現況有姿売買をわかりやすく解説!売主が気をつけるべきこととは?
不動産売買でよく利用される、現況有姿(げんきょうゆうし)売買とはどのような売買方法なのでしょうか。また現況有姿売買を利用する場合、売主はどのようなことに注意する必要があるのでしょうか。
この記事では、現況有姿売買が利用されるケースや売主が気をつけるべきことについてわかりやすく解説します。
もくじ
現況有姿売買とは
現況有姿売買とは不動産の売買方法のひとつで、「現状」有姿売買と呼ぶこともあります。
不動産業界では、中古物件を中心に利用されているポピュラーな売買方法です。
現況有姿売買の特徴やメリットについて説明します。
現況有姿売買の特徴
現況有姿売買とは、その言葉のとおり、現在の状況のまま、有るべき姿のまま、何も手を加えることなく売買契約を締結することをいいます。
不動産を売却するために土地を整地したり建物を修繕したりはせず、いまの状態のまま引き渡す売買契約です。
現況有姿売買と現状有姿売買の違い
不動産業界には現況有姿売買と別に「現状有姿売買」という似た言葉があり、同じ意味で使われることが一般的になっています。
しかし、本来は違う意味の言葉なので、それぞれの目的に応じて使い分けるのが正しいです。
現況有姿売買は変更するのが困難な状態、または不可能な状態の物件や土地を表します。
現状有姿売買は変更することは可能ですが、意図的にそのまま引き渡す物件や土地のことです。
そのため一般的には、現況有姿売買は主に山林などの自然な土地や、そこに建てられた別荘地などを指し、現状有姿売買は中古物件や事務所などを指します。
しかし、昨今では現況有姿売買と現状有姿売買を同じ意味で使うことが多くなっています。この記事でも、現況有姿売買を現状有姿売買と同じ意味でも使用しています。
現況有姿売買のメリット
現況有姿売買は現在の状態姿のまま売買を行うため、売主はリフォームや取り壊し、または土地の造成などを行う必要がありません。
そのため売主にとっては、金銭的にも実働的にも負担が少ない楽な売却方法といえます。
買主にとっても、売主が高く売却する手間をかけなかった分だけ安く購入できるメリットがあります。また、現在の状況をしっかりと見ることで、物件の本質的な価値を理解してから購入できます。
現況有姿で売却するケースとは
現況有姿売買は、どのようなケースで利用されるのでしょうか。
築年数が浅い
下記のような設備が老朽化しておらず、新たな買主がそのまま使用するため取替えなどが必要ないと判断された場合、現況有姿売買を実施することがあります。
- トイレ
- お風呂
- キッチン
- ウォシュレット
- インターフォン
特に中古戸建や中古マンションは、半分以上が何も手を加えない現況有姿のまま売りに出されます。
ただし、物件価格や地価相場によっては、リフォームを実施したほうが高値で売れるケースもあります。
老朽化が進んでいる
築年数が50年や60年と経過し老朽化が進んでる場合も、現況有姿で売買されることがあります。
これは買主がそのまま物件に住むのではなく、建物を取り壊してから利用することを前提にしているためです。
売主としては取り壊しの手配から工事完了まで待つことなく、すぐに売却できるため、売却にかかる時間や費用を抑えられるという利点があります。
市街化調整区域や山林
建築物が市街化調整区域にある場合も、現況有姿売買が基本となります。
市街化調整区域とは、市街化を抑制する地域のことで、建物の自由な建築が制限されています。そのため、市街化調整区域ではすでに存在する不動産を利用するのが基本で、現況有姿売買が行われます。
山や林など、自然の場所を売買する場合も何も手を加えず行うのが一般的で、現況有姿売買が基本です。
売主が気をつけること
現況有姿売買はトラブルが起こりやすいため、トラブル防止を意識して準備する必要があります。現況有姿売買を行うときは、売主は以下のことに気をつけましょう。
- 契約不適合責任を負う
- 現況有姿売買は値切られやすい
契約不適合責任を負う
現況有姿売買は契約不適合責任を負わないと勘違いされやすいですが、売主は契約不適合責任を負います。
契約不適合責任とは、契約の内容に適合していない場合に売主が負う責任のことです。
現況のままで売買取引することをお互いが了承しているのだから、契約後に売主が責任を負う必要はないと思う方も多いと思います。しかし、現況有姿であることと契約不適合責任の免除とは別の問題です。
たとえば、契約書に「電気、ガス、給排水設備等一切を、現状有姿のまま買主に引き渡す。」と記載があったとします。
このような状況でも、蛇口から水が出ないなどと、目的物に不適合があった場合の担保責任については別の話であって、売主は買主に対して契約不適合責任を負うことになります。
ただし、契約内容に免責特約を付与し、買主が合意の上で契約することで契約不適合責任を回避できます。しかし、買主に不利な契約条件なので購入希望者が現れにくいというデメリットがあります。
契約後のトラブルを防ぐには、売主として契約書面の条文をきちんと整えることが必要です。
そのため現況有姿売買を行う前に専門業者による点検を行い、設備などの状況を明確にすることが重要だといえます。
しかし、実際にここまで気を配って契約書の条文を作成している売主はほとんどいません。そのため、現況有姿売買に関するトラブルは、頻繁に発生しているのが現状です。
現況有姿売買は値切られやすい
建物に劣化や欠陥があっても現在の状況のまま売却するため、現況有姿売買は値切りの対象になりやすいです。
買主にはさまざまな要素が値切り交渉の材料となります。たとえば、以下の状態を見て買主は値切ってくるかもしれません。
- お風呂が汚れている
- 台所に傷がある
- 畳が汚い
- 残置物がある
本来であれば、売却を依頼している不動産会社がうまく買主側をコントロールしてくれることが望ましいのですが、交渉の要因が多すぎると、売主の要望どおりに話が進む見込みは低くなります。
また、現況有姿売買=何かしら問題を抱えてる物件というイメージを持つ人もおり、それも値切り交渉の要因になります。
売却時は必ず複数社に相談する
こうしたトラブルを未然に防止し、適正な価格、適切なタイミングで売却するには1社の不動産会社に頼らず、複数の会社に相談する必要があります。
現況有姿売買では、買主との交渉ポイントが多くなることが予想できます。交渉時に売主と買主の間に入って話をまとめるのは不動産会社です。
ところが、不動産会社に実績がなかったり、交渉に慣れていない担当者だったりすると、思うような売買ができません。
そのため、売却を依頼する不動産会社は複数社から比較検討して選ぶ必要があります。
複数社に相談する際は不動産一括査定サイトを利用しましょう。サイト内で売却予定の物件情報を入力するだけで同時に複数社へ査定依頼が出せます。
物件の査定額や担当者の対応を比較できますし、完全無料で利用ができます。ぜひ、活用してみましょう。
現況有姿売買に関するよくある質問
- 現況有姿売買とは?
- 現況有姿売買とは、土地を整地したり建物を修繕したりはせず、いまの状態のまま引き渡す売買契約です。
- 売主が気をつけることは?
- 現況有姿売買でも契約不適合責任を負うこと、値引き交渉を受けやすいことなどが挙げられます。
大手住宅メーカーの注文住宅販売や不動産テック企業の仲介業務に4年間携わり、不動産取引にかかわった件数は350件以上にわたります。2021年よりリビンマッチコラムの執筆・編集を担しています。皆さんが安心して不動産取引を行えるよう、わかりやすくリアルな情報を発信します。
この記事の編集者
リビンマッチ編集部
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