいまいな状態や、業者との打ち合わせが不十分な状態で工事請負契約を結び、工事が開始されたことを起因とするトラブルです。
隣人の立ち会いのもと境界線を確認し、業者と綿密な打ち合わせを行いつつ工事を開始すれば、このようなトラブルは予防できます。
すでに境界線をはみ出しつつ工事が行われている場合は、業者にやり直しを依頼しましょう。
業者が異議を申し立てつつ応じない場合は、以下の機関に相談することで紛争の処理に関する支援を受けられます。
公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター
独立行政法人 国民生活センター
隣人トラブルを避けたいが、境界線がわからない
隣人と境界に関する見解が異なり、正確な境界線がわからないというトラブルは大変多いです。
正確な境界線がわからない場合は、筆界特定制度(ひっかいとくていせいど)を利用しましょう。
筆界特定制度とは、法務局の筆界特定登記官と呼ばれる職員が、土地家屋調査士などからなる筆界調査員とともに筆界を特定する制度です。
境界線がわからない場合は同制度により筆界を特定させ、特定した筆界を所有権界とし、その内容を登記簿に反映させることでトラブルを解消させます。
筆界とは、その土地が登記された時点における、その土地と隣地の境目のことで、登記簿などの書面、登記された当時の記録などを参考にしてあらわす地番と地番の境目です。
これに対して土地の境界には、所有権界というものがあります。
所有権界とは、現時点における現場の境界からあらわせる土地の境界線であり、所有権と所有権の境目を指します。
筆界特定制度を利用する主な流れは以下のとおりです。
- 法務局からダウンロードできる筆界特定制度の申請書に必要事項を記載する
- 申請手数料を添えて、法務局に申請書を提出する
- 申請書の提出から約3カ月後に、法務局から手続き費用を納めるように案内が届く
- 手続き費用を納めれば、筆界特定登記官と筆界調査員が調査しつつ筆界を特定し、申請者と隣人へ結果を通知する
申請手数料はその土地の固定資産税評価額によって違いますが、1〜2万円であることが多いです。
一方で手続き費用とは、測量士による測量や土地家屋調査士による鑑定に要する費用であり、土地の広さや形状などによって額が異なり、50〜80万円の費用がかかります。
申請書の提出から特定結果の通知が届くまで半年〜1年かかり、筆界特定制度は、隣地の所有者が不明で連絡が取れない状況でも利用できます。
ただし、同制度によって特定した筆界は、その内容に自分と隣人が納得し、特定した筆界を登記簿に反映させることによってはじめて法的な効力を持つことに注意してください。
筆界特定制度で筆界が特定しても、その内容を登記簿に反映させなければ、特定した筆界が法的な効力を持つことはありません。特定した筆界に納得できない場合は、調停や裁判によって境界線を明確にする必要があります。
境界線から隣の木の枝が飛び出している
隣地に植えられた木の枝や根が境界線からはみ出し、自分の家に飛び出しているという事例があります。
境界線からはみ出す木の枝は、民法の第二百三十三条「竹木の枝の切除及び根の切取り」で、隣人に切除させることができると定められています。
境界線からはみ出す木の根は、同じく民法の第二百三十三条の第二項により、隣人の許可がなくとも切り取ることができます。
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる
隣人の許可がなくても切り取ることができますが、木の根を勝手に切り取れば、隣人と新たなトラブルが発生するおそれがあるため、事前に一声かけるのが賢明です。
土地の境界線の立ち会いが拒否される
土地の境界線に関するトラブルとして、隣人に境界線の立ち会い確認を求めたが拒否される、または隣人から境界線の立ち会い確認を求められたが拒否したなどの事例があります。
拒否された場合は、粘り強く交渉する必要があります。どうしても応じてくれない場合は、町内会の会長など、第三者を介して依頼すれば応じてくれるかもしれません。
注意すべきは、立ち会い確認を求められたものの拒否した場合です。
拒否する理由はさまざまですが、立ち会い確認を求められた場合は、できる限り協力するのが賢明です。
現時点では立ち会いを求められつつ拒否したものの、土地を売却するなどで立場が逆転し、こちらが立ち会いを求める側になる可能性があるためです。
隣人から境界線の立ち会い確認を求められた場合は、面倒でも協力することで将来の自分のためになります。
土地を測量した証の「筆界確認書」に署名捺印したくない
隣人から筆界確認書への署名捺印を執拗に迫られるという事例があります。
筆界確認書とは、境界線を特定するために行った測量の内容をまとめた書面で、署名捺印をすることで特定した境界線に合意したこととなります。
そのため、筆界確認書は慎重に署名捺印をする必要があります。しかし筆界確認書の内容に疑問を感じ、署名捺印ができないこともあります。
そのような場合は、土地家屋調査士に相談することで筆界確認書の整合性を確認でき、間違いがないと判断できれば署名捺印しやすくなります。
筆界確認書の整合性を確認する程度であれば、さほど費用はかかりませんが、自治体によっては土地家屋調査士による無料相談室を実施していますので、それを利用して費用を節約することができます。
実は隣人の建物が境界線を越していた
測量を行いつつ境界線を特定したところ、実は隣人の建物が境界を越していたという事例があります。
このトラブルが発生した場合、自分が所有する土地の所有権を隣人が侵害していることとなり、越境している部分の撤去、または建物全体の撤去を請求できます。
しかし、隣人が取得時効を完成していると主張して撤去に応じない場合は、紛争になるおそれがあります。
また、隣人が建物を新築し始めたが、境界線に近く建てられてプライバシーを侵害されないか不安を感じるというトラブル事例もあります。
民法の第二百三十四条「境界線付近の建築の制限」で、建物を建造する際は、境界線から50cm以上の距離を保たなければならないと規定されています。そのため50cm未満の位置に隣人が建造しようとする場合は、中止させることができます。
建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない
ただし、建築基準法の第六十五条「建築物が防火地域又は準防火地域の内外にわたる場合の措置」では、防火地域、または準防火地域内で防火壁を用いて建造する場合は、境界線に接することができると規定されているため、それに該当する場合はやむを得ません。
建築物が防火地域又は準防火地域とこれらの地域として指定されていない区域にわたる場合においては、その全部についてそれぞれ防火地域又は準防火地域内の建築物に関する規定を適用する。ただし、その建築物が防火地域又は準防火地域外において防火壁で区画されている場合においては、その防火壁外の部分については、この限りでない
トラブルになったので売りたい!どうすればいい?
土地や戸建ては、主に3つの方法で売却できます。
- 不動産会社に仲介を依頼する
- 不動産会社に直接売却する
- 一括査定を申し込む
3つの売却方法には、以下の特徴があります。
売却方法 | 特徴 |
---|---|
不動産会社に仲介を依頼する | 複数社に連絡を取って査定を依頼し、査定額が高い会社に仲介を依頼する |
不動産会社に直接売却する | 複数社に連絡を取って査定を依頼し、最も査定額が高い会社に買取を依頼する |
一括査定を申し込む | ネットで複数社に一括で査定を申し込むことで多数の不動産会社から査定額が届き、査定額が高い会社に仲介や買取を依頼する |
上記の3つの売却方法を詳しく見ていきましょう。
不動産会社に仲介を依頼する
不動産会社に仲介を依頼して購入希望者を探す方法は、基本的に以下の流れで物件を売却します。
- 不動産会社に電話などで連絡を取り、不動産の売却を希望することを伝える
- 不動産会社が物件の現状を調査し、売却額を査定する
- 査定額に納得すれば不動産会社と媒介契約を締結する
- 不動産会社が購入希望者を探す
- 購入希望者が見つかり次第売却し、不動産会社に仲介手数料を支払う
査定に必要な時間は査定方法によって違いますが、2日〜1週間かかるのが一般的です。
査定額に納得すれば、その査定額で土地や戸建てを売りに出すことになります。査定額は不動産会社によって違います。
そのため不動産会社が算定した査定額に満足できない場合は、ほかの不動産会社に査定を依頼し直し、流れの1と2を繰り返すことになります。
なお、境界線がわからない土地でも、公簿売買と呼ばれる方法で売却できます。公簿売買とは、登記簿に記されている土地の面積をもとに取引する売買方法です。
不動産会社に売却する
不動産会社に土地や戸建てを直接売却する方法もあり、一般的な流れは以下のとおりです。なお、この売却方法を不動産買取といいます。
- 複数の不動産会社に電話などで連絡を取り、土地や戸建ての買取を希望することを伝える
- 各不動産会社が現地を調査し、買取額を査定する
- 最も高く査定した不動産会社に買取を依頼する
不動産会社に物件を直接売却すれば、仲介を依頼するより早く現金化できますが、仲介による売却より低く買取られることが多く、複数の会社に連絡を取りつつ査定を依頼するのが大変です。
なお、すべての不動産会社が買取をできるわけではないため注意してください。
一括査定に申し込む
土地や戸建てを売却する3つめの方法は、不動産の一括査定サイトで依頼することです。
不動産の一括査定サイトとは、土地や戸建ての売却を希望する方が、物件情報を一度入力するだけで複数の不動産会社から査定額が届く、便利なサイトです。
一括査定サイトを利用することで、査定額が比較検討できるだけでなく、物件に合った売却方法の提案を受けられます。仲介か買取かで悩んでいる方にもピッタリなサービスです。
加えて、一括査定サイトに登録している不動産会社は、運営サイトの審査を通過した信頼のおける不動産会社ばかりです。
一括査定サイトは無料で利用でき、パソコンはもちろん、スマートフォンやタブレットからも手軽に利用できます。売却活動を進めるうえで必須のアイテムといえます。
大手住宅メーカーの注文住宅販売や不動産テック企業の仲介業務に4年間携わり、不動産取引にかかわった件数は350件以上にわたります。2021年よりリビンマッチコラムの執筆・編集を担しています。皆さんが安心して不動産取引を行えるよう、わかりやすくリアルな情報を発信します。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
リビンマッチコラムでは、むずかしい不動産の事をできる限りわかりやすく、噛み砕いて解説しています。不動産に対するハードルの高いイメージ、とっつきにくい苦手意識を少しでも取り除いて、よりよい不動産取引のお手伝いをさせていただきます。
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運営会社:リビン・テクノロジーズ株式会社(東京証券取引所グロース市場)
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